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第1節 中国の初等理科教育の特徴
終章 本研究の総括と今後の課題
2.中国の初等理科カリキュラムの特徴について(第2章)
中国の初等理科カリキュラムの特徴を明らかにするために、中日の初等理科カ リキュラムの構成を「目標」, 「内容」、 「授業時数」, 「評価の観点」の4つの視点 から比較を行った。その結果、以下のことが明らかになった。
①目標には、両国とも知識面,技能面、情意面に関する目標が含まれている。
②内容において,内容の量は、中国のものは日本のものより多いが、各分野の学 習項目の割合は両国ともによく似ている。そして,内容の範囲は,中国の方が
日本より広い。
③理科の授業時数は、中国の方が日本より少ない。そして,教科総授業時数に対 する理科授業時数の割合は,中国の方が日本より低いo
④評価の観点については、両国とも「知識」と「実験技能」の評価の観点が含ま れている。しかし、日本の「関心・意欲・態度」と「科学的思考」についての 評価の観点は中国にはない。
以上のことから,中国の初等理科カリキュラムの特徴を,以下の4点に整理し たD
i.中国の初等理科カリキュラムは目標に認知面、技能面,情意面が含まれてい る。
近.中国の初等理科カリキュラムは内容が多く、広範囲にわたっている.
ih.中国の初等理科カリキュラムは内容が多いにもかかわらず,授業時数は少な い。
iv.中国の初等理科カリキュラムは「知識」と「実験技能」のみを重視する傾向 にある。
3.中国の初等理科学習指導法の特徴について(第3章)
中国の初等理科学習指導法の特徴を明らかにするために,まず,中国の初等理 科学習指導法の特徴を,中日それぞれの学習指導案の比較から明らかにすること
にした。また、初等理科学習指導法に対する教師の実際の意識を併せて検討する ために,小学校教師に対して,理科学習指導法に関する実態調査を行った。
(1)初等理科学習指導案の分析
中国の初等理科学習指導法の特徴を・明らかにするために、両国で共通の学習項 目が多い電磁気領域から、 「豆電球と乾電池のつなぎ方」、 「電気回路」、 「電磁石」
の3つの項目を抽出した。この3つの項目に関する中日の学習指導案の比較にお いては、まず、学習指導の目標,計画を概観した。次に,両国の学習指導案の学 習指導過程を分析し、比較を行った結果、以下のことが明らかになった。
① 「導入‑実験及び結果‑結論」という学習指導過程は,両国で共通である。
②日本の学習指導では、子どもを中心にする傾向があるのに対して、中国の学習 指導では、教師主導の傾向がある。
③日本の学習指導は、実験の過程を重視し,子どもの考え方を大切にして,科学 的な見方や考え方に変容できるようにしているのに対して,中国の学習指導は, 実験の結果を重視し,知識を習得させるようにしているo
④日本の学習指導は、子どもに既習の内容と新しい内容を関連づけることによっ て単位時間同士の内容の関連づけを重視している。中国の学習指導は,各単位 時間の学習指導が単独で、知識や実験の結果を子どもに繰り返し覚えさせ、習 得させるようにしているo
これらの結果より,中国の初等理科学習指導法の特徴は、以下の3点に整理し
k.
