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第 5 章 考察 53

5.3 展望と今後の課題

5.3.2 今後の課題

本研究のシステムはメディアパフォーマンスシステムの要件である,観客が演奏とサウンド,映 像の関係を理解しやすく,演奏者は容易にシステムの演奏ができ,なおかつ熟練による上達が見込

5.3. 展望と今後の課題 65 めるシステムが実現できた.しかし,練習によって可能となる演奏技法や熟達するための練習方法 の確立はこれからの課題である.

前項で論じたKinectの例のように,新しい技術を利用しながらシステムを発展させていきたい.

ただし,演奏の熟練には技術の発展に比較してより多くの時間が必要となるので,新しい技術を導 入しながらも,基本的な操作が変化しない方向性を検討したい.Kinect導入の検討を例にとれば,

MoPHの場合は,体全体を用いたシステムは演奏方法を継承する立場からは望ましくなく,MoPH の指の動きをKinectで捉える方式や,3DのP.S.Playerの方式を検討したい.

メディアパフォーマンスシステムには,特定の作品を演奏するためのシステムも見られるが,本 研究では,楽器がいろいろな曲を演奏できるように様々な作品を演奏できるシステムを目指してい る.しかし,新しいシステムであるために,作品を制作して行くために,単に演奏だけでなく演奏 する作品を制作することも考慮したシステムをデザインしなければならない.P.S.Playerは円盤が 作品制作のための楽譜として機能したが,MoPHにおいては,演奏を構成するための,演奏の記 録,再生,編集機能の追加が必要とされる.また,作品制作するための映像とサウンドの組み合わ せについても,作品に使用するサウンドやグラフィックの関係といった,作品素材における関係性 の研究は未だ少なく,この分野の研究が望まれる.また,メディアパフォーマンスシステムの作品 制作を通してこの分野の知見を蓄積していく必要がある.

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6 章 まとめ

本研究は,メディアパフォーマンスシステムのデザインについておこなったものである.これま で,高額なコンピュータや特殊な音響機器,映像機器を組み合わせてしか実現できなかったメディ アパフォーマンスシステムが,市販のコンピュータや携帯端末等で構成できるようになった.そこ でメディアパフォーマンスシステムをサウンドと映像を演奏する楽器として設計・開発した.シス テムを用いたコンサートでの演奏,デモンストレーション,ユーザ評価などを通して,本研究のメ ディアパフォーマンスシステムの映像,サウンド,演奏の関係が理解しやすく,またインタフェー スも使用法がわかりやすいことがわかった.システムの技術的側面や使いやすさだけではなく,そ のシステムで表現されたパフォーマンスがどのように受け止められたかについて検討した.そし て,使いやすさとともに楽器としての表現力や可能性,コンテンツ制作や演奏の在り方についての 考察を行った.

1章では,メディアパフォーマンスの歴史と現状を述べ,本研究の目的について述べた.

2章では,国際的に評価された,メディアパフォーマンスの例を分析することによって,新しい 表現であるメディアパフォーマンスが理解されることが重要であり,システムと作品のデザイン,

パフォーマンスを観客に見せるためのインタフェースデザイン,そして操作がわかりやすいインタ フェースのデザインである.そして,こうした課題を解決するためのシステムデザインの方向性を 示した.

3章では,19世紀に発明された映像装置である驚き盤に発想を得て,実世界指向インタフェー スとしてターンテーブルを用い,Phenakistoscope Playerの開発について述べた.そして,開発し たシステムを用いて制作された,作品SightSound -Phenakistoscope-のコンサートにおける観客の 評価を検討した.システムを用いたワークショップを通して,短時間で演奏できるようになるわか りやすいシステムであること,また,カメラの視点の変更,驚き盤の工夫で,さまざまな応用が可 能なシステムであることがわかった.

