理解し、促進し、適用できるようにすること。
・政府や援助機関の支援を求めるロビー活動など、様々な
活動を支えるために必要な資源を確保すること35。 ジェンダーの平等には男性を取り込む必要があるという 認識が現在広まっている。文化に配慮したアプローチでは、男性も決して一様では なく、ジェンダーの平等は人によって異なる意味をもつと 認識されている。同時に、このアプローチがはっきりと提 唱するのは、ジェンダーの平等に関する議論と活動にいか に男性を参加させるかである。それはジェンダーの関係を 変え、妊産婦死亡率の低減やジェンダーに基づく暴力の根 絶など、より具体的な目標に沿って変化をもたらすことに なる。
MDGsの核ともなっているこれらの具体的目標は、根本 的には、女性と女児の権利の侵害につながる家庭、社会、
国家内の権力関係に取り組むことにある。有害な関係に対 処するには、その関係に関わっている、あるいはこれから 関わる大人の男女・若者・男女児と共に、また彼らの態度 と行動に影響を及ぼす人たちと共に活動することが必須で ある。さらに、ジェンダーの平等と女性のエンパワーメン トに向けて男性が他の男性や男児と共に活動した場合は、
最も永続性のある変化がもたらされることがある。
1995年以降、開発にかかわる国内・国際機関は、「開発 における女性」から「ジェンダーと開発(GAD)」にパラダ イムを移行させてきた。この変化は次のような認識を反映 している。すなわち、ジェンダーの平等と女性のエンパワ ーメントは、男性が家父長的構造に積極的に挑み、個人的 すべての男性が攻撃的な者であるわけではなく、多く
の男性は攻撃や暴力に反対しているという事実を世論が 明らかに[する]のは、いいことである。人権の確立や、
暴力や拷問に反対する…といった世界で一番重要な闘い は、一つの社会グループだけに任せてはおけないと考え る。…女性のための闘いを女性だけに任せることはでき ない。男性は連帯を示す必要がある。なぜなら彼らは生 きた証人だからだ。すなわち、暴力を拒絶する男性がい ること、また、残念ながら世界中のあらゆる階層で頻繁 に見られる暴力をふるう者を、男女の民主的反対によっ て確実に減らそうと全力を尽くす男性がいることを示す 証人だからだ。
Source:Boaventura de Souza Santas. 2002. Quoted by Medrado, B. and J.
Lyra. in “Men, Masculinities and Gender Violence” at the Expert Group Meeting on The Role of Men and Boys in Achieving Gender Equality, Papai Institute, Brasilia, 21-24 October, 2003.
ジェンダーの公正と平等への闘いに男性と 女性が手を結ぶ
13
男女双方の知識、態度、および行動の変化は、男女の 調和のとれたパートナーシップを達成するための必要条 件である。ほとんどの社会で、男性は家族の規模に関す る個人的決定から、政府のあらゆるレベルで行われる政 策・プログラムの決定にいたるまで、生活のほとんどす べての局面で、圧倒的な権力を行使しているので、両性 間の平等の実現において、男性は重要な役割を果たして いると言える。公的・私的生活において男女が対等なパ ートナーとなるためには、セクシュアリティおよびリプ ロダクティブ・ヘルスについての男女間のコミュニケー ションの改善、および男女の共同責任に対する理解の向 上が不可欠である。
Source:ICPD Programme of Action, para 4.24
リプロダクティブ・ヘルスとジェンダーの 平等のパートナーとして男性を勇気づける
14
第 3 章 文 化 と の 対 話 : ジ ェ ン ダ ー の 平 等 の 推 進 と 女 性 の エ ン パ ワ ー メ ン ト
40
には彼ら自身と女性との力関係を変革の対象とすることで 初めて達成されるという認識である37。GADの枠組みは、
男性もジェンダーの平等に対して様々なアプローチと経験 をもっていること、また、ジェンダーの関係を変革させる ことに関心のある、それは女性のためばかりでなく自分自 身のためにもだが、そうした男性グループがあることを明 らかにしてきた。GADの枠組みはまた、男性同士の間に存 在する力関係をあぶり出すのにも役立っている。男性は女 性が直面するような支配に苦しんではいないが、紋切り型 のジェンダー関係に同調しない男性には、男らしさの規律 が悪影響を及ぼしかねないからである。
2007年10月の「マスキュリニティ(男らしさ)を政治化す る:個人的領域を越えて」という会議に出席した学者、政
策決定者、活動家たちは、GAD枠組みにもかかわらず、男 性と女性がいまだに役に立たない方法で分類されているこ とを確認した。「『男性は問題の種、女性は犠牲者』とする 論法がいまだに幅をきかせている。…どちら[の見解]も めったに疑問視されることのない本質主義に則っている。
さらに、男性と男らしさに取り組む現在の活動は、男性が 個人的領域で取る行動にとどまらず、権力関係と核心的な 公正の問題という幅広い問題にまで拡大される必要があ る。それらの問題には、平等な賃金と権利、政治の場にお ける代表、ジェンダーの規律を維持する制度の変革などが 含まれる。これらの活動が必要なのは、個々の男性が意欲 をもっているとしても、制度的な環境や仲間集団の文化が 反対方向に推し進めてしまうからだ」38。
