7.1. 撮影方法及び環境
撮影環境を構築した。プロジェクタをスクリーンから 遠
角度は人間が図7-1の位置にいる場合、±60度である。
メラを使用する。2台使用する ことにより、目の動きと顔の動きを別々に撮影することが可能になる。顔全体 の動きを抽出するために
出することができるカメラシステム 7-2 に示すとおり、
ヘルメットにCCD 顔が動くのと
連動し、 及びヘルメットに使
用したCCDカメラ詳細は付録に示す。
人間がどのように物体を追跡するか、解析を行うため、データの撮影を行っ た。まず、図7-1のような
ざけ、さらに人間がスクリーンの近くで追跡運動を行うことで、投影する指 標の動作範囲を広くした。投影する指標には「○」の形を使用し、左右に運動 するような動画を作成した。また、指標の速度は角速度 20〜120deg/s の間の速 度をとり、
図7-1 撮影環境 図7-1に示すように、人間の撮影には2台のカ
DV カメラを使用し、顔が動いても目の動きのみを抽 (図 7-2)を使用する。図
カメラを顔の正面から固定することによって、
カメラも動くため撮影が可能となる。DVカメラ、
図7-2 目座標用カメラシステム DV
人(CCDカメラ) カメラ
スクリーン 0.5m
4.0m 0.5m
プロジェクタ
CCD カ メ
7.2. 実験
し 実際に人間(被験者1人)の物体 動 指標の動画は、人間の本能的な運動を捕らえる た
構築 た撮影環境、カメラシステムを使用し、
追跡運 の撮影を行う。今回、
めに、いつ動き出すかわからないように幾秒(1〜10秒)かランダムに中心位置 に静止させた後、左右いずれかに半往復するように作成した。図7-3に実際に使 用した画像、表7-1に詳細を示す。尚、最上段に示す秒数は、スクリーンの左端 から右端まで指標が移動するのにかかる秒数を示す。
図7-3 指標画像 表7-1 指標動画の詳細
1秒 2秒 3秒 4秒 5秒 6秒
角速度 120deg/s 60deg/s 40deg/s 30deg/s 24deg/s 20deg/s 動き始める方向 右 右 右 左 左 右
静止時間 10秒 1秒 9秒 8秒 5秒 6秒 まず、2台のカメラから取得された画像を示す。図7-4はDVカメラから得ら れた顔座標用画像であり、図7-5は図7-2の目座標用カメラシステムから得られ た画像である。両画像を比較してわかるように、図7-4は顔が動いているのに対 し、図7-5は顔が動いているにも関わらず、変化が見られるのは背景と目だけで あることから、目の動きだけは捕らえられていることがわかる。これらのこと から、2台のカメラを使用することによって、目と顔のそれぞれ独立した運動を 捕らえることができた。これらの画像を
の詳細は次節で述べる。
利用し、グラフの作成を行う。これら
図7-4 顔座標用取得画像
図7-5 目座標用取得画像
7.3. 目と顔の移動量グラフの作成方法
2 取得された画像を基にグラフを作成する。今回、作成方法 フレームごとにプロットを行った。プロットを行う箇所は 所とし、顔は鼻の頂点に青いシールを貼り、シールの中心(図 7-6)を各座標と
7-7)とした。グラフ作成の際、横軸をフレーム数、縦軸 座標のみとした。フレーム 0 の各座標の値を基準とし、その値よ し、基準の値より増加した場合、左へ 7-8にて行う。
台のカメラから、
として、手動で 1 2
箇
し、目は左目の中心(図 を顔と目の x
り減少した場合、右へ動かしたことを表 動かしたことを表す。詳細な説明は図
0
x
顔:鼻の頂点(青いシールの中心)
0
x
y
目:黒目の中心図7-6 顔座標の取り方
図7-7 目座標の取り方
y
①
⑤
④
③
②
図7-8 グラフ見方の例
以下にグラフの見方を説明する。尚、上に示すグラフを例とする。
① 0フレーム時の値がグラフの基準値となる。このときの被験者は目、顔 ともに正面を向いている状態である。
②
通り、目が左に動いていることを表している。基準値から増加してい
③
準値より上でかつ減少しているので、左から右に移動していることを 示している。また、最後は基準値に近いことから、目が中心に戻って いることがわかる。
④
前に多少の増加をしているため、顔を少し左から右に動かしているこ とを示している。
⑤
加をしており、 また、
左目グラフにおいて、値が増加していることがわかる。これは前述の るので、これは目が中心から左に動いていることを示している。
左目グラフにおいて、値が減少していることがわかる。このとき、基
顔グラフにて、基準値から減少をしていることがわかる。減少をする
顔グラフにて、値が増加している。このとき、基準値より下、かつ増 顔を右から左に動かしていることを示している。
最後には基準値に近いことから、顔が中心に戻っていることを示す。
