一
⑵
で見 たよ うに、わ が国 の特 定商 取引 法は 詳細 な行 為規 制を 定め る一 方で
、適 格消 費者 団体 によ る差 止請 求権 の対 象と なる もの は限 定的 であ り、 行政 処分 がエ ンフ ォー スメ ント の中 心と なっ てい る。 ドイ ツ法 では
、そ の違 反に 対し て消 費者 個人 の権 利を 発生 させ るべ きレ ベル の義 務群 と、 そこ まで には 至ら ない が、 平均 的消 費者 の決 定自 由を 侵害 する に足 りる もの とし て、 なお 除去 や差 止め の措 置が とら れる べき 義務 群と が 区別 され
、両 者が 重層 的な 保護 をな して いる
。こ れに 対し て、 わが 国で は、 消費 者個 人に 取消 権等 の権 利の 発生 が
観念 でき たり
、特 約が 無効 とさ れる
︵あ るい は効 力が 制限 され る︶ もの だけ が差 止請 求権 の対 象と され てい る。 この よう な差 止対 象行 為の 選定 につ いて は、
①特 定商 取引 法上 の行 政規 制等 の各 条項 に規 定さ れる 規範 に抵 触す る行 為 であ って
、② その 行為 によ り個 々の 消費 者に 取消 権等 の民 事上 の権 利発 生が 観念 でき るも ので あり
、③ その 行為 を 集団 的・ 一般 的に 停止
・予 防さ せる こと が適 当な もの を基 準と した
、と の説 明が 行わ れて
( )
いる
。こ のよ うな 考え 方
134
の沿 革は
、二
〇〇 六年 の消 費者 契約 法改 正に おい て、 差止 めの 対象 に不 当勧 誘行 為を 加え るに 際し て、 消費 者個 人 の法 的救 済と 差止 請求 権の 要件 を接 合さ せる 考え 方、 すな わち
、消 費者 個人 レベ ルで の決 定自 由の 侵害 がま ず必 要 であ ると した うえ で、 その よう な不 当勧 誘行 為が 反復 継続 した 場合 には
、消 費者 全体 の利 益に 影響 が及 ぶこ とか ら、 これ を差 止め の対 象と する べき であ ると いう 考え 方が とら れた
( )
こと にさ かの ぼる と思 われ る。 しか しこ れに 対
135
して は、 すで に、 消費 者個 人の 救済 が認 めら れる 要件 と差 止請 求権 の要 件を 接合 させ る必 然性 はな いと の主 張が
( )
ある
。で は、 ドイ ツ法 のよ うに
、差 止対 象行 為を
、消 費者 個人 に法 的救 済が 与え られ る場 合よ りも 広い もの とす る こ 136
とは でき ない のだ ろう か。 前章 で見 たよ うに
、ド イツ 法は
、そ の違 反に 対し て消 費者 個人 の権 利を 発生 させ るべ きレ ベル の義 務群 と並 べ て、 事業 者の 取引 行為 が有 する 乗数 効果 を根 拠に
、平 均的 消費 者の 決定 自由 を侵 害す るお それ のあ る行 為に つい て、 より 高度 の義 務を 設定 し、 その よう な義 務の 違反 に対 して は、 消費 者個 人の 権利 は認 めら れな い
︱
︱
し たが っ て、 その 違反 は個 別取 引の 効力 に直 接に は影 響し ない︱ ︱
もの の、 なお 除去 や差 止め の措 置が 認め られ、そ れに よ り、 消費 者の 決定 自由 侵害 の事 前的 予防 およ びそ の他 の利 益の 保護
、さ らに は市 場秩 序の 維持 が図 られ てい る。 こ れと 比べ ると
、わ が国 では 事業 者の 行為 の乗 数効 果の 考慮 が弱 く、 適格 消費 者団 体の 機能 も限 定的 なも のと なっ て いる とい える
。た だ、 わが 国に おい ても
、行 政処 分対 象行 為は
、消 費者 個人 に救 済が 与え られ るべ き義 務群 の基 準 より も厳 しい もの とな って いる こと から する と、 乗数 効果 を根 拠と した 消費 者利 益の より 高度 の保 護あ るい は市 場
秩序 の維 持が 考え られ てい ない わけ では なく
、日 本で はそ の役 割は 主に 行政 が果 たす もの とさ れて いる とい える
。 この 点で
、こ の分 野で の行 政の 役割 の小 さい ドイ ツと は状 況が 異な る。 しか し、 わが 国に おい ても
、行 政と 並行 的 に、 こう した 乗数 効果 を根 拠と した 消費 者利 益の より 強い 保護 ある いは 市場 秩序 の維 持と いっ た役 割を 消費 者団 体 に認 める こと は、 以下 の理 由か ら、 なお 可能 であ るし
、望 まし いと 考え る。 すな わち
、① 近時
、特 定商 取引 法違 反に 基づ く処 分件 数は かつ てに 比べ て増 加し てい るも
( )
のの
、す べて の違 法行
137
為を 行政 規制 で監 視す るこ とに は人 的お よび 物的 限界 があ るた め、 対応 はか なり 悪質 な事 案や ある 程度 広範 な被 害 が出 た事 例に 限ら れて しま う。 これ に対 して
、② 消費 者団 体は より 消費 者に 近い とこ ろで 情報 収集 を行 って おり
、 広く かつ 迅速 な対 応が 可能 であ る。 また
、③ 現在
、消 費者 団体 に認 めら れて いる のは
、消 費者 に個 別的 救済 が与 え られ るべ き行 為が 反復 継続 され る可 能性 があ る場 合の 差止 めに とど まる
。し かし
、そ のよ うな 予防 的措 置が 認め ら れて いる こと は、 すで に限 定的 なが ら、 消費 者の 諸利 益の 保護 に加 えて
、消 費者 の立 場か らの 市場 秩序 の監 視者 と して の役 割が 消費 者団 体に 認め られ てい るこ とを 示す
。さ らに
、④ 不当 条項 使用 に対 する 消費 者団 体の 差止 請求 権 の許 容性 の検 討に 関し て、 消費 者団 体が 消費 者の 視点 に立 った 市場 の監 視者 とし ての 役割 を担 うと いう 観点 も主 張 され て
( )
おり
、そ のよ うな 役割 は不 当勧 誘に つい ても 妥当 する
。ま た、
⑤私 的団 体に すぎ ない 消費 者団 体が
、消 費者
138
利益 の保 護に 加え て、 市場 秩序 の維 持と いう 公共 的な 役割 を担 うこ とが でき るか
、濫 訴の おそ れが ない かと いう 点 に関 して は、 適格 性の 認定 の段 階で 組織 や活 動実 績な どを もと に判 断し たり
、そ の後 の活 動を チェ ック する こと で も対 応可 能で ある
。さ らに
、⑥ 個別 当事 者を 基準 とし た個 別具 体的 保護 と、 平均 的消 費者 を基 準と した 集団 的一 般 的保 護に よる 消費 者の 決定 自由 の重 層的 保護 とい うコ ンセ プト は、 わが 国に おい ても 有用 と考 えら れる
。以 上の 理 由か ら、 わが 国に おい ても
、ド イツ と同 様に
、消 費者 個人 の救 済が 認め られ る要 件と 差止 請求 権の 要件 を接 合さ せ ずに
、そ の違 反に 対し て消 費者 個人 の権 利を 発生 させ るべ きレ ベル の義 務群 と、 そこ まで には 至ら ない が、 なお 差
止め が認 めら れる べき 義務 群と を区 別し
、後 者に つい て、 適格 消費 者団 体に よる