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二重スリットの実験

ドキュメント内 光の空間コヒーレンスと干渉性について (ページ 33-48)

単スリット実験の時と同じスリット幅を持つ二重スリットを用いて、干渉実験を行った。

5-1.実験方法

(実験器具)

⑴ レーザー(波長632.8nm)・ピンホール①(直径2.0mm)・減光フィルター2枚・ピンホ ール(直径 0.3mm~2.0mm)・二重スリット(スリット幅 a=40µm、スリット間隔 d=150µm)・カメラ

⑵ 白熱電球(100W・100V)・ピンホール①(直径2.0mm)・囲い・ついたて・波長フィル ター(λ=650nm)・ピンホール(直径0.3mm~2.0mm)・二重スリット(スリット幅a=40µm、

スリット間隔d=150µm)・カメラ

(実験セットアップ)

各光源から 10.0cm のところにバックグラウンドを遮断するためのピンホール①(直径 R=2.0mm )を置いた。白熱電球は電球から四方に光が広がるので、その光によるバックグ ラウンドを遮断するため、白熱電球の周りを囲いでふさぎ、さらについたてを置いた。その 後、レーザー光では減光フィルターを用いて強度を調節し、白熱電球では波長フィルターで 波長選択を行った。ピンホール①から15.0cm、15.0cm、15.9cmの間隔で、大きさを変化 させるピンホール②、二重スリット、観測するカメラを置いた。

10.0𝑐𝑚 15.0𝑐𝑚 15.0𝑐𝑚 15.9𝑐𝑚

白熱電球

ピンホール① ピンホール② ついたて

波長フィルター

二重スリット カメラ

10.0𝑐𝑚 15.0𝑐𝑚 15.0𝑐𝑚 15.9𝑐𝑚

レーザー ピンホール① ピンホール② 減光フィルター

二重スリット カメラ

図 5-1.二重スリットの実験セットアップ(上)レーザー光(下)白熱電球の光

34 (実験方法)

まず、レーザー光を用いて実験を行った。ピンホール②の大きさをR=0.3mm~2.0mm まで変化させながら、その都度カメラで光の像を撮影した。撮影したカメラの画像はグレー スケールに変換し、色の明るさを光の強度として数値化した。数値化したデータはカメラの レンズの縦方向に射影し、縦軸が射影した光の強度、横軸がカメラの横方向の距離になるグ ラフを作成した。このグラフをもとに、二重スリットによる干渉パターン(スリットの回折 パターン、干渉縞の鮮明度、干渉縞の間隔)を求めた。

※鮮明さ

V =

𝐼𝑚𝑎𝑥−𝐼𝑚𝑖𝑛

𝐼𝑚𝑎𝑥+𝐼𝑚𝑖𝑛

次に、光源を白熱電球に変えて同様に実験を行った。

最後にレーザー光と白熱電球で結果の比較を行った。

射 影

カメラの距離(mm) 光の強度

図 5-2 二重スリット実験方法の説明

35 5-2.様々な仮定による干渉の見積

理想的にはピンホールは無限に小さい点であり、スリット幅は無限に小さい幅であるが、

実際には有限の値を持つ。理想的な計算と実際の状況における計算との違いを見るために、

ピンホールや二重スリットでの条件を変えて、スクリーン上での光強度の計算を行った。そ れらをまとめたものが下記の表になる。

光源の大きさS、ピンホール①の大きさb、ピンホール②の大きさR、単スリットのスリッ ト幅a、スリット間距離d、各器具の間隔𝑧0, 𝑧1, 𝑧2, 𝑧とする。

また、光源の各点における振幅はA、変位はそれぞれ𝑢0, 𝑢1, 𝑢2, 𝑢2′, 𝑢とし、最終的に求める カメラ上での光の強度はIとする。(ただし、𝐼 = |𝑢|2である。)

光源 ピンホール① ピンホール② 単スリット

仮定1 S=0 b=0 R≠0(平面波が到達) a=0

仮定2 S=0 b=0 R≠0(平面波が到達) a≠0

仮定3 S=0 無視 R≠0 a≠0 仮定4 S≠0 無視 R≠0 a≠0

𝑢

0

= ∫ 𝐴 𝑒

−𝑖𝑘√(𝑠−𝑥0)2+𝑧02

√(𝑠 − 𝑥

0

)

