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学年 睡眠(時間) 外遊び(回数/週) テレビ(時間) ゲーム(時間) 朝食摂取(%)

全体 p=0.068 p=0.010

p<0.01 2011>2016

p<0.01 2011<2016

3 p=0.070

p<0.01 2011>2016

p<0.01 2011>2016

p<0.01 2011<2016

5 p=0.308 p=0.011 p=0.013

p<0.01 2011<2016

2 p=0.285 p=0.334

p<0.01 2011>2016

p<0.01 2011<2016

2 p=0.021 p=0.315

p<0.01 2011>2016

p<0.01 2011<2016

p<0.01で有意差あり

Ⅲ.考察

1.抑うつ症状の比較

抑うつ症状評価尺度(QIDS-J)の平均スコア、抑うつ群(≧QIDS-J得点11点)の割 合、および自殺念慮の割合ともに、2011年に比べて2016年においては、小学生では不変 あるいは増加傾向にあり、中学・高校生では低下傾向にあった。このことは何を意味する のであろうか。

わが国の自殺者数および自殺率について考えてみたい。わが国の自殺者数は1998年以 降、14年連続して3万人を超える状態が続いていたが、2012年に15年ぶりに3万人を下

回り、2015年には2万4,025人となった14)。北海道の児童生徒の心の健康に関する調査

は、まだ自殺者が3万人を超えていた2011年と、自殺者数が減少した2016年に行われた のである。自殺者数と抑うつ症状および自殺念慮はきわめて関連の深い項目であるゆえ、

この変化を考察することには大きな意味があると考えられる。

図24には年齢別自殺者数の年次推移を示した8)。これを見ると、自殺者数の減少は50 歳代および60歳以上の中高年の自殺者数の減少によるものであることがわかる。若者を 見ると、10歳代および20歳代は横ばいである。しかし、近年は著しい少子化が進んでい るため、自殺率に換算すると10歳代、20歳代の自殺率は増加している可能性が考えられ る。

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図25には年齢別自殺率の年次推移を示した14)。これを見ると、50歳代および60歳以 上の自殺率は減少傾向にあることが明らかである。若者を見ると、19歳以下の自殺率は 1998年に倍増したまま高止まりの状態が続いており、20歳代の自殺率は、1998年から上 昇を続け、2011年をピークとして、以後は漸減傾向にあることがわかる。

中高年の自殺者数および自殺率の低下は、国を挙げた自殺予防対策が功を奏している可 能性はあるが、若者、とくに小・中・高校生に対する自殺予防対策はほとんど行われてい ないのが実情である。したがって、中学生・高校生の抑うつ傾向の低下において自殺予防 対策が功を奏したとは考え難い。

(資料)社会実情データ図録(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2740.html)

図24 年齢別自殺者数の年次推移

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自殺者数と失業率は密接な関係があると指摘されている。1980年から2016年までの自 殺者数の年次推移と失業率の年次推移を比較したのが図26である。自殺者数と失業率が 密接な関係をもち、同じような推移を示していることがわかる。

2.04 2.55

2.1 2.17

3.293.13.44 3.31 2.79

2.4

0 1 2 3 4

1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007 2010 2013 2016

2.022.35 2.85

2.092.5 3.4

4.67 5.36

4.73 3.83

5.08 4.01 3.27

0 1 2 3 4 5 6

1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007 2010 2013 2016 図25 年齢階層別の自殺死亡率の年次推移

(万人) 自殺者数 (%) 失業率

図26 自殺者数の年次推移と失業率の年次推移の比較

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-34

このような視点で考えてみると、現代においては高校生の卒業生のうち17.6%(2015 年3月)が就職することから13)、わが国の失業率の低下が中学生・高校生の抑うつ傾向の 低下と関連があると考えることも可能である。

小学生における抑うつ傾向の増加については、理由は不明である。少なくとも中高年世 代の自殺者数・自殺率の低下や失業率の低下は、小学生年代には影響を与えていないと考 えられる。したがって、決して若年世代全体の抑うつ傾向が低下傾向に向かっていると楽 観することはできない。今後は、若年世代をターゲットにした心理教育や自己評価・自己 効力感を高めるアプローチが必要であると考えられる。

2.躁症状の比較

現在の躁症状評価尺度(MEDSCI)の値は、全体のスコアは2016年で有意に低下して おり(p<0.01)、学年別では中学2年生において2016年で有意に低下していた

(p<0.01)。これは、躁症状(MEDSCI値)と抑うつ症状(QIDS-J値)が正の相関を示 すことと関連があると思われた。

しかし、MEDSCI値(過去)および躁傾向群の割合(現在、過去)においては、学年に

よってさまざまであり、一定の傾向を確認することはできなかった。

3.自閉傾向の比較

自閉傾向(AQ-J)の平均スコアの値を比較してみると、全体では2016年で有意に低下 していた(p<0.01)。学年別では中学2年生においても(p<0.025)、高校2年生におい ても(p<0.012)、2016年で有意に低下していた。自閉傾向群(AQ-J≧30)の割合を比 較してみると、中学2年生と高校2年生において2016年で低下傾向が認められた。AQ-J スコアの低下傾向をどのように考えたらよいのだろうか。1つの要因としては、自閉傾向

(AQ-J)と抑うつ症状(QIDS-J値)が正の相関を示すことと関連があると思われた。す なわち、中学生・高校生のQIDS-J値が低下したため、AQ-J値も低下した可能性が考えら れる。実際の臨床例においても、うつ病の症状が治療によって改善すると、併存する自閉 傾向も目立たなくなる事例は少なくない。その他に考えられるいくつかの要因を検討して みたい。