また、グラフのフレーム数は、目または顔が動き出す10〜20フレーム前から 各座標についてプロットを行っている。終わりに関しても、目または顔の動き が止まった10〜20フレーム後までプロットを行った。表7-2に各角速度でのプ ロットしたフレーム数を示す。尚、最上段に示す秒数は、スクリーンの左端か ら右端まで指標が移動するのにかかる秒数を示す。
1秒 2 秒 4秒 5秒 6秒
表7-2 各角速度のプロットしたフレーム数 秒 3
角速度 120deg/s 60deg/s 40deg/s 30deg/s 24deg/s 20deg/s フレーム数 55 70 120 150 210 250
7.4.1. 指標の速度120deg/s
7.4. 目と顔の移動推移グラフ
図7-9 120deg/sの結果
指標の速度はかなり速く感じた。グラフで見る限り、ほぼ同時に目と顔が運 動を始めていることがわかる。顔のグラフは一気に右に移動をしており、また 一気に元に戻していることがわかる。目においては、5〜25フレーム目までグラ フが不安定に上下に変化しており、目で指標を必死に捕らえようとしているこ とが伺える。また、数フレームの間に右への移動、中心への戻す運動を行って おり、サッケード[11]による追跡を試みていることがわかる。
グラフから、追従運動は試みてはいるものの、指標の速度が速すぎるため、
追従をおこなうには困難であることがわかる。
7.4.2. 60deg/sのとき
図7-10 60deg/sの結果
図7-9のグラフと比べて、比較的穏やかな移動の仕方をとっていることがわか る
ることができる た
指標の速度はまだ速いため、
追従運動を行うことは困難であると考えられる[12]。
。しかし、図 7-9 のグラフほど顕著ではないが、15〜40 フレームの間では上 下に不安定な移動量を示していることから、追従を行うことが難しいことを表 している。移動に関しては、若干目が先に動き始めた後、顔の移動量も出てい ることから、同時にすぐ顔による追従も試みていることがわかる。目の移動は、
右への移動に比べ、中心に戻るときは滑らかに戻っていることがわかる。これ は指標が動き出しに比べ、中心に戻ってくるときは予測をつけ
め、多少の余裕をもって追従を行っていると考えられる。
これらのことから、かなり滑らかではあるが、
7.4.3. 40deg/sのとき
図7-11 40deg/sの結果
前の 2 つのグラフに比べて、顔の移動量が少ないことが見て取れる。物体の 速度が40deg/sほどから、人間において随従眼球運動が可能な速度となる[12]。そ れがグラフからわかるように、目のグラフが滑らかに変化していることがわか る。顔の移動量も同時に出ていることから、目と顔を同時に使うことにより、
目の動きを滑らかにすることを可能にし、しっかりと追従を行おうとしている ことが見て取れる。顔の移動量が少ないのは、追従を行うために使用するエネ ルギーを最小しようと無意識に心がけているため、もっとも楽に追従をおこな った結果、顔の移動は少なくてもよいと判断したと考えられる。
このような結果から、顔と目を同時に使うことによってではあるが、速度
40deg/sから随従眼球運動が可能な速度であるといえる。
7.4.4. 30deg/sのとき
図7-12 30deg/sの結果
いままでのグラフとかなり異なる移動の変化を見ることができる。目と顔の 移動は同時に起こっていないことがわかる。先に動き出すのは目であることが わかる。よって、先に目を使っての追跡を試みていることがわかる。次に、目 の移動をある程度した後、顔の移動が始まっていることがわかる。これは、目 をある程度、左方向に固定したまま、顔のみの移動によって、追跡を行ってい ることを表している。中心に戻る際には、目が顔に比べ、若干速く移動してい る
これらのことから、指標の速度が遅くなるにつれて、追跡を行うことにたい しての余裕があるため、別の特徴があらわれることがわかる。
ことがわかる。顔の戻り始めは同じだが、目の後に元の位置に戻っているこ とがわかる。
7.4.5. 24deg/sのとき
図7-13 24deg/sの結果
図7-12のグラフに比べ、目と顔の動かし方がより特徴的になっていることが わ
果から、指標の速度が十分に余裕をもって眼球随従運動をおこ な
かる。グラフからみてわかるように、目で先に追跡をおこなっている。目で ある程度(30度程度) 、追跡をおこなった後、顔により追従を行っていることが 顕著にあらわれていることが見て取れる。また、このグラフから新たな特徴を 見ることができる。それは、常に目を優先的に使うことにより、物体の追跡を おこなっていることである。これは、指標が中心に戻ってくるときも同様であ り、指標が反対に動き始めたとき、顔での追跡をやめ、目による追跡を目が中 心に戻ってくるまで行い、再び顔で追跡を行っていることがわかる。
このような結
える速度であることがわかる。また、上記のような特徴のある追跡運動をお こなうこともわかる。