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6-1 はじめに

6-2 我が国の交通事故の状況と課題 6-2-1 交通事故の発生状況 6-2-2 歩行者・自転車事故の現状 6-2-3 交通事故の現状と課題のまとめ

6-3 地方部における自動車事故多発箇所の特徴と対策の方向性 6-3-1 地方部における事故発生状況の特徴

6-3-2 自動車事故多発箇所の特徴と対策の方向性

6-4 迷走挙動防止標示の誘導性の検証 6-4-1 既往研究のレビュー

6-4-2 車線変更と迷走挙動の実態把握

6-4-3 既存の案内標識・路面標示の有効性の検証

6-4-4 新たな案内標識・路面標示の誘導性の検証

6-5 まとめ

参考文献

第6章 交通事故多発箇所における誘導性に関する研究

6-1 はじめに

道路空間の高度利用に伴い車線運用が複雑化する一方で、運転者への適切な情報提供の不足に より、運転者の迷い挙動が生じ、事故の発生につながるケースが見られる。特に、幹線道路に多 い、多車線区間や立体交差点においては、事故リスクが高く、交通流の円滑化と安全・安心の確 保を両立するための対策が求められている。

そこで、まず、我が国の交通事故の状況について、各種統計データに基づき整理し、現状課題 を明らかにする。さらに、本研究では、多車線区間における運転者の認知・判断・操作に着目し て、事故発生のメカニズムについて考察するとともに、視覚的な誘導改良という観点から危険挙 動の防止対策案について検討する。

なお、研究は、香川県高松市の「国道11号上天神交差点~峰山口交差点間」をフィールドとし て、ここでの5年間の事故対策の効果を分析する。具体的には、多車線道路区間における案内標 識・標示による車線誘導の効果を、車線別ナンバープレート調査およびアイマークカメラを用い た実走行実験により検証する。さらに、現在までの対策導入後も、なお残る事故の発生要因を明 らかにした上で、新たな対策について提案していくものとする。

交通事故対策の検討にあたっては、以前は県下に配置されている警察署に出向いて、交通事故 原票を書き写し交通事故状況図の作成をしていた。しかし、最近は県警の交通事故データ(公益 財団法人)交通事故総合分析センターの交通事故分析成果(ITARDA データ)1)により、構成し ているデータ項目から死傷者数、交通事故形態別、車両別、年齢別、昼夜別、事故時間帯別、道 路形態別などから抽出し、事故多発危険区間や箇所として事故の特徴、事故発生の状況を明確化 して、簡易事故カルテを作成している。特に交差点においては、渋滞長、交差点需要率、交通容 量、混雑度などを算出して、渋滞との関連性もチェックしている。これらの状況から交通事故の 要因を推定し、所轄警察署、学校関係者、老人クラブ、地元自治会などと合同現地調査を行いな がら、発生要因を絞り込んでいる。特定された発生要因から、現地での実走行実験を行い、標識 などの視認性の確認、運転者の挙動調査、ドライビングシュミレータによる行動調査、走行軌跡 調査などの各種調査や実験により要因を特定して、複数の対策案の検討を行って期待される改善 効果の高いものに絞り込みを行っているのが実情である。

6-2 我が国の交通事故の状況と課題 6-2-1 交通事故の発生状況

平成24年中の交通事故による死者数は2)3)、全国で4,411人と12年連続の減少となり、ピーク 時(昭和 45年=16,765人)の3割以下となった。交通事故発生件数及び負傷者数も、8年連続 で減少し、発生件数は平成4年以来19年振りに70万件を下回った昨年より更に減少した。なお、

第8次交通安全基本計画の目標である交通事故死者数5,500人以下を5年連続で達成している。

図6-1 交通事故発生件数・死者数・負傷者数の推移

全国の死者数を年齢層別にみると2)、高齢者(65歳以上(構成率)51%)が最も多く、次いで

50歳代(同 10%)、40歳代(同 9%)の順に多くなっており、前年比較すると、75歳以上の高

齢者の死者数のみ増加(前年比+8 人、+0.5%)し、死者数に高齢者が占める割合は 51%と過 去最高となった。

高齢者死者数は、高齢者人口の増加などに伴って、昭和50年代前半から増加傾向を示し、平成 5 年には若者を上回り、年齢層別で最多の年齢層となった。その後、平成7年(3,241 人)をピ ークに概ね横ばいで推移し、14年以降毎年減少してきた。しかし、過去10年間の推移をみると、

若者(平成14年の0.29倍)及び25~29歳(同0.29倍)などが約3分の1以下に減少してい るが、高齢者(同0.72倍)は、他の年齢層の減少率より少ないことから、全体に占める高齢者の 割合は年々増加し、15年に初めて4割を超え、平成24年は人口構成率23%(平成23年10月1 日現在推計人口値)の2倍を超える51%に至っており、他の年齢層と比べても高い水準にある。