4章では,マルチタッチインタフェースを用いて物理シミュレーションを操作し演奏するMoPH の開発について述べた.MoPHのデモンストレーション演奏,ユーザアンケート,音楽家および 筆者による試奏を実施した.デモンストレーション演奏では,物理シミュレーションによるグラ フィックと発音の関係,マルチタッチインタフェースと加速度センサによる表現は,デモンスト レーション後の観客への聞き取りから理解されていたことが確認できた.また,ルチタッチイン タフェースと加速度センサの表現がなされた部分で観客の反応が異なっていたことが観察された.

ユーザアンケートにより,マルチタッチインタフェースによる操作方法はわかりやすかったが,複 数の指を使用した実際の操作は難しいと感じられていたことがわかった.また,複数の指を用いた 演奏表現があまり用いられなかった.

5章では,3章,4章に共通する課題を取り上げ,パフォーマンスシステムだけではなく,コンテ ンツの構成や演奏も含めた考察を行った.メディアパフォーマンスシステムを楽器に,そして映像

68 第6章 まとめ 表現を楽譜として捉え,演奏,映像,サウンドの関係について考察した.また,メディアパフォー マンスの作品を構成するにあたり,演奏,映像,サウンドそれぞれの構成だけではなく,それらの 関係性がどの程度観客に理解されるかを時間的に変化させて構成する必要性について述べた.メ ディアパフォーマンスとメディアインスタレーションの相違点を考察し,本システムのメディアイ ンスタレーションへの応用を検討した.そして,本提案システムの基本コンセプトを継承した上で 最近のインタフェースを利用したシステムを提案し,今後の取り組むべき課題について述べた.

これまで,本研究のシステムを使って作品制作と演奏を実施したのは,筆者のみであった.音楽 家やパフォーマと連携して,本システムを作品制作に使用してもらい,フィードバックを得ながら システムの改良を続けて行き,本システムを使用した優れた作品が発表されることを期待する.そ して,これからさらに発展していくであろうメディアパフォーマンスにおいて,様々なシステムが 開発され,作品が創作されていくなかで,本論文がその一助になれば幸いである.

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謝辞

本論文の執筆にあたり,多くの皆様にご協力いただきました.どうもありがとうございました.

ご指導いただきました,関西学院大学理工学部の片寄晴弘教授にお礼申し上げます.特に,博士 号取得へのお誘いと,丁寧な論文指導がなかったら博士論文をまとめるには到底いたらなかったで しょう.

関西学院大学理工学部の岸野文郎教授,山本倫也准教授には副査として指導していただきお礼申 し上げます.

また,SightSound -Phenakistoscope Player-の驚き盤をデザインしていただいた,アーティスト の井上信太氏,CGアーティストでもある玉川大学芸術学部の赤山仁准教授に,お礼申し上げます.

特に,井上信太氏には,P.S.Playerのワークショップにも多大な協力を頂き,感謝します.

MoPHのユーザインタフェースのグラフィックデザインを担当していただいた,株式会社ワン・

トゥー・テン・デザインの漆野真由美氏に感謝します.また,MoPHのデモンストレーションの 機会を与えてくださった,FxUG(Flex User Group)大阪の山本博士氏,FxUG京都の藏野文子氏 にお礼申し上げます.

関西学院大学技術職員の池淵隆氏には,MoPHのソフトウエア開発において,多くの助言を頂 き感謝します.関西学院大学大学院博士課程の神田竜氏,相愛大学音楽学部の橋田光代講師には,

研究を深める議論に参加していただくとともに,貴重な助言をいただき感謝します.

筆者が勤務する京都精華大学芸術学部映像コースの相内啓司教授,伊奈新祐教授,西光一講師 は,筆者の研究に進展を暖かく見守るとともに,授業やオープンキャンパスにおけるワークショッ プへの理解,研究や作品に対する助言をいただき,お礼申し上げます.

最後に,近畿大学の椎名昌美講師には,英語論文の指導をはじめ様々な形で,研究をサポートし てもらい,心から感謝します.

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参考文献

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