し か し こ れ ら
の イ タ リ ア 人 作 曲 家 は そ の 多 く が パ リ で 活 躍 し パ リ と の 関 係 が 深 い た め 、 フ ラ ン ス 文 化 圏 の 系 統 で あ る と 捉 え る こ と も で き る 。
表
9は
、 イ タ リ ア の 作 曲 家 に よ る 作 品 の 、 歌 曲 と 鍵 盤 由 の 掲 載 ペ ー ジ 数 の 内 訳 で あ る 。 圧 倒 的 に 歌 曲 と 、 オ ペ ラ の 旋 律 を 鍵 盤 用 に 編 曲 し た 作 品 が 多 く 、 実 に 全 体 の100%が
歌 由 に 由 来 す る 作 品 で 、 鍵 盤 楽 器 用 の 楽 曲 は 皆 無 で あ る こ と が 分 か る 。《
La vestale〔
ヴ ェ ス タ の 巫 女 〕》よ リ ア リ ア が 、 そ し て リ ギ ー ニ の 《
Det befriade Jerusalem〔
解 放さ れ た エ ル サ レ ム 〕》 が │ま と ん ど の ペ ー ジ を 占 め て い る 。
c.ウ
ィ ー ン 古 典 派 次 の グ ル ー プ は 、ハ イ
ド ン 、 モ ー ツ ァ ル ト 、 ベ ー ト ー ヴ ェ ン に 代 表 さ れ る ウ ィ ー ン 古 典 派 で あ る 。 掲 載 率 は 、 第 一 期 か ら 順 に 、
表
9
イ タ リ ア掲 載 ペ ー ジ 数 内 訳
歌 曲 212
悪T 71J
鍵盤 曲
オペテか
ら勢鑢曲
0 49
3嚇鍵盤曲 0 0
1攀 蝙硫 Ⅲ
(W)
表
10
ウ ィ ー ン 古 典 派掲 載 率
12.9%、
13。4%、
19.7°/0と 緩 や か な 上 昇 傾 向を 示 し て い る 。 第 一 期 、 第 二 期 は 共 に ス ウ ェ ー デ ン や フ ラ ン ス に 関 わ り の 深 い 作 曲 家 た ち よ り も 若 千 少 な め で あ る が 、 第 二 期 に は 、 他 の ど の 地 域 の 作 曲 家 の 作 品 よ り も 多 く 掲 載 さ れ て い る 。 最 も 多
い の は モ ー ツ ァ ル ト の 作 品 で 、 鍵 盤 楽 器 の た め の 変 奏 曲 、 オ ペ ラ の 序 曲 を 鍵 盤 楽 器 用 に 編 曲 し た 作 品 、 つ い で オ ペ ラ よ り 抜 粋 さ れ た 歌 曲 が 多 く み ら れ 、
1790年
以 降 、 最 後 の 年 ま で 頻 繁 に 掲 載 さ れ て い る 。 特 に1795年
に は ジ ン グ シ ュ ピ ー ル 《魔 笛 》 よ り そ の 旋 律 を 鍵 盤 楽 器 用 に 編 曲 し た 作 品 や 二 声 の 声 楽 曲 が 計34ペ
ー ジ に 渡 り 、1797年
に は オ ペ ラ ・ ブ ッ フ ア 《 ド ン ・ ジ ョ ヴ ァ ン ニ 》 の 旋 律 を 鍵 盤 楽 器 用 に 編 曲 し た も の 、1812年
に は 再 び 《魔 笛 》 の ア リ ア が 伴 奏 付 き で33ペ
ー ジ に 渡 り 、 と 言 つ た よ う に ま と ま つ て 掲 載 さ れ 、 そ の 熱 狂 ぶ り が 見 て 取 れ る 。モ ー ツ ァ ル ト の 作 品 が は じ め て 本 楽 譜 集 に 取 り 上 げ ら れ た の は 、
1790年
巻 第26号
で 、 《 ピ ア ノ ソ ナ タ イ 短 調 》(KV310)が
掲 載 さ れ た 。 そ し て1791年 12月
の モ ー ツ ァ ル ト の 死 を 反 映 し た の か 、 頻 繁 に 登 場 す る よ う に な る の は1792年
以 降 で あ る 。 こ れ ら の こ と か ら オ ー ル ス ト レ ム は 、 晩 年 の モ ー ツ ァ ル ト の 作 品 を 初 演 か ら 数 年 の う ち に 本 楽 譜 集 に お い て 出 版 す る こ と で 人 々 に 広 く 紹 介 し て い た こ と が わ か る 。他 に ハ イ ド ン の 作 品 は 、 第 一 期 の 前 半 、
