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ワークショップⅡ(要旨)

ドキュメント内 ドキュメント3 (ページ 33-48)

医療リハと職業リハの連携による就労支援

コ ー デ ィ ネ ー タ ー:吉備高原医療リハビリテーションセンター 院長

徳弘 昭博

メインコメンテーター:相澤病院リハビリテーション科 統括医長・総合リハビリテーションセンター長

原  寛美

神奈川リハビリテーション病院医療福祉総合相談室

メディカルソーシャルワーカー

生方 克之

障害者職業総合センター 主任研究員

田谷 勝夫

障害者職業総合センター職業センター 開発課長

吉田 泰好

静岡障害者職業センター 主任障害者職業カウンセラー

加藤 幸子

である。これが今まで提言されてきたことです。

今回のテーマとしては、このワークショップ 3回のまとめとして「今している連携、今でき る連携」を話し合い、それをヒントに、皆さま がそれぞれの現場で何かできればということを 考えていきたいと思います。

では、早速、各コメンテーターの先生方の発 表に移りたいと思います。相澤病院の原寛美先 生お願いいたします。

【原】 相澤病院は長野県の松本市にあり、全床 DPC1)を採用した急性期の一般病院です。高次 脳機能障害を例に取り上げて、これまでの就労 支援の実際とこれからの在り方についてお話し します。

長野県は高次脳機能障害のモデル事業に加わ っておりませんが、2004年から県独自のゼロ予 算事業として、県を東西南北の四つに分けて、

それぞれの拠点病院をつくって支援事業を行っ ています。私どもの病院も長野県の中心地区の 拠点病院ということになります。

こういった中で、相談業務は一般からの電話 対応や他の医療機関からの紹介に加えて、長野 障害者職業センターから障害像をもう少し詳し く評価してほしいといった依頼もあります。そ こで私どもの病院で入院、外来のリハを行って、

他の医療機関に逆紹介をする。そして地域の復 職、就労につなげる。さらに長野障害者職業セ ンターと連携を深めていく中で、その職業セン ターを経由してこちらの障害者職業総合センタ ーに再度依頼をするといった形で就労支援を行 ってきました。

今、特に感じていることは、医療リハが大変 重要であるということです。医療リハにおける 診断がリハの流れのまず第一歩であるというこ とです。その中で、リハビリテーションの目標 を設定して改善を図っていく。そしていかに家 族を取り込んでいくかということ。医療機関と して就労側への働き掛けを行うということです。

そして、ある中間の地点で職リハとの連携を開 始していく。それで就労が達成できたとしても、

それはあくまでも一つの通過点であり、その中

でさらに認知機能の改善を図っていくといった 作業が必要です。医療リハの中ではさまざまな 短期的なゴールを複合的につくっていく作業が 必要で、その中で、職リハのスタッフと情報交 換を行って就労につなげ、さらにその後フォロ ーアップをしていくといった流れをつくってき ました。

医療リハの主体性ということでは、就労を目 指すリハのデザイン化が必要で、さまざまな個 別的なデザインをつくらないといけません。こ れは決して一般論としてデザインできるもので はなく、短期的なゴールを設定し、普段から継 続的な改善を図っていくという取り組みが必要 になります。

リハビリテーション医として常に何を考えて いるかというと、その方の神経組織の可塑性や 再組織化をどのように援助できるかということ です。急性期病院としていかにタイムディペン デントなリカバリーをするか、初期の段階でい かに回復を図ることができるかが重要で、まさ に時間との闘いなのです。

今年4月の診療報酬改定で画期的な改正があ りました。1日3時間、週7日のリハビリテー ションが可能になったことです。したがって、

入院した患者さんは、1週間に21時間のリハビ リテーションを受ける権利があるわけです。そ れを急性期病院で保障しなければいけないので す。日数制限はあるものの、大抵の方は退院後 も就労するまでリハビリテーションを継続でき るのです。退院後のリハの継続性の保障という ことです。