実践者たちは、制度に挑む自分たちの取り組みについて 話をした。
貧困地域において男性の批判意識を高めようとする働きか け(南アフリカ共和国)
ムブイセロ・ボタ:「男性と接触するのに画期的で創造的 な方法があります…もぐりの酒場[現地の酒場]に行くの です。酒場はとても重要な場所で、そこで男らしさの問題 が固定化されるのです。まず酒場の所有者から了解を得ま す。…それから男性たちに、男であるということは何を意 味するかについて話しかけていいか聞きます。様々な答え が返ってきます。あるときは若い男性が『女はみな魔女だ』
と言いました。私が彼に『あなたのお母さんさえ、魔女の 一人だというのですか?』と聞くと、彼はそうだと言いま した。ところがこれが全国ネットのテレビで放映されたた め、家に帰ると彼は母親に追い出されました」。
ジェンダーと男らしさについての政治的意識を育む(ニカ ラグア)
パトリック・ウォルシュ:「私たちは、コミュニティの環 境の中で男性と共に活動するというコミュニティ介入戦略 を展開してきました。男性はコミュニティで生活し、女性 と共に家族の中で暮らしています。つまり男性は隔離され た存在ではないのです。活動の一環として、地域の20−25
▼
伝統は現代的環境でも存続することがある。しかし時には、注意を喚起す る必要がある。© Sven Torfinn
人の男性を対象に訓練コースを実施しています。男性たち は1年に10回、1日だけのワークショップに出席し、自分の 視点と経験から考え分析する時間を与えられます。ワーク ショップはテーマに沿って理論立てされており、はじめに 男性、女性であることの意味、ニカラグア社会における男 性らしさと女性らしさの特徴に取り組みます。それから、
男性の仕事、女性の仕事、それらに付与された価値を扱い、
次に力と暴力、そしてセクシュアリティに移ります。…最 後には男性の個人としての発展・成長を促します。それは ジェンダーの分析からはじめ…女性らしい特性と呼ばれて いるものを見つめ、これらが人間としての特徴、価値、可 能性であり、男性も男性らしさの一部として身につけるこ とができる特性だと理解させるのです」39。
7.ジェンダーの平等、女性のエンパワーメント、人権の ために文化と対話するには、内省的・批判的・包括的 アプローチが必要である。
ICPDでの国際的合意に則って、UNFPAは、公的・私 的・個人的領域で最も広く浸透しているジェンダー差別の 形態のいくつかを根絶するよう全力で取り組んでいる。具 体的には、リプロダクティブ・ヘルスにおける不公正、ジ ェンダーに基づく暴力、経済的差別、有害な伝統的慣習で ある。UNFPAのプログラム戦略にとって、政府だけでな く、変革を提唱してきた現地の組織や個人と協力すること は重要である。例えばモーリタニアでは、レイプに関して 長い沈黙の文化があり、そのためしばしばレイプの犠牲者 が監禁され、加害者は自由のままにされてきたが、この沈 黙を現地の助産師たちが打ち破った。UNFPAは性的暴力 に関する統計の収集と、サバイバーのニーズに応えるセン ターの設立を支援してきた。UNFPAはこれらの問題を私 的領域から公の場へ持ち込み、女性を性的暴力から守らな ければならないという合意を、地域のイマーム(宗教的指 導者)、裁判官、警察、政府高官、一般市民の間で打ち立 てた。この活動によりレイプ件数が著しく減り、レイプに 対する態度とレイプに関する質の高い情報収集に変化が見 られた40。
エチオピアでは、UNFPAは「ベルハネ・ヘワン・プロ ジェクト」を支援している。これは思春期の女子に教育を
施し、結婚を遅らせるプロジェクトである。エチオピアの 法律では18歳未満の結婚を禁じているが、早婚が長い間の 文化的習慣になっていて、その結果フィスチュラや妊産婦 死亡などリプロダクティブ・ヘルスの問題に至ることが多 い。教育の機会は重要である。なぜなら、それを通して自 分自身や自分の可能性に対する女児たちの意識が変わるか らだ。また家族が教育プロジェクトの計画・実施に参加す るため、地域住民の意識の変化にもつながる41。
文化的ポリティクスには賛否両論あり、合意を得るのは 難しい。したがって、ニカラグア、チャド、ベトナム、ラ オスのような多様な国々での女性のエンパワーメントを支 援するにあたって、UNFPAは現地の様々な文化の担い手 と共に活動してきた。その中には、信仰組織(ニジェール の人口と開発問題に関するイスラム教協会グループ(Group of Islamic Associations for Questions of Population and Development)、伝統的協会(アフリカ伝統的指導者協会
(Association of African Traditional Leaders)、先住民のネ ットワーク(Enlace Continental de Mujeres Indigenas de las Am
é
ricas, Region Surな ど 。 ペ ル ー の チ ラ パ ク(Chirapaq)という先住民組織がこれらの組織との連絡調整 をしている)があり、UNFPAは文化のレンズを使って、地 元社会がジェンダーの平等とリプロダクティブ・ヘルスな どの問題を確実に受け入れ、それに取り組むよう努めてい る。こうしたタイプの介入法は長続きのする変化を生んで おり、開発プログラムにはそれぞれ異なる文化的アプロー チが必要である。