第4章 ワイヤ駆動アームの開発
4.3 ワイヤ張力自動調整機構
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のときのPulley-bはまだ(b)と同じ理由により,停止したままである.さらにモータ回転を
維持すると,(d)のようにWire-bがPulley-Lに巻取られ,ゆるみが除去される.このよう に,常にモータ動作開始時にワイヤのゆるみを吸収し,張力を発生させることができる.
このようなワイヤの張力調整にワンウェイクラッチを1つ用いる方法は提案されている が[4-9],本機構ではワンウェイクラッチを2つ用いることでモータ正転,逆転のどちらに おいてもワイヤの張力調整ができ,多自由度アームのように,アームの姿勢によりアーム がどちらの方向にも回転する可能性のある場合に適している.
なお,実際にはワイヤの弾性やシステムの粘性等により,挙動に変化は出てくる.もし 張力が高い状態でモータが始動した場合は,Fig.4.9でモータ軸の始動,Pulley-aの始動と ともに,Wire-a,Wire-bを介してPulley-bが引張られ,Pulley-aとPulley-bがほぼ同時 に始動し始めるため,ワイヤの張力は始動前と始動後でほとんど変わらす,張力が過度に 高くなることはない.
(a)
(b)
(c)
(d)
Fig.4.9 Motion of the mechanism
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次に,本機構の詳細な挙動について以下,解析を行う.本機構の系をFig.4.10のように モデル化する.なお,モータプーリ回転軸とアームプーリ回転軸は平行で共通の平面上に あるとし,重力方向はこの平面に垂直であるとする.ワイヤのゆるみのない状態を基準と して,そこからモータが各ワイヤを巻き取った回転角をθa,θb,ワイヤに発生する張力を fa,fb,アームのプーリ半径をR,モータのワイヤ巻取半径をrとする.ワイヤに発生する 張力は,ワイヤの縦弾性係数,断面積,歪をそれぞれE,A,εa,εb,として次式で表す.
b b
a a
EA f
EA f
(4-1)
ワイヤに生じる歪は,アームとモータの回転角の相対差で生じ,ワイヤがたるんでいる時 は0となる.ここで,ワイヤ方向をγ,変位をu,Lをワイヤ長さとして,∂u/∂γをη とし次式で近似する.
0
; 0
0
; /
0
; 0
0
; /
<
<
L b
L b L
b b
L a
L a L
a a
R r
R r L R r
R r
R r L R r
(4-2)
したがって,有限歪を考慮する[4-10]と,
2
2 1
u u (4-3)
であるから,式(4-1)は式(4-4)のようになる.
b
bb
a a a
EA f
EA f
2 / 1
2 / 1
(4-4)
さらに,ワンウェイクラッチをモデル化し,Tpをプーリの摩擦モーメント,Ipをプーリ の慣性モーメントとすると,式(4-5)のように表せる
m b
b p
p b b
m a
a p
p a a
sign T I r f
sign T I r f
) ( /
) ( /
(4-5)
またリンク側のプーリ周りの運動方程式は,系の粘性係数をDとして,式(4-6)のように表 せる.
L L L b
a Rf D I
Rf (4-6)
式(4-2),(4-4) ,(4-5),(4-6)より,モータ角θmの入力に対する各変数を求めることができ る.
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Fig.4.10 Model of the mechanism
モータ角θmを動作させた時の各プーリ速度のシミュレーション結果をFig.4.11に示す.
各物性パラメータはカタログ値および測定値より次の値を用いた.(E = 42000 N/ mm2 , A = 0.47 mm2, r = 20mm , R = 20mm , L = 200mm , Ip = 5000kgmm2, Tp = 0.2Nmm, m = 0.5kg , lg = 100mm , D = 450kgmm2s)また,faとfbの初期張力はそれぞれ25 Nと0 Nとする.これは,
faにはリンクの質量分の力がかかっているためである.
Fig.4.11より,プーリaの回転速度はモータ回転速度に追従しているが,プーリbの回転
は先述の動作概念の通り,動作開始が遅れる.このときの各プーリ角度をFig.4.12に示す.
プーリ b の回転角はモータ回転角とずれた値となる.さらに,このときのワイヤ張力の変
化を Fig.4.13 に示す.初期状態からモータ軸を動作させることにより,張力が増加するこ
とがわかる.これは動作開始時にプーリ b の動作開始が遅れたことによって,ワイヤのゆ るみが吸収されるためである.このように本機構により自動的に張力を調整し,ワイヤ張 力を保つことができる.
Fig.4.11 Simulation results of the speed of each pulley
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Fig.4.12 Simulation results of the angle of each pulley
Fig.4.13 Simulation results of the tension of the wire
次に基礎実験を行った.Fig.4.14は基礎実験装置を示している.実験では,ワイヤ張力が
低い状態(20N)からモータを動作させた時のワイヤ張力の変化をフォースゲージにより測
定した.Fig.4.16に結果を示す.シミュレーション結果(Fig.4.13のfa)と実験結果(Fig.4.15 の fa)を比較した場合,関節の始動と共にワイヤ張力が増加していること,関節の停止後 に初期張力よりも高い張力に収束していることなどの特徴の一致が見られた.これにより,
シミュレーションでの予測通りに,ワイヤにテンションをかけられることが確認できた.
ワイヤにテンションをかけられることにより,アーム動作時の振動や時間遅れを軽減でき,
常に始動時にテンションをかけられる本機構はメンテナンス性向上に有効である.
以上,少ない部品でコンパクトにモータ近くのスペースに配置できる張力自動調整機構 を開発することにより,アームの質量の低減,構造の小型化を実現している.
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Fig.4.14 Basic experiment device
Fig.4.15 Experimental results of the tension of the wire
‐1 0 1 2 3 4 5
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
3 4 5 6
Motor Velocity [rad/s]
fa Wire Tension [N]
time [s]
fa θm
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