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第三節 ベンゼン系化合物への転位反応

F原子以外のハロトロポン類はアルカリ試薬のC-l位やC-3位などの攻撃によりベ ンゼン系化合物へ転位することが知られている。 2) 例えば,2-クロロトロポン(4 e)と アルカリの反応は安息呑酸を与える。 このトロポノイドよりベンゼノイドへの転位機構 として次のスキームが提出されている。 2,44,50)

Scheme 1 。

Y

Y

x

+ B-

=

x-Y

+

x-69 70 7 1

Scheme 2 γ。 ご vo ouひか

+

め主として,2-メトキシー3,テジブロム安息香酸を与えるべきであるが,塩基性のメトキ シル基の脱離による生成物が主として生成している。 スキ ーム3 はノルカラジエン中 間体(73)の平衡を含み,開環しシクロヘキサジエニールアニオン(74,75)のどちらか あるいは両方になりXまたはy-を脱離してベンゼン系化合物を生じる機構である。

このベンゼン系化合物へ転位するKey Stepは初期jのヒドロキシドイオン付加体(70) の逆旋的電子環化の段附である。 また,ノルカラジエン中1mイ本(73)から直接脱離基を脱

Y

x

ヱυ

Y

U

x Y

70a X=H, Y=H b X=F, Y=H c X=Cl, Y=H d X=Br, Y=H e X=Br, Y=Br

r X=OMe, Y=Br

g X=üMe, Y=Br, COOH泌C3

h X=üMe, Y=II, Br a1 C2 I X=Cl, Y=Br

73a X=H, Y=H b X=F, Y=H

c X=Cl, Y=H d X=Br, Y=H e X=Br, Y=Br

74a X=H, Y=H b X=F, Y=H c x=o, Y=H d X=Br, Y=H e X=Br, Y=Br

f X=OMe, Y =Br

75a X=H, Y=H b X=F, Y=H c x=o, Y=H d X=Br, Y=H e X=Br, Y=Br

f X=OMe, Y =Br r X=OMe, Y=Br

g X=OMe, Y=Br, COOH a1 C3 g X=OMe, Y=Br, COOH a1 c3 g X=OMe, Y=Br, COOH a1 c3

h X=OMe, Y =11, Br al C2 I X=Cl, Y=13r

h X=OMe, Y=H, Br al C2 I X=Cl, Y=Br

h X=OMe, Y=H, Br a1 c2 I X=Cl, Y=Br

離して71,72を与えるか,もしくはアニオン性のσ鈷体(74,75)形成を経てベンゼン 系化合物へ転位するかである。 74および75のσ銘体中間体は負電荷を収容できるニ トロ基の様な置換基によって安定化される。 このトロポノイドからベンゼノイドへの転 位反応は非常に容易であり,アルコキシド類のような他の塩基でも同じ結果を与える。

また環から抑し出される炭素原子はC-lであることが立証されている。 50) またC-7 位に置換基を持たず,環の他の位置に電子吸引基を有するトロポン類もまた容易に転位

反応、が起こる。

一方,シクロヘプタトリエンーノルカラジエン結合異性体(Va1en∞異性体)5 1)に関し ては多くの研究が成されている。 C-7位にCN,COOH, CH Oなどの電子求引性の置換基

をつけるとノルカラジエン互変異性体が安定化されることが知られている。 これに対し

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てHoffman 52)と Gunther52)はノルカラジエン構造に含まれる 三員環の被占軌道の一 つはC1-C7問およびC6-C7問では軌道が同符号で重なりあうが,C1と C6問では反結

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ム性であり, 三員環の被占軌道と共役する空軌道を持った'電子求引性の置換基がつ いて いると電子の一部は三員環の軌道か ら置換基の軌道への非局在化がおこり, その結果 C1-C7とC6-C7 の二つの結合は弱められるが,C 1 -C6問は強くなり,ノルカラジエン構造

をとり易くなるとした。 また ,母イ本のシクロヘプタトリエン(76 )とノルカラジエン (77) のエネルギー差は, Kollman 5 3) らはMNlDO/3計鉾によって12.2 kcal / molを得て

おり,一方,Cremer54)らはab initio (6-31G*)法により5.6 kα1/ molを報告した。 それら の結果はノルカラジエンの方が安定であった。 若者のMNDO法による今回の計算では

76と77の全エネルギーは各々-1006.8869eV,ー1007.1994eVでありノルカラジエンの 方が 7.2 kcal /mol安定である。 Meisenheimer型錯体(70 )とノルカラジエン中間体(73 ) および 7 4.75をMNDO法により椛造最適化を行い,それらの生成熱を比較し,可能な

