ラテンアメリカ・カリブ海地域において、平均成長率5.3%を記録し た5年にわたる堅調な経済成長は、世界金融危機により突如中断され ました。2008年の成長率は4.3%ですが、2009年には約2%縮小し、
その後2010年になって2.4%に回復する見通しです。
域内の多くの国々は今回の危機が発生した際、主に好景気の期間の 堅実な財政政策およびマクロ経済面の脆弱性解消により、比較的有利 な状況にありました。一部のラテンアメリカ諸国において2001-02 年の金融危機勃発の後、金融規制・監督を強化していた結果、当地域 は、国内の銀行業界が危機に陥ることが一例もなく、今般の危機を乗 り切ってきています。
ラ テ ン ア メ リ カ・カ リ ブ 海 諸 国 は、2002年 か ら2008年 の 間 に 6000万人の人々を貧困から救い出すことに成功しましたが、現在、こ の流れが逆転する危険にさらされています。世銀の推定では、今回の 世界経済の混乱によって、2009年末までに域内で400万-600万人が 貧困層(1日あたり所得が4ドル未満)に転落する可能性があります。
経済が米国と密接に結びついているメキシコおよび中米・カリブ諸 国は、長引く不況の被害を最も強く受けると考えられます。例えばメ キシコでは、2009年はマイナス成長になると考えられます。当地域へ の国外からの送金は激減し、特にメキシコおよび中米・カリブ諸国で は、2008年の実質ベース減少率が6%となり、2009年には10%減も 予想されるなど、悪影響が特に深刻です。南アメリカでは、アルゼンチ ン、ブラジル、パラグアイおよびウルグアイも影響を受けています。一
方、エクアドルやベネズエラ・ボリバル共和国のような石油輸出国は、
国際原油価格の急落を受け、歳出を削減しています。
好景気の間に貯蓄を増やした国々、および多様な市場やアジア各国 との関係が強い国々(ブラジル、チリ、コロンビアおよびペルー)は、他 の国に較べ影響が軽微にとどまっています。全体として、最も良い状 況にある国々は、独立した中央銀行、変動為替相場制、インフレ目標政 策、および堅実な財政プロセスを採用した国々でした。
世銀の支援
世銀は2009年度、世界的危機への対応として、ラテンアメリカ・カリ ブ海に対する支援を飛躍的に拡大しました。世銀は、通常貸付額の3 倍近くにあたる140億ドルの新規融資を承認しました。うちIBRD融 資は138億ドル、IDA融資承認は2億250万ドルでした。借入額が大 きかった国は、ブラジル、メキシコ、アルゼンチンで、資金が最も多く 投入されたセクターは、保健・社会サービス、公共行政・法律、上下水 道 で し た。2009年 度 中 の 当 地 域 へ の 支 援 は、IBRD融 資 の42%、 IBRD/IDA融資合計額では約3分の1を占めています。
世銀は当地域の借入国に対し、貧困、機会均等など、気候変動および 競争力など幾つかの論点に関する革新的な金融・知識商品を提供して います。世銀とアルゼンチンおよびブラジルの機関の研究者が共同開 発した新たな人間機会指数は、個別の国々の環境が、飲料水、下水道、
電力、基礎教育などの基本的サービスへのアクセスをいかにして可能 アンティグア・
バーブーダ アルゼンチン ベリーズ ボリビア多民族国 ブラジル チリ コロンビア
コスタリカ ドミニカ国 ドミニカ共和国 エクアドル エルサルバドル グレナダ グアテマラ ガイアナ
ハイチ ホンジュラス ジャマイカ メキシコ ニカラグア パナマ
パラグアイ ペルー
セントクリストファー・ ネーヴィス
セントルシア
セントビンセントおよび グレナディーン諸島
スリナム トリニダード・ トバゴ ウルグアイ ベネズエラ・ ボリバル共和国
総人口:
人口増加率:
平均寿命:
乳幼児死亡率(出生1000件当たり):
若い女性の識字率:
HIV感染者・エイズ患者数:
2008年の一人当たり国民総所得(GNI):
一人当たりGDP指数(1998=100) 6億人 1.1%
73歳 22件 97%
190万人 6,780ドル 121
注:平均寿命、乳幼児死亡率(出生1000件当たり)、若い女性の識字率、HIV感染者・エイズ患者数は2007 年、その他の指標は2008年の「世界開発指標」データベース、HIV感染者・エイズのデータは国連・
世界保健機関「2008年エイズ流行に関する報告書」の数字です。
2009年度の 新規融資承認額
IBRD:138億2900万ドル IDA:2億200万ドル
2009年度の 融資実行額
IBRD:78億6400万ドル IDA:1億8000万ドル
2009年6月30日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ:260億ドル ラテンアメリカ・カリブ海地域の概要
