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今後の課題

ドキュメント内 気象レーダを用いた落雷の短時間予測 (ページ 42-53)

今後の課題として,移動量導出方法の改良が挙がる。移動量の導出を行う範囲や異常な移 動量の判別条件などは,検証を行って決定したものではない。そのため,最適な値や条件で はない。よって,移動予測精度が上がる条件を模索する必要がある。また,XRAIN の観測 間隔である 5 分の間に,新たに発生した雲をどのように扱うか,考える必要がある。

また,本稿では気象レーダによる観測値のみを用いて落雷予測モデルの作成を行ってい る。そこで今後の課題として,気象レーダによる観測値以外の情報を用いることが挙がる。

例えば,過去 5 分間で発生した落雷の情報や,雲間放電の有無など,LIDEN による情報を 用いることで,予測精度が向上すると考えている。

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謝辞

本論文を作成するにあたり,ご指導を頂きました本島邦行教授ならびに岩崎博之教授,研 究室の方々に心より感謝いたします。また,修士学位論文の主査を務めて頂いた山越芳樹教 授及び副査を務めていただいた三輪空司准教授に厚く御礼申し上げます。

さらに,本研究で用いた LIDEN データは防災科学技術研究所の清水慎吾博士から提供さ れました。XRAIN データは国土交通省より提供され,文部科学省の委託事業により開発・

運用されているデータ統合解析システム(DIAS)の下で,収集・提供されたものです。また,

XRAIN データの解析には,名古屋大学宇宙地球環境研究所提供の解析ソフトを利用させて

頂きました。関係各位に心より感謝いたします。

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参考文献

[1] 国土交通省 気象庁:「雷ナウキャスト」,

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/thunder2-1.html [2] 国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門:

「X バンドマルチパラメータレーダ(MP レーダ)」, http://mp-radar.bosai.go.jp/index.html

[3] 国土交通省 気象庁:「雷監視システム」,

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/thunder1-2.html [4] 道本光一郎・柴村孝嗣:「冬季雷の気象学的特徴 と雷予知技術」,

電学論 B ,Vol.116,No.4,pp.431-437(1996)

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研究業績

本研究において筆者が作成した学会用発表原稿を末尾に記載する。

学会発表

(1) 成田貴一, 本島邦行, 岩崎博之, “落雷検出におけるマルチパラメータレーダの有用性”, 第 10 回電気学会栃木・群馬支所合同研究発表会,ETG-20-56. ETT-20-56,

群馬県 群馬工業高等専門学校 2020/3/4, 2020/3/5

(2) 成田貴一, 本島邦行, 岩崎博之, “気象レーダを用いた落雷の短時間予測”, 第 11 回電気学会栃木・群馬支所合同研究発表会, 2021/3/1, 20203/2 (予定)

落雷検出におけるマルチパラメータレーダの有用性

非会員

成田 貴一

a)

非会員

岩崎 博之

正 員

本島 邦行

Usefulness of multi-parameter radar in lightning strike detection

Kiichi Narita*a), Non-member, Hiroyuki Iwasaki, Non-member, Kuniyuki Motojima, Member,

キーワード:XバンドMPレーダ, ロジスティック回帰分析 Keywords:X-band MP radar, Logistic regression analysis

1. まえがき

警察白書によると落雷による年間死数は年々減少してお り,2000-2009における平均死傷者数は3人と非常に少なく なっている。これは落雷に関する危険と正しい知識が普及 したためだと考えるが,落雷による被害は人へ対するもの に限らない。落雷の影響は電気機器の類にも及び,サーバ等 への被害は無視できない。しかし雷雲の検出および落雷が 発生する危険性を予測できれば,落雷が発生する直前にサ ーバの電源を切る等の対策を行うことができる。そのため 本稿では,国土交通省が運用する XRAIN(eXtended RAdar Information Network)(1)より得られた降水強度や偏波情報を 用いた落雷予測を目指し,その第1段階として,観測された

XRAINデータから落雷を伴う雷雲の検出アルゴリズムを作

製する。

XRAINデータからは,降水強度に対応するレーダ反射強

度(REF),降水粒子の形状の影響を反映する偏波間位相差変 化率(KDP)やレーダ反射因子差(ZDR)が得られる。そして,

それらの情報から,降水粒子の種類(TPP)を推定している(2)REF を用いて雨雲が落雷を発生させるか予測する研究(3) はすでに行われているため,本稿の研究ではREFのみから 雷雲の判定をする場合とREFの他にKDP,ZDR,TPPを雷 雲の判定に用いた場合の差を確認する。今回はKDP等のデ ータが雷雲の検出に有用であるか確認することが目的であ る.

