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ロバスト性向上手法が制御時間の適用可能範囲に及ぼす影響の検討

第 3 章 固有振動数の推定誤差に対するロバスト性向上手法 21

3.4 ロバスト性向上手法が制御時間の適用可能範囲に及ぼす影響の検討

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(a) Residual energy Eres

(b) Natural frequency component Fa Fig. 3.9 Effect of ε for ν1.6.

ZF2制御や ZF3制御といった複数成分を除去する手法では,D1ZF1制御や D2ZF1制御とい った微分係数を零とする手法とは異なり,式(3.3)のように成分を除去する振動数の値を決め なければならず,除去する成分の数が増えるほどそのパターンは多くなる.また,εpの値 によって制御性能は変わり,図3.5および図3.7のように誤差が小さいときの残留振動が大 きくなり得る.そのため,想定される誤差が過大でない場合には,余分な設計パラメータ を必要としない微分係数を零とする条件を適用するのが便利であると考えられる.

図3.7および図3.9より,ZF1制御よりもZF2制御およびD1ZF1制御のロバスト性が高く,

ZF3制御およびD2ZF1制御のロバスト性が最も高いことがわかる.このことから式(3.3)のよ うに除去する振動数成分の数を増やす,または式(3.4)および式(3.5)のようにε0で零とす る振動数成分の微分階数を増やすことで,ZF3制御およびD2ZF1制御からさらにロバスト性 を向上できる可能性が高い.しかし,そのための条件を追加することで,図3.4と図3.8の 間で見られるような台車の折り返し運動が増加することに注意が必要である.

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が増大している.吊り荷の振れ角が大きくなるとロープにかかる張力の最小値が小さくな る恐れがあり,その値が負になるとロープがたるむため正常な搬送が不可能となる.そこ で,搬送中の吊り荷の最大振れ角とロープにかかる張力の最小値の関係を明らかにすると ともに,正常な搬送が可能な制御時間の範囲に対してロバスト性向上手法が及ぼす影響に ついて調べる.吊り荷の最大振れ角θmax,張力相当値の最小値Sminを次式で定義する.

   

max max | 0 1

θθ τ  τ (3.8)

   

   

min

2

2 2

0 0

min | 0 1

sin 2 sin

cos a

a a

S S

S θ

τ τ

ξ θ ρ ω ζ ξ θ ρ

τ θ ρ θ

ρ ω ρ ω

   

      

    

(3.9)

図3.10はε0の場合におけるνθmaxおよびSminの関係を調べた結果である.図3.10(a) はθmax,図3.10(b)はSminである.両図ともZF1制御を黒の実線,ZF2制御およびD1ZF1制御 をそれぞれ青および赤の破線,ZF3制御およびD2ZF1制御をそれぞれ青および赤の実線で示 している.Smin 0となるνは正常な搬送が可能なνの下限であり,このννminとする.

まず,いずれの結果においてもνが減少するにつれてθmaxは増大している.それにともな いSminは減少しており,ννminにおいてθmaxが最大となっている.次に,手法間の比較を 行うと,ZF2制御とD1ZF1制御の結果およびZF3制御とD2ZF1制御の結果はそれぞれほぼ一 致している.ZF1制御と比較すると,ZF2制御および D1ZF1制御ではνminが大きくなってお り,ZF3制御およびD2ZF1制御ではさらに大きくなっている.このことから,ロバスト性を 向上させる条件を増やすことによりνminは大きくなり,搬送可能な制御時間が大きくなる ことがわかる.3.3節でν1.2の場合のZF3制御およびD2ZF1制御の結果を示していなかっ たのはこのためである.

なお,上記は推定誤差のないε0の場合に対する結果であり,誤差のあるε0の場合に ついてはεの値が結果に影響を及ぼす可能性がある.本研究で提案している制御入力の設計 ではロバスト性向上手法を含めてε0の場合に関する計算を行わないため,仮にεの値に よりνminが大きく変化するようであれば何らかの対策が必要となる.そこで,εに対する νminの変化を調べた結果を図3.11に示す.図3.11中の各線の意味は図3.10と同様である.

図 3.11 より,いずれの場合もνminεの増加につれてわずかに小さくなっているが,ほぼ 一定値を保つことが確認できる.したがって,特別な対策は必要としないことがわかる.

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(a) Maximum absolute angular displacement of the cargo θmax

(b) Minimum tension Smin

Fig. 3.10 Effect of ε on θmax and Smin for ε0.

Fig. 3.11 Effect of ε on νmin.

1 1.5 2

0 0.5 1

θmax[rad]

ν []

ZF1 ZF2p= 0.1) D1ZF1 ε= 0

D2ZF1 ZF3p= 0.1)

1 1.5 2

0 0.5 1

Smin[]

ν []

ZF1

D1ZF1 ZF2p= 0.1) ε= 0

D2ZF1 ZF3p= 0.1)

ε []

νmin[]

−0.1 0 0.1

0 1 2

ZF1 ZF2p= 0.1)

D1ZF1 D2ZF1 ZF3p= 0.1)

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