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第4章 自転車ネットワーク利便性向上に向けた研究

0.90 倍 1.07倍

図4-35 自転車推計交通量の増減率(H32/H22)

また、構築した自転車交通量推計手法を活用して、将来の自転車交通需要から作成した将来の 通勤・通学自転車 OD表を用いて自転車の交通量配分を実施した。また、リンク別自転車交通量 の現況値と将来値の差分により、今後の人口増減による自転車交通量の変化をリンク別に把握し

た(図 4-36)。このうち、自転車交通量が大幅に増加する道路においては、将来の自転車交通量

を考慮した上で、自転車走行空間の整備形態を選定していく必要がある。

※差分交通量:将来〔H32〕-現況〔H22〕

図4-36 自転車ネットワーク上の差分交通量

4-4-4 構築した自転車交通量推計手法に関する考察

自転車ネットワーク計画を策定する上で、重要な基礎データとなる自転車交通量を面的に把握 することを目的として、自転車交通量推計手法を構築した。高松市中心部を対象とし、パーソン トリップ等の既存データを活用して自転車の交通量推計を試みた。その結果、自転車交通量推計 手法に基づき把握した通勤・通学目的の自転車の推計交通量と計測交通量との間に強い相関関係 が確認され、既存資料に基づく推計手法構築の可能性が確認できた。さらに、将来の自転車交通 需要について将来人口予測結果を用いて推計し、自転車交通量が特に増加する道路においては、

そうした状況を踏まえた上での自転車走行空間を構築していくことが重要であると考えられた。

しかしながら、本研究で構築した自転車交通量推計手法について、現況再現性を向上するために 次のような課題が残る。

構築した自転車交通量推計手法は、相関係数が R=0.94 と高いものの、推計交通量と計測交通 量との関係がy=x上にプロットされず、推計交通量が高くなったため、近似式の傾きを用いて補 正を行った。本検討で対象とした道路ネットワークは、幹線道路に代表的な生活道路を追加して 推計しているが、現況再現性をさらに向上するためには、準代表的な生活道路を含める必要があ る。また、本推計手法は、H11パーソントリップの代表交通手段を用いており、アクセス及びイ グレスの自転車交通が考慮されていない。高松市中心部にはJR及び琴電の鉄道が運行しており、

駅も多く位置する。各駅には、自転車駐輪場に加え、レンタサイクル施設も設置されており、ア クセス及びイグレスの自転車交通も考慮する必要がある。

また、高松市中心部へのアクセス距離を5kmと設定して自転車交通量推計を実施したが、パー ソントリップの分析による自転車走行距離帯から、対象範囲を拡大して推計する必要があること が確認された。

これらの課題を改善し、今後、自転車交通量推計手法が構築されれば、将来の自転車交通需要 を考慮した自転車ネットワークの選定や商店街乗り入れ禁止や歩道工事等による自転車交通への 影響評価等の評価が可能である。さらに,本自転車交通量推計手法を改良すれば,自転車走行空 間の整備効果評価ツールとしての適用可能性も想定できることから、今後の自転車施策における 需要なツールとしての期待が高いと考えられる。

4-5 まとめ

各研究のまとめと今後の成果を以下に示す。

1) アンケート調査等をもとにした自転車交通流動の分析手法の研究

自転車ネットワーク検討に求められる「自転車交通量の面的な推計」と「自転車の経路選択状 況」を的確かつ簡便に把握し、自転車走行特性に照らしてネットワーク上の問題点を抽出する

OLIVE 法を用い、高松市中心部をスタディエリアとして適用を行なった。

具体的には、アンケートで地図に直接記入してもらうことにより得られた走行経路情報を、実 際の交通量調査結果を用いて、エリア全体の自転車交通需要をリンク毎に推計し明らかにすると ともに、任意の断面を通過する移動をGISにより抽出・集計し図化することで、自転車の経路選 択状況の分析を実施した。

その結果、従来の方法では把握できなかった、ネットワーク全体の自転車交通流動を面的に把 握することができ、郊外から中心部へは主要幹線道路が主に利用される一方、中心部では街路を 含めた各路線の利用が多くなること、国道11号以南では「中央通り」に比べて「商店街」の利用 が相対的に多くなることなど、需要が集まる路線の特性を把握することができた。

