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リプロダクティブ・ヘルスと リプロダクティブ・ライツ

ドキュメント内 Copyright UNFPA 2008 (ページ 48-52)

リプロダクティブ・ライツ

リプロダクティブ・ライツは、すべての個人とカップルが差別、強 制、暴力を受けることなく、妊娠や出産について決定することを基本 的権利として認めることに由来する。その中には最高水準の健康を享 受し、子どもの数と出産の時期、出産間隔を決める権利も含まれる。

リプロダクティブ・ライツを構成するものには、安全な出産の権利と、

すべての個人がHIVその他の性感染症から自分を守る権利がある

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文化に配慮したアプローチが目指しているのは、人々が各種の権利、妊娠・出産、

健康に対して多様な意味づけをしていることを理解し、社会の集団が様々な方法で、

妊娠・出産の機能をもつ身体、性、出産に対し要求することを理解することである。

これらの問題については広範な論議と論争がある。ある文化に属している人がすべ て同じ理論的根拠で行動する、あるいは一見同じに見える文化的規範と慣習が同じ 意味をもつと思い込む

のは間違いである。

文化に配慮したアプ ローチは、予想外のこ とにも門戸を閉ざして はならない。男性と女 性はどちらも、予測も つ か な い 多 様 な 方 法

で、ジェンダーの秩序と男性と女性の身体に関する社会的期待の形成に参加してい る。例えば、女性を支援する立場から変革を提唱する男性たちがいる。ケニアの

「ジェンダーの平等を求める男たち(Men  for  Gender  Equality  Now)」は、「男性のネ ットワークで、ジェンダーに基づく暴力の根絶とHIV/エイズの拡大防止を目指し、

予防や感染者・被害者へのサービス提供、変革の担い手としての男性の役割に焦点 をあてた意識啓発などの活動をしている」3

逆に、自分たちに有害な慣習について、男性と同じ見方をする女性がいる。調査 コンサルタントのアイテマド・ムハンナによれば、「ガザでは女性に対する暴力は基 本的にはドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)のことである」「女性たちは夫 から殴られ、父親から殴られ、自分の兄弟からさえも殴られる。こうした暴力はほ とんど表沙汰にならない。記録されることもなければ、議論されることもない」。ほ とんどの女性は、夫が自分を虐待することがあったとしても、自分が暴力の犠牲者 であるとは思わない。そうしたことは「夫の権利」だと思っているからである。そ れは男性の姿勢と同じである4

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他の文化圏で起こっていることを理解するために は、自己の文化の枠組みの重さと影響を認識し、

同時に同じ状況をまったく異なるレンズを使って 解釈する人もいるということを認める必要があ る。異文化の言語を理解することは、その言語の 意味を受容するということではなく、理解するこ とによって対話と行動に役立つ基盤ができるとい うことである2

第 4 章   文 化 と の 対 話 : リ プ ロ ダ ク テ ィ ブ ・ ヘ ル ス と リ プ ロ ダ ク テ ィ ブ ・ ラ イ ツ

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文化的意味の多様性を理解することは、変革への効果的 な協力関係を文化的文脈の中で考案し実施する上で不可欠 である。例えば、どの社会でも子どもを大切にし、子ども がいないことは、程度の差はあれ、しばしば社会的汚名と される。この汚名は、男性の父親としてのアイデンティテ ィよりも女性の母親としてのアイデンティティを深く傷つ ける。妊娠し母親となることが女性の第一のアイデンティ ティであり、それによって女性が経済的手段を得る場合は 特にそうである。子どもを産むことに対する男性と女性の 役割をめぐる文化的認識も、女性に汚名を着せる可能性が ある。エジプトとインドの一部地域では、男性は完全な形 をした胎児を提供し、女性の子宮と経血の質が胎児の成長 を決定すると信じられている5。アジアとアフリカの一部に は、女性が男児を産めないことを不妊と定義する文化があ る。不妊女性を呪われた者と見なす社会もある。ほとんど すべての文化は「子どもを産めない女性」をマイナスのイ メージで捉えている。こうした見方が家父長制を強め、子 どもを産めるかどうかで女性の価値が決まるという状況を

