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モルフォロジカルフォルタとフィルタ定理

LES LES

3. 特徴的な演算

3.1 モルフォロジカルフォルタとフィルタ定理

3.1.1

モルフォロジカルフィルタ

画像処理におけるフィルタとは,一般に,画像の各画素について,その画素および近傍 の画素とでなんらかの演算を行なって,その結果で各画素を置き換えることで,画像全体 のノイズ除去などを行なう操作を指している.一方,モルフォロジにおいては,フィルタ とは,広義には画像に対する「移動不変

(translation-invariant)

」で「増加的

(increasing)

とは,

(3.1) Ψ(X

b

) = [Ψ(X)]

b

であることをいう.簡単にいえば,「画像中のどこで作用をおよぼしても,その作用の効 果は変わらない」という意味である.また「作用

Ψ

が増加的である」とは,オープニング について

2.4

節で述べたのと同じく,

(3.2) X ⊂ Y ⇒ Ψ(X) ⊂ Ψ(Y)

であることをいう.すなわち,物体の包含関係が作用の前後で保たれることを意味して いる.

例えば,ノイズ除去を行う画像フィルタを考えてみよう.画像中のある場所でノイズと みなされる物体は,画像中のどこにあっても同様に取り除かれなければならないはずだか ら,フィルタが移動不変であることは自然なことである.また,増加的なフィルタでは

「小さな物体を取り除き,大きな物体を保存する」作用のみを記述し,「大きな物体を取り 除き,小さな物体を保存する」という作用は記述できない.しかし,ノイズというのは通 常「ノイズでない,意味のある」物体よりも小さいのが普通である.したがって,増加的 なフィルタのみを考えるのは,自然であることがわかる*5

また,狭義のモルフォロジカルフィルタとは,広義のフィルタの中で「べき等

(idempo-tent)

」なものをさしている.「作用

Ψ

がべき等である」とは,

(3.3) Ψ[Ψ(X)] = Ψ(X)

であることをいう.すなわち,「あるフィルタを適用した結果に,そのフィルタを何度く りかえして適用しても,結果は変わらない」という意味である.オープニングやクロージ ングは,もっとも基本的な(狭義の)モルフォロジカルフィルタである.

3.1.2

フィルタ定理

フィルタ定理

(filter theorem)

とは,モルフォロジの演算と論理演算でたいていのフィル タは表現できること,すなわちモルフォロジが真に図形操作の基礎演算であることを保証 するものである.フィルタ定理は,以下のように表される.

いかなる移動不変・増加的な(広義の)フィルタも,適当な構造要素を適当な数だけ用 いれば,それらによるエロ−ジョンの論理和,およびダイレーションの論理積によって表 現される.すなわち,

Ψ(X)

を画像

X

に対するフィルタとするとき,いかなる

Ψ(X)

につ

*5差分フィルタは,大きな物体も小さな物体もエッジ以外は取り除いてしまうので,増加的フィルタではな い.

いても

(3.4) Ψ(X) = "

B∈

Ker

[Ψ]

X # B ˇ

(3.5) Ψ(X) = !

B∈

Ker

[Ψ]

X ⊕ B ˇ

を満たす構造要素の集合(集合族)

Ker[Ψ]

が存在する.

Ker[Ψ]

はフィルタ

Ψ

の核

(kernel)

とよばれ,次のようなものである.

(3.6) Ker[Ψ] = { X | 0 ∈ Ψ(X) } .

0

X

が定義されている座標系の原点を意味する.すなわち,

Ker[Ψ]

は「考えられるす べての入力図形のうち,それに対するフィルタの出力が原点を含むものすべて」である.

フィルタ定理は,以下のように証明される.ここでは,式

(3.4)

のほうを証明する.よ り一般的な証明は,文献

[6]

chapter 4

を参照されたい*6

Ker[Ψ]

の要素である任意の構造要素

B

について,

X # B ˇ

に含まれるベクトル(画素)

h

を考える.式

(2.8)

X # B ˇ

の定義より,

B

h

⊆ X

である.したがって,

B ⊆ X

h である.

ここで,フィルタ

Ψ

は増加的であるから,包含関係

B ⊆ X

hはフィルタ

Ψ

によって変化 しない.すなわち,

0 ∈ Ψ(B)

ならば

0 ∈ Ψ(X

h

)

となる.さらに,フィルタ

Ψ

は移動不変 であるから,

0 ∈ Ψ(X

h

)

ならば,この関係を全体に

h

だけ移動することによって

h ∈ Ψ(X)

が得られる.

B

Ker[Ψ]

の要素であるから,確かに

0 ∈ Ψ(B)

である.以上から,

Ker[Ψ]

の要素で

ある任意の構造要素

B

について,

h ∈ X # B ˇ ⇒ h ∈ Ψ(X)

である.つまり,

Ker[Ψ]

に含ま れるどの構造要素

B

についても,

X # B ˇ

に含まれる画素はすべて

Ψ(X)

に含まれることが わかった.したがって,

Ψ(X) ⊇ #

B∈

Ker

[Ψ]

X # B ˇ

が示された(図

4

).

逆に,

Ψ(X)

に含まれる任意の画素

h

を考える.

Ψ

は移動不変であるから,

h ∈ Ψ(X)

な らば

0 ∈ Ψ(X

h

)

である.したがって,

X

h

∈ Ker[Ψ]

である.ところで,

X # X ˇ

h

= { h

)

| (X

−h

)

h)

⊆ X }

であり,

h

)

= h

のとき

{ (X

−h

)

h)

⊆ X }

は満たされるので,

h ∈ X # X ˇ

−hである.

ここで

X

h を

B

とおくと,

h ∈ X # B ˇ

である.

したがって,

Ker[Ψ]

に含まれるある構造要素

B

について,

h ∈ Ψ(X) ⇒ h ∈ X # B ˇ

である.つまり,

Ψ(X)

に含まれるどの画素についても,

Ker[Ψ]

の中のある構造要素

B

を用いて,その画素が

X # B ˇ

にも含まれるようにできることがわかった.したがって,

Ψ(X) ⊆ #

B∈

Ker

[Ψ]

X # B ˇ

が示された(図

5

).

よって以上のことから,

Ψ(X) = #

B∈

Ker

[Ψ]

X # B ˇ

が示された.

*6フィルタ定理は,より一般的には「Matheronの表現定理」とよばれている.