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レジスレイティブ型ホーム・ルール制度の採択の経過

Ⅱ. ワシントン州を検討する意味

Ⅴ.2. レジスレイティブ型ホーム・ルール制度の採択の経過

52 は、州外にいる会社や厳しい労働状況に対して不満を抱えていた。彼らは、種々の改革を 求めて最終的に合同し、特に、州及び地方の公職についての投票機会を求めてポピュリス ト運動を起こした。また、禁酒運動は、中流階級の人々の感情を害する振舞いをする飲酒 労働者のたまり場となる酒場(saloon)を迷惑施設として排除するものであった272

これらの問題に対応するための手段として挙がった地方選択条項(local option provisions) は、ワシントン準州において、全州的な統一基準の設定に伴う衝突を回避し、地域コミュ ニティその他の単位の独立性を正当化すると思われたために特に魅力的に思われたが、準 州最高裁判所は、当初、地方にあまりにも強い権限を付与するとして認めなかった273。し かし、1888年に、酒類販売の規制のためにカウンティ及びシティに手数料(fee)を徴収する ことを許可する免許法(license law)が制定され、地方選挙では、時に酒場の存在を問うレフ ァレンダムが行われるようになった274。このことは、次の2つのものを地方政府にもたら した275。1 つは、際立った地方単位の構成とそのアイデンティティを奨励する地方選択原 則であり、もう1つは、酒場及び酒類販売の免許制は一般に地方政府のための統制手段と 格好の潜在的収入源になるという認識であった。いずれにしても、こうした地方自治行政 への期待は、地方自治法人の権限付与と統制を巡る議論を促したといえる。

53 いことも認識していた279。法人を巡る制定会議の結論は「法人権限の強圧的行使を防止す る制約を定め、適法な法人にその成功をかけた人々に不公平となるような、感情的または 偏見による立法行為を防ぐことが、とりうる最善[の策]である280([]内-前田)」というもので あった。このことからは、憲法制定会議の構成員は、法人が州や州民にもたらす功罪を巡 るジレンマを抱えていたことが見てとれる281

法人に対する強い不信感は、公法人である地方自治法人の創設手法を巡る議論にもみら れた。州憲法11章カウンティ、シティ、タウンシップ組織の条文を検討した「カウンティ、

シティ、タウンシップ組織委員会(The Committee for County, City, Township Organization) 282」 の委員の間では、他州の状況から、特別立法によるシティ憲章の制定は、法人化によって 利益を受ける労働者、私法人、政治家による汚職の場となるという強い懸念があった283。 ワシントン州憲法の条文策定に影響を及ぼした、オレゴン州の弁護士ウィリアム・ヒル

(William Lair Hill)の手によるワシントン州憲法の草稿284では、州立法府は、シティ及びタ

ウンの法人化、組織構造、等級分類、憲章の変更について定めるには特別法によってでは なく一般法によってでなくてはならないとされていた(ヒル憲法案11 章4,5条)285。ヒル は、11 章の条文案についての短いコメントの中で、特別法による法人化について、「立法 府の特別法によりシティ及びタウンを法人化することは、それがはびこる州において尽き ることなき害悪の根源であるということを知らせる必要のある者はない286」と手厳しく批 判する。そして、一般法によってのみ自治体政府を規制する法設計は、他の多くの州で採 択されており、そのような害悪に対する有効な救済であると証明されており、加えて良き 地方の統治(local government)を保証してきた287、と評価している。この部分は、州憲法11 章10条に採用された。この点を巡って、制定会議では、ある委員から、隣接する市とタウ ンが1つの名前と政府の下で合併する場合について定める特別法を州立法府が制定できる 旨の規定を 10 条に挿入することが提案された。これに一人の委員が汚職の手段になると 反対し、座長のスタイルズ(Theodore L. Stiles)は、合併については特別立法に依らずとも一

279 Id. at 239-240.

280 Id. at 240.

281 Id.ケナップによれば、法人についての制定会議の熟慮は、その後の立法府の対応に引き継がれることはなかった

という。

282 JOURNAL OF WACONST.CONVENTION, supra note 276, at 705. ワシントン州憲法制定会議に関する資料の紹介につい て、See, UTTER &SPITZER, WASTATE CONSTITUTION, supra note 267, at 277-284. なお、この章を巡る他の重要な論点とし て、カウンティ議員の地位を巡るものがあった。当時、ピアースカウンティとキングカウンティが両者の境界を巡っ て激しく対立していたことによる。JOURNAL OF WACONST.CONVENTION,id.

