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世論調査における郵送とインターネットの併用方式

ドキュメント内 世論調査における方法的研究 (ページ 78-148)

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第5章 異なる調査方法による調査結果の差異

世論調査においては,従来,複数の調査方法による併用調査は適切ではない といわれてきた.調査方法が違えば,その調査方法の影響により回答の差異が 生じるからである.この章では,調査方法の違いによる回答の差異とはどうい うものかを明らかにしたい.そのうえで,世論調査における併用調査の可能性 を探るための道筋を先行研究などをもとにたどっていく.

1.自記式調査と他記式調査の違い

世論調査においては,調査方法の違いによって回答が異なる場合があるため,

それを避けるために単一の調査方法で行うことを原則としている.したがって 複数の調査方法を併用して行われた世論調査の例はほとんどなく,特に面接法 と郵送法の併用調査はまったくないと思われる.ここで「併用」ではないが,

面接法から郵送法を含む他の調査方法へと変更した東京都八王子市の世論調査 の事例22をもとに,調査方法の違いによる回答の差異をみてみる.本章では,調 査方法の違いによってどのような回答の差異が生じるのかを明らかにしたい.

八王子市では,1969年から毎年20歳以上の市民を対象に世論調査を実施して きた.1996年までは面接法により実施されてきた調査は,1997年から郵送訪問 回収法23に切り替わり,さらに2001年からは郵送法へと切り替わった.本章で は,郵送訪問回収の4年間と,その前後それぞれ4年間の面接法ならびに郵送 法によって実施された調査結果について紹介する.

表5-1は調査方法と回収状況を示したものである.

回収率をみると,面接法では72~78%(平均75.4%)であったが,郵送訪問 回収法になると2000年を除いて8割前後(平均79.4%)となっている.郵送訪 問回収法により,面接法で調査員に会うよりも調査票が対象者本人の目に届く ことが多くなり,さらに家族からも回収ができることから回収率を上げたもの と思われる.これが郵送法になると,「6割台→5割台→4割台」と低下してい くことになる.

調査不能24の内訳をみると,面接法と郵送訪問回収法の比較では「拒否」が2000 年にやや多いもののほぼ同じ割合となっている.一方,「不在」は郵送訪問回 収法の方が少ない.この「不在」の少なさが回収率の上昇につながっている.

22 八王子市発行の市政世論調査結果報告書(八王子市,1993~2004)による.

23 調査対象者に調査書類を郵送し,後日調査員が回収のため訪問する方式.

24 郵送法の場合,調査不能の理由は不明なので,不能内訳の分類はない.

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表 5-1 八王子市の世論調査における調査方法と回収状況 不能内訳(%)

年次 標本数 回収数 回収率 (%)

転居 長期 不在

不在 住所 不明

拒否 その 1993 1300 1010 77.7 2.5 2.2 10.7 0.4 4.8 1.7 面接法 1994 1300 1002 77.1 2.3 2.4 10.9 0.4 5.1 1.8 1995 1300 969 74.5 2.2 2.0 15.5 0.3 4.7 0.8 1996 1300 938 72.2 2.9 2.2 15.0 0.7 5.9 1.1 平均 75.4 2.5 2.2 13.0 0.5 5.1 1.4 1997 1300 1037 79.8 2.5 1.4 8.7 0.8 5.5 1.3 1998 1300 1068 82.2 1.8 0.8 9.3 0.2 4.8 0.9 1999 1300 1085 83.5 2.0 1.5 7.4 0.4 4.4 0.8 2000 1500 1081 72.1 2.7 2.1 11.2   - 8.8 3.1 平均 79.4 2.3 1.5 9.2 0.4 5.9 1.5

2001 3000 1805 60.2 郵送法 2002 3000 1742 58.1 2003 3000 1717 57.2 2004 3000 1459 48.6

平均 56.0

郵送訪問 回収法

注)不能内訳の「長期不在」は長期の海外出張などの場合,「不在」は何度訪問しても会え ないことを意味する.

