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図 14-7
1 4.2. 4.exのテイラー展開
e
xの展開は( 1 + x / n )
nの一般化2項定理を用いてもできるが,ここではテイラー展開を用いてみよう.( )
xf x = e
とおくと,x=0 の周りでf (0) 1 =
f x ! ( ) = e
x
f ! (0) 1 =
:f !! ( ) x = e
x
f !! (0) 1 =
f !!! ( ) x = e
x f !!! (0) 1 =
:f
(4)( ) x = e
xf
(4)(0) 1 =
従って,
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
1 1! 2! 3! 4! 5! 6! 7! 8! 9! 10! 11! 12!
x
x x x x x x x x x x x x
e = + + + + + + + + + + + + !!
(14− 14)高次項までとって計算した結果を下図に示す.テイラー展開の結果はx=0の近傍でのみ正しいように思 えるが,高次項とともに一致する範囲が広がることがわかる.
(3)θ=π/3 のとき:
e
i!
3
= cos !
3 + i sin ! 3 = 1
2 + i 3 2
(4)θ=π/2 のとき:
e
i2i
!
=
(5)θ=π のとき:
e
i!= " 1
(6)θ=3π/2 のとき:
3 i2
e i
!
= "
これは複素平面に描いた半径1の単位円の1回転を表している.
図 14-9 この中でも
e
i!= " 1
(14− 15)は最も驚異的な公式と呼ばれる.なぜならば,e は無限につづく無理(超越数)で,
-1=2.7182818284590452353602874713526624977572470937000!!!!i3.1415926535897932384626433832795028841971693993751!!!!
無限につづく無理数(超越数)e の,無限につづく無理数(超越数)の複素数πi 乗が,-1 というきちんと した数になるからである.これらの関係を図の上にきわめて簡潔に表すことができるのもまた驚異である.
しかし,逆にもっと驚くべきことは,-1という単純な数字の中身が,実は上のように大変複雑で,奥が 深いということである.(-1)x(-1)が中学生にとって理解しづらいのは,実際には奥深い事実がある にもかかわらず,簡単に扱いすぎているからではないだろうか?(-1)x(-1)を理解させるには,よ り高度でかつ現実に近い複素数的な考え方を,わかりやすく教える必要があろう.
上の式は,また,
e
i!+ 1 = 0
(14− 15)とも書ける.アーネスト・ゼブロウスキー[14.2.]によれば,この式は数学で最も基本的な5つの数 ( 0, 1,
i, e, π) から成り立ち,それらが密接に結びついている.また,この式は,成長と衰退を表す e , 円の幾
何学を表す π),虚数 i,離散的な対象を表す 1 (コンピュータで用いる1,0の1の意味) の組み合わせ が全体として“0”(空,無)になり,何かしらこの宇宙の物理学的解釈に対応しているのではないかという ゼブロウスキー氏の考え方は大変面白い.
オイラーの公式は現代の科学の中で至る所で使われている.電気工学,物理,振動,三角関数いろいろ なものをつなぐ重要な公式である.
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14.4.複素数,オイラーの 公式,ベクト ルの図式関係
ベクトル,複素数,三角関数,オイラーの公式の間の関係を図で表してみよう.
14.4. 1. 複素数とオイラーの公式
一般に複素数は
z = x + yi
と表されるが,これをオイラーの公式で表すと,原点からの距離がr = x
2+ y
2 ,その角度(偏角)をθとすると,z = re
i! である.これはz = x
2+ y
2e
i!とも書ける.また,点 P(x,y)はベクトルrでも表せることがわかる.
!
"
#
$%&'()%*+
)!!
&
(
*
!
"
#
$%&'()
!
&
( * +,&-(.
図14− 10
[問題 14 − 1 ]
z = 2 + 2i
をオイラーの公式を用いて表せ.
1 4.4. 2. 三角関数とベクトル
三角関数は振動関数で多数の高次の非線形項からなっているが,線形としての性質を持っている.また ベクトルで表すこともでき,ベクトルの合成もできる.何故なら,オイラーの公式から得られる
sin(x),cos(x)
cos ( ) x = e
ix+ 2 e
!ixi sin ( ) x = e
ix! 2 e
!ixは,下図に示すように,
eixは偏角 x,絶対値1の複素数であると同時に,(cos(x),sin(x)) の成分を持つベクトルである.
e-ixは偏角-x,絶対値1の複素数であると同時に,(cos(x),-sin(x))の成分を持つベクトルである.
従って,図14− 11 に示すように cos(x), sin(x)はこれらのベクトルの合成で表すことができる.
!
eix =cosx+isinx
e
!ix= cosx ! isin x
"
#"
cos
( )
x =eix+e!ix2
!
eix =cosx+isinx
e
!ix= cos x ! isin x
"
#"
isin
( )
x =eix!e!ix 2図 14-11
結局,ベクトルには加法性があるので線形性があり,それを構成する cos(x), sin(x)には線形性があるとい