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ドセタキセルやカバジタキセルといったタキサン系の抗癌剤を用いた化学療法 や新規抗アンドロゲン薬エンザルタミド、CYP17阻害薬アビラテロンを用いて 加療を行っているが(85)、次第にそれらに対しても抵抗性を獲得してしまうこと が問題となっている。本邦の前立腺癌診療ガイドラインにおいて、これらの薬
物のCRPCに対する使用はいずれも推奨グレードの高い治療とされているが、
薬物の選択に関する明確な基準はない(85)。最近、個々の症例に対し最適な治療
を分析・選択するprecision medicineが世界的に注目されており(87)、前立腺癌 治療においてもその導入が望まれる。今後、OCT1 や今回同定した遺伝子が高 発現の症例に対しては、それらの遺伝子を標的とする新規治療薬を選択する precision medicineの可能性が期待される。
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立腺癌における細胞増殖や転移の促進に働いており、発現の増加が前立腺癌の 予後増悪に働くことが予想される。今までに前立腺癌に関する報告 のない
KIF15とDLGAP5については、臨床検体を用いた免疫染色によりそれぞれの遺
伝子の発現量と予後について解析が必要と考えた。
今回、ARおよびOCT1がCRPC細胞内で細胞周期に関わる5遺伝子の発現 を制御することが明らかとなったが、CRPC 細胞内での役割や細胞分裂、細胞 周期の解析を行うことで新たな治療法の開発や治療標的となり得ることが考え られた。今後の課題として、細胞分裂における機能解析実験などによる前立腺 癌におけるこれらの遺伝子の役割のさらなる解明が期待される。
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【まとめ】
本研究は、ARと協調して働く転写因子であるOCT1のCRPC における役割 を解析した(図20)。OCT1がCRPCモデル細胞22Rv1細胞でAR陽性前立腺癌
細胞 LNCaP 細胞に比較して高発現であることを明らかにし、KIF15、NUF2、
NCAPG、DLGAP5、ANLN の5 遺伝子が CRPCモデル細胞 22Rv1 細胞にお けるARおよびOCT1の標的遺伝子であることを同定した。NUF2、ANLN は 22Rv1細胞の増殖を促進方向に働き、KIF15、NUF2、DLGAP5は22Rv1細胞 の遊走能に促進的に関与することが示唆された。既にLNCaP細胞を用いてAR およびOCT1の標的遺伝子として見出されているACSL3は22Rv1細胞におい てもARおよびOCT1の標的遺伝子であることが明らかとなり、ACSL3を抑制 することで22Rv1細胞の細胞増殖能が抑制されることを示した。本研究により、
CRPCにおけるARおよびOCT1の標的遺伝子として新たに見出した5つの遺
伝子は、ACSL3とともに細胞増殖能や遊走能、転移能等を介してCRPCの進行
に働く可能性が示唆され、さらなる研究により前立腺癌の治療標的や予後予測 因子となり得ることが期待された。
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【謝辞】
本研究の実施ならびに本論文の作成に当たり、様々なご指導、ご鞭撻を賜り ました日本大学医学部泌尿器科学系泌尿器科学分野主任教授 髙橋 悟博士に 謹んで感謝申し上げます。また、連携大学院生として受け入れ本研究を行うに あたり、親切丁寧なご指導を賜りました東京都健康長寿医療センター研究所研 究部長、日本大学医学部泌尿器科客員教授兼務 井上 聡博士、東京都健康長 寿医療センター研究所 高山賢一博士に心から感謝いたします。実験全般、研 究内容につきご指導いただいた日本大学医学部泌尿器科学系泌尿器科学分野助 教 大日方大亮博士、日本大学医学部内科学系総合内科総合診療医学分野 (現
日本大学歯学部解剖学第I講座)藤原恭子博士に心から御礼申し上げます。本研 究に当たり、様々なご指導をいただいた日本大学医学部泌尿器科学系泌尿器科 学分野の皆様、東京大学医学部附属病院泌尿器科の皆様、東京都健康長寿医療 センター研究所老化制御システム加齢医学研究の皆様に深く感謝申し上げます。
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【図・図説】
図1 前立腺癌細胞内でのアンドロゲンシグナル経路
テストステロンは前立腺細胞内で5α還元酵素によりDHTに変換される。AR はDHTと結合すると核内に移動しDNA上のAREに結合し、共役因子と相互 作用して標的遺伝子の転写を活性化する。その結果、前立腺癌細胞の増殖促進 作用や抗アポトーシス作用に働き、前立腺癌の発生や進行を促進する。
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図2 前立腺癌の去勢抵抗性獲得のメカニズム
去勢抵抗性の原因には、ARを介する機序としてはARの発現増加、ARの点 突然変異やsplicing variantによるリガンド特異性の変化、腫瘍内でのステロイ ド合成、AR共役因子の活性化などがあげられる。
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図3 これまでに解析されてきた前立腺癌細胞内でのOCT1の働き
前立腺癌細胞内において、OCT1はゲノム上のAR結合部位近傍に結合し、標
的遺伝子ACSL3の転写を誘導する。また、前立腺癌細胞内で高発現したACSL3
は前立腺癌細胞内でのテストステロン合成を促進し、前立腺癌の増殖・進行を 促進することが報告されている。
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図4 前立腺癌細胞でのOCT1発現量の検討
22Rv1細胞、LNCaP細胞、DU145細胞より蛋白抽出液を回収、western blot
analysisを実施し、それぞれの細胞でのOCT1の発現量につき検討した。ロー
ディングコントロールとしてβ-actinを用いた。