1791年
ま で は 、 い く つ か の 交 響 曲 を鍵 盤 楽 器 用 に 編 曲 し た 作 品 が ま と ま つ て 掲 載 さ れ て い る が 、 そ れ 以 後 影 を 潜 め る 。 再 び 頻 繁 に 登 場 す る の は 第 二 期 の 終 盤 、
表 ウ ィ ー ン 古 典 派 掲 載 ペ ー ジ 数 内
警攀 %
オベ ラか
轟参鶴
1821年
で 、30番
台 の 弦 楽 四 重 奏 曲 が 、 鍵 盤 楽 器 用 に 編 曲 さ れ て 掲 載 さ れ て い る 。 ま た 、 第 二 期 の 後 半 に は こ の 楽 譜 集 の 出 版 が 開 始 さ れ た1789年
に 掲 載 さ れ た 作 品 が 再 掲 載 さ れ て お り 、1820年
代 以 降 の 再 人 気 が う か が え る 。
ベ ー ト ー ヴ ェ ン の 作 品 が こ の 楽 譜 集 に 最 初 に 登 場 す る の は
1805年
、 彼 が35歳
の と き で 、1801年
に ウ ィ ー ン で 初 演 さ れ た バ レ エ 音 楽 《プ ロ メ テ ウ ス の 創 造 物作 品 43》 の 鍵 盤 用 編 曲 作 品 が 、 立 て 続 け に 数 曲 掲 載 さ れ て い る 。 そ れ 以 降 、 特 に 第 二 期 の 終 わ り か ら 第 二 期 に 多 く 掲 載 さ れ 、
1823年
以 降 は 歌 曲 の 小 品 や 鍵 盤 用 変 奏 曲 、 ピ ア ノ ソ ナ タ と い っ た 曲 が 頻 繁 に 登 場 す る 。表
11は
、 ウ ィ ー ン 古 典 派 の 作 曲 家 に よ る 作 品 の 、 歌 曲 と 鍵 盤 曲 の 掲 載 ペ ー ジ 数 の 内 訳 で あ る 。 全 体 的 に 鍵 盤 曲 の 割 合 が 高 く 、 特 に 第1期
で は90%を
し め 、 全 期 間 で も 約7割
を し め て い る 。d.オ
ー ス ト リ ア(Au)
第 二 期 に な る と 、 ハ イ ド ン 、 モ ー ツ ァ ル ト 、 ベ ー ト ー ヴ ェ ン 以 外 に も 、 オ ー ス ト リ ア で 活 躍 し た 作 曲 家 の 作 品 が 増 加 し 、 フ ン メ ル
(Hummel,Johan Nepomuk 1778‑1837)の
ワ ル ツ や ポ ロ ネ ー ズ 、 ツ ェ ル ニ ー(Czerny,Carl 1791‑1857)の
変 奏 曲 や ロ マ ン ス と い つ た 鍵 盤 曲 が 総 数 の 約5%ほ
ど 含 ま れ て い る 。歌 曲 と 鍵 盤 曲 で は 、 鍵 盤 曲 が80%以
上 を 占 め 、 圧 倒 的 に 多 く 掲 載 さ れ て い る 。e.ド
イ ツ(G)
掲 載 率 は 、 上 昇 傾 向 を 示 し お り 、 特 に 第 二 期 に は 全 体 の
13%
近 く を 占 め て い る 。
ド イ ツ の 作 曲 家 と し て 、 シ ュ タ イ ベ ル ト
(Steibelt,Daniel Gottlieb 1765… 1823)が
あ げ ら れ 、 特 に 第 一 期 、 第 二 期 に は 、1793年
に パ リ の フ ェ ド ー 濠J場
で 初 演 さ れ た オ ペ ラ 《 ロ ミ オ と ジ ュ リ エ ッ ト 》 が 掲 載 さ れ て い る 。 シ ュ タ イ ベ ル ト は ベ ルリ ン で 生 ま れ ド イ ツ で 教 育 を 受 け た が 、 パ リ で 活 躍 し 、 後 に サ ン ク ト ペ テ ル ブ ル ク で 没 し た た め 、 こ の 場 合 は 、 ド イ ツ と い う よ り フ ラ ン ス で 分 類 す る の が 正 し い か も し れ な い 。
し か し 、
1823年
以 降 、 特 に 第 二 期 に は 、ド イ ツ 人 作 曲 家 の 作 品 の 掲 載 率 が 上 昇 す る 。
1823年
に は ウ ェ ー バ ー(Weber,carl Maria Friedrich Ernst von 1786‑1826)作
