Ⅳ 考察
3. 不登校や相談室登校に関わる校内連携の現状とカウ ンセリング指導員の役割
不登校や相談室生徒への対応については学級担任1人 が担うのではなく,学校内の多くの教職員を活用しなが ら援助がなされ,その要として役割をカウンセリング指 導員が果たしていた。学校における教育相談の利点とし て,学校内には学級担任・教育相談担当教員(富山県で はカウンセリング指導員に相当)・養護教諭・生徒指導 主事・教頭・校長等の豊富な援助資源があり,1人の生 徒をめぐって様々な教員が多様な関わりをもって,生徒 を支えられる特徴がある(文部科学省 ,2002)。今回の調 査でも,カウンセリング指導員だけでなく学校内外の多 様な援助資源が生徒に関わっている実態が見てとれた。
一方で学校を構成する教師集団や教師同士の結びつきの 特徴として,互いに働きかければそれに答えるが,通常 は個々の独立性と分離性が保たれている疎結合システム であるという指摘がある(淵上 1995)。これは教師,特 に学級担任の特徴として,問題を1人で解決しようと抱 え込んでしまい,なかなか周囲に働きかけて助言や協力 を求めない,あるいは求めにくい傾向を意味していると 思われ,筆者もその実感はもっている。今回の調査でも
「自分からを声かけず,相手から声をかけられるときは,
もう末期。だいぶ身動きがとれなくなっている」や「な るべくこっちから話しかけるようにして,問題が重たく なったら,何となく話しにくくなるので話して」という 声が聞かれた。カウンセリング指導員は学級担任等から の要請があったときだけ助言や協力に応じるのではな く,カウンセリング指導員が問題の状況をみて自主的に 判断して担任あるいはそれ以外の教員に働きかける動き も見られた。この動きについては,特に若手教員への言 及が多く,問題の深刻さへの理解不足や対応の仕方への 経験不足をカウンセリング指導員がフォローする動きが 見られた。教員間の連携の重要性は,以前から言われ続 けてきていることが,今後若手教員が増加し,人的援助 資源である教員の入れ替わりが行われていく中で,従来 以上にカウンセリング指導員の果たす役割は重要になる と考えられる。
養護教諭,保健室との情報交換等への言及も見られた。
平成 23 年度の保健室利用状況に関する調査報告書によ れば,中学校において保健室登校をしている生徒がいる 学校は 41.5%,年間平均人数は 3.3 人にのぼり,養護教 諭が「心身の健康問題」で継続的な支援をした事例のあ る中学校は 82.9% ある。なお中学校における保健室来室 の背景要因は「主に心に関する問題」が「主に身体に関 する問題」よりも多い。また,心に関する問題の具体的 な内容は,「友達との人間関係」「家族との人間関係」が 多くなっている。これらの報告からも保健室を頻繁に利 用する生徒は心や身体に何らかの不安や問題を抱えてい る場合があり,それが継続したり悪化したりすると,教 室に戻れなくなる可能性のある相談室登校・不登校予備
軍と考えることもできる。カウンセリング指導員や相談 室が設置されていることでいつでも学校不適応の生徒を 受入れられるということではなく,そのような生徒を増 やさないためにも,養護教諭とカウンセリング指導員が 連携を密にして,生徒の実態を早期に把握し予防的な措 置をとる重要性が増していると考えられる。
校内の様々な人的あるいは物的援助資源を見つけて結 んでいる要となっているのがカウンセリング指導員であ る。学級担任や学年の教員は,目の前の不登校や相談室 生徒についてのケース対応ばかりに目が行き,局所的に 問題を捉えがちになる。そのような場合にこそ,多くの 情報と関係性を把握し,問題の全体像を捉え,的確な判 断を下す役割が必要となる。カウンセリング指導員の位 置づけや学校における教育相談の充実を検討する時,学 校心理学における心理教育的援助サービスのモデル ( 石 隈 ,1999)(図1)の考え方が参考になる。このモデルを 用いると,一次的援助サービスとは全ての子どもを対象 とした日常的な関わり,予防的・開発的な関わりが中心 となり,すべての教職員が担い手となる。二次的援助サー ビスは,リスクを抱える可能性が高い一部の子ども(登 校しぶりや学習意欲低下等)への早期発見・早期対応が 関わりの中心となり,日常の子どもの状態を発見しやす い担任,そのような子どもが訪れることの多い保健室の 養護教諭や相談室担当教員が担い手となる。三次的援助 サービスは,既に問題や症状を抱えてしまった特定の子 ども(不登校や発達障害)への対応が中心となり,SC や特別支援教育相談員等が担い手となる。このように学 校が行っている教育相談を心理教育的援助サービスの視 点で見直すことによって,学校が今できていることや誰 がその役割を担っているか捉えることができると考えら れる。カウンセリング指導員は,相談室担当として二次 的・三次的援助サービスの中心的な担い手であるが,一 次的援助サービスが心理教育的サービスの全体の基盤と なる以上,教育相談担当として全ての段階の援助サービ スの担い手として役割を果たすことを期待されており,