2

+ 𝑧

02

𝑆 2

𝑆 2

𝑑𝑠

(5-2-1)

𝑢

1

= ∫ 𝑢

0

𝑒

−𝑖𝑘√(𝑥0−𝑥1)2+𝑧12

√(𝑥

0

− 𝑥

1

)

2

+ 𝑧

12

1

−1

𝑑𝑥

0 (5-2-2)

𝑢

2

= ∫ 𝑢

1

𝑒

−𝑖𝑘√(𝑥1−𝑥2)2+𝑧22

√(𝑥

1

− 𝑥

2

)

2

+ 𝑧

22

𝑅 2

𝑅 2

𝑑𝑥

1 (5-2-3)

𝑢

2

′ = ∫ 𝑢

1

𝑒

−𝑖𝑘√(𝑥1−𝑥2′)2+𝑧22

√(𝑥

1

− 𝑥

2

′)

2

+ 𝑧

22

𝑅 2

𝑅 2

𝑑𝑥

1 (5-2-4)

𝑢 = ∫ 𝑢

2

𝑒

−𝑖𝑘√(𝑥−𝑥2)2+𝑧2

√(𝑥 − 𝑥

2

)

2

+ 𝑧

2

𝑅 2+𝑎

2 𝑅 2𝑎

2

𝑑𝑥

2

+ ∫ 𝑢

2

′ 𝑒

−𝑖𝑘√(𝑥−𝑥2′)2+𝑧2

√(𝑥 − 𝑥

2

′)

2

+ 𝑧

2

𝑅 2+𝑎

2

𝑅 2𝑎

2

𝑑𝑥

2 (5-2-5)

𝑥

𝑧 𝑧0

𝑥0

𝑧2 𝑧1

𝑥2 𝑥1

𝑧 𝑥2 𝑑

𝑥1

変位𝑢 𝑥

𝑏 𝑅

𝑥2

変位𝑢2

変位𝑢2′ 𝑎

𝑎 変位𝑢1

ピンホール① ピンホール② 二重スリット カメラ

変位𝑢0 𝑥0

𝑆 𝑠 光源

図 5-3 様々な仮定におけるセットアップの設定

36

・仮定1による計算

図 5-4 はピンホール②に平行光線が入射し、さらに二重スリットのスリット幅が無視で きるとした場合の強度分布である。この仮定では、2-2節,ヤングの実験の計算で理想的に各 スリットから点として発生したときと同様に光の強度はA{1+cos(a*x)}(※A、aは定数)の形 になる。

・仮定2による計算

図 5-5 はピンホール②に平行光線が入射し、さらに二重スリットのスリットに幅がある とした場合の強度分布である。このときスリットによる回折も影響され、強度が中心から離 れるにつれて落ちていく。ただし、干渉縞の間隔はスリット幅が無視できるとした場合(赤 の点線)と等しい。

1.5 1.0 0.5 0.5 1.0 1.5

0.00005 0.00010 0.00015

x(mm) I

図 5-4 仮定1における、カメラ上の強度分布(R=0.3mmの場合)

図 5-5 (青)仮定2における、カメラ上の強度分布(R=0.3mmの場合)

(赤の点線) 仮定1における、カメラ上の強度分布(R=0.3mmの場合)

1.5 1.0 0.5 0.5 1.0 1.5

1. 10 10 2. 10 10 3. 10 10 4. 10 10 5. 10 10

x(mm) I

37

・仮定3による計算

図 5-6 は光源の中心から発光された光、つまり点光源と仮定したときの強度分布をピン ホールの大きさを変えて比較したものである。初めの振幅はいずれもA=1で計算したが、

ピンホールの大きさを変えると最終的なピーク強度に違いがでる。しかし、干渉縞の間隔や、

単スリットによる回折の広がりはあまり変わらない。

・仮定4による計算

図5-7(青)は、光源の直径を0.8mmとして計算したときの強度分布である。予想3(赤)の

点光源と仮定したときの強度分布とほぼ同じ形である。(いずれもピンホールの直径は

R=0.3mmとした。)

図 5-6 仮定3における、カメラ上の強度分布(青R=0.3mm、緑R=0.8mm、赤R=2.0mm) x(mm)

