1.はじめに
Cα伽Cαn∫はヒトにおいて全身性あるいは皮膚粘膜の感染症を引き起こす日 和見感染菌である。粘膜のC舳〃α感染の中で、口腔咽頭カンジダ症は刈DS患 者のような免疫不全の宿主における重大な臨床上の問題となっている(Odds eτ
〃.,1990)。Cα伽。m∫は酵母状細胞と菌糸状細胞の二形性を示す。C.o伽。伽sの 菌糸状細胞は酵母状細胞より粘膜細胞への接着 性が高いため、宿主の組織に侵 入し病変を起こしやすいと考えられる(Odds,1988)。このため菌糸状発育をタ ーゲットとした抗菌剤による治療法が必要である。
アゾール系抗真菌剤は表在性および深在性の真菌症の化学療法に最も広く使 われる、主として静菌的に働く薬剤である。イミダゾール環を有する薬剤、イ
ミダゾール系抗真菌剤は、主として表在性真菌症に対する外用剤として用いら れている。トリアソール環を有するトリアソール系抗真菌剤は、主に深在性真 菌症に対する経口、注射剤として用いられている。なかでもトリアソール系抗 真菌剤のフルコナジールとイドラゴナジールは、その有効性の高さと低い毒性 のためにCαna肋属による深在性感染症の治療によく使われる(Hay,19gO)。ア ゾール系抗真菌剤は、発育を部分的に阻止するような低濃度でC o伽C伽の菌 糸状発育に影響を与えることが知られている(Oddse〃.,1985)。しかし、末期 のAIDSや慢性皮膚粘膜カンジダ症のような極度に免疫力の低下した患者では、
フルコナジールによる断続的な治療がこれらの薬剤に耐性のCαn〃αを出現さ
せている(RexeC〃.,1995)。ある種の抗真菌剤はアゾール耐性C o伽。m∫に有効
性を示すことが報告されているが、これらの研究は主として酵母状に発育する 条件下で得られた結果である(Martinez−Suarez and Rodriguez−Tude1a,1996;
Ruhnkeec〃.,1997)。菌糸状に発育する細胞に焦点を当てた研究が、この形態の 病原性における重要性から必要と考えられる。
ある種の抗菌剤は生体防御因子と協力して生体に侵入した病原菌を抑制する ようである。粘膜分泌中や血中(感染時)に存在するラクトフェリンが、投与 された抗真菌剤の効果に影響を及ぼすのか、ラクトフェリンやその活性ペプチ ドと抗真菌剤との併用療法は有効なのかを検討するために、本試験では、初め にC.α伽。舳∫臨床分離株の酵母状発育条件下で、ラクトフェリンやそのペプチ
ドと、各種抗真菌剤との間のinvitro併用効果を調べた(Wakabayashie〃.,1996b)。
これにより、ラクトフェリン類とアゾール系抗真菌剤の間で相乗効果が確認さ れたため、次ぎにアゾール耐性株を含む。 o伽。伽∫臨床分離株の菌糸状発育条 件下で、ラクトフェリン類とトリアソール系抗真菌剤との併用効果を調べた
(Wakabayashie〃.,1998)。
2.材料と方法
2−1.ラクトフェリシン関連物質
ウシラクトフェリン、ウシラクトフェリン・ペプシン分解物、ラクトフェリ シンBは、第2章に示す方法で調製した。ラクトフェリン分解物からラクトフ ェリシンBを除いた画分、LF(一)は、ラクトフェリン分解物からHPLCにより繰
り返しラクトフェリシンBを除去することで得た。全てのラクトフェリン関連 物質は滅菌水に溶解させた。
2−2.抗真菌剤
アンホテリシンBとクロトリマゾールはSigma Chemica1Co.より購入した。
ナイスタチンとフルシトシンはNaka1aiTesque Co.(Kyoto)より購入した。ケトコ ナジール、イドラゴナジール、フルコナジールはそれぞれNizora1⑩Crcam(Kyowa
H・kk・C…T・ky・)・1t・i・・1・⑩C・p・・1・・50(Ky・w・H・kk・)、Din・…⑧C・p・・1・・(Pfi…
Pha㎜aceutica1Japan,Tokyo)から抽出した。フルシトシン、イドラゴナジール、
フルコナジールはそれぞれ滅菌水、O.1NHC1添加DMSO,PBSに溶解させた。
他の抗真菌剤は、DMSOに溶解させた。
2−2.C.α伽。舳∫株
アゾール感受性菌として次の菌株を用いた。ATCCgO028(Nationa1Committee forC1inical LaboratoryStandards documentM27一工1995による推奨株)、TIMM1768
(血清型Aの臨床分離株、帝京大学医真菌研究センター、Tokyo,Japan)。アゾ ール耐性菌として次の菌株を用いた。TIMM3164(中等度の耐性株、AIDS患者 より分離)、TIMM3315,TIMM3317(高度耐性株、血液病患者から継続して分 離)。使用前に菌株をストックカルチャーからサブロー・グルコース寒天(1%
Bactopeptone,2%glucose,1.5%agar)に移し28℃で培養した。それぞれの株の抗 真菌剤に対する感受性はdocument M27−Tにしたがって確認した(Nationa1