2011年と2016年の社会背景を比較してみると、以下の2点を指摘することができる。

第1に、2011年よりも2016年において、いわゆる「発達障害」の認識は一般にも、高校 生や中学生の間にも広まったと思われる。ただ、その知識が正しく伝わっているかどうか

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は明らかではない。第2に、小・中・高校生のスマートフォンやソーシャルメディアなど の利用が増えた。それによってコミュニケーションの質はともかく、コミュニケーション の量においては増加したと思われる。それぞれについて詳しく検討する。

1)「発達障害」の認識について

岡本ら17)は2011年に、大学生の意識調査として発達障害に関する理解と知識について 調査した。対象は広島大学の学生398人(18.8±0.9歳)である。その結果、発達障害に ついて「知っている」と回答した者は29.9%、「聞いたことがある」が50.8%、「知らな い」が14.6%であった。発達障害別の認知度では、知的障害を知っている者は52.0%、高 機能自閉症が32.7%、学習障害が30.7%、注意欠陥多動性障害が25.6%、アスペルガー症 候群が18.6%であった。発達障害について知ったきっかけは、「テレビ」が46.5%と多 く、続いて「講義」が15.6%であった。発達障害についてどのように思うか?という質問 に対して、「わからない」と回答したものが35.9%であり、「個性だと思う」が29.4%で あった。「自分はコミュニケーションが苦手だと思うか?」という質問に対して、「コミ ュニケーションが苦手/どちらかというと苦手」と回答した者が58.0%であった。また、

「自分は集団行動が苦手だと思うか?」という質問に対して、「集団行動が苦手/どちら かというと苦手」と回答した者が54.8%と過半数であった。

この結果は、発達障害についてある程度知っていても、正確な知識の普及には至ってい ないことを示している。また、自らのコミュニケーションや集団行動については苦手と思 っている学生が多いが、自らの発達障害特性に気づいているかは明らかにされていない。

今回の調査で用いた自閉症スペクトラム指数(AQ-J)は、自己記入式尺度であるため、

児童生徒が自らの自閉傾向に気づいている割合を示していると考えられる。したがって、

AQ-Jスコアの低下は、児童生徒が自らの自閉傾向についての気づきや認識が低下したと いうことができる。あるいは、発達障害の社会的認知度が高まってきたために、むしろ

「自分のことを発達障害と思いたくない」「自分のことを発達障害と思われたくない」と いう心理が働いて低得点の項目にチェックした可能性も否定できない。

2)スマートフォンやソーシャルメディアの利用について

総務省は2015年5月、「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」の結 果を発表した(13~69歳、1,500人)21)。その結果、スマートフォン利用率は全年代合わ せて62.3%となり、1年前より10%伸びていた。その内訳は、10代が68.6%、20代が 94.1%、30代は82.2%、40代は72.9%、50歳代は48.4%、60歳代は18.3%であった。

また、ソーシャルメディアの利用率は、スマートフォン利用率と同じ62.3%までに上昇し

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た。ここで触れるソーシャルメディアとは「LINE」「Twitter」「Facebook」「mixi」

「Mobage」「GREE」である。その内訳は「LINE」は10代が77.9%、20代では 90.5%、30代は69.8%であり以降は低下していく。「Twitter」は10代が49.3%、20代 は53.8%、30代は21.4%であり以降は低下していく。一方「Facebook」は、10代は

25.0%、20代は61.1%、30代は39.9%であり以降は低下していく、という結果であっ

た。

また、デジタルアーツ社は2015年7月、「未成年者の携帯電話・スマートフォンの利 用実態調査」の結果を発表した(10~18歳、618人)6)。その結果、10~18歳の中でスマ ートフォンを使用している割合は67.3%であり、上記総務省の結果と同様であった。2011 年11月時点では14.4%であり、大きく増加している。その内、小学生のスマートフォン 使用率は40.8%(2011年11月は6.6%)、中学生の使用率は62.1%(2011年11月は 10.2%)、高校生の使用率は99.0%(2011年11月は26.5%)と、この4年間で飛躍的な 増加を示している。携帯電話およびスマートフォンの1日の平均使用時間は、小・中学生 は2時間未満、男子高校生は4.1時間、女子高校生は平均時間が7時間(15時間以上は 9.7%)であった。使用時間帯で最も多いのは18:00~21:00であった。女子高校生の 24.3%は深夜0:00~3:00に使用していた。使用頻度の高いアプリは、「LINE」61.8%(男 子高校生87.4%、女子高校生94.2%)、「ゲーム」41.4%、「動画」39.2%、「音楽」

35.3%、「Twitter」29.6%(男子高校生59.2%、女子高校生84.5%)などであった。

以上より、この5年間の間に、スマートフォンやソーシャルメディアの利用は児童生徒 の間で飛躍的に増加していることが明らかになった。自閉傾向が高い人たちも、ソーシャ ルメディアにおけるコミュニケーションにおいては比較的困難を感じずに交流しやすいと 考えられる。その結果、自らのコミュニケーションの苦手さを感じる機会が減ったため、

AQ-Jスコアの低下に影響を及ぼした可能性も否定できない。しかしながら、以上の考察 は推測の域を出るものではなく、中学生・高校生のAQ-Jスコアの低下と確実な関連があ るかどうかは明らかではない。

4.ライフスタイルの比較

ライフスタイルについては、2011年と比較して2016年では、外遊びの回数が減少傾向 にあり、テレビの視聴時間が有意に減少し、ゲームの時間が有意に増加していた。この理 由はさまざまに考えられるが、上記に示したようなスマートフォンやソーシャルメディア

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