第
4章
では,児
童 た ちが様 々な リソー スを用 いて活動 に参加 し,課
題 を達成 して ゆ く場面 につ いての記述 と分析 を行 つた。本章 では
,そ
れ ぞれ の場 で見 られ た 特徴 を取 り上 げ,児
童 が使 用す る リソー スや,会
話 の参加 者 の間主観 性 の形成 の 仕 方 に,
どの よ うな違 いが見 られ たのかつい て さらに議論 を展 開す る。5。
1体 育館 と観光地でのインタビュー活動の相違
:リソースの使い方の違い 体育館で行われたインタビュー活動の リハーサル と実際の観光地でのインタビ ュー活動を比較するために ,ま ず , トランスクリプ トに示 した リソースを種類
,質 ,会 話の中に出現する密度に焦点を当て ,体 育館での リハーサル活動 と観光地 での活動を比較 した。その中でも ,こ こでは特に視線の使い方について詳 しく見 ていく。
体育館における活動である事例
1では
,児童が手元に視線を落 としている場面が 多 く見 られた。その部分を再掲する。
事 例 1
)50
アイ: Thank you.《
シール台紙に視線 を落 としたまま,51
教諭 に軽 くお辞儀 をす る》52 (2.0)
→
53
アイ:
《シゲの方 に一瞬視線 を向けた後す ぐに手元 に視54
線 を戻す》55
タエ:
°シゲちゃん°=《
アイに続 くよ うにシゲに視線 を56
向け,一
歩近づき,ひ
じで軽 く小突き,シ
ゲの発話57
を促す》う
58
シゲ: What's your favorite Japanese food?《
手59
元の資料 を読み,そ
の後教諭 に視線 を向ける》60
アイ:
《シゲに視線 を向け,タエに一歩近づき,教
諭の方61
に視線 を向ける》62
児童たち:《
教諭 に視線 を向ける》63 老鮮諭: = (。 ) ■
ike (2.0)m:
う
64
児童たち:《
手元に視線 を落 とす》③視線⑦道具
⑥頭や体の動き
③視線
③視線
⑥体の動き
③視線⑦道具
③視線
⑥体の動き
③視線
③視線
33
L50,53,58,64に
見 られ るように ,児 童は手元や道具に視線を落 としている場面 が多 く見 られた。 これは ,体 育館での リハーサル活動では ,各 児童が 自分に割 り 当てられた質問の順番がめぐってきた ら ,そ れを発話す るとい うことに注意が向 いているためであろ う。それに対 し観光地における活動では ,視 線の向け方に違 いが見 られた。事例
7の中で際立って見 られた場面を再掲す る。
事例
772 シゲ : 《 手元と観光客の目を交互に見ながら》 ③視線 73 Eh (。 )Whatis your (。 )favorite Japanese
74 food?
→
75
アイ:
《シゲに視線 を向け,シ
ゲの what′s yourの
後の③視線
76
短いポーズの間に,シ
ゲに向かつてfavoriteと
口⑥体の動きや向き
77
を動かす》78
観光客:Favorite Japanese food.《 foodと
い う発話を⑥体の動き
79
強調するように,拍
を刻むように一度右手を動かす》80
シゲ:
《頷 く》⑥頭の動き
81
観光客:°Food° 《小声で発話 し,自
ら確認するかのように,
⑥体の動き82
拍を刻むように一度右手を動かす》Ah:::
②非言語的音声83 (3.0)
→
84
アイ・シケ゛・タエ:《観光客を見つめ,回
答を待つ》③視線
85
観光客:
。hhh Uh:=《
一瞬空を見上げ,ポ
ケ ッ トに手をや②非言語的音声
86
る》⑥頭や体の動き
87
カナ:
《サイン用紙をファイルに片付ける》⑦道具
88
アイ: =」
apanese food。=
89
観光客:
ヨ■ yeah yeah yeah。 《ポケッ トからスマー ト⑦道具
90
フォンを取 り出す》91 See this one.
92
シゲ:
《観光客に無言でピクチャーカー ドを見せ る》⑦道具
93
観光客:
《シゲの動きには気がついていない》94 ( )(.)<ThiS one.>《
スマー トフォン⑦道具
95
を操作 しながら》96
°This one°(3.0)Hey (。 )thiS One.
