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一緒にやる

ドキュメント内 器官切除 (ページ 126-129)

「きみたちが怖い」

「われわれは絶対に害をなしたりはしないよ」翼のある男がつぶやく。

「しかしながら、健康の問題があるんだ」ピエロが空中にある文句を書く。「科学は化 学。物の本質は原子内にある」

「物の終わりは物の本質」ガイコツが言う。「忘れやすいことは素晴らしい恵み」

「風は神の恵みである」翼のある男が言う。三人の中で一番人間に近く見える。「共通の 起源は息だ。それはインスピレーションの源でもある」

「きみは三人組の中のどの役だ」エリオットは尋ねる。

「わたしは死だ」天使がささやく。

エリオットは今や、目に見えて震えている。何かを言うか、何かをしようと必死で考え る。体に緊張が走る。それが胸に達し、せきの発作に襲われる。発作はひどく、一分以上 続く。終わるまで息がつけない。顔は赤くなり、足の間に顔を突っ込む。

「空気」かれは小声で言う。「空気」

の羽(多分彼女の髪飾りの)がかれの眼窩からのぞいている。これは新発見だ。バート・

パークス、上品で洗練されて口のうまいこの曲芸団長は、幻影なのだ。

ローリーは女の子たちの方に興味がある。彼女はわざとらしい笑顔や見事なプロポー ションの体に魅了されている。彼女たちの完璧な爪や髪の毛、そして果てしなく長い足。

彼女たちのいらいらするような明るさや、振り付けされているような陽気さを恥ずかしい と思いながら、でもうらやましい。注目され、豊かで、素晴らしい人間的の魅力と報酬の ある未来を想像する。自分がふさわしくないように感じる。リモコンを手に取って彼女は テレビをぱちんと消す。

「わたしってきれいかしら」彼女はエリオットに言う。

「とってもね」

「違うの。すぐに答えないで。考えてほしいの。本当のことが知りたいの」

彼はあごに手をやって、彼女をながめる。広くてにきびの跡のある額。弱々しいあご、

大きな胸、短くて太い足。

「きみは美しい」かれは言う。

彼女はかれの目を見る。「本気なの」

「本気だ。美しい。純粋にね」

するとローリーはほほえむ、満面の、涙ながらの笑い。「愛してるわ、エリオット。で きたらわたしの呼吸をあげたいわ。あなたのために呼吸したい」

「ローリー」かれは彼女の手をとる。「できるなら、きみのために歌いたい。きみの信じ ていることばを歌い、そしてそれをきみの脳の中の、きみが決して忘れないところへ入れ たい……」間を置き、そして笑う。

「ローリー、できるなら、ぼくはきみのためにバート・パークスになるよ。不死身に なる」

5. やりとげる

ローリーは集中治療室で働く。退屈なこともあれば、忙しいこともある。集中室の六つ のベッドのうち今夜はひとつしか埋まっていない。そこにいるのは三十歳の男だが、九十 に見える。目は黄色で腕はひょろ長く、顔は土気色だ。腹がとてもふくらんでいるので、

何ヵ月も自分の足を見ていない。息が出来なくなるので水平に寝られず、だからベッドで からだを支え起こしていなければならない。よく眠れないが、肝臓がだめなので薬が飲め ない。末期肝硬変で、数日間、昏睡状態になったり覚めたりしている。

現在は昏睡状態で、つまりローリーの仕事はあまりないということだ。時々点滴を調 べ、毎時間状態を記録する。この小さな仕事の合い間、彼女は看護婦控室でアウトドア雑

誌を読む。今晩はそれも退屈で、同じところを何度も何度も読み返している。彼女はエリ オットのことを考えている。

ローリーは人生をずっと男に頼ってきた。これに彼女は腹を立て、それから何年間か自 分にある約束をした。秘密の、ほとんど無意識の約束。それは欠点のある男とつきあうと いうことだ。最初の男は頼りにならなかった。次のは冷たくて気まぐれだった。エリット のひとつ前の男は、ローリーにしたことよりも、そうする自分の方が好きな男だった。エ リオットの欠点は病気だ。その事で二人は対等の立場にいるように感じる。かれは自分が 必要なので別れられない。かれは自分に頼っている。この事に彼女は保証を感じる。この せいで、妙に自立した力強い気分になる。かれが間もなく死ぬという避けがたい事態をふ と忘れる。彼女は、いずれ悲しみにくれるという状況を、自分が慎重に選びとったことに 気づいていない。彼女自身、周期的昏睡状態の世界に生きているのだ。

彼女はコーヒーを一杯飲み、また一杯飲む。三時から五時までが、起きているのが一番 つらい、朝の最悪の時間だ。彼女は爪を整えだしたが、あまり気にしてないのでやめる。

女の子は女の子、彼女は大人の女だ。男が彼女に合わせればいいのだ。

コーヒーが効いてきて、彼女の頭はざわつく。手は落ち着かず、わけのわからないこと を考える。肝硬変のベッドから音が聞こえる。その回りにはカーテンがかかっていて、立 ち上がってその向こうを見ると、男はいない。かわりに翼のはえた男がいる。

なんてこと、とローリーは思う。何かおかしい。何かひどく変だ。そこで看護婦である 自分を取り戻す。

彼女は枕をふくらませ、シーツを伸ばしてその男を居心地よくしてやる。翼が巻かれて 胴や太ももの上部にのっている。やつれた顔で、彼女を見上げてほほえむ。ひどく苦しそ うだ。水を一口飲ませてやると、目で感謝する。彼女は上司に報告しなければと自分に言 い聞かせ、けれど行こうとするとかれが翼で触れる。羽を取ってほしいのだと彼女にわか らせる。贈り物として。記念品。ローリーは拒否するが、男は固執する。すべてがとても 変だ。

ついに彼女は同意する。小さくて白い、先の方の風切り羽を選ぶ。引っ張るが、固く くっついている。彼女はもっと強くひっぱり、そしてさらにもっと強く引く。

急に羽が抜け、そしてシュッと音がする。ローリーは顔に柔らかな空気の流れを感じ る。かすかにミルクの味。

彼女は羽の先で唇に触れる。シュッという音が続く。彼女は自分が勝手な行動を取った と気づく。驚かない。すべて過ぎゆく。彼女は生き残った。その男の時間は終わった。

ドキュメント内 器官切除 (ページ 126-129)

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