本研究は、ESD の目標を持続可能な開発のために求 められる価値観を主体的に形成することと捉え、その価 値観形成を目指す小学校社会科授業を明らかにし、その 授業論を踏まえた小学校社会科の単元開発を行った。さ らに、実験授業を行い、有効性を検証した。その研究成 果として、以下の2点を挙げることができる。
第1は ESD と社会科の関係を目標、内容、方法の3 つの視点から明らかにしたことである。社会科において、
何をどうすれば ESD としての社会科となるのか、これ
までの社会科授業と ESD を比較しながら検討した。そ して、ESD としての社会科を「ESD 型社会科」とし、
目標・内容・方法を示した。この3点は、実際に教師が 授業を組み立てる際の過程に沿っているので、ESD と しての社会科がイメージしやすいのではないか。
第2は、ESD の小学校社会科授業の具体的な授業モ デルを開発したことである。これまで学会等で示され た ESD の研究において小学校の授業案はわずかしかな かった。そこで、第1の成果で示した「ESD 型社会科」
を踏まえて教材開発した第4学年社会科 ESD 単元「も えるごみを減らす方法を考えよう」を開発した。この単 元では、ESD の価値観を主体的に形成することができ た。また、持続可能な社会の仕組みを理解するために環 境経済学の成果を取り入れた。そして、この開発単元の 実験授業を行い、子供の反応を分析した結果、ESD の 価値観を主体的に価値観形成されたことが明らかとなっ た。この ESD 単元は、教師による指示・発問とともに 期待される子供の反応や授業で使用することができる資 料を明示しており、追試可能な形で示すことができた。
これら2つの成果は、ESD の概念の分かりにくさと いう課題に対して解決のための一助となるであろう。
課題としては、以下の2点がある。
第1に、実験授業の不足である。今後、様々な学級で 実験授業を行い、開発単元の成果を検証しなければいけ ない。また、小学校地域学習以外の現代社会の諸課題を 扱う単元開発を行い、「ESD 型社会科」の有効性を明ら かにするとともに、修正を加えることで精緻化していき たい。
第2に、価値観形成が十分でない点である。「人間の 尊重」「環境の尊重」の価値観形成について十分に検証 することができなかった。また、「文化的多様性の尊重」
を内容として扱うことができなかった。
註
1)生方秀紀、神田房行、大森享編著『ESD(持続可
能な開発のための教育)をつくる地域でひらく未来へ の教育』ミネルヴァ書房、2010 年、12 頁。
2)小原友行は主要な社会科授業論として「理解型授業 論」「説明型授業論」「問題解決型授業論」「意思決定 型授業論」の4つを示している(「社会的な見方・考 え方を育成する社会科授業論の革新―21 世紀の学校 教育における社会科の役割―」社会系教科教育学会『社 会系教科教育学研究』第 10 号、1998 年、5頁)。その後、
市民的資質育成の重視という立場から意思決定を質的 に改善していこうとする取組として「社会参加型授業 論」があることを述べている(全国社会科教育学会編
『社会科教育実践ハンドブック』明治図書、2011 年、
43 頁)。
3)原田智仁「主体的学習とアクティブ・ラーニング」
公益財団法人日本教材文化研究財団『研究紀要第 44 号』2015 年、24 ~ 25 頁。
4)松浦雄典「社会科における批判的参加学習としての 授業構成」全国社会科教育学会『社会科研究』№ 79、
2013 年、38 頁。
5)井田仁康「持続可能な社会の形成のための社会科・
地理歴史科―高等学校地理歴史科における融合科目 の提案」日本社会科教育学会『社会科教育研究』№
113、2011 年、4頁。
6)三橋規宏『環境経済学入門〈第4版〉』日本経済新 聞出版社、2013 年、200 頁。
7)岩田一彦「社会の変化に対応できる社会認識内容及 び方法-環境教材の検討-」日本社会科教育学会『社 会科教育研究』№ 67、1992 年、15 頁。
8)杉本裕明『ルポにっぽんのごみ』岩波新書、2015 年、
2頁。
9)山谷修作『ごみ効率化 有料化とごみ処理経費削減』
丸善出版、2014 年、18 頁。
(2017年8月30日受付)
(2017年10月4日受理)