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レーザー光照射による⾦ナノロッドの状態変化

೛.೗ ⾦ナノロッドのレーザー光照射「その場」観察

೛.೗.೗

その場観察でのパルスレーザー光照射条件

本研究で使⽤する超⾼圧電⼦顕微鏡

JEM- NEF

およびパルスレーザー光照射 装置の模式図を図

5.1

に⽰す.別室に置いたレーザー光発⽣装置から出たレーザー 光がレンズとミラーを介して,超⾼圧電⼦顕微鏡内に進⼊し,⽔平⽅向に対して約

°の⾓度から試料に照射される.ミラーの位置にはテスト台があり,その位置で

パルスレーザー光の強度を測定することができる.本レーザー光照射装置の性能 を以下に⽰す.

 レーザービーム発⽣装置

Quantel YAG981C

 繰り返し頻度

10 Hz

 パルス持続時間

6-8 nsec

 ビーム照射⾓度 ⽔平位置から

42°

 波⻑

nm

5.1: レーザー光照射装置を敷設した超⾼圧電⼦顕微鏡.

೛.೗.೘

レーザー光強度

೘೛ೖೖ J/m

下での⾦ナノロッドの変形挙動

5.2

は,平均照射パルス強度

J/m

. × photons/m

)のパルスレーザー 光を

1

パルスごとに照射したときの,⾦ナノロッドの挙動を明視野観察した結果 である.それぞれ,照射前

(a),1

パルス照射(b),3パルス照射(c),および

4

パルス

照射

(d)後である.複数個が凝集して集合している⾦ナノロッドはより変形が⼤きく,

複数の⾦ナノロッドが合体しているものも観察され,単体のナノロッドと⽐べ,レ ーザー照射によって凝集しているナノロッドは⼤きく変形している.複数のナノ 粒⼦が接近したとき相互作⽤して電場を増強する近接場効果は,ナノ粒⼦間の距 離が短くなるにしたがって増⼤し,強いエネルギー吸収が起こる.プラズモン共鳴 波⻑シフトは,近接した⾦ナノロッドのアスペクト⽐や⾓度に依存する(76).さら に,⾦ナノロッドが導体の近くにあるとき,導体中に⾦ナノロッドの鏡像を作り,

実際の⾦ナノロッドは導体中の鏡像と電気的に相互作⽤する.このとき⾦ナノロ ッドは⼆量体のように振る舞い,プラズモンカップリングやプラズモン共鳴波⻑

のシフトを起こすとされている.このような理由から,⾦ナノロッドへと付与され るエネルギーはパルスレーザー光強度だけではなく,⾦ナノロッドの熱を逃がす 過程や電磁的相互作⽤である近接場効果,周囲媒質による効果等の局所的環境に も依存し,⾦ナノロッドの変形挙動に影響を及ぼすと考えられる.また単体のナノ ロッドの中でも変形に差があるなど,レーザー照射により誘起されるナノロッド の変形挙動は⼀様ではない.

5.2: 照射パルス強度2500 J/m2にてパルスレーザー光を照射したときの⾦ナノロ ッド明視野像.それぞれ照射前(a),1 パルス(b),3 パルス(c),4 パルス(d).

5.3

は縦軸に⾦ナノロッドのアスペクト⽐,横軸に⾦ナノロッドに対して照射 したパルスレーザー光の照射パルス数をとったグラフを⽰している.最初の

1

パ ルスの照射により,個々の粒⼦のアスペクト⽐は⼤きく減少しており,その後の変 形は緩やかであることが分かる.照射されているレーザー光の波⻑が

nm

で あるのに対し,溶液状態での⾦ナノロッドの吸光ピークは

nm

に位置する.レ ーザー光照射によって⾦ナノロッドが変形してアスペクト⽐が減少することで,

近⾚外域の共鳴ピークが低波⻑側へとシフトして⻘⽅偏移を⽣じ,レーザー光と

⾦ナノロッドの吸光ピーク波⻑の差がさらに広がるためだと考えられる.

5.3: 強度2500 J/m2でパルスレーザー光を照射したときの,パルス数に対する⾦

ナノロッドのアスペクト⽐の変化.各⾊は個々の粒⼦の変形挙動を⽰す.