I

1.5 1.0 0.5 0.5 1.0 1.5

2. 10 18 4. 10 18 6. 10 18 8. 10 18 1. 10 17 1.2 10 17

1.5 1.0 0.5 0.5 1.0 1.5

5. 10 19 1. 10 18 1.5 10 18 2. 10 18 2.5 10 18

図 5-7 仮定3における、カメラ上の強度分布

38 5-3.レーザーの実験結果

まず、レーザーを光源に用いたときの実験結果を示す。

レーザー光 (λ = 632.8nm)

・実験データ

ピンホール②の開口部の直径 R における、カメラの画像と、カメラの画像の明るさを数 値化し縦方向に射影したグラフ(カメラの横方向の距離に対する光の強度分布)を示す。

ピンホール

②の直径R

カメラの画像

横:3.2mm、縦:2.56mm

強度のデータ(縦に射影) 横軸:x(mm)、縦軸:強度 R = 0.3mm

R = 0.4mm

R = 0.5mm

R = 0.6mm

39 R = 0.7mm

R = 0.8mm

R = 1.0mm

R = 1.2mm

R = 1.5mm

R = 2.0mm

40

・解析結果

フィッティング関数をa (sin(𝑏𝑥−𝑐)

𝑏𝑥−𝑐 )2(1 + 𝑑𝑐𝑜𝑠(𝑒𝑥 − 𝑓)) + 𝑔として、カメラの横方向の距離 に対する光の強度分布のフィッティングを行った。フィッティングパラメーターは a,b,c,d,e,f,gである。

R = 0.3mm R = 0.4mm R = 0.5mm

R = 0.6mm R = 0.7mm R = 0.8mm

R = 1.0mm R = 1.2mm R = 1.5mm

R = 2.0mm

上のグラフは横軸がカメラの横方向の距離、縦軸が光の強度のグラフである。紫がカメラ の横方向の距離に対する光の強度分布のデータ、緑がフィッティングを行った結果得られ た関数である。

41

・回折の広がり

ピンホール直径R 回折の広がりwd

0.3mm 11mm

0.4mm 17mm

0.5mm 11mm

0.6mm 12mm

0.7mm 13mm

0.8mm 13mm

1.0mm 10mm

1.2mm 9.8mm

1.5mm 10mm

2.0mm 10mm

表 5-1 回折の広がりとピンホールの大きさについて(レーザー光) フィッティング誤差1.6~2.7%、校正誤差は1.0%である。

ピンホール②の直径R=0.4mmの回折の広がりは明らかに他のデータからはずれている。

レーザーの単スリット実験でも R=0.4mm の回折の広がりは大きな値になっていたので、

このピンホールは問題があると考える。また、白熱電球よりもレーザー光の場合にこの穴の 形のずれがよく反映されているのは、レーザー光は干渉性が高い光のためわずかなずれが 観測に影響する可能性が高いからであると推測する。よって、このR=0.4mmのデータは考 慮しないことにする。回折の広がりの平均は(R=0.4mmは除く) wd=11mmである。

図 5-8 回折の広がりとピンホールの大きさについて(レーザー光) 4

6 8 10 12 14 16 18 20

0 0.5 1 1.5 2 2.5

wd(mm)

R(mm)

回折の広がり

平均11mm

42

・干渉縞の鮮明度

ピンホール直径R 鮮明度V

0.3mm 0.84

0.4mm 0.65

0.5mm 0.76

0.6mm 0.81

0.7mm 0.69

0.8mm 0.53

1.0mm 0.78

1.2mm 0.82

1.5mm 0.75

2.0mm 0.79

表 5-2 干渉縞の間隔とピンホールの大きさについて(レーザー光) フィッティング誤差2.4%~4.6%、校正誤差は1.0%である。

レーザー光は干渉性の高い光源であるから、鮮明度は理想的にはピンホールの直径 R に 依存しないと推測した。しかし、ピンホールの直径 R=0.3mm~0.8mm では鮮明度がばら ついている。平均はV=0.74で、最高V=0.84、最低V=0.53である。R=0.8mm以下では レーザー光の強度が弱すぎるなどうまく強度調節ができなかったことや、ピンホールの穴 が正円ではないことが原因で鮮明度が下がった可能性がある。また、レーザー光は強度が強 いので反射光による迷光が多く、干渉縞の暗部の強度が 0 まで下がりきらなかった。この ことが、鮮明度がV =0.74となった要因と考える。

図 5-9 干渉縞の鮮明度とピンホールの大きさについて(レーザー光) 0

0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

0 0.5 1 1.5 2 2.5

V

R(mm)