2. 使用データ

本研究ではKDP,ZDR,TPPが雷雲の判定に有用かを判

定するために,次に示すXRAINの測定データを用いる。ま た,落雷位置および時刻の解析には,気象庁雷監視システム (LIDEN)(4)で得られた測定データを用いる。

〈2・1〉 解析範囲と解析期間 関東域には 7 基の

XRAINレーダが存在し,それぞれが半径60kmの範囲を,

250mの空間分解能で,多仰角PPIによる3次元観測を5分 間隔で行っている(Fig. 1)。その3次元データを水平方向に

500m,鉛直方向に250mの分解能で内挿し,解析に用いてい

る。複数のレーダによる観測範囲が重複する範囲では,鉛直 方向の精度が高くなるため,本研究では 3 基のレーダによ る観測範囲が重複する領域を解析範囲とした。

解析期間は,2017年7~8月である。

〈2・2〉 データの選抜 発雷条件の研究によると,-

10℃高度におけるREF(ref_m10)が20dBZに達しない,ある いは-10℃高度が2kmより低いと発雷は起こりにくいこと が分かっている(5)。本研究では夏期の雷雲を対象とするた め,後者の事例は存在しない。そのため,ref_m10が20dBZ 未満となる領域の降水データを除外することで,発雷の可 能性がある領域のみを解析対象とできる。

a) Correspondence to: [email protected]

群馬大学大学院理工学府

〒376-8515 群馬県桐生市天神町 1-5-1 Graduate School of Engineering, Gunma Universicy.

1-5-1, Tenjincho, Kiryu-shi, Gunma, Japan, 376-8515

Fig. 1. Radar observation range

3. 解析方法

REFのみから雷雲の判定を行う場合とREFの他にKDP,

ZDR,TPPを雷雲の判定に用いる場合の差を確認するため,

それぞれの場合でロジスティック回帰分析(6)により回帰式 を導出し,その精度を比較する。座標ごとのref_m10等を説 明変数とし,その座標の雨雲は雷雲であるかを目的変数と する。

〈3・1〉 データのカテゴリ決定方法 回帰式の作成を 行うために雷雲のデータをカテゴリP,雷雲ではない雨雲の データをカテゴリNとし,それらは次のように定義する。

ある座標について考える。XRAINによる測定開始時刻か ら 5 分の期間にその座標の±1 格子の範囲で落雷が発生し ていた場合,その座標のデータはカテゴリ P に分類する。

カテゴリPに属さない場合,カテゴリNに分類する。

LIDENによる落雷位置の±1格子の範囲をカテゴリP

するのは,LIDENの位置推定精度(~500m)に則ったため である。

〈3・2〉 説明変数の候補 ロジスティック回帰分析を 行うにあたり,雷雲の特徴を表す説明変数としてTable1 に 示す説明変数の候補を考えた。先述した,ref_m10が20dBZ に達しなければ発雷は起こりにくいという発雷条件から,

落雷の発生には温度に依った高度におけるデータが重要で あると考えた。そのため-5℃高度,-10℃高度,-20℃高 度という3つの高度におけるREF,ZDR,KDP,TPPに注目 し説明変数の候補を作成した。

qtyG_m5,qtyG_m10,qtyG_m20,qtyREF_m10は雨雲の面 積を表す説明変数である。これらの値を求めるための範囲 を対象となる座標の±10格子をとしたが,これはXRAINの 測定データから雨雲の動きを観察したところ,落雷を発生 させる雨雲の大きさが十数 km 四方であることが多かった ためである。

