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リスク及びリスクマネジメント

ドキュメント内 Microsoft Word 臨床概括評価 doc (ページ 47-51)

2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論

2.5.6.2 リスク及びリスクマネジメント

2.7.4 臨床的安全性の概要で示したように、A201試験及びそれに引き続くA202試験では、海

外での使用実績を総括したコンセンサスガイドラインを基に、安全性に配慮した試験計画を策定 したことにより、AGHD患者に対する48週間のGH 補充療法を安全に実施することができた。

本治療は、健常人のような正常な内分泌的環境を復元する治療(ホルモン補充療法)であるこ とから、その患者における必要量を適切に補充するので、薬理学的治療で想定されるような大き なリスクは考えにくい。このため、個々の患者に対し適切な補充療法を行うために、用法・用量 に関連する使用上の注意として、臨床試験成績及びコンセンサスガイドラインを基に、添付文書

(案)に以下を記載することとした。また、血中IGF-Ⅰ濃度の検査間隔及び本薬を投与しても症 状が改善しない場合の留意事項を設定した。

2. 成人成長ホルモン分泌不全症の患者に投与する場合には、次の点に留意すること。

(1) 本剤の投与量は、血清IGF-Ⅰ濃度を参照して調整すること。血清IGF-Ⅰ濃度は投与開始後24 週目までは4週間に1回、それ以降は12週から24週に1回の測定を目安とすること。また、副作用 の発現等の際は、適宜、血清IGF-Ⅰ濃度を測定し、本剤の減量、投与中止等適切な処置をとるこ と。

(2) 加齢に伴い生理的な成長ホルモンの分泌量や血清IGF-Ⅰ濃度が低下することが知られてい る。本剤投与による症状の改善が認められなくなり、かつ本剤を投与しなくても血清IGF-Ⅰ濃度 が基準範囲内にある場合は、投与中止を考慮すること。

また、GH が有する体液貯留作用、細胞増殖作用及び抗インスリン様作用に基づく有害事象に ついて検討することは、安全性に配慮した治療を行う上で重要である。さらに、GH が他のホル モンに及ぼす影響についても考慮する必要がある。

以上より、AGHDに対するGH治療で懸念されるリスクとして、①体液貯留への影響、②脳腫 瘍への影響、③耐糖能への影響、④長期間投与による新生物発生へのリスク、⑤他のホルモンと の相互作用、⑥高齢者における安全性、⑦妊婦、授乳婦における安全性について、以下に安全性 評価結果の要約と添付文書(案)における注意喚起の内容を述べる。

グロウジェクト 2.5 臨床に関する概括評価

2.5.6.2.1 体液貯留への影響

AGHD 患者に対するGH補充療法で頻度の高い副作用は成長ホルモンの体液貯留作用に基づく

と考えられる浮腫、関節痛などである。これらの副作用は、1990年代前半に行われた初期の試験 では約40%の患者で治療開始早期にみられた11)。これはAGHD患者では細胞外液が少ない傾向が

あり、GH補充療法によって正常化する過程での過剰反応と考えることができる。コンセンサスガ

イドラインでは、1990年代前半の経験に基づき、体液貯留関連の有害事象を低減するため、小児 GHDの用量の約1/8に相当する低用量から投与を開始し、血清IGF-Ⅰ濃度の基準値を目標に漸増す る投与法が推奨された。

A201試験及びA202試験はコンセンサスガイドラインに従い実施した試験であり、従来の報告

43)-47)と同様に体液貯留関連の有害事象を低減することができた。また、体液貯留関連の有害事象

の大半は治療継続のまま消失あるいは減量により消失した。さらに、血清IGF-Ⅰ濃度を同性・同 年齢の基準範囲(-1.96SD~+1.96SD)52)内に収まるように各患者に対するGH投与量を調節するこ とにより、体液貯留関連の有害事象の発現をある程度抑制できると考えられた。

これらの結果及び本剤の他の効能における用法・用量がいずれも1週間当たりの記載になってい ることを踏まえ、本薬の用法・用量及び使用上の注意を以下のように設定した。添付文書(案)

に「通常開始用量として、1週間に体重kg当たり、ソマトロピン(遺伝子組換え)として0.021 mg を6~7回に分けて皮下に注射する。患者の臨床症状に応じて1週間に体重kg当たり0.084 mgを上限 として漸増し、1週間に6~7回に分けて皮下に注射する。なお、投与量は臨床症状及び血清インス リン様成長因子-Ⅰ(IGF-Ⅰ)濃度等の検査所見に応じて適宜増減する。ただし、1日量として1 mg を超えないこと。」と記載することとした。

また、添付文書(案)の使用上の注意に「重要な基本的注意」を新設し、「成人成長ホルモン分 泌不全症患者では本剤の投与中は、血清IGF-Ⅰ濃度が基準範囲上限を超えないよう、定期的に検 査を実施すること。検査頻度については、「用法・用量に関連する使用上の注意」の項を参照する こと。」、「成人成長ホルモン分泌不全症患者では本剤の投与により浮腫、関節痛等があらわれるこ とがあるため、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与量の減量あるいは投与中止を 考慮すること。」と記載することとした。