曲 の オ ペ ラ で 、 ド イ ツ ロ マ ン 主 義 を 確 立 し た 作 品 と さ れ る 《魔 弾 の 射 手 》(1821)よ
り 、 序 曲 を 鍵 盤 楽 器 用 に 編 曲 し た も の が 掲 載 さ れ て い る 。 ま た1826年
に は 付 随 音 楽 プ レ チ オ ー ザ(1820)、 1833年
に は オ ペ ラ 《オ イ リ ア ン テ 》(1823)の
ア リ ア が 掲 載 さ れ て い る 。第 二 期 に は シ ュ ポ ー ア
(Spohr,Ludwig 1784‑1859)の
作 品 も 多く 、 オ ペ ラ 《フ ァ ウ ス ト 》
(1813年 )や
《Zemire und Azor〔
ゼ ミ ー レ と ア ゾ ー ル 〕》(1819年
)、 《Jessonda〔
イ ェ ソ ン ダ 〕》(1823年
)の ア リ ア や デ ュ オ が 多 く 掲 載 さ れ て い る 。
3‑4‑3/Jヽ 結
で は こ こ で 、 時 代 区 分 別 に み る 掲 載 由 の 傾 向 と 特 色 を ま と め て お き た い 。
ま ず 第 一 期 は 、 自 国 ス ウ ェ ー デ ン と 関 わ り の 深 い 作 曲 家 の 作 品 と パ リ で 同 時 代 的 に 活 躍 し て い た 作 曲 家 の 作 品 が 最 も 多 く 掲 載 さ れ て い た 時 期 で あ つ た 。 ま た 、 同 時 代 の パ リ で 発 表 さ れ た 作 品 の 掲 載 率 が 非 常 に 高 く 、パ リ ヘ の 憧 憬 が 色 濃 く み ら れ た 。 そ し て 、 フ ィ ン ラ ン ド 地 方 の 作 曲 家 の 作 品 は こ の 時 期 最 も 多 く 掲 載 さ れ て い た 。
続 く 第 二 期 は 、 自 国 ス ウ エ ー デ ン と 関 わ り の 深 い 作 曲 家 の 割 合 は 若 干 減 る も の の 、 依 然 と し て 一 定 の 割 合 を 占 め て い た 。 し か し パ リ で 人 気 の あ つ た 作 品 の 割 合 が 一 段 と 増 し 、 ウ ィ ー ン 古 典 派 の
作 品 も 多 く み ら れ た 。 フ ィ ン ラ ン ド 地 方 出 身 の 作 曲 家 の 作 品 は 以 後 全 く 掲 載 さ れ て い な い 。
そ し て 第 二 期 に は 、 年 間 に 出 版 さ れ る ペ ー ジ 数 が 半 減 し 、 自 国 の 作 品 や パ リ に 関 連 の 深 い 作 品 の 数 が 減 少 し 、 モ ー ツ ァ ル ト や ベ ー ト ー ヴ ェ ン 、 そ し て ハ イ ド ン の 交 響 曲 の 再 掲 載 が 最 も 多 く 、 そ の 他 、 オ ー ス ト リ ア や ド イ ツ を 中 心 に 活 躍 し た 作 曲 家 の 作 品 が 増 加 し た 。
3‑5ジ
ャ ン ル 別 に み る 特 徴 と そ の 推 移先 述 の よ う に 、 こ の 曲 集 は 鍵 盤 楽 器 と 声 楽 用 の 小 品 が 収 録 さ れ た 楽 譜 集 で あ る 。 次 に こ の 楽 譜 集 に 掲 載 さ れ て い る 曲 を 、 歌 曲 と 鍵 盤 由 に 分 類 し 、 さ ら に 楽 由 に 記 さ れ た 速 度 標 語 、 曲 想 指 示 、 そ し て 楽 曲 が 編 曲 で あ る 場 合 に は 特 に そ の 由 来 す る ジ ャ ン ル ご と に 可 能 な 限 り 振 り 分 け 、 時 代 区 分 別 に 分 類 し て 、 特 徴 と そ の 推 移 を 考 察 す る
(表
12、13参