にしたり妨げたりするかを示しています。これは、当地域に暮らすす べての人々の機会拡大に焦点を当てた公共政策を主要な対象とする、
全く新しい研究分野を拓くものです。
中所得国のニーズへの対応
世銀は、域内各国で益々多様化するニーズに対応するため、地域戦略 をカスタマイズしました。中所得国に対して世銀は、分析・助言、新し い金融商品および技術協力を含む総合的サービス・パッケージを提供 します。
繰延引出オプションとして知られる承認済み与信枠は、幾つかの国 で役立ちました。2009年度に8件の繰延引出オプション付融資が、コ ロンビア、コスタリカ、グアテマラ、ペルーおよびウルグアイの5か国 に対して承認され、ショックの際に流動性を確保するために即時利用 可能な財源として提供されました。この新しい融資手段は、資金供給 の予防的財源を作ることで、各国政府が市場に前向きなシグナルを送 ることができるよう支援するという、世銀のコミットメントを反映し たものです。
アルゼンチン、ブラジル、メキシコなどの現G-20加盟国は、グロー バルなプレーヤーになりました。こうした国々の開発課題により適切 に対応するために、世銀は幾つかの革新的プログラムを導入しまし た。例えば2009年度、世銀は、ブラジルの持続可能な環境管理に対し 13億ドルの融資、メキシコにおける低所得層の住宅アクセス拡大の取 り組みへの支援として10億ドル、やはりメキシコの環境持続可能性 に配慮した開発政策プロジェクトに対し4億100万ドルの融資、ペ ルーの新しい環境省の強化および主要経済セクターにおける環境管理 の改善のために3億3000万ドルの融資、そしてウルグアイにおける 政府の改革プログラム支援および世界経済危機の影響への対応の追加 資金として4億ドルの融資を承認しました。
新型インフルエンザ(H1N1)の大流行への対応
世銀は、新型インフルエンザ(H1N1)ウイルスの流行を阻止しようと す る メ キ シ コ の 取 り 組 み を 支 援 す る た め に、2009年 度 分 と し て 2500万ドル、2010年度への準備金として4000万ドルを承認しま した。
世銀はアルゼンチン、ベリーズ、コスタリカ、ドミニカ共和国、ホン ジュラスおよびニカラグアなど域内の国々に対し、新型インフルエン ザ(H1N1)ウイルスの影響を軽減するための直接支援を提供しま した。
最貧困国に対する援助
IDAは2009年度、ラテンアメリカ・カリブ海地域の最貧困国に対す る援助として2億250万ドルを拠出し、5か国に対して無利子融資お よびグラントを提供しました。ボリビアは、国内の特定の小区域に住 む貧しい農民の市場アクセス改善を目的とする地方連携プロジェクト に対し、3000万ドルの財政支援を受けました。合計2500万ドルの贈 与を受けた2件のプロジェクトが、2008年8月および9月にこの国を 襲ったハリケーンと熱帯性低気圧により破壊・損壊されたハイチのイ ンフラ再建に充てられるため、承認されました。ホンジュラスは食糧 危機対応のため、1000万ドルの無利子融資を受けました。ニカラグア 当局は、上下水道サービス改善のため、グラントと融資で合計4000万 ドルの財政支援を受けました。
2009年6月30日、ハイチは、IDAおよびIMFの理事会の承認を受 けた拡充重債務貧困国(HIPC)イニシアティブに定める完了時点に到 達したことで、12億ドルの債務削減を受けました。ハイチは、HIPC イニシアティブの完了時点に到達した26番目の国となりました。債 務返済免除は、HIPCイニシアティブ(2億6500万ドル)および多国 間債務救済イニシアティブ(9億7270万ドル)によるものでした。
金融危機時における条件付現金給付プログラムの拡大
ラテンアメリカ・カリブ海諸国は、子供や若者が定期健康診断を受け 学校に通うことができるよう各家庭に給付金を支給する条件付現金給 付プログラムをほかの地域に先駆けて導入しました。ブラジルの Bolsa Família (家族のバッグ)やメキシコのOportunidades (機 会)に類似したプログラムが、コロンビア、エルサルバドル、ジャマイ カおよびパナマでも開始されました。当地域での条件付現金給付プロ グラムは、2009年度に世銀が供給した25億ドル近くの資金により拡 大し、世界的危機の影響を最も受けやすい人々を保護する手段として 用いられました。
世銀融資適格国
アンティグア・
バーブーダ アルゼンチン ベリーズ ボリビア多民族国 ブラジル チリ コロンビア
コスタリカ ドミニカ国 ドミニカ共和国 エクアドル エルサルバドル グレナダ グアテマラ ガイアナ
ハイチ ホンジュラス ジャマイカ メキシコ ニカラグア パナマ
パラグアイ ペルー
セントクリストファー・
ネーヴィス セントルシア
セントビンセントおよび グレナディーン諸島
スリナム トリニダード・
トバゴ ウルグアイ ベネズエラ・
ボリバル共和国