止め が認 めら れる べき 義務 群と を区 別し
、後 者に つい て、 適格 消費 者団 体に よる
は、 申込 書面
・契 約書 面の 交付 義務 はあ るも のの
、故 意の 説明 義務 違反
︵事 実不 告知
︶が 問題 とさ れる にと どま る。 この 点に つい ては
、取 消権 付与 の要 件と して は事 業者 の故 意が 必要 であ ると して も、 適格 消費 者団 体に よる 差止 請 求の 要件 とし ても 故意 が必 要か どう かは
、再 考の 余地 があ る。 たと えば
、主 観的 要件 を必 要と せず に、 法六 条一 項 一号 から 五号 に掲 げら れて いる 事項 を説 明す るこ とな く契 約を 締結 する 行為 を差 止請 求の 対象 行為 とす るこ とが 考 えら れて よい
。
⒝
また、不 安や 無経 験に 乗じ たり
、圧 迫を 加え るな どの 決定 自由 を直 接的 に侵 害す る形 の勧 誘・ 交渉 行為 に関 して は、 差止 請求 権の 対象 行為 は威 迫に よる 困惑 に限 られ てい る。 この 背後 には
、消 費者 契約 法に よる 取消 権︵ お よび 差止 請求 権︶ の対 象行 為を 不退 去お よび 監禁 に限 定し たの と同 様、 明確 な構 成要 件が 立て にく いた めに
、取 引 が不 安定 にな るこ とや
、消 費者 の意 思表 示に 瑕疵 があ ると いえ るか どう かの 判断 が難 しい こと
、が ある もの と考 え ら
( )
れる
。 し 143
かし
、こ の場 面で も、 ここ まで 述べ てき た二 つの 義務 群に よる 重層 的保 護と いう 観点 が有 用で ある と思 われ る。 すな わち
、た しか に、 明確 な構 成要 件が 立て にく く、 意思 表示 に瑕 疵が ある かど うか の判 断が 難し いと いう 理 由か ら、 消費 者へ の取 消権 の付 与に 対し て抑 制的 とな るの は理 解で きる
。し かし
、① 消費 者個 人の 救済 と差 止請 求 権の 対象 行為 とを 接合 させ る必 然性 はな いこ と、
②消 費者 個人 に取 消権 を付 与す るほ どで はな い︵ ある いは 意思 表 示に 瑕疵 があ ると いい にく い︶ と考 えら れる べき 場合 でも
、平 均的 消費 者の 決定 自由 を侵 害す るお それ のあ る行 為に つい て、 消費 者の 関わ る取 引の 公正 のた めに 差止 めを 肯定 すべ き場 合が ある こと
、③ 構成 要件 の解 釈に 幅が 出や す いこ とに よる 濫訴 の可 能性 とい う問 題は
、消 費者 契約 法一
〇条 を根 拠と する 不当 条項 の差 止め につ いて も問 題と な るも ので ある し、 不公 正取 引方 法指 令の よう に、 例示 構成 要件 とと もに 判断 の枠 組み や要 素を 挙げ ると いう 形で の 対応 も可 能で ある こと
、④ 逆に 構成 要件 が厳 格す ぎる と、 判断 の硬 直化 を招 き、 適格 消費 者団 体に よる 市場 秩序 の
維持 が図 れな くな るこ とか ら、 決定 自由 の直 接的 な侵 害に 関し ても
、消 費者 個人 の権 利を 発生 させ るに は至 らな い が、 なお 差止 めを 認め るべ き平 均的 消費 者を 基準 とし た義 務群 を設 定し
、強 迫に よる 取消 権や 不法 行為
、不 退去 や 監禁 によ る取 消権 と並 べて
、重 層的 な保 護を 行う こと は可 能で あろ う。 この よう な観 点か ら、 たと えば 特定 商取 引 法施 行規 則七 条が 定め る禁 止行 為︵ 一⑹
③④
⑧な ど︶ を、 適格 消費 者団 体に よる 差止 請求 権の 対象 行為 とす るこ と が検 討さ れて よい
。 決定 自由 を直 接的 に歪 める 形の 決定 自由 侵害 行為 につ いて は、 さら に、 差止 めの 対象 が特 定し にく いと いう 問題 もあ る。 しか し、 こう した 種類 の勧 誘が 組織 的に 行わ れる 場合 は、 勧誘 マニ ュア ルや 定型 的な 手法 が用 いら れる 場 合が 多く
、そ うし た供 用物 の廃 棄を 差止 めの 対象 とす るこ とが 可能
( )( )
であ る。
144 145
以上 で、 ドイ ツ不 正競 争防 止法 にお ける 消費 者の 決定 自由 の保 護お よび そこ から 得ら れる 示唆 につ いて の検 討を ひと まず 終え るこ とと する