2001年からは郵送法に切り替えられた.郵送法に替えることで標本数を増や し一定の回収数を確保しようとしたもので,その結果,それまでの郵送訪問回 収法と比べ一挙に7割近くの回収数の増加となった.しかし,回収率(平均)

は56.0%と,郵送訪問回収法と比べて2割以上低下している.

回収率が低下したことにより,回収標本の標本構成はどうなったかをみてみ よう.表5-2は面接法の1993年と郵送訪問回収法に切り替えた1997年,なら びに郵送法に切り替えた2001年の性・年齢別の回収標本の構成比である.これ をみると,2001年では1997年と比べ男性の20代,30代および女性の20代の 割合が減少し,男性の60代以上の割合が大幅に増加している.郵送法における 回収標本の構成は,このように若年層の減少と高齢層の増加という偏りとなっ て表れている.

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表 5-2 八王子市の世論調査における性・年齢別標本構成(調査方法別) (%)

年次 (調査方法)

20

30

40

50

60上

20

30

40

50

60上

1993(面接法) 11.6 7.5 11.3 8.4 9.8 9.5 8.9 12.9 10.3 9.8

1997(郵送訪問回収法) 10.6 9.5 8.4 11.3 9.5 10.7 7.3 11.0 10.2 11.5

2001(郵送法) 7.0 6.8 7.9 11.3 14.0 8.7 10.1 10.1 11.1 13.1

次に,質問に関する調査結果についてみてみよう.市政世論調査においては,

この12年にわたって聞き続けている質問は限られている.継続して質問してい るのは「定住意向」と「生活環境評価」である.

まず,定住意向(表5-3)については,「ずっと住み続けたい」という回答 が,面接法のときは1994年から1996年まで6割前後で安定している.(1993 年は質問文が違っており25,そのためか68%とやや高くなっている.)ところが,

面接法と比べ郵送訪問回収法では「ずっと住み続けたい」が各年とも4割前後

(4年間の平均が41.8%)と激減する.郵送法になると「ずっと住み続けたい」

が,2002年以降では数ポイントアップする(平均44.5%)が,依然4割台のま まである.

表 5-3 定住意向(調査方法別) (%)

調査方法 年次 ずっと住み 続けたい

当分は住み

たい 移りたい わからない

1993 68 13 12 7

面接法 1994 58 33 7 2

1995 61 30 5 4

1996 62 29 6 4

平均 60.3 30.7 6.0 3.3

1997 39 46 14 1

1998 43 42 15 0

1999 44 43 13 0

2000 41 44 13 2

平均 41.8 43.8 13.8 0.8

2001 41 44 15 1

郵送法 2002 46 41 11 2

2003 45 42 12 1

2004 46 42 11 1

平均 44.5 42.3 12.3 1.3 郵送訪問

回収法

注)平均は小数第1位まで示してあるが,各年次の比率は整数値で示してある.

25 定住意向に関する質問は「あなたはこれからも八王子市に住み続けたいと思いますか」であ るが,1993年は「あなたは今後も今のところに住み続けたいと思いますか」と質問している.

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次に,生活環境評価についてみてみる.1993年は質問していないが,1994年 以降毎年,15項目の生活環境に対する評価と,全体としての「住みやすさ」に ついて同じ質問をしている.(調査方法に応じて回答の仕方に関するワーディ ングは違うが,質問の意味と回答区分は変わらない.回答区分は「良い」「や や良い」「普通」「やや悪い」「悪い」の5項目.)その結果(「良い」の回 答率)については表5-4に示したとおりである.これをみると,面接法の場合 の「良い」の評価(平均)が,郵送訪問回収法になると全項目において減少す る.この平均値を比較した場合,特に減少の幅が大きいものは「緑の豊さ」(平 均値で15ポイント減少)と「大気汚染」(同14ポイント減少)である.

このような大幅な回答比率の減少は,実際に地域の環境の変化によって生じ たのか,それとも他の原因によるものなのかは八王子市の報告書では触れてい ない.