これを、人口10万人当たり死者数を年齢層別にみても2)3)、高齢者(7.61人)が最も多く、次 いで若者(3.40人)、60~64歳(3.17人)の順に多くなっており、前年比較すると60~64歳(前 年比-0.67 人、-17%)が最多の減少幅である。過去 10 年間の平均増減率(-6.3%)と比較 しても大きく減少している。過去10年間の推移をみると、全年齢層で減少傾向にあり、中でも若 者(平成14年の0.36倍)が4割以下に減少し、高齢者(同0.55倍)も6割以下に減少してい る。

図6-2 年齢層別死者数の推移

全国の高齢者の死者数を状態別にみると2)、歩行中が半数近く(構成率49%)を占め、次いで 自動車乗車中(同 26%)、自転車乗用中(同 16%)の順に多くなっており、前年と比較すると、

自動車乗車中及び原付乗車中が増加し、その中でも、自動車乗車中(前年比+17 人、+3.0%)

の増加幅が最も大きい。

高齢者の歩行中の死者数は、昭和50年代前半から増加傾向を示した後、平成7年(1,659人)

をピークに漸減傾向にあり、平成14年の0.73倍となっている。

図6-3 高齢者の状態別死者数の推移

自転車乗用中及び歩行中の死者の構成率を年齢層別にみると2)3)、高齢者はいずれも約6割以上

(自転車乗用中:65%、歩行中:68%)を占めている。自転車乗用中(第 1・2 当事者)の死者 数を法令違反別にみると、高齢者は、本人側にも違反のある割合が8割近く(構成率78%)を占 め、高齢者以外の者(同73%)と比べて高くなっている。

また、歩行中(第1・2当事者)の死者数を法令違反別にみると、高齢者は、高齢者以外の者と 比べて、横断歩道外横断(同11%)、走行車両の直前・直後横断(同18%)等の道路横断時の違 反の割合(高齢者:同35%、高齢者以外:同19%)が他に比べて高くなっている。

図6-4 自転車乗用中及び歩行中の年齢層別死者数(構成率)(平成24年)

また、全国の自動車乗車中の死者数を年齢層別にみると2)、高齢者が4割以上(構成率42%)

を占め最も多く、次いで 50歳代(同 12%)、若者(同11%)の順に多くなっており、前年と比 較すると、高齢者(前年比+17人、+3.0%)が増加している。

若者の自動車乗車中の死者数は、昭和63年以降激増したが、平成3年(1,648人)をピークに 減少に転じ、その後はほぼ一貫して減少しており、10年間で死者数が5分の1(平成14年の0.2 倍)となるなど大幅な減少を示している。一方、高齢者の死者数は、運転免許保有者数の増加に 伴って、昭和50年代前半から増加傾向を示し、平成13年(748人)をピークにその後は漸減傾 向で推移しているが、他の年齢層の減少率が大きいことから、15年には若者を上回り自動車乗車 中死者の最多の年齢層となっている。

図6-5 年齢別の自動車乗車中の死者数の推移

原付以上運転中の高齢者(第1当事者)による死亡 事故件数を法令違反別にみると2)、運転操 作不適(構成率16%)が最も多く、次いで漫然運転(同15%)、安全不確認(同10%)の順に多 くなっており、高齢運転者の主な法令違反の構成率を高齢者以外の運転者と比較すると、高齢者 以外の運転者では、最高速度違反による死亡事故が 6.6%であるのに対して、高齢運転者では

1.4%と低く、一方、一時不停止が約 3.8倍、運転操作不適が約2.0倍、高齢運転者の方が高く

なっている。

図6-6 原付以上運転者(第1当事者)の主な法令違反別死亡事故件数(構成率)(平成24年中)

さらに、死者数を状態別に各年齢層でみると 2)、自動二輪車乗車中以外の自動車乗車中や歩行 中など全ての状態で高齢者が最多となっているのが現状である。

一方、死亡事故件数を道路形状別にみると、市街地の交差点構成率(33%)が最も多く、次い で非市街地の単路(同30%)、市街地の単路(同19%)の順に多い。

過去10年間の推移を見ると、市街地の単路(平成14年の0.49倍)及び平成17年まで最多で あった非市街地の単路(平成14年の0.50倍)での減少が最も大きい。

図6-7 地形別・道路形状別死亡事故件数の推移(各年12月末)

6-2-2 歩行者・自転車事故の現状

歩行者の違反有無別の致死率は 2)、違反のある者が 4.9%であるのに対して、違反のない者は

1.5%であり、違反のある者の致死率は3倍以上高くなっている。過去10年間では歩行中の死傷

者数は漸減傾向にあり、違反のある者の割合が減少傾向にあることが、歩行中の死者数減少の一 因であると考えられる。

図6-8 歩行中死傷者(1当及び2当)の違反構成率及び歩行中死者数推移(各年12月末)