ため、例外的に、専門家または情報提供者(
Auskunftspersonen
)は、個別 の問題に関する助言(Beratung)をするために、委員会の会議に参加するこ とができる(株式法109条1項2文)。もっとも、既述のように、各委員会は、すべての問題に対して助言することはできない。また、専門家の任命は、監 査役会の決議によらなければならず、個別の委員会の構成員のみによって決 定することはできない157)。これに加え、同じ専門家に繰り返し委託するこ とは、会社との利益相反を生じさせるおそれがある。それゆえに、同じ専門 家が長期間関与することは認められない158)。
これに対し、情報提供者は専門家と異なり、専門性は特に求められるもの ではない。たとえば、ある者は、会社の特定部門に長期的に勤務をし、その 部門を熟知している者は、その情報が委員会の監督にとって有用であれば、
当該委員会の会議に参加することができる。その情報提供者の範囲は、会社 外部の者、会社の従業員などが含まれる159)。
委員会に監事が関与することで、董事会の妥当性監督までも行っている。し かし、このような実務の手法に対しては、内部審査委員会は、董事会の下の 機関であり、董事会からの影響を受け、客観的に妥当性監督ができるかどう か疑問も示されている。
日本法では、監査役は、取締役・取締役会による内部統制システムの整備 および運用に対する監査を実効的に行うことが期待されている。そのため、
内部統制システムは、監査役の監査が実効的に行われることを確保する上で も重要なものであるので、当該体制の整備についての取締役の決定・取締役 会の決議の内容または体制の運用状況が相当でないと認めるときは、監査役 は、監査報告にその旨およびその理由を記載しなければならない(施行規則 1項5号)。このように、監査役・監査役会は、内部統制システムに対する 監査権限が与えられている。
中国においても、会社の経済的資源の安全性および完全性の確保を目的と したシステムが要求されるようになった(内部審査システムという)。これは、
日本の内部統制システムに相当するものである。監事の人的資源は限られて いることから、内部審査システムを通じた監督を行うことが有用である。そ うであれば、日本と同様に、そのシステムについて、監事に監督権限を与え ることで、董事・董事会による適正なシステムの構築・運用に資することが 期待できる。
なお、日本法では、会社が構築すべき内部統制システムの内容が法定され ている。さらに、日本監査役協会の監査基準では、内部統制システムの監査 に関する具体的指針が定められている。もっとも、中国では、法律上、内部 統制システムに関する具体的な指針を定める規定は存在しない。先に述べた 内容統制システムに関する日本法の規定(監査基準13条2項の2および21条 2項の2)を参考に、「監事会は、董事会による適切なリスクテイクを支え る環境整備を行っているかどうか」、および「董事会が内部審査システムを 構築・運用しているかどうかという点を監督しなければならない」などと規 定されることが有用である。
第2節 監事・監事会の監督権限161)
1 董事の選任・罷免
中国法では、監事会は、董事を選任する権限を有していない。日本の監査 役会も同様である。これに対して、ドイツでは、監査役会に取締役の選任権 限が与えられている。中国と日本では、「平行2元制度」のガバナンスの仕 組みが採用されている。すなわち、監査役会と取締役会との関係は並列関係 にある。これに対し、ドイツの「垂直2元制度」は、監査役会が取締役会の 上位機関として存在し、監査役会が取締役の選任権限を有している。中国の 監事・監事会は、董事を指導する権限までは有していない。したがって、「平 行2元制度」のガバナンスの仕組みを維持しつつ、監事会に董事の選任権限 を与えることは妥当ではない。
また、中国の監事会は、董事の罷免に関する意見を株主会に提出する権限 を有する(中国会社法53条2項後段)。もっとも、当該権限は、意見の提出 にすぎず、実際に監事会の意見に従って董事を解任するか否かの判断は、株 主会に依拠することになる。これに加え、中国では、董事と株主会との関係 が強いため、監事会が董事に一定の圧力をかけるという機能を果たすことが できなくなるという問題がある。他方で、日本法においても、監査役会は、
取締役の解任が与えられていない。しかし、業務監査に関する監査役の監査 報告には、取締役の職務の執行に関して不正の行為または法令・定款に違反 する重大な事実があったときは、その事実を記載しなければならないとされ ている(施行規則129条1項3号)。中国法でも、監事会が、株主会に董事の 罷免意見を提出する場合に、その董事の罷免理由の報告も提出することを要 求すべきである。その場合に、監事は、当該報告において、董事が職務に関 して不正の行為または法令・定款に違反する重大な事実を記載すべきである。
