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主な協力事例

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第3章  JICAの協力の方向性

付録 1. 主な協力事例

JICA

では、政府の方針等を踏まえつつ、①中央政府だけでなく住民に近い地方政府へも協力を行う、

②日本の経験を生かしつつ都市の住民サービスを向上する、③廃棄物から生じる、衛生の悪化と環境汚 染の可能性を低減する、という観点から、開発調査、技術協力プロジェクト、個別専門家派遣、ボランティ ア派遣、研修員受け入れ、草の根技術協力事業、無償資金協力、有償資金協力等を通じ、広範に協力 を行ってきた。

本分野の取り組みに係る分析については、主に 1992 年までの実績をまとめた『開発途上国都市廃棄 物管理の改善手法』(1993 年)、1993 年以降

2004

年頃までの協力について分析した『開発途上国廃棄 物分野のキャパシティ・ディベロップメント支援のために』(2005年)、また旧

JBIC

の廃棄物分野の取り組 みについては『JBIC 円借款による廃棄物分野への支援−現状と実績:より良い生活環境の実現に向け て』(2005年)等があるので参照されたい。 

 

1−1  スキームごとの近年の傾向 

近年の動向としては、スキーム間の連携が進み、いわゆるプログラム的なアプローチが推進されている が、便宜的に主なスキームごとの最近の傾向を下記に取りまとめた。 

 

(1) 開発調査 

開発調査は、原則的には計画段階の支援であり、M/Pの策定と

F/S

の実施が基本的な構成要素 であったが、さらに昨今は短期的な

A/P

の策定も実施してきている。

開発調査事業は、長年にわたり、JICA の廃棄物分野の協力の主体として、ほぼ全地域にわたり 数多くの調査を実施してきたが、近年では、開発調査での廃棄物分野の協力は急速に減少してきて いる。多くの主要な都市・地域に対しては開発調査による

M/P

づくりがすでに実施されていること、よ り短期的な成果が求められるようになってきていること、民間コンサルタント等との業務実施契約によ る技術協力プロジェクト(民活技プロ)の導入により、対処能力強化に係る案件は技術協力プロジェク トで実施することができるようになったこと等が主因として考えられる。

 

(2) 技術協力プロジェクト 

2002

年度の技術協力プロジェクト導入以前は、プロジェクト方式技術協力として産業廃棄物にか かる

2

件の実績しかなかったが、技術協力プロジェクト導入以降、研修主体のもの、短期専門家を中 心とするもの、開発調査で対案した

M/P

の実行を支援するもの等、さまざまな規模のものが実施され るようになった。

具体的には、フィリピンにおける廃棄物行政の支援、ベトナムの

3R

支援、開発調査をフォローす る形でのバングラデシュ、パナマでの廃棄物管理能力強化のためのプロジェクト、パキスタンの最終 処分場改善を主眼とするプロジェクト、パラオでの廃棄物減量化、最終処分場改善のための支援、

サモアにおける大洋州全域を対象とする廃棄物適正管理に係る広域プロジェクト、スリランカにおけ る全国廃棄物管理支援センターの能力向上プロジェクト、エルサルバドル、パレスチナでの広域処

理体制の強化を主眼とするプロジェクト、チリ、ブラジル等環境教育を主体とする小規模プロジェクト、

メキシコでの

3R

政策支援のプロジェクト等、多岐に及んでいる。

JICA

独自の人選や地方自治体の協力を得て実施しているプロジェクトもあるが、大部分はコンサ ルタントとの業務実施契約による民活型のプロジェクトである。

 

(3) 個別専門家派遣 

長期の個別専門家の派遣は、これまでインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、サモ ア、ブラジル、メキシコ、チュニジア、ケニヤ、サウジアラビア、バーレーン、トルコ等で幅広く行われ、

廃棄物事業全般、技術支援、運営改善、人材育成、組織制度改善、ごみ教育、民営化支援等の分 野で成果をあげてきたが、近年では、中国の循環型経済推進をテーマとする専門家の派遣を除くと、

2004

年のサモアを最後に実施されていない。これは、重要性の変化ではなく、技術協力プロジェクト の導入、民間コンサルタント等との業務実施簡易型契約の導入による短期専門家(単独もしくはチー ム)の派遣等に代替されてきているということができる。

 

(4) ボランティア派遣 

大洋州、中南米、あるいはアフリカや南西アジア等において、公衆衛生、環境教育隊員として、あ るいは村落開発普及員として、廃棄物教育や意識啓発、リサイクル促進等の分野で幅広く活動を行 っている。廃棄物管理分野の