i.理科教育の目的において、知識を習得させることを重視する傾向がある。
正.授業構成において,教師主導の授業を行う傾向があるo
ih.観察・実験の取り扱いにおいて、実験結果を重視する傾向があるo
(2)初等理科学習指導法に関する実態調査
初等理科学習指導法に対する教師の実際の意識を併せて検討するために、理科 教育の目的、授業構成、観察や実験の取り扱いという3つの側面から実態調査を 行った。
終章 本研究の総括と今後の課題
本調査の実施においては、上述の3つの側面から次の7要素を設定した。それ らは,理科教育の目的の側面においては, ①知識, ②実験技能, ③思考や興味の 3要素、授業構成の側面においては、 ④子ども中心, ⑤教師主導の2要素、観察・
実験の取り扱いの側面においては, ⑥実験結果, ⑦実験過程の2要素であった。
この設定した7要素に関して調査項目を作成し,調査を実施した。そして,項 目の妥当性と信頼性を検討したo次に、中日の差異を検討するために,各要素間 の関係をSEMを用いて検討した結果、以下のようになった。
各要素間の関係に関する結果
○共通点
①教師主導の授業の考え方が,知識を重視する考え方や実験結果を重視する考え 方に影響がある。
②子どもを中心にする授業の考え方が,思考や興味を重視する考え方や実験過程 を重視する考え方に影響力SLあるo
O差異点
①中国では,教師主導の授業の考え方が,思考や興味を重視する考え方に影響し ていない。しかし,日本では、思考や興味を重視する考え方に負の影響があるD また、中国では、教師主導の授業の考え方が,実験技能を重視する考え方に影 響しているo しかし、日本では、そのような影響がみられないo
②中国では,子どもを中心にする授業の考え方が,思考や興味を重視する考え方 や実験過程を重視する考え方に影響がある他に、知識を重視する考え方に影響
があるo しかし,日本では,知識を重視する考え方にやや負の影響があるo 上述の比較結果より、中国の初等理科学習指導法においては,教師主導、子ど も中心のどちらの立場においても,知識を重視する傾向があることが明らかにな った。
(3)学習指導案の分析と実態調査のまとめ
初等理科学習指導案の分析と初等理科学習指導法に関する教師の実態調査を行 った結果,中国では理科の知識を重視するという傾向が両分析において見出され た。
4.中国の初等理科学力に影響する潜在要因構造の特徴について(第4章)
中国の初等理科学力に影響する潜在要因構造の特徴を明らかにするために、中 日における初等理科学力に影響する潜在要因の調査を行い、その構造の比較を行 った。初等理科学力に影響する潜在要因としては、 Reynolds&Walberg (1991) の研究をもとに, ①保護者のサポート, ②学級環境、 ③理科学習の積極性、 ④友 人環境、 ⑤学校外の学習時間, ⑥保護者の科学に対する関心、 (丑保護者の理科授 業‑の期待の7要因を設定した。この設定した要因に応じて調査項目を作成し, 調査を実施した。そして,各要因と学力の関係をSEMを用いて明らかにした。
その結果、次の2点が明らかになった。
①子どもの学力には、子どもの理科学習の積極性が影響し,学校外の学習時間は 影響していないことは両国において共通である。また、日本では,学級環境が 影響している。
②子どもの理科学習の積極性には,保護者のサポート、友人環境が影響している ことは両国において共通である。また,中国では、保護者の科学に対する関心 が影響しているのに対して、日本では,保護者の理科授業‑の期待が影響して いる。
この結果より,中国の初等理科学力に影響する潜在要因構造の特徴は,以下の 2点に整理した。
i.学力には,子どもの理科学習の積極性が影響し、学校外の学習時間は影響し ていない。
正.学力には、学級環境、保護者の理科授業‑の期待は影響していないo
Ⅱ.中国の初等理科教育の特徴
前項で述べた本研究の総括から,中国の初等理科教育の特徴は,以下の4点に まとめた。
終章 本研究の総括と今後の課題
1.中国の初等理科学力の現状
学力の構成要素を、知識Ⅰ、知識Ⅱ、実験技能という3つの観点からとらえ、
学力調査を行った結果,中国の初等理科学力のうち、知識Ⅱや実験技能は、日 本と同程度にあるとはいえないことが明らかになった。
2.中国の初等理科カリキュラムの特徴
初等理科カリキュラムを目標,内容,授業時数、評価の観点という4つの視 点から分析した結果,中国では学習内容が多いにもかかわらず授業時数が少な く、また,評価の観点においては「知識」と「実験技能」を重視していること が明らかになった。
3.中国の初等理科学習指導法の特徴
初等理科学習指導案について,学習指導過程を中心にして分析するとともに、
初等理科学習指導法に対する教師の実際の意識を併せて検討することから,中 国の初等理科学習指導法の特徴を検討した結果,中国においては知識を習得さ せることを重視することが明らかになった。
4.中国の初等理科学力に影響する潜在要因構造の特徴
初等理科学力に影響する潜在要因構造の検討においては、 ①保護者のサポー ト, ②学級環境, ③理科学習の積極性, ④友人環境, ⑤学校外の学習時間、 ⑥ 保護者の科学に対する関心, ⑦保護者の理科授業‑の期待という7要因を用い て調査を行った。その結果、中国の潜在要因構造において,学力には,子ども の理科学習の積極性が影響し,学校外の学習時間は影響していないこと、及び 学力には、学級環境,保護者の理科授業‑の期待は影響していないことがそれ ぞれ明らかになった。