照 )。ま ず 、 全 時 期 を 通 し て 圧 倒 的 に 多 い の は 、 オ ペ ラ に 由 来 す る 作 品 で あ る 。 全 体 に 占 め る 割 合 は 徐 々 に 増 加 し 、 第 二 期 、 第 二 期 に は 掲 載 曲 の 約 半 分 の 曲 数 を 占 め て い る 。 そ の う ち 鍵 盤 楽 器 用 に 編 曲 さ れ た 作 品 が 全 体 の 約 二 割 で あ る 。 第 一 期 、 第 二 期 に は 、 フ ラ ン ス ・ オ ペ ラ に 由 来 す る も の が 多 く 、 第 二 期 に は 、 ウ ェ ー バ ー や シ ュ ポ ー ア の ド イ ツ ・ ロ マ ン テ ィ ッ ク オ ペ ラ が 台 頭 し て い る こ と が 分 か る 。
次 に 多 く 掲 載 さ れ て い る の は 、 日 常 の 恋 愛 、 人 生 、 酒 、 友 情 、 そ し て 戦 い な ど に つ い て 書 か れ た ス ウ ェ ー デ ン 語 の 詩 に 音 楽 を 付 け た 歌 謡 で あ る 。 こ れ ら の 曲 に 関 し て は 、 ほ と ん ど が ス ウ ェ ー デ ン お よ び フ ィ ン ラ ン ド の 作 曲 家 に よ つ て 伴 奏 が 付 さ れ た も の で あ る 。 し か し 、 第
1期
前 半 に は16%あ
つ た 掲 載 数 が 、 第2期
には 2。
5%、
第3期
に は4%と
時 代 と と も に 減 少 傾 向 に あ る 。鍵 盤 曲 と し て は 、 マ ー チ や メ ヌ エ ッ ト が 全 時 期 を 通 し て 多 く 掲 載 さ れ て い る 。 し か し い ず れ も 小 曲 が 多 く 、 時 代 と と も に 減 少 傾 向 に あ る こ と が わ か る 。 一 方 、 ポ ロ ネ ー ズ も 鍵 盤 曲 と し て 多 く 掲 載 さ れ 、 掲 載 数 は 全 時 期 を 通 し て 著 し い 変 化 は 見 ら れ な い 。 ワ ル ツ に 関 し て は 第 一 期
4%、
第 二 期5%、
第 二 期10%と
増 加 傾 向 に あ り 、 特 に 第 二 期 に は ベ ー ト ー ヴ ェ ン 、 フ ン メ ル 、 ウ ェ ー バ ー の ワ ル ツ が 多 く 掲 載 さ れ る よ う に な つ た 。交 響 曲 や 弦 楽 四 重 奏 由 に 由 来 し 、 そ れ ら を 鍵 盤 楽 器 用 に 編 由 し た 作 品 は 、 ハ イ ド ン に よ る も の が ほ と ん ど を 占 め て い る 。 交 響 曲 は
16曲
掲 載 さ れ て お り 、 す べ て ハ イ ド ン の 作 品 の 編 曲 で 、1789
年 か ら
91年
に 集 中 し て 掲 載 さ れ て い る 。 ま た 弦 楽 四 重 奏 曲 は 、10曲
中9曲
が ハ イ ド ン の 作 品 で 、特 に1821年
か ら23年
に 集 中 し て 掲 載 さ れ て お り 、1771年
か ら81年
に か け て 作 曲 さ れ た 作 品 が 、 そ の 頃 人 気 で あ っ た こ と が 分 か る 。さ ら に 、 オ ペ ラ か ら の 編 曲 を 除 く 鍵 盤 楽 器 用 の 作 品 に 注 目 し て み る と 、 第 一 期 、 第 二 期 と も に 、 ス ウ ェ ー デ ン お よ び ウ ィ ー ン 古 典 派 と 関 わ り の 深 い 作 曲 家 の 作 品 が 多 く 掲 載 さ れ て お り 、 マ ー チ や ポ ロ ネ ー ズ と い つ た 小 品 、 変 奏 曲 や ク ラ ヴ ィ ー ア ソ ナ タ が 多 い 。
し か し 第 二 期 頃 に な る と 、 チ エ ル ニ ー 、 ク ラ マ ー 、 フ ン メ ル 、 フ ィ ー ル ド そ し て ベ ー ト ー ヴ エ ン の 掲 載 が 増 え 、 ロ マ ン ス や ワ ル ツ 、 ノ ク タ ー ン 、 と い つ た ロ マ ン 主 義 を 暗 示 す る 作 品 が 多 く 見 ら れ る よ う に な り 、 流 行 を 追 い か け 大 陸 の 状 況 を 鏡 に 移 し た よ う な 特 徴 が 見 て 取 れ た 。
こ れ ら の 他 に 、 各 国 の 民 謡 や フ ォ ー ク ダ ン ス に 関 連 す る 曲 も 全 時 期 を 通 し て