前節で述べたように(図3.2)連続時間バンドパスΔΣAD変調回路の内部DACのタイプにによって システムの信号特性,ノイズ特性が変わる. ここでは幾つかの良く用いられている内部DACを述べる.
3.2.1 NRZ DAC回路の紹介
NRZ(Non-Return-to-Zero)DACの波形は0次ホールドの1ビットの出力波形であり,サンプリング 時刻k(k= 0,±1,±2,±3, ...)とするとNRZ DACの出力は以下のようになる.
(1):ディジタル入力が”1”の場合のNRZ DACの出力: Dout,N RZ = 1(for k
fs ≤t≤ k+ 1
fs ) (3.4)
(2):ディジタル入力が”0”の場合のNRZ DACの出力: Dout,N RZ =−1(for k
fs ≤t≤ k+ 1 fs
) (3.5)
NRZ DACの出力波形は図3.3で示す.
1
Ts
図3.3 NRZ DACの出力波形
3.2.2 RZ DAC回路の紹介
RZ(Return-to-Zero) DACの出力波形を図3.4で示す. 入力されたデジタル信号に応じて,ある値を 一定時間出力する. 前述したNRZ DACは入力されたディジタル信号に応じて,ある値をサンプリン グ時間の間出力するのに対して,RZ DACは値の出力時間がサンプリング時間よりも少なく,一旦0の 値を持つことが異なっている. サンプリング時刻k(k= 0,±1,±2,±3, ...)とし,サンプリング時間の P%だけ値を出力する場合のRZ DACの出力は以下のようになる.
(1):デジタル入力が”1”の場合のRZ DACの出力
Dout,RZ =
⎧⎨
⎩
1 (for fk
s ≤t≤ k+f100sN ) 0 (for k+f100N
s ≤t≤ k+1fs )
(3.6) (2):デジタル入力が”0”の場合のRZ DACの出力
Dout,RZ =
⎧⎨
⎩
−1 (for fk
s ≤t≤ k+fs100N ) 0 (for k+
100N
fs ≤t≤ k+1fs )
(3.7)
1
Ts
Ts/4 t
図 3.425% RZ DACの出力波形
3.2.3 SS DAC回路の紹介
SS(Sine-Shaped) DACの出力波形を図3.5に示す. サンプリング時刻k(k = 0,±1,±2,±3, ...)と するとSine-shaped DACの出力は以下のようになる.
(1):デジタル入力が”1”の場合のSine-Shaped DACの出力 Dout,SSDAC = 1
2(1−cos(2πfst))(for k
fs ≤t≤ k+ 1 fs
) (3.8)
(1):デジタル入力が”0”の場合のSine-Shaped DACの出力 Dout,SSDAC =−1
2(1−cos(2πfst))(for k
fs ≤t≤ k+ 1 fs
) (3.9)
1
Ts t
図3.5 Sine-shaped DACの出力波形
図3.5から分かるように,サンプリングクロックのタイミングでスルーレートが0となっているた め,ジッタの影響が少ないと言える.
3.2.4 RF DAC回路の紹介
2004年にMITから狭帯域高周波信号を発生するためにRadio-Frequency Digital-to-Analog Con-verter(RF DAC)が提案された[6],[7]. RF DACの出力波形を図3.6に示す. 図からわかるように,サ ンプリングクロックのタイミングでスルーレートが0となっているため,ジッタの影響が少ないと言 える. さらに後でも述べるが,インパルス応答のゲイン特性が3/4fs近辺で最大となり,またDC 成分 はゼロとなるため,目的の周波数である3/4fsの周波数成分を効率よく伝達できると考えられる.
サンプリング時刻k(k= 0,±1,±2,±3, ...)するとRF DACの出力は以下のようになる。
(1):デジタル入力が”1”の場合のRF DACの出力 Dout,RF DAC =
⎧⎨
⎩
−12cos(2π(2fs)t)−12 (for fk
s ≤t≤ k+1/2fs )
1
2cos(2π(2fs)t) + 12 (for k+1/2f
s ≤t≤ k+1fs )
(3.10) (1):デジタル入力が”0”の場合のRF DACの出力
Dout,RF DAC =
⎧⎨
⎩
1
2cos(2π(2fs)t)− 12 (for fk
s ≤t≤ k+1/2fs )
−12cos(2π(2fs)t) + 12 (for k+1/2f
s ≤t≤ k+1fs )
(3.11)
1
Ts t Ts/2
-1
図 3.6RF DACの出力波形
RF DAC回路の特徴
図3.7にNRZ DAC, 25% RZ DAC, RF DACの出力波形を図3.8にデジタル入力とそれに対する DAC出力の一例を示す. RF DACのインパルス応答のパワースペクトラムは図3.9 のように3/4fs
近辺で最大となり,またDC 成分はゼロとなる. この特性を利用して入力周波数3/4fs でサブサンプ リングを効率良く行うことができる.
またRF DACはk= 0,±1,±2,±3, ...に対して次の性質がある.
A1(k/(2fs)) = 0, A2(k/(2fs)) = 0 (3.12)
dA1
dt |t=(k/(2fs))= 0, dA2
dt |t=(k/(2fs))= 0 (3.13)
ここで,A1, A2はそれぞれ次の式に表す. A1 =−1
2cos(2π(2fs)t) +1
2, A2 = 1
2cos(2π(2fs)t)− 1
2 (3.14)
NRZ DAC,RZ DACに比べ,変調回路がRF DACを用いた場合には出力が0近辺のときに切り替 えが行われるのでジッタの盈虚は少なくなることが期待できる. 別の言い方にすれば,NRZ,RZ DAC などの出力波形は矩形波であり,サンプリングクロックのタイミングでスルーレートが最大になる,そ
の一方RF DACの出力波形はサイン波の形を持つ,サンプリングクロックでスルーレートが0になる,
そのためジッタの影響が少ないと考えられる.
t 0
NRZ DAC
25% RZ DAC
RF DAC
1
Ts t 1
Ts/4 Ts t
1
Ts t Ts/2
-1 Din=1
Din=0
t 0
NRZ DAC
25% RZ DAC
RF DAC
-1
Ts t
-1
Ts/4 Ts t
1
Ts t Ts/2 -1 (a): DAC output with
input impulse=1
(b): DAC output with input impulse=0
図 3.7入力によるDACの出力波形
1 1 0 1 0 0 DAC input
NRZ DAC output 25% RZ DAC output
RF DAC output Clock
t
t
t
図3.8 DAC入力と出力波形