本節では,表1のパラメータを用いて3章で提案した将来価値ベースで行うRMBSのリ スク評価の数値例を示す. ここではプリペイメントを考慮しない場合((41)式の生存率を
S(t) = 1)とプリペイメントを考慮して金利感応度をλ= 1.0, λ= 3.0とした3種類の場
合で比較する.
図15: CF(t)のサンプルパス (プリペイメントの有無と金利感応度λによる比較)
図16: 累積CF(t)のサンプルパス (プリペイメントの有無と金利感応度λによる比較)
表 5: CF(t)の累計と平均残存期間 (プリペイメントの有無と金利感応度λによる比較) キャッシュフローの比較 λ=1.0 λ=3.0 S=1.0
累計CF 107.339 106.535 115.790
平均残存期間 (年) 7.242 6.455 15.042
図15はあるサンプルパスにおける各時点のキャッシュフローCF(t), 図16は各時点ま での累積キャッシュフローである. ここでは無リスクゼロレートr(t)を用いた割引は行っ ておらず,各時点で得られるキャッシュフローをもとに,各時点のキャッシュフローとその 累積額を示している. 図15より,プリペイメントを考慮しない場合は満期T = 30まで一 定であるのに対し, プリペイメントを考慮する場合では現時点(t = 0)から10年目にか けてはキャッシュフローが前倒しになって想定キャッシュフローよりも高くなっているこ とが分かる. これはプリペイメントによって元本が早期償還されているためであり,一方 で長期になると元本そのものが少なくなってしまうためにキャッシュフローは低下してい る. また, 金利感応度λが大きいほどプリペイメントによる元本の早期償還が行われるた めキャッシュフローはより前倒しになり表5で示すように,金利による割引を考慮していな い累積のキャッシュフローでみるとλ= 3.0の方が低く,各時点のキャッシュフローCF(t) とその時刻掛け合わせた平均残存期間でみても短くなっている. 特に平均残存期間に関し ては,プリペイメントを考慮しない場合と考慮した場合では倍以上長くなっている. もち
ろん,λ= 1.0の場合はプリペイメントを考慮しない場合に比べて累積キャッシュフローも
平均残存期間も小さい値をとる.
次に, 3章で定義した将来価値IV(0, τ), CV(τ, T), F B(τ, T)の分布とリスク量の数値例 を表6, 表7に示す.
図17は将来価値IV(0, τ)の分布である. プリペイメントを考慮しない場合では,各時点 でのキャッシュフローは一定であることからIV(0, τ)は将来時点τ までの金利による運用 結果に依存する. しかし,τ = 1(年)の期間まででは1〜2%程度の違いしかないため,ここ ではかなり集中した分布となった. 一方,プリペイメントを考慮した場合では,図15から
もキャッシュフローが前倒しになっていることからλ= 3.0の方が高い値となり,分布も広 くなっている.
図18は将来価値CV(τ, T)の分布である. 図11から分かる通り, 低金利時*22ではプリ ペイメントを考慮したときの将来価値は考慮しない場合に比べて価格が上昇しないため低 い値になっている. 金利感応度λで比較した場合では,金利感応度λが高い方が将来価値 は低くなっている. これはプリペイメントによってキャッシュフローが前倒しになるため, 将来時点τ以降に得られるクーポン及びキャッシュフローが累積でみると減ってしまうた めである.
図19はIV(0, τ)とCV(τ, T)を合算させた将来価値F V(τ, T)の分布である. IV(0, τ)と
CV(τ, T)の結果から分かる通り,プリペイメントを考慮しない場合は将来価値が最も高い反
面,金利リスクも高い. 一方,プリペイメントを考慮した場合では,将来価値の観点ではλ= 3.0の方が将来価値は高くなった. リスク評価の観点からもIV(0, τ), CV(τ, T), F V(τ, T) の全てにおいて金利感応度λ= 3.0の方がリスク量も大きくなった.
図17: Income Value IV(0, τ)の分布(プリペイメントの有無と金利感応度λによる比較)
*22本研究の数値計算で扱う現時点でのゼロレートは0.5%フラット(図11における金利シフト幅−4.5%).
図18: Capital ValueCV(τ, T)の分布(プリペイメントの有無と金利感応度λによる比較)
図19: Future ValueF V(τ, T)の分布(プリペイメントの有無と金利感応度λによる比較)
表6: 将来価値の分布 (プリペイメントの有無と金利感応度λによる比較)
将来価値 F V(τ, T) CV(τ, T) IV(0, τ)
統計量 λ=1.0 λ=3.0 S=1.0 λ=1.0 λ=3.0 S=1.0 λ=1.0 λ=3.0 S=1.0
最大値 108.036 108.814 109.945 101.704 101.268 106.395 6.543 7.679 3.593 中央値 106.768 107.381 108.790 100.969 100.601 105.245 5.800 6.838 3.546 最小値 82.517 82.676 74.634 77.486 77.608 71.041 5.024 5.067 3.544 平均 105.985 106.586 107.547 100.202 99.874 104.000 5.783 6.712 3.547
標準偏差 2.051 2.160 3.147 1.949 1.846 3.149 0.205 0.457 0.003
表7: 将来価値のリスク評価 (プリペイメントの有無と金利感応度λによる比較)
リスク量 F V(τ, T) CV(τ, T) IV(0, τ)
VaR λ=1.0 λ=3.0 S=1.0 λ=1.0 λ=3.0 S=1.0 λ=1.0 λ=3.0 S=1.0
95.0% 4.15 4.38 6.45 3.93 4.15 6.45 0.37 0.93 0.0026
99.0% 8.13 8.41 12.21 7.76 8.13 12.22 0.51 1.22 0.0028
99.5% 9.66 9.94 14.52 9.27 9.66 14.52 0.57 1.31 0.0028
ES λ=1.0 λ=3.0 S=1.0 λ=1.0 λ=3.0 S=1.0 λ=1.0 λ=3.0 S=1.0
95.0% 6.52 6.78 9.95 6.26 6.52 9.96 0.46 1.11 0.0027
99.0% 10.13 10.37 15.21 9.80 10.13 15.22 0.58 1.32 0.0028 99.5% 11.32 11.58 16.93 11.00 11.32 16.94 0.63 1.39 0.0029