283 Knapp, supra note 277, at 240-241. 実際に、各々の信条と憲法の内容に関する主張を述べるためにやってきた法人、

宗教組合、慈善組合、労働者組織、通商委員会、過激な理論家、そして保守的な弁護士で会議と委員会は溢れかえ り、構成員に対しては異なる統治理論の支持者からの侮辱的ですらある手紙が送られた(at 241)。本稿注(282)の文献 も参照。

284 オレゴン、カリフォルニア、ウィスコンシン、アイオワの州基本法を基にしたとされる。Id. at 241.

285 Id.なお、ヒルが提案した州憲法案にはホーム・ルール憲章の規定は見られない。William Lair Hill, A Constitution

Adapted to the Coming State: Suggestions by Hon. W. Lair Hill: Main Features Considered in Light of Modern Experience: Out-line and Comment Together, 1889, available at http://lib.law.washington.edu/waconst/Sources/Hill%20Constitution.pdf (last visited Apr 12, 2016). 州憲法第11章カウンティ、シティ及びタウンについて、See, id. at 70-72.

286 Id. at 72.

287 Id.

54 般法の制定によって解決できると説明した288。このように、地方自治法人を巡る第一の争 点は、地方自治法人に関する手続について、州立法府に特別法の制定を認めるか、一般法 のみとするかという点であった。

州憲法11章10条における次の問題は、どのような地方自治法人にホーム・ルール憲章 の制定権を付与するかということである。委員会ではホーム・ルール憲章制定権を認める 際のシティの人口要件について論じられ、会議では5,000人から50,000人までの様々な候 補が出された289。当初案では 25,000 人以上とされていたが、最終的には20,000 人が妥協 案として可決された290。この要件設定は、当時抜きんでて人口が集中していたシアトル、

タコマ、スポーケンの3つのシティの人口を考慮したものと思われる291。なお、20,000人 という人口要件は、後述する制定法の等級分類における第1級シティの人口要件と同じで あり、これが当時のワシントン州の「都市」の基準であったと理解できる。

これに対して、州憲法11章11条は、カリフォルニア州憲法を基にして作成されたヒル 憲法案11章7章がそのまま可決されたようである292。最終的に、ワシントン州憲法11章 は、州憲法11章10条、11条をはじめ多くの条項が、当時のカリフォルニア州憲法と同様 または非常に近い表現で定められた293

288 See, JOURNAL OF WASHINGTON CONST.CONVENTION, supra note 276, at 725-726.

289 Knapp, supra note 277, at 241-242. この人口要件を巡る議論には、制定会議の構成員の選出地域の状況が影響してい

たようである。See, JOURNAL OF WACONST.CONVENTION, id. at 160-161, 725-728. 構成員のバイオグラフィーについて、

See ibid. at 465-490.

290JOURNAL OF WACONST.CONVENTION, id; Knapp, id. at 242. UTTER &SPITZER, supra note 267, at 186. なお、人口要件は 1964年の州憲法修正40条により10,000人に緩和される。

291 1110条については、1911年に人口10,000人以上のシティに対して純粋に地方的関心事におけるあらゆる事項 を留保し、州政府および州法を排除するという修正案をシアトル選出の下院議員が主張したが、具体的修正活動には つながらなかったようである。See, Leo Jones, Proposed Amendments to the State Constitution of Washington, 4WASH.HIST. Q.12, 31 (1913), available at https://journals.lib.washington.edu/index.php/WHQ/article/view/4971 (last visited May 6, 2016).

292 See, JOURNAL OF WACONST.CONVENTION, supra note 276, at 728-729.

293 Knapp, supra note 277, at 241. ヒル案が採用された1111条は、わずかな文言の変更以外1879年カリフォルニア 州憲法1111条と同じものである。See, JOURNAL OF WACONST.CONVENTION, id.

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Ⅵ . ワシントン州におけるホーム・ルール制度の運用