〈3・3〉 回帰式の導出方法 各座標におけるTable 1の 値および属するカテゴリを調べたところ,カテゴリ P のデ

ータ数は32788,カテゴリNのデータ数は1059900であっ

た。回帰式の導出を行うため,カテゴリ Pの全データから ref_m1020dBZ以上30dBZ未満のものを6213,30dBZ

40dBZ未満のものを12921,40dBZ以上のものを5454ラ ンダムに選び,これを回帰式算出用データ(以下 teach)とす る。またカテゴリNの全データから24588ランダムに選び,

teachと合わせる。これにより,カテゴリPのデータ数とカ

テゴリNのデータ数が11であるteachを得られる。

回帰式はteachのデータとSPSSを用いて導出する。説明

変数の選択方法は尤度比による変数増加法を使用する。た だし,説明変数を投入するスコア統計量の基準は0.05,除去 する基準は0.10とする。

本稿の研究では,REF から得られる説明変数のみを用い た回帰式(以下RE_ref)とTable 1の全説明変数を用いた回帰 式(以下 RE_all)を導出する。RE_refref_2km,ref_m5,

ref_m10,ref_m20,high_max,ref_max,qtyREF_m10から,

RE_allTable 1から説明変数を選択する。

ロジスティック回帰分析は回帰式に用いられる説明変数 間に強い相関が存在する場合,その解析の信頼性は低くな

Fig. 2. Category determination method

Table 1. Explanatory variables

Explanatory variables Meaning ref_2km [dBZ] REF at 2km altitude

ref_m5 [dBZ] REF at -5℃ altitude ref_m10 [dBZ] REF at -10℃ altitude ref_m20 [dBZ] REF at -20℃ altitude

kdp_2km KDP at 2km altitude

kdp_m5 KDP at -5℃ altitude

kdp_m10 KDP at -10℃ altitude kdp_m20 KDP at -20℃ altitude

zdr_2km ZDR at 2km altitude

zdr_m5 ZDR at -5℃ altitude

zdr_m10 ZDR at -10℃ altitude zdr_m20 ZDR at -20℃ altitude high_max [m] Highest altitude of clouds ref_max [dBZ] REF at highest altitude

qty_G Number of grids

where TPP is a wet or dry graupel WG Whether there is a wet graupel grid DG Whether there is a dry graupel grid

qtyG_m5

Number of grid where TPP at -5℃ altitude is graupel in the range of ± 10 grid

qtyG_m10

Number of coordinates where TPP at -10℃ altitude is graupel

in the range of ± 10 grid

qtyG_m20

Number of coordinates where TPP at -20℃ altitude is graupel

in the range of ± 10 grid

qtyREF_m10

Number of coordinates where ref_m10 is 30 dBZ or more

in the range of ± 10 grid

WG,DGは質的変数であり,存在する場合は 1,存在しない場合は 0 の

値をとる。

る。そのため本稿の研究では相関係数が0.9以上となる説明 変数が回帰式中で同時に存在する場合,それらの説明変数 のみで尤度比による変数増加法を用いた回帰分析を行い,

先に回帰式へ取り込まれた説明変数を使用する。

〈3・4〉 回帰式の評価方法 回帰式の評価は回帰式の 導出に使用していないデータを用いて行う。teachに含まれ ていないカテゴリNのデータからランダムに8200選び,こ

れとteachに含まれていないカテゴリPの全データを合わせ

る。これにより,カテゴリPのデータ数とカテゴリNのデ ータ数が11である回帰式評価用データ1(以下test1)を得 る。このtest1teach中のカテゴリPのデータは,ref_m10 が20dBZ以上30dBZ未満,30dBZ以上40dBZ未満,40dBZ 以上それぞれで,データ数の比が約13となっている。

次に teach に含まれていないカテゴリ N のデータから

ref_m1020dBZ以上30dBZ未満のものをランダムに2072 選び,これとteachに含まれておらずref_m1020dBZ以上

30dBZ未満であるカテゴリPの全データを合わせる。これ

により,カテゴリPのデータ数とカテゴリNのデータ数が 11である回帰式評価用データ2(以下test2)を得る。これref_m1030dBZ以上40dBZ未満,40dBZ以上それぞれ の場合で,同じようにして回帰式評価用データ3(以下test3),