2.5.6.2.2 脳腫瘍への影響

AGHDの成因の多くは、病理組織学的には良性の下垂体腺腫及び頭蓋咽頭腫である。これらの 腫瘍を切除する際には、周囲の正常な組織を可能な限り傷つけないように行うため、脳以外の部 位での手術に比し、完全な切除は行えない場合が多く、腫瘍を残存させることも多い。そのため、

元来AGHD患者は脳腫瘍が再び増大するリスクが高い。しかし、このリスクの高さは脳腫瘍の種 類、行われた治療(手術や放射線療法)、治療を行った施設や年代などに左右され、一概に論ずる ことは困難である。

今回実施した治験では、A202試験において「再発下垂体腫瘍」が1例1件、「新生物進行」が 1例1件発現した。これらについては、治験期間中に事象が発現したこと及びGHが細胞増殖作 用を有することから、本薬投与との因果関係を否定することは困難であるが、当該被験者はとも

グロウジェクト 2.5 臨床に関する概括評価

に既往歴として下垂体腫瘍を有しており、当該事象を発現するリスクが元来高かった可能性があ ると考えた。また、脳腫瘍治療後の小児の GH 治療中及び治療後における脳腫瘍再発率は、GH 治療を受けていない場合の再発率と比較して低値又は変わらないとの報告があり 68)、GH治療は 必ずしも脳腫瘍再発のリスクファクターではないことが示されている。しかし、GH が細胞増殖 作用を有することから、残存する脳腫瘍の増大あるいは脳腫瘍の再発に関しては慎重な観察を継 続することは重要であると考え、小児GHD と同様、AGHD 患者においても添付文書(案)の慎 重投与において「(次の患者には慎重に投与すること)脳腫瘍(頭蓋咽頭腫、松果体腫、下垂体 腺腫等)による下垂体性小人症及び成人成長ホルモン分泌不全症の患者[成長ホルモンが細胞増 殖作用を有するため、基礎疾患の進行や再発の観察を十分に行い慎重に投与すること。]」と記 載することとした。

さらに添付文書(案)に使用上の注意「重要な基本的注意」を新設し、「成人成長ホルモン分 泌不全症患者では脳腫瘍の既往のある患者が多く含まれており、国内臨床試験において本剤の治 療中に脳腫瘍が再発したとの報告があるため、脳腫瘍の既往のある患者に本剤を投与する場合は 定期的に画像診断を実施し、脳腫瘍の発現や再発の有無を注意深く観察すること。」とした。な お、同様の理由から、悪性腫瘍を有する患者への投与は禁忌であり、添付文書の変更は行わない。

近年、頭部放射線照射を受けた小児癌の生存者において、GH投与を受けた群で髄膜腫等の二次 性腫瘍発生のリスクが上昇したとの報告があるが73),74)、上記の添付文書(案)の記載に基づき定 期的な画像診断を行うことで、安全性に十分に配慮した治療が可能であると考えた。

2.5.6.2.3 耐糖能への影響

A201試験及びA202試験の結果から、AGHD患者に対するGH補充療法をすることにより空腹時 血糖、HbA1cや尿糖といった耐糖能に関する臨床検査値の悪化は認められなかったが、「耐糖能障 害」が1例に発現した。GH投与がインスリン抵抗性を増して血糖値を上昇させる作用があること、

及び糖尿病患者への投与は禁忌であることは公知であり、本薬投与中には耐糖能関連指標(空腹 時血糖、HbA1c、尿糖等)の観察を十分に行うことが必要である。以上から、添付文書(案)使用 上の注意に「重要な基本的注意」を新設し、「成人成長ホルモン分泌不全症患者では本剤の投与に より血糖値、HbA1cの上昇があらわれることがあるため、定期的に血糖値、HbA1cあるいは尿糖等 を測定し、異常が認められた場合には投与量の減量あるいは投与中止を考慮すること。」と記載す ることとした。

2.5.6.2.4 長期間投与による新生物発生へのリスク

AGHDに対するGH補充療法は非常に長期間継続する可能性がある。GH産生腫瘍によるGH過剰

分泌状態が続く先端巨大症患者では大腸がんや大腸ポリープなどの新生物の増加がGH過剰状態 と関連がある可能性を示唆する報告がある75),76)。また、血中IGF-Ⅰ濃度の上昇と腫瘍の発生リス クの関連については疫学的研究の報告があり、血中IGF-Ⅰ濃度が高い状態では、前立腺癌、乳癌、

結腸癌の発生リスクが高くなることが指摘されている77)-81)。これらの報告から、GH投与による血 中IGF-Ⅰ濃度の上昇が、腫瘍発生リスクを高める可能性は否定できない。

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