監事による董事の不正行為等に関する報告は、監事会が董事の業務の執行に
161) 本稿における問題の各国の法制度について、中国法(232-235頁)、日本法(242-248頁)、
ドイツ法(253-260頁)を参照。
対する監督を十分に行い、その任務を履行している証明にもなり得るもので ある。このような制度を導入することで、監事会による董事の監督はより一 層機能するものと考えられる。
2 董事の職務の監督
1) 監事・監事会の事前監督
中国の監事・監事会には、董事会会議への列席権および質問・意見の提出 権がある。しかし、前述のように、「列席または質問・意見の提出」は、権 利として規定されている。そのため、それに違反したとしても、任務懈怠に よる損害賠償責任を負わない。
これに対し、日本法では、監査役は、取締役会に出席し、必要があると認 めるときは、意見を述べなければならないとされている(日本会社法383条 1項前段)。実際に、日本の会社では、監査役は、取締役会で自ら積極的に 意見を述べている、あるいは取締役会の議長から求められた場合に意見を述 べているという調査結果も存在する162)。この結果から、中国では、監事・
監事会の董事に対する事前監督の機能を強化するため、監事による董事会へ の列席および意見陳述権の行使を義務化すべきであると思われる。このよう な義務化により、それを怠った場合、任務懈怠として損害賠償責任を負わな ければならなくなる。これにより、監事による監督がより実効性のあるもの になると思われる。
2) 監事・監事会による董事会の経営活動の監督
中国法では、監事・監事会は、董事に質問し、もしくは調査する権限を有 する(仕事指針15条・16条1項・33条・34条)。しかし、このような権限の 行使は、あくまで仕事指針において定められているに過ぎないため、監事・
162) 2020年の調査結果は2019年の調査と比較すれば、(2019年の調査により、13.2%(議長から 求めに応じての発言)から15.7%に、92.5%(議長から求めに応じての発言)から92.9%に引 き上げた)監査役の発言の比率が高まることになることがわかる。
監事会には、当該権利を行使するインセンティブがない。また、監事・監事 会の調査権を行使する前提条件は、「会社の経営について異常を発見するこ と」である。しかし、当該前提条件の範囲は、明確ではない、また仕事指針 が具体的な内容を定めていないことから、当該権限の行使は容易ではない。
これに対して、日本法では、監査役はいつでも、取締役などに対して事業 の報告を求め、または会社の業務および財産の状況を調査することができる
(日本会社法381条2項)。このように、監査役による調査権限の行使について、
制定法上の根拠がある。さらに、監査役は、その監査の結果に関する報告書 を作成しなければならない(日本会社法381条1項後段)。監査役会は、各監 査役の報告を監査役会の名前で作成しなければならない(日本会社法390条 2項1号)。その監査役報告書を、取締役会に経由で、株主総会へ提出しな ければならない(日本会社法437条)。
中国法については、日本法の内容を踏まえて、以下のような改正を行うべ きである。まず、監事・監事会の監督権限の行使を強行法に基づくものにす べきである。また、監事・監事会に当該調査権限を行使するインセンティブ を与えるため、監事会に報告書(事業監督および財務検査)の作成を義務づ ける。この報告書の内容については、日本の監査報告のひな型を参考に、た とえば、各監事は、会社の内部部門と意思疎通を図り、情報の収集および監 督の環境の整備に努めるとともに、董事会の会議に列席し、必要に応じて説 明を求めたかどうかを記載し、また、董事の職務の執行に関する法令、定款 または仕事指針に定められている項目にしたがって監督した内容を記述し、
さらに、董事のその行為は、法令、定款または仕事指針に違反するかどうか の結論を記載させることを提案したい。
また、日本法では、出席した監査役は記事録に署名し、または記名押印し なければならないとされている(日本会社法369条3項)。そのため、当該記 事録は、監査役による権限行使の証拠になるため、監査役が、株主代表訴訟 により、責任を追及される際に、免責証拠の機能もある。中国法でも、董事 会は、董事会へ出席した董事の発言を会議記録に記録しなければならない(中