第 4 章 中層の集住体における居住者の環境認知の
4.4 上下階(立体的)における「近隣住民」の認知領域 4.5 行動領域と環境認知との関係性
4.6 まとめ
第4章 中層の集住体における居住者の環境認知の分析・考察
■
4.1
はじめに沿道囲み型住宅とは街区の内側に一体の中庭を内包する集合住宅であり、道路沿いに 一定高さの建築空間を連続配置し、閉鎖型街区を形成する街区型建築である。日本では 沿道囲み型住宅の群を市街地規模で実現した例として幕張ベイタウンは数少ない実例 である。本章では、幕張ベイタウンの沿道囲み型中層住宅の集住体における居住者の環 境認知を分析・考察する (図
4.1、表 4.1)
幕張ベイタウンの沿道囲み型中層住宅の集住体における居住者の環境認知を分析・考 察するため、「個人の環境認知のみへの関心ではなく、環境認知の「集合体」、つまりあ らゆるレベルの社会的組織の中に現れている認知領域を分析する」という視点から、中 層住宅の幕張ベイタウンの沿道囲み型住宅を一つの集住体にとして取られ、「近隣住民」
「わたしのまち」「行動範囲」「身近な水辺」「身近な緑地」「にぎわい」の認知領域図を 作成する。「構成要素に関する調査」で得られた「範囲付け理由」などを集計し、上位 に回答された項目によって、構成要素項目の上位表を作成する。そして、「居住階」に よる認知領域面積の変化と上下階(立体的)における「近隣住民」の認知傾向を分析す る。さらに、「行動範囲」と「わたしのまち」、「にぎわい」、「身近な緑地」、「身近な水 辺」それぞれの認知領域図を重ねあわせ、人間の行動・経験と物理的(自然、人工)環 境を考察するための重複関係図を作成する。以上により幕張ベイタウンの沿道囲み型中 層住宅の集住体における居住者の環境認知について分析・考察する。
本章の構成について、4.2では中層住宅の幕張ベイタウンの沿道囲み型住宅の集住体 における居住者の認知特性を把握するため、認知領域および構成要素を考察する。4.3 では居住階と環境認知との相互関係を着目し、「居住階」による認知領域面積の変化を 考察する。4.4では居住者の住棟内部に対する環境認知として「近隣住民」の意識に着 目し、上下階(立体的)における「近隣住民」の認知傾向を分析する。さらに、4.5で は人間の行動・経験と物理的(自然、人工)環境、社会環境の関係性を考察するため、
重複関係図を作成し、行動と環境認知との重複関係を考察する。4.6では本章の成果を 整理すると共にまとめとして、幕張ベイタウンの沿道囲み型中層住宅の集住体における 居住者の環境認知の実態を提示する。
図
4.1
調査対象地域―幕張ベイタウン―中層住棟表
4.1 中層沿道囲み型住宅の集住体における調査対象概要
■4.2 認知領域および構成要素の形成
まず、作成した中層住棟の認知領域図(図
4.2)(
「近隣住民」「わたしのまち」「行動 範囲」「身近な水辺」「身近な緑地」「にぎわい」)を図4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8
に示す。「認知領域調査」では、白地図を使用し、調査対象者に対して、「あなたが私の まち(よく知るまち)と感じる範囲はどこですか。地図に囲んでください。」などの設 問より、認知領域を描画してもらう。「認知領域調査」で得られた個人の描画データを もとに、地図上に重ね合わせ(Fig 4.2-左)、それらの全データの重なる度合いを明示 し(Fig 4.2-右)、まとめたものである。まだ、領域認知度注1)(調査対象者の何%が描 画したか)の遍在の状況を可視化するために、等高線で地図上に示している。認知領域 の構成要素項目の上位表(「近隣住民」「わたしのまち」「行動範囲」「身近な水辺」「身 近な緑地」「にぎわい」)を図4.3、 4.4、4.5、4.6、4.7、4.8
の上部に示す。「構成要素 に関する調査」では,調査員が口頭で,属性と白地図に描かれた領域を範囲付け理由に ついて、「行動範囲を囲んだ時、何がその範囲を決める理由となりましたか?数に限り なくあげてください。(建物・名称・樹木・看板・音・香り…など)、何でも結構です」などを質問し,集計する。上位に回答された項目によって、構成要素項目の上位表を作 成した。構成要素項目上位表は認知領域の構成要素の項目の認知度注2)を表している。
以上により幕張ベイタウンの沿道囲み型中層住宅の居住者の環境認知を分析・考察する。
図
4.2
認知領域図の作成■4.2.1 「近隣住民」
「近隣住民」について、図
4.3
により、中層住棟の居住者は初期に完成された1
番街 から6
番街までの住棟周辺を中心に幕張ベイタウンの街区全体へ面的な認知領域の広 がりがみられる。構成要素について、居住者は「自宅の住棟」「幕張ベイタウン」「1 番街から
6
番街」「学校」を上位に挙げている(図
4.3)
。■4.2.2 「行動範囲」
「行動範囲」について、図
4.4
により、中層住棟の居住者は1
番街から6