表 5-4 生活環境評価「良い」の回答率(調査方法別) (%)

調査方法 面接法 郵送訪問回収法 郵送法

年次 94 95 96 平均 97 98 99 00 平均 01 02 03 04 平均 日当たり 56 65 58 59.7 52 51 47 51 50.3 53 53 53 52 52.8 大気汚染 24 36 33 31.0 20 17 16 14 16.8 16 19 19 22 19.0 騒音 22 31 26 26.3 19 19 17 15 17.5 19 20 20 21 20.0 災害安全 22 21 21 21.3 14 12 13 13 13.0 13 16 14 14 14.3 下水 31 41 36 36.0 27 26 23 25 25.3 30 31 32 30 30.8 し尿 34 45 39 39.3 31 27 28 28 28.5 33 35 36 33 34.3 ごみ 21 34 31 28.7 21 18 16 19 18.5 22 24 25 23 23.5

防犯 17 25 20 20.7 9 9 7 8 8.3 8 9 8 * 6.3

病院 11 13 12 12.0 5 6 5 6 5.5 5 8 8 13 8.5

集会施設 16 23 19 19.3 7 9 8 8 8.0 9 12 11 11 10.8 公園 21 28 24 24.3 11 14 11 14 12.5 16 16 14 13 14.8 道路 18 24 24 22.0 12 12 11 12 11.8 15 16 14 14 14.8 46 54 47 49.0 32 38 31 34 33.8 35 36 35 33 34.8 交通の便 24 29 29 27.3 15 17 16 15 15.8 16 19 18 18 17.8 交通安全 11 17 15 14.3 6 7 5 7 6.3 8 8 10 8 8.5 全体 21 24 22 22.3 10 14 11 12 11.8 11 12 12 13 12.0

注)平均は小数第1位まで示してあるが,各年次の比率は整数値で示してある.

04年は「防犯」がない.なお,93年はこの質問をしていない.

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八王子市の事例からは,明らかに面接法,郵送訪問回収法,郵送法のそれぞれ の調査方法に特有の回答傾向がみられた.ここでは,それらの3方法による回 答傾向の違いを比較するのではなく,他記式と自記式の回答を比較するために,

他記式である面接法から自記式である郵送訪問回収法に変更した部分に注目し,

2つの調査方法の間の回答傾向の変化とその要因について分析する.

1996年(面接法)から1997年(郵送訪問回収法)にかけては,定住意向も生 活環境評価も一挙に低下しており,特に定住意向の低下は大きい.定住意向が 一挙に2割以上も低下するというのは,それなりの理由があると考えるべきで あろう.その理由がわかれば,それがこの調査結果を解釈するうえでの重要な 情報となる.そこで,その変化が引き起こされる要因について考えられる事情 を探ってみよう.

まず,回答者にとって身近に何らかの状況の変化があり,その状況の変化に もとづいて意識が変化したことが考えられる.たとえば,市内に生活環境を損 ねるような状況が出現したというようなケースである.そこで,定住意向につ いて地域別にみてみると,1地域(B地区)で30ポイント以上のマイナスとな ってはいるものの,他のいずれの地域においても18~25ポイントと2割前後の マイナスとなっており,市内全域にわたってほぼ平均的な減少傾向を示してい る.一部の地域の大幅な落ち込みにより全体の結果が低下するということは考 えられるが,このように全市にわたり定住意向を低下させるような個人的な状 況の変化が起こったということは考えられない(表5-5).

また,時間的な経過に伴い生じる「時代的な変化」の可能性についても,僅 か1年の間に市内全域において,ほぼ同様の変化が生じたとみるのには無理が あろう.

表 5-5 地域別にみた「ずっと住み続けたい」(調査方法別)(%)

面接法 (1996)

郵送訪問回収法 (1997)

A地区 63 43

B地区 68 35

C地区 75 57

D地区 54 34

E地区 59 34

F地区 63 42

G地区 60 41

次に,この定住意向の低下は,回収標本の構成の変化によってもたらされた ということが考えられる.そこでまず回収標本の構成の変化そのものについて 性・年齢別でみてみると,1996年に比べて1997年では,男性の20代,30代お

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