97
《アイに視線を向けスマー トフォンの画面を見せ③視線
98
る》⑦道具
99
アイ・カナ・シケ゛:《 スマー トフォンを覗き込む》
③視線
→
loo
アイ: Ah!串
[焼き]《スマー トフォンを指差 しなが ら観②非言語的音声
101
光客の 目を見る》③視線
102
シゲ: [Ah:ほ
んとや]=
②非言語的音声34
L75,84,100に
見られるように ,児 童― 児童や ,児 童観 光客 といつた ,活 動の参
加者同士が視線を合わせる場面がより多く見 られた。 さらに事例
1のL64では ,教
諭の返答を待つ間児童たちは手元に視線を落 としていたが ,事 例
5のL84では観光 客を見つめなが ら返答を待 つていた。また ,事 例
7のリソースの現れ方を見ると
,視線だけでなく ,そ の他の非言語的 リソースも一度に多 く現れてお り ,児 童たち
が様々な リソースを同時に ,複 雑なや り方で使用 していることが うかがえる。 こ れは, 自分の発話順番が予定調和的にめぐって くる体育館での リハーサル とは異 な り ,観 光地では ,イ ンタビュー活動をする児童たちを取 り囲む環境がめまぐる しく変わつてお り ,観 光客や持つている材料などに視線 を向けて ,環 境の変化に 対応 していこうとす る姿を現 している。
5。
2協
働 的 な場 の構成体育館 での活動 で ある事例
1,2で ,児
童 同士で発話 を促 す 場面がい くつ か見 ら れ た。 それぞれ の場 面 の抜粋 を以下 に示す。事 例 1
50
アイ: Thank you.《
シール台紙に視線 を落 としたまま,51
教諭に軽 くお辞儀 をす る》52 (2.0)
→
53
アイ:
《シゲの方 に一瞬視線 を向けた後す ぐに手元 に視54
線 を戻す》→
55
タエ:
°シゲちゃん°=《
アイに続 くよ うにシゲに視線 を56
向け,一
歩近づ き,ひ
じで軽 く小突 き,シ
ゲの発話57
を促す》58
シゲ:
→ぬat's your favorite」 apanese food?《
手59
元の資料 を読み,そ
の後教諭 に視線 を向ける》③視線⑦道具
⑥頭や体の動き
③視線
③視線
⑥体の動き
③視線⑦道具
事例2 75 76
→77 78 79 80
イ 諭 イ ア 教 ア
ナ イ カ ア
工
tiS―
y。m
hhhhカ
ナやで。《カナに視線 を向け
,カ
ナの発③視線 話を促す》
あつ
(1.0)Thank you.
Th[ank you.]
35
リハーサル で あ る事例1のL53,55で,アイや タエ は視線 や体 の動 きに よつて シゲ の発話 を促 し
,事
例2のL77では,ア
イ はカナ の発話 を促 してい る。 この よ うに,児童 同士 は 自分 の発話順番 の枠 を埋 め るよ うに発話 してい る こ とが うかが え る。
しか し観 光地 にお いては
,発
話順番 の枠 に とらわれ ないイ ンタ ビュー活動 を行 な つていた。以下は事例6の抜粋 である。事例 6
70
カナ: Thank you.《
観光客か ら鉛筆を受け取る》71
アイ:
《手でカナの傘をよけ自分のスペースを確保する》72
シゲ:
《手元 と観光客の 目を交互に見ながら》73 Eh (。 )What's your (。 )favOrite Japanese 74 food?
75
アイ:
《シゲに視線 を向け,シ
ゲの what′s yourの
後の76
短いポーズの間に,シ
ゲに向かつてfavOriteと
口77
を動かす》⑥体の動き
③視線
③視線
⑥体の動きや向き
4.2.2で述べ た よ うに
,本
来発話す るタイ ミングでアイ は発話せず,代
わ りに シ ゲが Eh(。 )What's your(。 )favorite」 apanese fOod?"(L73)と 発話 してい る。そ して
,ア
イが シゲに向か つてfavorite"口
を動 か してい る こ とか ら,シ
ゲ と アイ の間で,活
動 を成 立 させ よ うと努 力 してい るこ とが読み取れ る。 ここで も し 仮 に,児
童 たちが リハーサル通 りに会話 の1贋番 を守 り,す
でに得 てい る観 光客の出身地 について情報 を得 てい るに もかかわ らず
,再
度Where are you from?"
と尋 ねた と した ら
,必
要以上 の質 問 を投 げか ける1こ ととな り,会
話 は円滑 に行 わ れず,滞
つていたか も しれ ない。1これは
,協
調の原理(グライス,1998)が守 られていない状況だ と言 える。話 し手 と聞 き手の会話が円滑に進むためには,話
し手 と聞き手が協調 してい ることが必要であると 述べ,会
話 を円滑に運ぶための基本的なルール として会話の公理 (maxims ofconversation)を 提案 した(グライス
,1998;佐
久間 et al,2004)。 会話の公理は以下の 4つか らなる。質の公理(maxim of quality)(自 分が嘘や偽 りだ と思 つていること,確
信 を持てない ことを言 うべ きでない
),量
の公理(maxim of quantity)(必要なことを 必要なだけ述べ よ),関
連性の公理(maxim of relation)(その場の状況 と関連のあることを述べ よ
),様
態の公理(maxim of manner)(簡潔かつ明瞭 に述べ よ)。36
リハーサルから ,こ の観光客へのインタビューに至るまで ,児 童は誰がどのセ リフを言 うのかとい う決められた枠組みのもと会話を構成 してきていた。 しか し 本事例においては ,児 童はその枠組みから逸脱 し ,結 果的に基本的なルール とし ての量の公理や関連性の公理が守 られたと考えられる。
5。
3会
話 の滞 りそ うな場面 での会話 の継続本セ クシ ョンでは
,体
育館 での活動 では見 られ る こ とのなか つた,会
話 が滞 り そ うな場 面 にお ける児童 のや りと りに焦点 を当て る。事例5に
お け るや りと りを 再掲す る。事例
522 タエ : 《観光客 に視線 を戻 して》巌呼 ェ ask you a ③視線 23 question?