೛.೗.೙

レーザー光強度

೟ೞೖ J/m

下での⾦ナノロッド⾼分解能観察

照射パルス強度

J/m

. × photons/m

)で⾦ナノロッドにパルスレーザ ー光照射を⾏い,⾼分解能 「その場」観察を⾏った結果を⽰す.図

5.4

は,それぞ れパルスレーザー光照射前

(a), 1

パルス照射(b),

2

パルス照射したとき(c)の⾦ナノ ロッドの⾼分解能像である.1パルス照射後の粒⼦は,外形が⼤きく変化しアスペ クト⽐が⼩さくなっているものの,ロッド形状を保っている.2パルス照射後は更 に⼤きく変形して,粒⼦はロッド形状から樽状へと変化している.図中に⽰すよう に,樽形状の表⾯は

{001},{111}に対応しており,もとの単結晶の結晶⽅位は保ち

つつ,より表⾯エネルギーの低い晶癖⾯をもつよう原⼦が再配列したものと考え られる.また,

{110}側⾯の拡⼤図を図 5.4

中のインセットに⽰している.照射前 のものと⽐べ,2パルス照射後の粒⼦の表⾯には微細な凹凸構造ができており,表

⾯により安定な

{111}⾯が現れている.このような微細形状は,プラズモン光学特

性に影響を与えることが計算から⽰唆されている.後の議論のために,ここで観察 された変形挙動を条件

H

Higher)とする.

5.4: 強度 980 J/m2でパルスレーザー光を照射したときの⾦ナノロッド⾼分解能 像.それぞれ照射前(a),1 パルス(b),2 パルス照射後(c).

5.5

は,同じ試料グリッド内の別の粒⼦を観察した結果である.それぞれパル スレーザー光照射前

(a),1

パルス照射(b),4パルス照射

(c),5

パルス照射(d),6パ

ルス照射

(e)したときの⾦ナノロッドの⾼分解能像である. 1

パルス照射後,結晶構

造に⼤きな変化は⾒られない⼀⽅,⾦ナノロッドの外形は中央部分が膨らんだよ うに変形している.4パルス照射後,粒⼦のアスペクト⽐がほぼ

1

となり形状は球 体に近くなっているが,結晶中に⽋陥は観察されない.5パルス照射後の粒⼦の中 央付近には単結晶とは異なる格⼦パターンが⾒られ,粒⼦の結晶構造が変化してい ることが分かる.

6

パルス照射後の粒⼦の構造は

5

パルス照射後の構造から再度変 化しているように⾒える.

5.5: 強度 980 J/m2でパルスレーザー光を照射したときの⾦ナノロッド⾼分解能 像.それぞれ照射前(a),1 パルス(b),2 パルス照射後(c).

5.6

は,さらに別の粒⼦のパルスレーザー光照射前(a),

1

パルス照射後

(b)の⾦

ナノロッド⾼分解能像である.このときは

1

パルスで結晶構造が⼤きく変化し,双 晶が観察される.この強度では,図

5.4

に⽰したような⽋陥を伴わず緩やかに変形 する粒⼦,図

5.5

に⽰すように数パルスの照射で⽋陥を伴い徐々に変形する粒⼦,

5.6

に⽰すように

1

パルスの照射で⽋陥を伴い⼤きく変形する粒⼦と,それぞれ で異なる変形挙動が観察された.同じパルス強度でも⾦ナノロッドごとで変形挙

動に差があるのは,パルスレーザー光の空間的 ・時間的なムラ,もしくは周囲環境,

サイズやアスペクト⽐による⾦ナノロッドの吸光量の差などに由来するものと考 えられる.

5.6: 強度 980 J/m2でパルスレーザー光を照射したときの⾦ナノロッド⾼分解能

像.それぞれ照射前(a),1 パルス(b).

೛.೗.೚

レーザー光強度

೚೟ೖ J/m

下での⾦ナノロッド⾼分解能観察

5.7

に,照射パルス強度

J/m

. × photons/m

)で同様の⾼分解能 「そ の場」観察を⾏った結果を⽰す.照射前には丸みを帯びていた⾦ナノロッド両端の 形状が

20

パルス照射後にはやや鋭利な形状となっており,アスペクト⽐は

3.6

か ら

3.2

へと変化している.

80

パルス照射後には上半分の形状が台形,下半分の形状 はより鋭利になり,アスペクト⽐は

2.6

に変化している.また柱状部分の表⾯に鋸 状の凹凸が確認できる.

240

パルス,

1000

パルス照射後には粒⼦は照射前の形状か ら⼤幅に変化しほぼ球形となり,⼀部に平坦な⾯が観察される.