反応機構を検討した。 先ず, スキーム3に従いMeisenheimer型錯体70とノルカラジエ ン型73との平衡が成り立っているか どうかを調べる為,これら化合物の生成熱を比較 した。 次に ノルカラジエン型73よりσ銘体74あるいは 75のどちらへ環化するかを 調べた。

70 の最適椛造はC l-C6 の作る椛迭は平面併造であり,結合交替がある。 C-F間は 1.349 A, C-Cl問は1.77-1.79 A, C-Br問は 1.86-1.87 Aとなりフルオjレベンゼンの1.32 A,

クロルベンゼンの1.73 A,ブロムベンゼンの1.86 Aとほぼ同じ結合距離である。 C7-O・

問は1.28-1.29 A, C7-OH問は1.42-1.44 A の範囲である。 C l-C7間は F,Oぬが C-1位に

置換すると1.61-1.62 Aと70aに比較して若干長くなり,Br,Clが C-1位に置換したとき 1.60Aである。

H H

1.353

1.354 1.354 1.354

7 6 70a 70b 70c

rEa ra RU

6

4 3

1.352 1.350

1. 35 2

70d 70e 70f

Table 9. πIIOMO C∞ffìcients of 77, and 70 a ---i

C-l C-2 C-3 C-4 C-5 C-6 pl.6. ,,,*

77 0.425 0.303 -0.436 -0.436 0.302 0.424 0.360

70 a -0.409 -0.333 0.415 0.414 -0.336 -0.411 0.336 b 0.376 0.376 -0.346 -0.409 0.243 0.343 0.258

c 0.403 0.327 -0.412 -0.402 0.326 0.397 0.319

d -0.398 -0.315 0.414 0.398 -0.317 -0.369 0.293

e 0.391 0.314 -0.394 -0.393 0.300 0.362 0.283

0.391 0.376 -0.359 -0.414 0.226 0.296 0.231

g 0.387 0.407 -0.376 -0.351 0.183 0.211 0.163 h 0.383 0.324 -0.397 -0.402 0.268 0.320 0.245 ー0.379 -0.313 0.416 0.396 -0.317 -0.383 0.290

*) P 16: Bond-Order Between C1 and C6

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Table 9のπHOMO係数よりC1とC6は同位相であり,70からノルカラジエン型73へ

の逆旋的電子間環は充分可能である。 しかし, ノルカラジエン型73の最適化構造の中,

73b, 73d, 73gおよび73iはC l-C 7 rmの原子間距離が約2.5 Aと長くなり C6-C7-C 1

の角度もがj 330とノルカラジエンの三只環を形成していない。 また,73hはC6-C7問の 以子川�!�献が2.57Aとなり,矢張りノルカラジエンの三只i誌を形成していない。

n H

1.463

77

0-1.423

73d

0- 0-

0-1.417 1.463

1.464

73a 73b 73c

0- 110 P・

0-1.461 1.420

1.461

73e 73f 73h

Tablc 10. Heat of Forrnation (ムHf)of 7 0 and 7 3

ムHf(Kcal / mol) 全Hf (Kcal / mol) ムE

70a -40.916 73a -48.621 7.70

b -94.340 b -139.975 45.63

c -51.728 c -61.374 9.64

d -39.869 d -93.289 53.42

e -37.503 e -47.864 10.36

-82.915 -88.106 5.19

g -178.148 9 -231.333 53.18

h -50.976 h -105.448 54.47

ー49.665 -102.262 52.59

そのため,核!日jの斥力が小さく なり全体として全エネルギーが大きく, より 安定となり,

生成熱も大きく安定となる。 Meisenheimerlli ili体とノjレカラジエン型との平衡関係をそ れらの生成熱より比較検討-した。 73bは70bより45.63 kcal / mol安定である。 70cの 生成熱は-51.728 kcal / 11101であり, ノルカラジエンタイプ73cの生成熱は田61.374 kcal / 11101 と73cの方が9.6 kcal / mol 安定である。 70hの生成熱は-50.967 kcal / molまた 73hの生成熱は-105.448 kcal / molであり 73h の方が54.47 kcal / mol安定である。 こ

れ は 73hのC6 -c 7 nuの距離が2.57 Aであり, ノルカラジエンの三員環が形成され てい ない為である。 生成熱を比ìl決するI)l�りスキーム2あるいは3に示したMeisenheimer型 鈴休70hとノルカラジエン型73h IIUの平衡関係は認められない。 その他の化合物にお