Committee for C1inica1Laboratory Standards document M27一丁1995)。
2−3.酵母状発育条件下での抗Cma肋活性の測定
抗真菌剤とラクトフェリン関連物質の酵母状発育条件下でのCα伽。m∫
TIMM1768に対する発育阻止活性は微量液体希釈法により測定した(Uchida,
1991)。C o伽。m∫の酵母状細胞をサブロー・グルコース寒天スラントから分取し、
生理食塩水で洗浄、サブロー・グルコース・ブロス(1%Bactopeptone,2%g1ucose,
pH6.5)に105細胞/m1の菌数で懸濁した。20μ1のC舳〃α懸濁液、10μ1のラク トフェリン関連物質ストック液、2μ1の抗真菌剤ストック液、168μ1のサブロー・
グルコース・ブロスを混合し、37℃で17時間培養した。試験濃度のラクトフェ リン関連物質の添加は培地のpHをやや上昇させた(∠lO.1−O.2)。抗真菌剤の溶 解に用いた溶媒の培地への添加(1%)はCαn〃αの発育に影響しないことを確 認した。培養開始時と終了時に、n:3のサンプルの630mでの吸光度を測定し、
その差をCma肋発育量とした。Cα伽。舳sの発育阻止%は次のように計算し た:[(1一薬剤存在下でのCαめた伽s吸光度/Cα伽。舳∫単独での吸光度)×100]
(%)。80%発育阻止濃度を最小発育阻止濃度(MIC)とした。
2−4.菌糸状発育条件下での抗C伽〃α活性の測定
2・5%非勧化FCS・20mM HEPES・2mM L−91utamate,16mM sodium hydrogen carbonateを添加したRPM11640をCα伽。伽の菌糸状発育を促進する培地とし て使用した(RPmcdium)。Cαめたαn∫の酵母状細胞をサブロー・グルコース寒天 スラントから分取し、生理食塩水で洗浄、RP mediumに105細胞/m1となるよう に懸濁した。96穴平底マイクロプレートのウェルに20μ1のCα〃a肋懸濁液、10 μ1のラクトフェリンまたはラクトフェリシンBストック液、2μ1の抗真菌剤ス
トック液・168μ1のRPmediumを加え、5%CO、大気中、37℃で、15時間培養し た。C.α伽。伽の菌糸状発育量を測定するために、文献に示す方法でクリスタル・
バイオレット(CV)染色法を行った(Abe e〃.,1994;Okutomi ecαZ.,1997)。そ
の方法を略記すると、ウェル中の培地を除去し、接着しているCma肋の菌糸
を70%エタノールで固定する。菌糸をO.02%CVで染色し、水で洗浄する。マ
イクロプレートを乾燥し、O.04NHC1入りイソプロパノール150μ1とO,25%SDS
50μ1をウェルに添加し、混合する。n=3のサンプルで550−630nmの吸光度を測
足する。フルコナジールとラクトフェリン関連物質については、薬剤無添加で の発育に対して80%発育を阻止した最小濃度をMICとした。イドラゴナジール はアゾール耐性Cα伽。m∫に対して部分的発育阻害を起こしたので、90%発育阻 止濃度をMICとした。
2−5.チェッカーボード法による解析
併用効果の評価のために、標準法にしたがってチェッカーボード法を使用し た(E1iopou1os and Moe11ering,1991)。併用した薬剤それぞれのMIC値を算術ス ケール上にプロットした。fractiona1inhibitoryc㎝centration(FIC)indexは次のよう
に計算した:(併用下での薬剤Aの最小阻止濃度/薬剤A単独でのMIC+併用 下での薬剤Bの最小阻止濃度/薬剤B単独でのMIC)。FICindex値がく1,1.4、
>4をそれぞれ相乗的、相加的、拮抗的とした。
3.結果
3−1.酵母状発育条件下での抗真菌剤とラクトフェリンの併用効果 3−1節から3−5節まで、酵母状発育条件下で、C o伽。伽∫TIMM1768に 対する、ラクトフェリン、ラクトフェリン分解物、ラクトフェリシンBと、各 種抗真菌剤との併用効果を検討した。Cma肋の発育をほとんど阻止しないラク トフェリン1OOμg/m1の存在下で、2種類のポリエン類(アンホテリシンB、ナ イスタチン)、1種類のフルオロピリミジン類(フルオロシトシン)、2種類のイ
ミダゾール類(クロトリマゾール、ケトコナジール)、2種類のトリアソール類
(フルコナジール、イドラゴナジール)の抗Cm〃α活性を調べた(表5−1)。
アンホテリシンB、ナイスタチン、フルシトシンのMICはラクトフェリンを加
えても変化しなかった。一方、ケトコナジールのMICはラクトフェリン存在下
で非存在下での1/16に低下した。また他の3種のアゾール剤のMICもラクトフ ェリンによって1/4に低下した。
表5−1.各種抗真菌剤の抗Cm〃α活性へ及ぼすラクトフェリンの影響
MIC(ng/m1)
Antifunga1agent
ドキュメント内
生体防御因子ラクトフェリン関連物質の抗真菌作用
(ページ 48-53)