存続させている。女性自身も子どもを産めるか否かで、自 分と他の女性の価値を評価することがある。

途上国では、リプロダクティブ・ヘルスを推進する手段 として避妊法が広く用いられているが、不妊を恐れる女性 は避妊しないことが多い。インドで行われた避妊行動に関 する質的・人口学的調査によれば、女性は、妊娠間隔を調 整する手段としてよりも、望んだ数の子どもを出産した後

避妊法(特に不妊手術など復元できない方法)を用いるこ とが圧倒的に多い6。女性たちは、出産によって「消費」さ れる妊娠と出産の潜在能力が避妊法によって保持されると 思っている7。この種の文化的知識は、こうした背景の中で どのような介入を行うかを決める際に重要である。

女性性器切除(FGM/C):文化的知識の価値

文化的知識は、男性と女性が、例えば避妊法などを具体的 に選択するのを手助けする際に非常に役立つ。こうした知識 は、特に難しい状況下での戦略的指針になる。国連人口基金

(UNFPA)は文化的知識の助けを借りて、協力者たちと女性 性器切除(FGM/C)などの有害な慣習に取り組んできた。

1994年に開催された国際人口開発会議(ICPD)の行動計画 は、女性性器切除を「女性のセクシュアリティを管理する ことを意図した有害な慣習」であり、「基本的権利の侵害 であり、女性の健康にとっては生涯にわたる大きな危険と なる」と述べている(第7章7.35)。合意されたのは「政府と 地域社会はこの慣習をなくすための手段を緊急に講じなけ ればならない」(第7章7.40)ということだ。

歴史的・文化的調査により女性性器切除の文化的意味が 明らかになっている。例えば一部のアフリカ社会では、女 性の性器切除は集団の一員となるのに非常に重要だと考え られている。それは女性が成人になる儀式だからである。

切除を受けていない女性は普通でないと見なす社会もあ る。クリトリス(陰核)と陰唇は男性の器官であり、女性は これらの器官が除去されて初めて女らしくなると考えられ ている8。この慣習は衛生、清潔感、美容の点からも重要で あると考えられている。切除を行わないと出産の時に生ま れてくる子どもを傷つけ、性交時に男性のペニスを傷つけ ると信じている文化もある。性器切除は出生力を増すと信 じている文化もある。

こうした様々な意味を理解することは、この慣習の正当 性を認めるためでなく、その根源について知識を深め、対 医学的には夫婦生活を始めてから1年たっても子どもが

できない場合を原発性不妊(primary  infertility)と定義す る。出産後に、生殖器系感染症(RTI)によって続発性不妊

(secondary  infertility)になる可能性もある。不妊症は 女性と男性のどちらにもあるが、続発性不妊の恐怖と社 会的代価のほとんどは女性が経験することになる。不妊 はリプロダクティブ・ライツの問題としてまだ認知され ていない。サハラ以南のアフリカ諸国など世界の貧困地 域の多くでは、不妊の発生率が高いにもかかわらず、そ れが公衆保健政策の問題として考慮されていない。高出 生率と不妊は関連性があるのに、政策担当者は出生率を 下げることに腐心し、不妊の問題を軽視している**。個 人、特に女性と、子どもが産めないカップルにとって、

不妊による社会的代価は高い。

*Source: Feldman-Savelsburg, P. 2002. “Is Infertility an Unrecognised Public Health Problem: The View from the Cameroon Grassfields,” Infertility Around the Globe: New Thinking on Childlessness, Gender, and Reproductive Technologies,edited by M. Inhron and F. Van Balen. Berkeley: University of California Press.

**Source: Inhorn, M. and Van Balen, F. 2002. Infertility Around the Globe:

New Thinking on Childlessness, Gender, and Reproductive Technologies.

Berkeley: University of California Press.