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図5 siRNAを用いたOCT1の発現抑制効果の検討
22Rv1細胞にコントロールsiRNA (siControl)および、OCT1に対する siRNA (siOCT1 #A、#B)をそれぞれ10 nMトランスフェクションし、48時間 後にエタノールもしくはDHTを10 nM投与した。24時間後に細胞より蛋白抽 出液を回収、western blot analysisを実施しOCT1の発現抑制効果を検討した。
ローディングコントロールとしてβ-actinを用いた。
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図6 OCT1発現抑制による細胞増殖能への影響
22Rv1細胞を96ウエルディッシュの各ウエルに500細胞ずつ入れ、24時間
培養後にsiControlおよびsiOCT1 #A、#Bをそれぞれ10 nMトランスフェク ションした。48、96、144時間培養後にMTS assayを行い、Microplate reader で吸光度を測定した。結果は平均値±標準偏差 (SD)、n=5にて提示した。有 意差検定にはStudent’s t検定を用いた(
*
: p < 0.05,***
: p < 0.001)。44
図7 22Rv1細胞に対するOCT1発現抑制による細胞遊走能への影響
22Rv1細胞にsiControlおよび、siOCT1 #A、#Bをそれぞれ10 nMトラン スフェクションし、48時間培養後にmigration assayを行い細胞遊走能への影 響を検討した。ギムザ染色後に、poreを通過したフィルター下面の細胞数を顕 微鏡100倍ランダム5視野にて計測した。結果は平均値±標準偏差 (SD)に て提示した。有意差検定にはStudent’s t検定を用いた(
***
: p < 0.001)。45
図8 22Rv1細胞を用いたsiOCT1によるACSL3の発現量の検討
22Rv1細胞にsiControlおよび、siOCT1 #A、#Bを10 nMトランスフェク ションし、48時間後にトータルRNAを回収、qRT-PCRを行い、ACSL3の発 現量を検討した。ローディングコントロールとしてGAPDHを用いた。結果は 平均値±標準偏差 (SD)、n=3にて提示した。有意差検定には、Student’s t検 定を用いた(
**
: p < 0.01 vs siControl,***
: p < 0.001 vs siControl)。46
図9 22Rv1細胞におけるOCT1標的遺伝子候補の同定
22Rv1細胞を用いて、siOCT1 #AもしくはsiControlを10 nMトランスフェ クションし、48時間後にDHTもしくはエタノール10 nMを24時間処理した 細胞より回収したトータルRNAを用いてマイクロアレイ解析を行った。
siOCT1 #AによりsiControlと比較して1/2以下に発現が減尐していた遺伝子 群を同定した。
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図10 CRPC進展に関わるOCT1の直接的な標的遺伝子の抽出
22Rv1細胞でsiOCT1 #AによりsiControlと比較して発現減尐を認め、22Rv1
細胞でLNCaP細胞に比較し高発現のOCT1標的遺伝子35遺伝子を同定し、ア
ンドロゲンに反応を認めた33遺伝子を抽出した。遺伝子発現データベース Oncomine内のGrasso et alのデータを利用し(62)、CRPCでの発現上昇が予想 される14遺伝子を選択した。
48
図11 22Rv1細胞を用いてsiOCT1により発現減尐を認める5遺伝子を qRT-PCRにより確認
49
22Rv1細胞にsiControlおよび、siOCT1 #A、#Bをそれぞれ10 nMトラン スフェクションし、48時間後にエタノールもしくはDHTを10 nM投与し、24 時間後にRNAを回収した。回収したRNAを用いて、OCT1標的遺伝子として 同定した14遺伝子についてqRT-PCRを行った。ローディングコントロールと
してGAPDHを用いた。結果は平均値±標準偏差 (SD)、n=3にて提示した。
有意差検定にはStudent’s t検定を用いた(
**
: p < 0.01 vs siControl,***
: p <0.001 vs siControl)。
siOCT1 #A、#B処理によりsiControlと比較し有意に発現が減尐する5遺伝 子を確認した。
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図12 22Rv1細胞とLNCaP細胞でのOCT1標的遺伝子の発現量の比較
22Rv1細胞およびLNCaP細胞を48時間後培養後にエタノールもしくは
DHTを10 nM投与し、24時間後にRNAを回収した。回収したRNAを用いて、
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5遺伝子につきqRT-PCRを行った。ローディングコントロールとしてGAPDH を用いた。結果は平均値±標準偏差 (SD)、n=3にて提示した。有意差検定に はStudent’s t 検定を用いた(
*
: p < 0.05 vs LNCaP,**
: p < 0.01 vs LNCaP,***
: p < 0.001 vs LNCaP)。52
図13 22Rv1細胞に対するsiRNAを用いたOCT1標的遺伝子の発現抑制効果 の検討
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22Rv1細胞にsiControlおよび、OCT1標的遺伝子に対するsiRNA (siKIF15、
siNUF2、siNCAPG、siDLGAP5、siACSL3)をそれぞれ5 nMトランスフェク ションし、48時間後にトータルRNAを回収、qRT-PCRを行い、OCT1標的遺 伝子の発現抑制効果を検討した。ローディングコントロールとしてGAPDHを 用いた。結果は平均値±標準偏差 (SD)、n=3にて提示した。有意差検定には Student’s t 検定を用いた(