回帰式評価用データ4(以下test4)を作成する。ただしカテゴNのデータ数は,test3,test4でそれぞれ4309,1819であ る。

RE_ref,RE_all を用いてtest1,test2,test3,test4のデー タを判定することで,判定結果として各回帰式の正答率と AUC(Area Under the Curve)(7)を得る。これらを比較すること で,どちらが優れた回帰式であるかの評価を行う。

4. 解析結果

〈4・1〉 RE_refおよびRE_allの導出 導出したRE_ref およびRE_allTable 2,Table 3に示す。Table 2,Table 3の 説明変数はいずれもp値が0.05未満であり,統計的に有意 と見なした。

RE_refの説明変数は6個であるのに対し,REF_allの説明 変数は18個である。回帰式は全ての説明変数に対する測定

値が存在しなければ使用できないため,説明変数の数は少 ないほうが好ましい。そのためその点のみに焦点を当てる のであれば,RE_refの方が汎用性は高い。また,いずれの回 帰式も雨雲の平面方向の大きさを表した説明変数を最初に 取り込んでいる。このことから雨雲と雷雲の判別を行うに あたって,雨雲の大きさは非常に重要である。

〈4・2〉 各回帰式の精度比較 Table 4 に各回帰式で test1,test2,test3,test4の判定を行った結果を示す。

test1の判定結果はRE_ref,RE_allともに高い精度での判 定が行えている。そのため,いずれの回帰式も雷雲の特徴を 良く表せていると考える。しかしRE_refRE_allの正答率 および AUC は差がほぼ存在せず,雷雲判定における KDP 等の有用性を示すことはできていない。少なくとも,ref_m10

20dBZ以上の雨雲を判定対象とした場合,用いる回帰式

RE_refで十分である。

Table 2. RE_ref

Explanatory variables

Partial regression constant B

95% confidence interval for Exp(B) lower limit upper limit qtyREF_m10 0.006986 1.007 1.007

ref_2km 0.05297 1.051 1.058

high_max 0.05750 1.055 1.063 ref_m10 0.04091 1.034 1.049 ref_max 0.03088 1.026 1.037 ref_m20 0.01281 1.006 1.020 Constant -8.085

変数増加法によって回帰式中によりこまれた順に説明変数を記載。

例として,RE_refは最初にqtyREF_m10を取り込んだ。

表中の定数とは,回帰式の定数項を意味する。

Table 3. RE_all

Explanatory variables

Partial regression constant B

95% confidence interval for Exp(B) lower limit upper limit

qtyG_m10 0.005654 1.005 1.006

ref_m20 0.02168 1.014 1.03

kdp_2km 0.1806 1.17 1.226

high_max 0.05755 1.055 1.064

kdp_m10 0.222 1.164 1.339

ref_max 0.0396 1.035 1.046

ref_m10 0.0378 1.03 1.047

DG 0.4227 1.345 1.732

qtyG_m20 0.001872 1.001 1.002

zdr_2km -0.1978 0.789 0.854

ref_2km 0.02248 1.017 1.028

qtyG -0.01662 0.979 0.988

kdp_m20 -0.1051 0.856 0.946

zdr_m20 -0.09489 0.867 0.954

WG 0.1266 1.043 1.235

zdr_m10 0.1379 1.076 1.224

zdr_m5 -0.08079 0.873 0.975

kdp_m5 0.07333 1.023 1.132

Constant -8.068

変数増加法によって回帰式中によりこまれた順に説明変数を記載。

例として,RE_refは最初にqtyREF_m10を取り込んだ。

表中の定数とは,回帰式の定数項を意味する。

Table 4. Regression equation accuracy

Target Correct answer rate AUC RE_ref RE_all RE_ref RE_all test1 0.8182 0.8235 0.8945 0.8991 test2 0.6646 0.6885 0.8433 0.8492 test3 0.6368 0.6461 0.7524 0.7742 test4 0.5250 0.5352 0.7090 0.7385

ドキュメント内 気象レーダを用いた落雷の短時間予測 (ページ 42-53)

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