いてもノルカラジエン引のノJが安定であり,平衡関係は認められない。 次に ノルカラジ エン型鈷休より生じるσーを!?体741えび75の生成熱をTable 11に, 正I床電1'riÍをTable 12

と13に示す。 σー多ifイ本74cと75cの生成熱は各々-127.308,-101.117 kcal /molと 74cの Table 11. Heat of Formation (ムHf) of 7 4 and 7 5

ムHf(Kcal / mol) 全日f(Kcal / mol)

74a -87.315 75a -87.315

b 時130.551 b -137.086

c -127.308 c ー101.117

d -92.271 d -90.213

e -94.139 e -94.139

-121.987 -129.167

g -216.631 g -230.780

h -105.535 h -104.688

-105.517 -101. 863

Table 12. Net Atomic Ch笠ges of7 4

74a b

c d

e

g h

C-l C-2 C-3 C-4 C-5 C-6 Sum

0.155 ー0.359 0.076 -0.394 0.077 -0.362 -0.807 0.342 -0.384 0.091 ー0.388 0.092 ー0.389 ー0.636 -0.088 0.019 -0.083 ー0.053 ー0.097 ー0.021 ー0.323 0.210 ー0.267 0.044 ー0.290 0.049 -0.299 -0.553 0.217 -0.256 0.048 ー0.299 0.094 -0.356 ー0.522 0.355 -0.346 0.083 -0.365 0.120 ー0.361 ー0.514

0.351 -0.301 0.060 -0.331 0.116 -0.339 -0.444 0.281 ー0.266 0.051 -0.302 0.096 ー0.341 -0.481 0.281 -0.345 0.095 -0.300 0.050 -0.260 -0.479

Table 13. Net Atomic Charges of7 5

C-1 C-2 C-3 C-4 C-5 C-6 Sum 7 5 a -0.362 0.077 -0.394 0.076 -0.359 0.155 -0.807

b -0.190 0.071 -0.365 0.077 -0.337 0.199 -0.545

c -0.268 0.105 -0.365 0.074 -0.319 0.208 -0.565 d -0.351 0.118 -0.366 0.072 -0.308 0.211 -0.624

e -0.356 0.094 -0.299 0.048 -0.256 0.217 -0.552 f -0.154 0.043 -0.273 0.036 -0.238 0.250 -0.336 9 -0.145 0.103 -0.349 0.107 -0.260 0.234 -0.310

h -0.255 0.083 -0.297 0.047 -0.259 0.212 -0.469

-0.261 0.129 -0.341 0.070 -0.300 0.202 -0.501

50

)jが安定である。 74cはC-Cl 11リの距離が4.2Aと離れている為,核問の斥力が小さくそ の結果,全エネルギーが大きく安定なためである。 75b は 74bより生成熱が大きく安

定である。 また環の負TI1f,:jは75bの方が小さい。 74d は75dより生成熱が小さくよ

り安定である。 また負市有は74dの方が小さい。従って, 生成熱が大きく安定な系は負 'm:1�:jが小さいと言える。 また,74gあるいは75gのようにC-3位あるいはC-4位に負 氾仰を収作11',来るCOOHがiR換するとJ1屯仰は小さく なり生成熱も大きく安定である。

7411と7511の生成熱はー105.53 kcal / 11101と-!04.68 kcal / molでありイ笠か74hの方が安 定である。 しかし, f!屯引は75hの方が十泣か小さい。

次に, Meisenheimer型70よりノルカラジエン型7 3,あるいはσー銘体へ至る遷移状態 を計-t7�し,70より各状態への活性化エネルギ一(Ea)を求めた。 2-クロロトロポン(4e) はGl-fにより転位して安,(1、呑f唆(78)を与える。

COOH

Cl

Cl

74c

。仁l

。Cl

ーーーーーー=ー-\当、 COOH

+ Olr

ぷi

70c 73c 4e

75c

70cのMeisenheimer型からノルカラジエン型tjJ問イ本73cへの遷移状態よりEa は33.09 kcal / molである。 また70cより75cへの Ea は 31.36 kcal / mol, また70cより74cへ のEa は156.6 kcal / mol となり,Eaの比較かんは70cより75cへの経路が有利である。

史に73cより75c.73cより74cへのEaは各々- 31.43, 100.2 kcal / molになり, ノルカ

ラジエン引からσ-多!?体75cへ硫化することを支持している。 Eaの計算結果はノルカ ラジエン別からσ多!?休への環化は,より生成熱の不安定なσ鈷体の方へ進行している。

79はアルカリによりBrをm�離した2程類のII1え位体80と81を与える。従って脱離す る基はBrである。

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