鮮明度

平均0.74

43

・干渉縞の間隔

ピンホール直径R 干渉縞の間隔Δx

0.3mm 0.69mm

0.4mm 0.69mm

0.5mm 0.69mm

0.6mm 0.70mm

0.7mm 0.69mm

0.8mm 0.69mm

1.0mm 0.70mm

1.2mm 0.69mm

1.5mm 0.69mm

2.0mm 0.69mm

表 5-3 干渉縞の間隔とピンホールの大きさについて(レーザー光)

フィッティング誤差は 0.03~0.05%、校正誤差は 1.0%である。干渉縞の間隔Δxのフィッ ティング誤差も回折の広がり𝑤𝑑と同様に、Δx = |𝜕𝑥

𝜕𝑒| Δ𝑒が成り立つとし、Δx

x =Δ𝑒𝑒とする。

干渉縞の間隔は約Δx =0.69mm でほぼ一定であった。点光源と仮定したときの予想では

Δx =0.67mmであったので、2.8%のずれである。これは二重スリットからカメラまでの距

離でいうと約4.5mmの測定誤差である。二重スリット表面からCCDチップの表面までの 距離は2mmほどずれる可能性はある。あとはスリット間隔だが、スリット間隔0.15mmに

0.5 0.55 0.6 0.65 0.7 0.75

0 0.5 1 1.5 2 2.5

Δx(mm)

R(mm)

干渉縞の間隔

予想0.67mm 平均0.69mm

図 5-10 干渉縞の間隔とピンホールの大きさについて(白熱電球)

44

対して2%のズレは0.003mm(3.0µm)程度である。よって、スリット間隔が2%程度ずれて

いることも十分にありうる。

以上より、レーザー光の二重スリットの実験において、干渉縞の間隔はピンホール②の大 きさによらず一定であるということが確認できた。

45 5-4.白熱電球の実験結果

続いて光源を白熱電球にしたときの実験結果を述べる。

白熱電球の光 (λ = 650nm)

・実験データ

ピンホール②の開口部の直径 R における、カメラの画像と、カメラの画像の明るさを数 値化し縦方向に射影したグラフ(カメラの横方向の距離に対する光の強度分布)を示す。

ピンホール

②の直径R

カメラの画像

横:3.2mm、縦:2.56mm

強度のデータ(縦に射影) 横軸:x(mm)、縦軸:強度 R = 0.3mm

R = 0.4mm

R = 0.5mm

R = 0.6mm

46 R = 0.7mm

R = 0.8mm

R = 1.0mm

R = 1.2mm

R = 1.5mm

R = 2.0mm

47

・解析結果

フィッティング関数をa (sin(𝑏𝑥−𝑐)

𝑏𝑥−𝑐 )2(1 + 𝑑𝑐𝑜𝑠(𝑒𝑥 − 𝑓)) + 𝑔として、カメラの横方向の距離 に対する光の強度分布のフィッティングを行った。フィッティングパラメーターは a,b,c,d,e,f,gである。

R = 0.3mm R = 0.4mm R = 0.5mm

R = 0.6mm R = 0.7mm R = 0.8mm

R = 1.0mm R = 1.2mm R = 1.5mm

R = 2.0mm

上のグラフは横軸がカメラの横方向の距離、縦軸が光の強度のグラフである。紫がカメラ の横方向の距離に対する光の強度分布のデータ、緑がフィッティングを行った結果得られ た関数である。

48

・回折の広がり

ピンホール直径R 回折の広がりwd

0.3mm 5.6mm

0.4mm 6.2mm

0.5mm 5.8mm

0.6mm 6.9mm

0.7mm 7.4mm

0.8mm 9.2mm

1.0mm 9.0mm

1.2mm 13mm

1.5mm 9.0mm

2.0mm 22mm

表 5-4 回折の広がりとピンホールの大きさについて(白熱電球) フィッティング誤差0.64~8.9%、校正誤差は1.0%である。

ピンホールの大きさが大きくなるにつれて回折の広がりが大きくなっている。点光源だ と仮定した場合の回折の広がりの予想はwd=5.15mm であった。よって、ピンホール②の

直径 R=0.3mm~0.5mm は予想値に近い値を得た。それ以降の回折の広がりの増加につい

ドキュメント内 光の空間コヒーレンスと干渉性について (ページ 33-48)

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