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Ⅵ.単元開発の成果と課題

ドキュメント内 第  12 号       平成29年12月 (ページ 89-92)

本研究は、ESD の目標を持続可能な開発のために求 められる価値観を主体的に形成することと捉え、その価 値観形成を目指す小学校社会科授業を明らかにし、その 授業論を踏まえた小学校社会科の単元開発を行った。さ らに、実験授業を行い、有効性を検証した。その研究成 果として、以下の2点を挙げることができる。

第1は ESD と社会科の関係を目標、内容、方法の3 つの視点から明らかにしたことである。社会科において、

何をどうすれば ESD としての社会科となるのか、これ

までの社会科授業と ESD を比較しながら検討した。そ して、ESD としての社会科を「ESD 型社会科」とし、

目標・内容・方法を示した。この3点は、実際に教師が 授業を組み立てる際の過程に沿っているので、ESD と しての社会科がイメージしやすいのではないか。

第2は、ESD の小学校社会科授業の具体的な授業モ デルを開発したことである。これまで学会等で示され た ESD の研究において小学校の授業案はわずかしかな かった。そこで、第1の成果で示した「ESD 型社会科」

を踏まえて教材開発した第4学年社会科 ESD 単元「も えるごみを減らす方法を考えよう」を開発した。この単 元では、ESD の価値観を主体的に形成することができ た。また、持続可能な社会の仕組みを理解するために環 境経済学の成果を取り入れた。そして、この開発単元の 実験授業を行い、子供の反応を分析した結果、ESD の 価値観を主体的に価値観形成されたことが明らかとなっ た。この ESD 単元は、教師による指示・発問とともに 期待される子供の反応や授業で使用することができる資 料を明示しており、追試可能な形で示すことができた。

これら2つの成果は、ESD の概念の分かりにくさと いう課題に対して解決のための一助となるであろう。

課題としては、以下の2点がある。

第1に、実験授業の不足である。今後、様々な学級で 実験授業を行い、開発単元の成果を検証しなければいけ ない。また、小学校地域学習以外の現代社会の諸課題を 扱う単元開発を行い、「ESD 型社会科」の有効性を明ら かにするとともに、修正を加えることで精緻化していき たい。

第2に、価値観形成が十分でない点である。「人間の 尊重」「環境の尊重」の価値観形成について十分に検証 することができなかった。また、「文化的多様性の尊重」

を内容として扱うことができなかった。

1)生方秀紀、神田房行、大森享編著『ESD(持続可

能な開発のための教育)をつくる地域でひらく未来へ の教育』ミネルヴァ書房、2010 年、12 頁。

2)小原友行は主要な社会科授業論として「理解型授業 論」「説明型授業論」「問題解決型授業論」「意思決定 型授業論」の4つを示している(「社会的な見方・考 え方を育成する社会科授業論の革新―21 世紀の学校 教育における社会科の役割―」社会系教科教育学会『社 会系教科教育学研究』第 10 号、1998 年、5頁)。その後、

市民的資質育成の重視という立場から意思決定を質的 に改善していこうとする取組として「社会参加型授業 論」があることを述べている(全国社会科教育学会編

『社会科教育実践ハンドブック』明治図書、2011 年、

43 頁)。

3)原田智仁「主体的学習とアクティブ・ラーニング」

公益財団法人日本教材文化研究財団『研究紀要第 44 号』2015 年、24 ~ 25 頁。

4)松浦雄典「社会科における批判的参加学習としての 授業構成」全国社会科教育学会『社会科研究』№ 79、

2013 年、38 頁。

5)井田仁康「持続可能な社会の形成のための社会科・

地理歴史科―高等学校地理歴史科における融合科目 の提案」日本社会科教育学会『社会科教育研究』№

113、2011 年、4頁。

6)三橋規宏『環境経済学入門〈第4版〉』日本経済新 聞出版社、2013 年、200 頁。

7)岩田一彦「社会の変化に対応できる社会認識内容及 び方法-環境教材の検討-」日本社会科教育学会『社 会科教育研究』№ 67、1992 年、15 頁。

8)杉本裕明『ルポにっぽんのごみ』岩波新書、2015 年、

2頁。

9)山谷修作『ごみ効率化 有料化とごみ処理経費削減』

丸善出版、2014 年、18 頁。

(2017年8月30日受付)

(2017年10月4日受理)

ドキュメント内 第  12 号       平成29年12月 (ページ 89-92)