番街の住棟 周辺に強く認知し、海浜幕張駅、千葉マリンスタジアムまで面的な認知領域の広がりが みられる。構成要素について、居住者は「海浜幕張駅」「幕張ベイタウン」「幕張海浜公園」「学 校」を上位に挙げている(図
4.4)
。■4.2.3 「わたしのまち」
「わたしのまち」について、図
4.5
により、中層住棟の居住者は1
番街から6
番街お よび11
番街の住棟周辺に強く認知し、海浜幕張駅、千葉マリンスタジアムまで面的な 認知領域の広がりがみられる。また、「行動範囲」の認知領域と同じ傾向で認知領域認 知領域の広がりがみられる。構成要素について、居住者は「幕張ベイタウン」「海浜幕張駅周辺」「千葉マリンスタ ジアム」「1番街から
6
番街」を上位に挙げている(図4.5)
。■4.2.4 「身近な水辺」
「身近な水辺」について、図
4.6
により、中層住棟の居住者は花見川、幕張の浜に面 的な認知領域の広がりがみられる。構成要素について、居住者は「花見川」「海」「幕張の浜」「散歩の範囲」を上位に挙げ ている(図
4.6)
。■4.2.5 「身近な緑地」
「身近な緑地」について、図
4.7
により、領域の範囲づけ理由として上位にあるベイ タウンの周辺の幕張海浜公園および花見川緑地は面的に強く認知し、他にはベイタウン 内にある10
箇所の公園(近隣公園:3,街区公園:7)の内、近隣公園の打瀬 1
丁目公園、打瀬
2
丁目公園に2
か所のみが認知され、これらは、共に「わたしのまち」(図4.4)
と「行動範囲」(図
4.5)内にあり、日常生活活動において一体として展開している(図 4.7)
。構成要素について、居住者は「幕張海浜公園」「花見川緑地」「打瀬
1
丁目公園」「打 瀬2
丁目公園」を上位に挙げている(図4.7)
。■4.2.6 「にぎわい」
「にぎわい」について、図
4.8
により、中層住棟の居住者は1
番街から6
番街の住棟 周辺にある美浜プロムナード(商店街)において線的な認知領域の広がりおよび海浜幕 張駅の周辺において面的な認知領域の広がりがみられる。構成要素について、居住者は「美浜プロムナード」「商店街」「海浜幕張駅周辺」「人 が多い場所」を上位に挙げている(図
4.8)
。図
4.3
認知領域図 & 構成要素上位表-近隣住民図
4.4
認知領域図 & 構成要素上位表-行動範囲図
4.5
認知領域図 & 構成要素上位表-わたしのまち図
4.6
認知領域図 & 構成要素上位表-身近な水辺図
4.7
認知領域図 & 構成要素上位表-身近な緑地図
4.8
認知領域図 & 構成要素上位表-にぎわい■
4.3
居住階層ごとの認知特性前節では認知領域の広がりの様相を構成要素との関係性から考察した。本節では認知 領域面積の定量的な分析も加え、「居住階層」ごとの認知特性を考察する。認知領域の 立体構成を考察するため、まず「認知領域調査」では描かれた範囲の面積を階層ごとに 集計し、平均面積を算出する。図
4.9-A
はこれらを各階層の認知領域面積の平均値を示 したものである。図の中央(住棟)から左右に従い狭域・中域・広域と認知領域の広が りを示す。図4.9-B
は全回答者の平均認知領域の面積および標準偏差を用いて、平均と 分散による標準化したデータ注3)を算出する。そのデータで算出した各階層の平均認知 領域の面積を階数に応じて布置することで散布図を作成し、各階のプロットをつないだ 線を全体の平均値(0値)の中心に左右に広がる。この図において線がプラス(+)に 広がるほど全体の平均値より広い、マイナス(-)に広がるほど全体の平均値より狭い と考えられる。以上の二つの図を用いて、認知領域の立体構成を考察する。■4.3.1 中層住棟において、「にぎわい」および「身近な緑地」は狭域の認知領域の広 がり、「身近な水辺」および「近隣住民」は中域の認知領域の広がり、「わたしのまち」
および「行動範囲」は広域の認知領域の広がりがみられる。
・狭域(0ha~50ha)
図
4.9
のⅠ-①とⅠ-②により、中層住棟において「にぎわい」および「身近な緑地」の認知領域の立体構成は同じ傾向がみられ、
1F
あたりに認知領域の広がりがみられる。・中域(0ha~100ha)
図
4.9
のⅠ-③とⅠ-④により、中層住棟において「身近な水辺」および「近隣住民」の認知領域の立体構成は同じ傾向がみられ、
1F
あたりに認知領域の広がりがみられる。・広域(0ha~150ha)
図
4.9
のⅠ-⑤とⅠ-⑥により、中層住棟において、「わたしのまち」および「行動範 囲」項目の認知領域の立体構成は反する傾向がみられる。中層住棟の居住者の「わたし のまち」の認知領域は1F
および6F
あたりにおいて認知領域の広がりがみられる。「行 動範囲」の認知領域は住棟の1F
および6F
あたりにおいて認知領域の広がりがみられる。■4.3.2 認知領域の立体構成の傾向について、中層住棟において、「にぎわい」、「身近 な緑地」、「身近な水辺」、「近隣住民」、「行動範囲」の認知領域の立体構成は同じ傾向が