また、OLIVE法の適用、すなわち任意の断面からの経路選択状況の分析により、高松市中心部 の自転車ネットワークの大きな課題として、交差点部の走行空間の改善の必要性が示された。中 央通りでは交差点で地下道走行を余儀なくされるために一貫性が低下しており、直接性の低い迂 回路が選択されている傾向や、「商店街」が他の経路と比較して安全性・一貫性・直接性等の走行 性が高い経路として本来幹線が果たすべき機能を担っていること、需要に対するネットワークの 直接性が欠けていることから、安全性の低い短絡路線が利用されている箇所が存在しているとい う問題点を抽出することができた。

自転車は手軽な乗り物であり、走行上の自由度が高いことから、ともすれば無秩序な移動を取 りがちとなる。安全で円滑な自転車利用環境の実現に向けて、利用者のマナー向上も重要である が、上記のようなエリア全体の自転車利用状況や経路選択状況を踏まえた上で候補路線の抽出や 現状空間の評価などの検討を実施し、ネットワーク計画を策定、実行していくことが重要である。

また、自転車走行環境整備による需要の変化を評価するため、高松市中心部の自転車走行経路 データを用いて経路選択モデルを構築した。また、丸亀町商店街の乗り入れ禁止時に実際に起こ った変化と予測の相違状況から需要変化の評価、対策検討時の留意点や根本的な対策が明確とな った。その対策を実施する場合、今回の経路選択モデルを用いた場合の需要変化も定量的に予測 できた。

需要変化を評価し、その評価に基づき対策を検討し、その対策による需要変化の予測する等の サイクルを実施していくことで、既存の道路空間を有効に活用しながら、自転車の需要に応じた 効率的なネットワークの整備が可能になると考えられる。

2) パーソントリップデータを活用した自転車交通量推計手法の研究

自転車ネットワーク計画を策定する上での基礎データとして、自転車交通量を面的に把握する ことが重要である。しかし、これまでの自転車交通量を把握する手法として、自転車の走行経路 に関するアンケート調査やプローブパーソンデータを用いて計測する手法が研究されているが、

自転車交通量を面的に把握することが困難であったり、必要サンプルを取得するための調査費用 面での課題があった。

そこで、パーソントリップ等の既存データを活用した自転車交通量推計手法の研究を行った。

高松市中心部を対象とし、パーソントリップ等の既存データを活用して自転車の交通量推計を試 みた。その結果、自転車交通量推計手法に基づき把握した通勤・通学目的の自転車の推計交通量 と計測交通量との間に強い相関関係が確認され、既存資料に基づく推計手法構築の可能性が確認 できた。さらに、将来の自転車交通需要について将来人口予測結果を用いて推計し、自転車交通 量が特に増加する道路においては、そうした状況を踏まえた上での自転車走行空間を構築してい くことが重要であると考えられた。しかしながら、本研究で構築した自転車交通量推計手法につ いて、現況再現性を向上するために次のような課題が残る。

構築した自転車交通量推計手法は、推計交通量と計測交通量との相関性は高いが、推計交通量 が計測交通量より大きくなったため、近似式により補正した。本検討で対象とした道路ネットワ ークは、幹線道路に代表的な生活道路を追加して推計しているが、現況再現性をさらに向上する ためには、準代表的な生活道路も含める必要がある。また、本推計手法は、H11パーソントリッ プの代表交通手段を用いており、アクセス及びイグレスの自転車交通が考慮されていない。高松 市中心部には JR 及び琴電の多く駅が位置する。各駅には、自転車駐輪場に加え、レンタサイク ル施設も設置されており、アクセス及びイグレスの自転車交通も考慮する必要がある。

また、高松市中心部へのアクセス距離を5kmと設定して自転車交通量推計を実施したが、パー ソントリップの分析による自転車走行距離帯から、対象範囲を拡大して推計する必要があること が確認された。

これらの課題を改善し、今後、自転車交通量推計手法が構築されれば、将来の自転車交通需要 を考慮した自転車ネットワークの選定や商店街乗り入れ禁止や歩道工事等による自転車交通への 影響評価等の評価が可能である。さらに,本自転車交通量推計手法を改良すれば,自転車走行空 間の整備効果評価ツールとしての適用可能性も想定できることから、今後の自転車施策における 需要ツールとしての期待が高いと言える。

本手法より、ネットワーク上の課題を抽出して、ネットワーク単位での利便性に関わるユーザ ビリティ評価を可能としている。