不妊の社会的不名誉

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話と行動の基盤づくりをするのに重要である。UNFPAは、

この文化的知識が、文化的に受け入れられる代替案を見つ

ける協調戦略(cooperative  strategy)にとって不可欠である ことに気付いた。

例えば、最新の指標(2006年)によると、ギニア・ビサウ ではまだ女性性器切除が広範に行われており、15−49歳の 女性の44.5%がこの処置を受けさせられている。ユニセフ

(国連児童基金)とUNFPAは、これまでこの慣習を廃止さ せる活動で何回も失敗してきたが、セネガル、ギニア、ガ ンビア、ブルキナファソ、モーリタニアでは、NGOのトス タン(Tostan)と協力し実績を上げた。トスタンは、尊敬の 念をもって人権に関する議論を進めながらコミュニティに 入っていく方法をとった。また人々に、地域内の問題につ いて話し合いを行い、問題の解決法を検討するよう促した。

こうした取り組みのプロセスが、女性性器切除を廃止する という集団的決定にしばしばつながった。コミュニティの 女性の性器切除が実施されているアフリカの社会の多

くは、その慣習に対する地域の呼び名があるが(エジプト のtahara、スーダンのtahur、マリ・バムバラのsili-jiな ど)、いずれも純潔あるいは浄化を意味する言葉である。

これらの社会では、切除を受けない女性は純潔でないと 見なされる。切除を受けない女性は非常に少ないが、そ うした女性は食べ物や水を扱うことが許されない。性器 切除が慣習となっている社会では、切除を受けていない 女性の性器はサイズが大きすぎて見苦しいとされる。こ うした社会では、切除されない女性性器は成長して長く なり、足の間に醜く垂れ下がるようになるだろうと一般 に信じられている。

Source: Njoh, A. 2006. Tradition, Culture and Development in Africa, p. 97.

Hampshire: Burlington. Ashgate Publishing Company.

女性性器切除(FGM/C)の文化的背景

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ソマリア族、キシイ族、マサイ族な ど、ケニアのある集団では、結婚を控 えた若い女性に対する慣習として女性 性器切除が行われる(ケニアの人口保健 調査2003年)。通常この慣習は14歳 になる前に行われ、これによって少女 は「浄化」され、大人の仲間入りがで きるとされる。それは外性器のすべて の部分を麻酔もせずに切除するという 危険な方法である。これによる健康へ のリスクはトラウマと出血であり、後 になっては出産が困難になり、HIVを含 む性感染症に罹るリスクが高くなる。

精神的なダメージははかり知れない。

UNFPAが協力する地域に根ざしたプ ロ ジ ェ ク ト 、タ サ ル ・ ヌ ト モ ノ ク

(Tasaru Ntomonok)イニシアティブ

(TNI)は、女性性器切除の通過儀礼とし

ての重要性を認めながら、この慣習の 文化的価値を他のものと置き換えるこ とに成功した。この取り組みの強みの 一つは、少女から大人の女性に移行す る一部として、女性性器切除に代わる ものを、文化的に受け入れやすい方法 で提供している点である。年長の女性 は引き続き、少女たちが成人になると きの教母(godmother)を務めている。

少女たちは慣習に従って一定期間隔離 され、その期間にセックスと妊娠・出 産について教えられ、さらに現在はセ クシュアル/リプロダクティブ・ヘルス の重要性について学習する。代替の儀 式は、伝統的に女性性器切除が行われ ていた時期に行われ、切除を担当して きた女性たちは別の収入源を得ている。

男性の参加は非常に重要である。父親

たちには、彼らの娘が将来結婚でき、

収入源になる可能性もあると安心させ る必要がある。また若い男性たちは、

将来自分にふさわしい妻がもてること を理解する必要がある。

コミュニティが、何らかの理由で女 性性器切除に代わる儀礼を受けつけな い場合、TNIは保護を希望する少女に避 難施設を提供する。このプロジェクト は女性性器切除と早婚を禁じた2001 年の子ども法(Children's  Act)によっ て国家的支援を受けている。この法律 に違反した場合には最高12カ月の禁固 刑と最高735ドルの罰金が科せられる。

Source: UNFPA. 2007. “Kenya: Creating a Safe Haven, and a Better Future, for Maasai Girls Escaping Violence.” Chapter 6 in Programming to Address Violence Against Women: Ten Case Studies.

New York. UNFPA.

ケニアで女性性器切除と児童婚を逃れる少女を支援する

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文化的な洞察をすることによって、文化背景が妊娠・出 産に関する個人の選択にどのような影響を及ぼすかが明 らかになる。その結果、考え方や行動様式に適応するた めにどのような種類の介入が必要かが体系化される。こ れは文化に配慮したアプローチのもつ価値の一部である。

ドキュメント内 Copyright UNFPA 2008 (ページ 48-52)