。本 稿で は、 ドイ ツ法 は、 個別 当事 者を 基準 とし たB GB によ る個 別的 具体 的保 護と
、 平均 的消 費者 を基 準と した 集団 的一 般的 保護 によ り、 消費 者の 決定 自由 を重 層的 に保 護し てい るこ と、 すな わち
、 その 違反 に対 して 消費 者個 人の 権利 を発 生さ せる べき レベ ルの 義務 群と 並ん で、 事業 者の 取引 行為 が有 する 乗数 効 果を 根拠 に、 平均 的消 費者 の決 定自 由を 侵害 する おそ れの ある 行為 につ いて
、よ り高 度の 義務 群を 観念 し、 その よ うな 義務 の違 反に 対し ては
、消 費者 個人 の権 利は 認め られ ない もの の、 なお 除去 や差 止め
、さ らに は利 益剝 奪請 求 とい った 措置 を認 め、 それ によ り、 個別 消費 者の 決定 自由 侵害 の事 前的 予防 やそ の他 の利 益の 保護
、さ らに は市 場 秩序 の維 持を 図ろ うと して いる こと
、こ れと 同様 に、 わが 国で も、 消費 者個 人の 救済 手段 と差 止請 求権 の要 件を 接 合さ せず に、 その 違反 に対 して 消費 者個 人の 権利 を発 生さ せる べき レベ ルの 義務 群と
、そ こま でに は至 らな いが
、 なお 差止 めが 認め られ るべ き義 務群 とを 区別 する こと がで き、 後者 につ いて は、 消費 者個 人が 私法 上の 権利 をも た
ない 場合 であ って も、 適格 消費 者団 体に よる 差止 請求 権の 対象 行為 とす べき 場合 があ るこ と、 わが 国で は、 とり わ け市 場秩 序の 維持 とい う公 共的 役割 は行 政が 担っ てい るが
、適 格消 費者 団体 もま た、 行政 と協 力し て、 消費 者保 護 の担 い手 とし ての 役割 とと もに
、消 費者 の立 場か ら市 場秩 序を 維持 する 役割 をも 担い うる こと など を主 張し た。 こ のよ うに 平均 的消 費者 を基 準と して 差止 対象 行為 を設 定す るこ とは
、消 費者 個人 に救 済手 段が 与え られ るべ き義 務 群と 協働
( )
して
、消 費者 取引 にお ける 自己 決定 基盤 整備 の役 割を 果た す。 この よう な重 層的 保護 は、 市場 の信 頼を 高
146
め、 消費 者取 引の 活発 化に もつ なが るだ
( )
ろう
。ま た、 適格 消費 者団 体に つい ての 右の よう な理 解は
、差 止請 求権 の
147
問題 だけ でな く、 さら なる 役割 を担 わせ るこ との 可否
、た とえ ば、 現在 検討 され てい る集 団的 消費 者被 害救 済制 度 にお いて 適格 消費 者団 体に 原告 適格 を認 める べき かと いう 問題 や、 その 際の 適格 消費 者団 体の 認定 要件 の問 題を 検 討す るに あた って も、 有益 な視 点を 提供 する だろ う。 なお
、本 稿の 主張 は、 行政 的規 制の 縮小 を意 味す るも ので は なく
、そ れと 並ん で、 より 監視 の目 を増 やす こと によ って
、よ り高 い水 準で の消 費者 保護 およ び市 場秩 序の 維持 を 目指 すも ので ある
。 適格 消費 者団 体が 担い うる 役割 は、 消費 者取 引に おけ る市 場秩 序の 維持 に限 られ ない
。本 稿で は対 象と しな かっ たが
、金 融取 引に つい ても
、適 格消 費者 団体 が、 消費 者の 保護 と合 わせ て、
︵消 費者 の行 う取 引に 関す る範 囲で の︶ 金融 シス テム やマ ーケ ット の保 護を も担 うも のと みる こと がで きる ので あれ ば、 たと えば 金融 商品 取引 法三 八条 の 禁止 行為 の中 にも
、適 格消 費者 団体 によ る差 止請 求権 を認 める 可能 性の ある もの が存 在す るの では ない か。 この 点 につ いて は今 後の 検討 を期 した い。 さら に、 本稿 で述 べた よう な考 え方 は、 近時 議論 にな って いる
﹁公 共性 の担 い手
﹂と いう 観点 から も検 討が 可能 であ ろう
。従 来、 取引 秩序 の維 持は 主に 行政 が担 って きた とこ ろ、 本稿 のよ うな 考え 方は
、そ れを
、行 政と 並立 的 に、 適格 消費 者団 体に も担 わせ るも ので ある が、 これ は広 義の 公共 に関 わる
。こ の問 題を
、公 共性 の担 い手 とい う