もう一つ医療機関がすべき重要な仕事としま しては、経済保障として障害年金の診断書を作 成するという作業があります。

そして、改善の中間点における職リハとの連 携作業の開始ということがありますが、これは あくまで中間点で、決して医療リハの終わりで はないということです。さらに就労達成後の援 助の継続性ということで、就労というのはあく まで通過点であるという視点で取り組むべきだ と考えています。

次に、職リハと連携して就労を果たした症例 についてお話しします。

40代後半の男性で、右の頭頂葉皮質下出血の 方です。医療でできる評価としては、患者さん の状態をいかに数値化するかという作業があり ます。WAIS2)のIQや記憶のスコアRBMT3)、コ ース立方体組み合わせテスト4)、ウィスコンシ ンカードソーティングテスト5)といったスコア を使って評価を行った結果、認知機能はかなり 低いという状況でした。

こういったケースに対して、復職に向けたリ ハを開始しました。入院が1カ月、その後、1 年2カ月外来でフォローアップをして、全般的 な認知機能が改善をしているということを確認 して、職リハへの情報提供と協同作業の連携を 申し込みました。障害者職業総合センターでの アセスメント、長野障害者職業センターでの実 務研修コースや復職前訓練を実施。また、この 間に職業センターのスタッフと職場の上司との 面談、復職業務の調整に関しての打ち合わせも 開始し、2年6カ月後に半日勤務ということで 復職を開始しました。さらにジョブコーチと職 場との調整を行って、発症から2年7カ月後に 職場内の配置転換による復職を果たしたという ケースです。

この方の3年経過後の神経心理テストのスコ アは、まだ低いけれども確実に改善しています。

こういった改善が認知機能における情緒的な改 善ということになるわけです。さらにこの方が、

職場内のさまざまな能力制度の導入等の中でど のように今後仕事を継続していけるか、その援 助をしていくことが私たちの仕事ではないかと 考えています。

最後に、現行の医療制度の中で、就労支援に 向けた特に医療リハの主体性が問われています。

医療リハとしては、就労達成をした個別例の集 積とフィードバックを行い、職リハの専門職に さらに評価と意見を求める作業を恒常的に行っ ていくことがこれからの課題ではないかと思い ます。医療リハのプロセスにおいて、どの地点 から連携が可能であるのかということを、個別

的に検討するスタンスが私たちに求められてい るのではないかと思います。また、脳血管障害 のように急性期病院では最後までフォローアッ プしない疾患があったりといったことが、医療 リハがなかなか就労支援に結び付かない特殊性 を生み出しているのではないかと思います。

【徳弘】 医療リハにおける職業復帰、あるいは 職業リハの連携を求める主体性を持った治療を、

非常にダイナミックな考え方で実践されている ということでした。

それでは、メディカル・ソーシャルワーカー の立場から、神奈川リハビリテーション病院の 生方克之先生、お願いします。

【生方】 私は、医療ソーシャルワーカーという 立場と、高次脳機能障害支援普及事業において の相談支援コーディネーターという役割を担っ ております。ですから、医療的立場と福祉的立 場、そういった両面からこの医療と福祉の連携 ということについてお話をさせていただきたい と思います。

神奈川県は、平成13年度からモデル事業に参 加しており、この取り組みの中で、平成17年度 に高次脳機能障害のモデル事業を推進するため の委員会の中に、就労支援検討作業部会という ものを設けました。神奈川は比較的就労支援機 関が多くありますが、利用者の方にとってはど こに相談に行けばいいのか、どこが何をやって くれるのかがよく分からないという声が多く聞 かれました。そのために、利用者にとって分か りやすい窓口をつくり、利用者にとって本当に 必要な支援が提供されることを目指さなければ いけないのではないか、関係機関の間で自由な コミュニケーションができることによって、復 職や新規就労の支援が図れるのではないかとい うことで、このような作業部会を始めました。

この中で実際に行ったことはリーフレットの 作成ですが、機関の相互理解を促進することも 目的でした。それぞれの機関より事業報告が行 われてみると、意外と新しいことに気付いたと いうようなことが多かったと思います。部会で 顔をあわせお互いの機能を知ることにより実際

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