う
24
観光客:what?
25
タエ:
《アイに視線 を向ける》③視線
26
観光客:《
タエがアイに視線 を向けたのを見て,同じく視線 を③視線
27
アイに向ける》28
アイ: Ah:あ
なたに:(。)質
問を してもいいですか。③視線
29
観光客:《
首をか しげ 自分のあごを指差 した後 に,手
のひ らを③ 視 線 ⑤ ジェス
30
上に向けてアイを指 し示す》チャー
→
31 ( )PardOn? What?
32
カナ:
《相手を指す よ うに右手 を少 し動かす》③視線⑥体の動き
→
33
観光客:Pardon?What?
34
アイ: Oh:↑ You《
手のひ らを上に向け観光客を指 し示す》 ③視線⑤ジェスチャー35
観光客:un(。 )yes《
自分 を指 して頷 く》③視線⑥頭や体の動き
36
カナ・タエ:《
アイ と観光客を交互に見る》③視線
37
アイ:
知は ゜=《手を 回元に持 っていった後,資
料に視線 を落② 非 言 語 的音 声
38
とす》③視線
39 タ エ : → 》estiOn= 《観 光 客 を 指 し な が ら 》 ⑥頭や体の動 き③視線
40
アイ:
く》estiOn《
観光客を指 した後オーケーのジェスチ③視線⑤ジェスチャー
41
ャーをする》③視線⑤ジェスチャー
42
カナ:
《観光客の 目を見て手で三度拍 を刻む よ うな動 きを③視線⑥頭や体
43
し,一
度領 く》の動き
44
観光客:uh′yeah yeah veah.《
オーケーのジェスチャー⑤ジェスチャー
45
をする》46
アイ・カナ:《
観光客の 目を見てオーケーのジェスチャーをし,一⑤ジェスチャー
47
度頷 く》⑥頭の動き
37
この事例 において
,L24,31,33は ,体
育館 にお け る活動 で は見 られ なか つた想 定 外 の返答 であつた。5。 1でも示 した よ うに,こ
の よ うな想 定外 の状況 に対 し,児
童は言語
,非
言語 的音 声,ジ
ェスチ ャー,頭
や体 の動 きな ど,様
々な リソー スを同 時 に活用 してい るのが見て取れ る。また
,こ
の場面で注 目したいのは,
May l ask you a question?"と い う一つ の質 問を,複
数人 で観 光客 に伝 えよ うと してい る点で あ る。 タエの Question"(L39)と い う発話 に続 いて即座 にアイが
Question"(L40)と
発話 し,そ
れ を受 け て観 光客 が児童 の発話 を理解 した(L44)。 カナ は,発話 は してい ない ものの,L42,46 で観 光客 に視線 を向 け,拍を刻 む よ うに手 を動 か し,ジェスチ ャーや頷 きでアイ,タエ
,観
光客 とともに,活
動 にお ける間主観性 を保持 しよ うと してい る。本事例 で見 られ たや りと りは,リ ハ ーサル活動 で見 られ た
,児
童 の質 問―教師 の 回答 とい う枠組 み に収 ま らない もので あ る。 日常会話 で は常 に想 定外 の こ とが起 こるが,そ
うい つた点 で本事例 はま さに,シ
ナ リオがない 日常 の コ ミュニケー シ ョンに近 い活動 であつた と言 える。 つ ま り,観
光地 での会話 では不確 定な要素が 多 く,予期 していなかつた ことが起 きる と活動 が前 に進 まな くな るこ とがあ るが,そ うい つた ときで も児童 た ちは,それ ぞれ の発話順番 を こなす だ けではな く,様々 な リソー スを協調 させ なが ら活動 に参加 してい るこ とが よ く分 か る。 この時
,活
動 の 目的 を達成 させ よ うとす る力
,す
なわ ち,間
主観性 が形成 され てい るこ とが 重要 とな る。社会認 知 的アプ ローチ に従 えば,観
光地で は認 知―身体一環境 の 中で も,イ
ンタ ビュー の対象 となった観光客 を含 め,環
境 面 の条件 が常 に変化 し続 け たため,コ
ミュニケー シ ョン上 困難 な状況 が発 生 したが,児
童 た ちはその変化 に あわせ て身体 の動 きや認知 を協調 させ る こ と,
リソー ス を最 大 限に利用す る必要 性 があつた こ とが言 える。5。
4ま
とめ本研 究 では