観点 から 議論 する こと によ って
、行 政と の機 能分 担や 協力 のあ り方
、適 格認 定の 要件
、差 止対 象行 為の 選定 など の 問題 につ いて
、新 たな 知見 が得 られ る可 能性 もあ る。 今後 の議 論の 深ま りを 期待 した い。
︵
︶ 迷惑 メー ル規 制に 関し ては
、宗 田・ 前掲 書注
︵
︶、 同﹁ 不招 請勧 誘規 制の 再構 築︱
︱迷 惑メ ール 規制 を中 心と して
︱︱
﹂慶 應義 塾大 学法 132
89 学部 編﹃ 慶應 義塾 創立 一五
〇年 記念 法学 部論 文集
慶應 の法 律学
民事 法﹄
︵慶 應義 塾大 学法 学部
、二
〇〇 八年
︶三 四一 頁以 下が 詳細 であ る。
︵
︶ 山本 敬三
﹃民 法講 義Ⅰ
総則
︹第 二版
︺﹄
︵有 斐閣
、二
〇〇 五年
︶二 六四 頁、 日本 弁護 士連 合会 編﹃ 消費 者法 講義
第三 版﹄
︵日 本評 論社
、 二 133
〇〇 九年
︶一 六五 頁以 下︹ 村千 鶴子
︺。
︵
︶ 消費 者庁 取引
・物 価対 策課
・経 済産 業省 商務 情報 政策 局消 費経 済政 策課 編﹃ 平成 二一 年版
特定 商取 引に 関す る法 律の 解説
﹄三 四六 頁︵ 商 事 134 法務
、二
〇一
〇年
︶。 加納 克利
・佐 久間 正哉
・安 井正 也﹁ 法令 解説
景品 表示 法と 特定 商取 引法 にも 消費 者団 体訴 訟制 度を 導入
﹂時 の法 令一 八一 四号 三二 頁以 下︵ 二〇
〇八 年︶ も参 照。
︵
︶ 角田 美穂 子﹁ 消費 者団 体の 差止 請求 権と 民事 ルー ル﹂ 川井 健先 生傘 寿記 念論 文集 刊行 委員 会編
﹃取 引法 の変 容と 新た な展 開﹄ 二六 七頁
︵日 本 135 評論 社、 二〇
〇七 年︶
。個 々の 消費 者に 民事 上の 権利 が発 生し うる こと を、 差止 対象 行為 の違 法性 の根 拠と する もの と思 われ る。 しか し、 本 文で も述 べる よう に、 後者 を別 個に 考え るこ とも 可能 であ る。
︵
︶ 鹿野 菜穂 子﹁ 消費 者団 体訴 訟の 立法 的課 題︱
︱団 体訴 権の 内容 を中 心に
﹂N BL 七九
〇号 六三 頁︵ 二〇
〇四 年︶
、三 木浩 一・ 上原 敏夫
・大 村 136 多聞
・加 納克 利・ 野々 山宏
・山 本豊
﹁座 談会
・消 費者 団体 訴訟 をめ ぐっ て﹂ ジュ リス ト一 三二
〇号 四七 頁︹ 山本 発言
︺︵ 二〇
〇六 年︶
、角 田・ 前掲 注︵
︶二 六六 頁以 下。 135
︵
︶ 消費 者庁
﹁特 定商 取引 法違 反に 基づ く処 分件 数の 推移
﹂︵ ht tp :/ /w ww .c aa .g o. jp /t ra de /p df /1 00 70 5k ou hy ou .p df
︶を 参照
。こ れに よる と、 二
〇 137
〇七 年以 降、 年間 処分 件数 が一
〇〇 件を 超え るよ うに なっ た︵ 二〇
〇七 年︱ 一八
〇件
、二
〇〇 八年
︱一 四一 件、 二〇
〇九 年︱ 一三 八件
、二
〇一
〇年 上半 期︱ 二一 件︶
。
︵
︶ 鹿野 菜穂 子﹁ 消費 者団 体に よる 差止 訴訟 の根 拠お よび 要件 につ いて
﹂立 命館 法学 二九 二号 一七 八一 頁︵ 二〇
〇三 年︶ は、
﹁消 費者 団体 には
、 消 138 費者 の教 育・ 啓発
、情 報発 信、 被害 救済 の支 援な どの 役割 と並 んで
、消 費者 の視 点に 立っ た市 場の 監視 者と して の役 割を 担う こと が期 待さ れて いる ので あり
、そ れ故
、こ の役 割を 担う にふ さわ しい 一定 の消 費者 団体 に実 体法 上の 差止 請求 権お よび 提訴 権を
、法 律に よっ て付 与す る ので ある
﹂と 述べ る。 鹿野
・前 掲注
︵
︶五 九頁 以下 も参 照。 また
、松 本恒 雄・ 上原 敏夫
﹃Q
&A 消費 者団 体訴 訟制 度﹄ 三頁 以下
︵三 省堂
、 136 二〇
〇七 年︶ も、 消費 者団 体に よる 公益 実現 機能 につ いて 言及 する
。
︵
︶ 消費 者庁 企画 課編
﹃逐 条解 説 消費 者契 約法
︹第 二版
︺﹄ 六七 六頁 以下
︵商 事法 務、 二〇 一〇 年︶
。
︵ 139
︶ 当然 なが ら、 行政 規制 のた めの 禁止 規定 をす べて その まま 流用 すべ きと いう こと では なく
、差 止請 求に 合わ せて 要件 の整 備を すべ き部 分は 140