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4. モルフォロジカル・ウェーブレット
ここまでの説明で,モルフォロジが「非線形で有界な世界」での演算の体系であり,完 備束での上限・下限演算を基盤として構成されていることを説明した.この説明では,も ともとは2値画像への「はめこみ」であり,論理演算によって定義されていたものが,グ レースケール画像,カラー画像と拡張されていき,最終的には一般的な完備束における上 限・下限演算に達している.
そこで,ウェーブレット解析においても,上限・下限演算(一般的な信号処理では最大・
最小演算)を導入して,モルフォロジと同様の「非線形で有界な世界」に適した演算を構 成しようという考えが生まれてくる.
例えば,もっとも簡単な例として,図
8
に示す2 × 2
のサンプリング窓をもつ次の変換 を考える.a = min(x, y, z, w) h = y − x
v = z − x d = w − x (4.1)
この演算で,
a
に相当する部分はダウンサンプリングによる近似画像であり,他は差分画x y
z w
a b
c d
サンプリング窓
分解 再構成
近似画像 差分画像(横)
差分画像(縦) 差分画像(斜め)
Fig. 8. 2 × 2
のサンプリング窓をもつウェーブレット変換像となっている.これらの画像に対して,
x = a + max( − d , − h , − v , 0) y = x + h
z = x + v w = x + d (4.2)
のように再構成を定義することができる.この演算は,2次元の
Haar
ウェーブレット変 換を,最大・最小演算におきかえて表したもので,モルフォロジカル・Haar
ウェーブレッ ト変換とよばれている.このような最大・最小演算にもとづく信号の分解・再構成の一般的な枠組みは,
Heijmans
らによって[14, 15]
で議論されている.また,延原は,整数上の最大演算と加算だけから なるマックスプラス代数系においてモルフォロジカル・ウェーブレットを構成すること で,処理を簡素化し,動画像への適用も行っている[10]
.5. おわりに
本講演では,「有界で非線形な世界」を扱う体系を完備束における上限・下限演算で構 成しようというモルフォロジの思想を,基本的な演算から特徴的な応用例にわたって解説 した.線形演算という巨大な体系に対して,モルフォロジの体系はまだまだ発展の余地の あるものである.とくにモルフォロジカル・ウェーブレットに関しては,「多重解像度解 析に相当するものが非線形画像フィルタで行える」ということから,線形演算における周 波数をモルフォロジのサイズと結びつけるなど,さらに応用の可能性が広がっている.そ の可能性について,議論してみたい.
筆者にモルフォロジカル・ウェーブレットについてご教示くださった,筑波大学システ ム情報系・延原肇講師に,感謝いたします.
参考文献
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浅野晃、“
マセマティカルモルフォロジーの思想”
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[10]
浅野晃,浅野(村木)千恵,木森義隆,棟安実治,延原肇,藤尾光彦,非線形画像・信号処理 モルフォロジの基礎と応用,丸善,東京,
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電子情報通信学会論文誌A
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[14] J. Goutsias and H. J. A. M. Heijmans, “Nonlinear Multiresolution Signal Decomposi-tion Schemes
―Part I: Morphological Pyramids,” IEEE Trans. Image Procees., vol. 9, no. 11, pp. 1862–1876, Nov. 2000.
[15] H. J. A. M. Heijmans and J. Goutsias, “Nonlinear Multiresolution Signal Decomposi-tion Schemes
―Part II: Morphological Wavelets,” IEEE Trans. Image Procees., vol. 9, no. 11, pp. 1897–1913, Nov. 2000.
浅野 晃
(
関西大学総合情報学部)
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