今回の調査でもそれらが十分に実践されていることが分 かった。一方これらの援助サービスをカウンセリング指 導員だけに依存せず,恒常的に,継続的に機能させるた めには学校内に教育相談に関わるシステムを作っておく 必要がある。
この課題について,学校心理学が提唱する「チーム援 助」が,現場に適用可能な連携の枠組みを示してくれる。
石隈 (1999) は,チーム援助を「子どもの学習面,心理・
社会面,進路面・健康面における問題状況の解決を複数 の専門家(教師,SC,特別支援教育コーディネーター 等)と保護者で行うこと」と説明し,①特定の児童生徒 に対して編成された援助チーム②学校において恒常的に 機能するコーディネーション委員会③学校全体の教育シ ステムの運営に関する運営委員会(マネジメント委員会)
の 3 種類のチームの援助を整備することを指摘している
(図2)。
このモデルでは,個別の子どもへの援助を担任,SC 等のコーディネーター,保護者が協力して個別の援助 チーム(図2中①)(田村・石隈 ,2003)をつくる。こ れはチーム援助の最小単位となり,チームを作る際に はケース会議が行われ,子どものケースごとに作られ る。一方,生徒の数だけ援助チームが立ち上がられるた め,「学校や学年での子どもの援助ニーズを把握しなが ら,そのニーズに応じた活動のコーディネーションを行 う」(家近 ,2011)コーディネーション委員会(図2中②)
が必要とされる。マネジメント委員会(図2中③)は,
学校全体の運営に関して,子どものニーズと教職員,地 域の資源に応じた教育目標や学校行事などを計画・検討 するためにつくられる ( 石隈 ,1999)。
この委員会の機能について石隈・家近 (2003) は①異 なる専門家同士が協力し合いながら問題解決を行うとい う点から「コンサルテーション・相互コンサルテーショ ン機能」②全学的な視点から生徒に対する効果的な援助 や情報についての連絡や調整を行う学年・学校レベルで の「連絡・調整機能」,③教職員の連携を進め,共有さ れた情報と援助方針の連絡による「個別のチーム援助を 促進する機能」,④管理職が参加することにより,教職 員の連携及び校長のリーダーシップがコーディネーショ ン委員会を通して各組織に伝わり,意思疎通が図られる ことによる「マネジメント機能」の4つを指摘している
(図3)。また,このような「チーム援助」には,チーム をまとめていくコーディネーターの存在が必要不可欠 だと強調している。このコーディネーターの活動であ るコーディネーション行動について,瀬戸・石隈 (2002) は①マネジメント関する行動②広報活動③情報収集活動
④ネットワーク行動の4つに分類できると指摘している
(図4)。
今回調査した各校においても不登校や相談室生徒の対 策を考えるためにケース会議を開き援助チームが作られ たり,情報共有や連絡調整をするためのコーディネー ション委員会として生徒指導委員会が開かれたりして,
組織の連携が図られチーム援助のシステムは整備されて いた。また,カウンセリング指導員がチーム援助のコー ディネーターとして位置付けられ,援助に関係する学校 内外の人的援助資源をつなぎ,調整する役割を果たして いた。ただし,カウンセリング指導員の役割や権限,周 囲からの理解の程度には差が見られた。チーム援助を継 続的,恒常的に行うには,カウンセリング指導員のよう なコーディネーターの役割が重要であるが,このような システムづくりについて,黒沢ら (2014) は「援助とい うのは人がするものであるが,あまり”人依存”の活動 になってしまうと,その人がそのコミュニティの中にい る間はよいのですが,いなくなった途端,その人の担っ ていた部分が全く機能しなくなってしまう。これでは継 続性は担保できない」と述べている。今回調査でもカウ