このようにパルスレーザー光照射に伴い粒⼦の外形は⼤きく変化する⼀⽅で,

双晶といった⽋陥は観察されない.また,照射前の⾦ナノロッドの表⾯とくらべ,

パルス照射後の⾦ナノロッドの側⾯には凹凸が観察され,狭い{111}⾯がジグザ ク状に出てきている.後の議論のために,ここで観察された挙動を条件

L

(Lower)

とする.

5.7: 強度 490 J/m2でパルスレーザー光を照射したときの⾦ナノロッド⾼分解能 像.それぞれ照射前(a),20パルス(b),80パルス(c),120パルス(d),240パルス(e),

1000パルス(f)照射後.

೛.೗.೛

単結晶を保持して変形した粒⼦の⽐較

条件

H

と条件

L

では,それぞれ単結晶を保って樽型へと変形するという同様の 挙動が⾒られた.しかしながら,変形に要したパルス数はそれぞれ数パルス,数百 パルスと⼤幅な差異がある.そこで本節ではこれらの条件を量的に⽐較し,変形挙 動における素過程の抽出を試みる.

パルス照射数の関数として,粒⼦の⻑さ,幅,アスペクト⽐を図

5.8

にプロット した.条件

H

ではパルスレーザーの

1

ショットまたは

2

ショットで⾦ナノロッド

の形状は⼤きく変化した.⼀⽅,条件

L

では,図

. b

に⽰すように形状変化は緩 やかに進⾏しており,アスペクト⽐がほぼ

1

の樽型の形状に到達するには,最⼤

パルスが必要であり,その後の

1000

パルスまでほとんど形状変化は⽣じてい ない.これは,ナノ粒⼦のアスペクト⽐の減少によって,吸収ピークがより短い波

⻑へと⻘⽅偏移して光の吸収が減ったためと考えられる.

5.8: 条件H (a)と条件L (b)における,パルス数の関数としてのナノロッドの⻑さ,

幅,アスペクト⽐の推移.

⾼分解能像に映された粒⼦の外形を⻑軸周りで回転積分して,表⾯積𝑆

(nm ) と体積𝑁 (原⼦個数)

を求めた.ここで,

𝑝

(nm/pixel)は画像のピクセルサイズ,𝑑 𝑙 はピクセル単位 で測定した⻑軸上の位置

𝑙での粒⼦の直径, 𝜌 =

(atoms/nm )は⾦の体積あたり の原⼦密度,インデックス

𝑖 は照射パルス数にそれぞれ対応する.得られた結果を

5.9

に⽰す.条件

H

において,レーザーパルスを

1

ショットおよび

2

ショット すると,図

. a

に⽰すように,表⾯積は初期状態の

85%および 70%へとほぼ直線

的に減少しており,その減少率は

nm /pulse

であった.条件

L

では,

pulse

𝑆 𝑝 𝜋𝑑 𝑙

(5.1)

𝑁 𝜌𝑝 𝜋 𝑑 𝑙

2 (5.2)

の照射まで条件

H

と同様にほぼ線形に減少しており,その減少率は

. nm /pulse

であった.体積変化について,条件

H

での体積は図

. c

に⽰すようにわずかに増 加しているが,これは⾮現実的である.実際の粒⼦は表⾯に晶癖性を有するのに対 し,計算では回転対称であると近似しているために⽣じた誤差と考えられ,体積は ほぼ⼀定であると考えるのが妥当であろう.⼀⽅,条件

L

では,原⼦個数𝑁は照射 パルス数

𝑖 =

までほぼ直線的に減少し,240 パルス照射後にはどちらも初期状 態のほぼ半分にまで減少している.これは,レーザー照射の各パルス照射によって 平均で約

290

個の原⼦が蒸発したことを⽰す.

5.9: 条件H (a, c)ならびに条件L (b, d)における,レーザー光の照射パルス数の関

数としてのナノ粒⼦の表⾯積(a, b)および体積(c, d)の変化.

5.10

に模式的に⽰すように,ショット前後の形状と体積を⽐較することで,

レーザーパルスによって引き起こされる形状変化に関与する原⼦の数を評価した.

各照射ステップでの外形について,質量中⼼を⼀致させて⽐較すれば,不⼀致部分 はレーザー光照射によって励起され移動した体積と⾒なすことができる.図

5.10

の濃い⻘⾊の領域の原⼦は,照射時に可動的になり,形状変化の過程で薄い⻘⾊の

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