JOCV(青年海外協力隊)あるいは SV(シニア海外ボランティア)も限

定的ではあるが派遣実績がある。

 

(5) 研修員受入れ 

本分野では集団、地域別、国別の本邦研修の他、第三国研修、現地国内研修等広く行われてい る。特に近年では、廃棄物の減量化・再資源化等

3R

にかかるテーマの研修が増えている。また、特 に国別研修では、技術協力プロジェクトや専門家派遣、開発調査と連携した形で行われる例も多い。

中国の循環型経済推進については、個別専門家派遣、現地国内研修及び本邦研修が連携した形 で進められている。

 

(6) 草の根技術協力

草の根技術協力事業においては、地方自治体からの提案による「地域提案型」による案件が継 続的に実施されており、日本と開発途上国の地方自治体の間で、廃棄物処理計画策定支援、廃棄 物処理技術の向上、廃棄物管理に関する意識向上、 3R の推進といった分野で、協力が行われてい る。また、草の根技術協力事業の案件採択を検討するうえで、開発課題との整合性や協力プログ ラム上の位置付けも考慮することとしている。 

 

(7)  無償資金協力 

無償資金協力では、収集機材(コンパクタ・トラック、ダンプトラック、コンテナ車等)や最終処分場 用の重機(ホイールローダー、ブルドーザー等)の供与等を行っている。最終処分場建設に対する 支援は、ラオスやモンゴル等限定的ではあるが実施してきている。

(ごみ収集車等)を開発途上国に供与した事例もある。この場合は、機材の活用、維持管理等、現地

での支援体制が重要となる。

 

(8) 有償資金協力 

本分野における、有償資金協力の実績としては、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム、インド、

ブラジル、中国等が挙げられる。内容は、都市廃棄物処理システムの改善、インフラ整備、廃棄物収 集車両等の関連資機材調達、中間処理施設や最終処分場等の施設整備等のハード面への協力と、

これらハード面の取り組みを支援する人材育成、組織能力強化、財政基盤強化、環境教育等をコン サルティングサービスという形で実施するソフト面への協力が行われている。 

 

<帰国研修員の活用事例> 

スリランカ 

  スリランカには、これまで

JICA

の課題別研修、国別研修、カウンターパート研修に参加した帰国 研修員が廃棄物管理関連分野において

80

名以上いる。2008年

3

4

日に開催された帰国研修 員対象のワークショップ(Workshop for JICA’s Ex-participants of Training Courses related to Solid

Waste Management)では、各研修員が日本での研修時に策定した A/P

の発表や、帰国後の実践

に関する経験交流や意見交換を行い、今後のスリランカ全体としての廃棄物管理事業の改善につ いて討議を行った。発表の中で、グッド・プラクティスとして、以下の

4

段階の発展が共通して認めら れた。

1) 日本における研修にもとづき

A/P

を策定する段階。研修員個人が講義や視察によって知識や 知見を獲得し、それにもとづき自国での廃棄物管理事業を自分なりに評価し、自分の力の及 ぶ範囲内での改善計画を

A/P

として策定する段階。

2) 帰国後、同僚や上司、上位の意思決定者に研修成果と

A/P

をセミナーや報告会にて発表・説 明し、フィードバックを受ける段階。この段階で、上位の意思決定者に適切に伝えることができ た場合、次の段階の具体的アクションが起こしやすくなり、また実施予算や機会の獲得が容易 となる。

3) 日本で作成した

A/P

を再検討し、追加調査や具体的な情報取得をもとに、具体的な

A/P

に改 訂し、その実行計画、実行体制を作る段階。この段階では、上司や意思決定者の同意を得て 業務としての活動となっており、一種の簡易

F/S

の段階である。

4) 改訂された

A/P

の実施段階。

上記の

2)から 4)の段階での現地におけるフォローアップのあり方を検討することが今後の課題

である。特に 

2)については、A/P

を生かすかどうかの決定的意味をもつが、今回のワークショップ のような取り組みもひとつの機会となり、比較的上級の帰国研修員による報告を必要に応じて取り 込んでいくことも有効であろう。帰国研修員のネットワークは今後のスリランカの廃棄物管理事業の 改善、プロジェクトの波及効果を図っていく上できわめて重要な人的リソースである。また、帰国研 修員をこのように分野別に組織し、単なる親睦を越えて組織化していくことは、他国の例に鑑みて も新しい試みであり、研修効果の最大化や継続性を図っていく上で大変重要な取り組みである。

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