4章では,3章で得られた結果から,メモ領域での作業を円滑にするということに着目し,
メモ領域のシステム向上を目的とシステムデザインを行い,SketchPointに機能の追加をし た.新たにPie-Menuの実装を行ったSketchPointを用いて実験を行った[10,18,19].
今回新たに実装したPie-Menuはメモ作成領域において,メモ作成及び スライド 作成の作 業補助を行うために追加した機能である.Pie-Menuを実装した理由とし ては,Pie-Menu は一般的に用いられているメニューと違い,任意の場所で一定時間ポイントすることによっ て,その位置に出現する.このことから,ペン1本で作業を行うSketchPointに見合ったメ ニュー形式であり,ポイント位置に表示されることにより,円滑に作業を行うことも可能で あることから,今回,Pie-Menuを実装した[13,14].
Pie-Menuに搭載されている機能としては,『 箇条書き機能のOn/Off』,『 罫線間隔変更機
能』,『ペン カラー変更機能』,『ペンサイズ変更機能』が備わっている.各機能はPie-Menu を表示した時に選択することによって実行することができる( 図4.1).Pie-Menuに搭載さ れている機能は,実験1の被験者が多数意見を挙げていたものを基に選ばれたものとなって いる.また,Pie-Menuの他に改良された項目として,実験1のものよりもSketchPointの 消去ジェスチャの認識率や,筆記における処理を一部修正している.
4.1 被験者
実験2の被験者も実験1と同様に,lab testingの被験者は21歳から23歳の学生7名( 平
均年齢21.85歳,実験1と同様の被験者4名,新規の被験者3名)に対して行った.Field
図4.1 Pie-Menu
studyも同様に,被験者は 22歳から23歳までの学生4名( 平均年齢22.5歳,実験1と同 様の被験者4名)に対して行った.
また、実験自体も同様の場所で行った.姿勢に対する条件に関しても実験1と同様である.
4.2 実験機器
実験機器は,実験1と同様に両手法ともFUJITSU製Tablet PCを使用した.
4.3 評価指標
Lab testingでは,実験1の評価項目に追加して,新たに Pie-Menuに関する項目につい
ても評価を同様の7段階評価で行ってもらった.追加項目を以下に示す.
• Pie-Menu(1:使いづらい,7:使いやすい)
• 箇条書きOn / Off機能(1:使いづらい,7:使いやすい)
• 罫線間隔変更機能(1:使いづらい,7:使いやすい)
• ペン カラー変更機能(1:使いづらい,7:使いやすい)
• ペンサイズ変更機能(1:使いづらい,7:使いやすい)
Field studyも実験1で用いたアンケートに,Pie-Menuに関する項目を追加したものを 用いた.
4.4 作成資料内容
実験2実験で用いた作成資料内容は,被験者ごとの研究に関する内容や自己紹介に関する ものを資料として設定した.
4.5 実験の流れ
実験の流れはlab testing,field studyの両手法共に実験1と同様の流れで実験を行った.
4.6 実験期間
実験2の実験期間は,実験1と同様の期間で実験を行った.
4.7 結果と考察: lab testing
主観評価の結果,「 箇条書き機能:4.0」,「削除機能:3.8」,「関連付け機能:4.0」,「 図作成 機能:3.8」,「 スライド 画面機能:3.8」,「筆記性:4.0」,「Pie-Menu:5.5」というような結果 が得られた.中でも,Pie-Menuの実装している「箇条書きOn / Off機能」は4.5という評 価を得た( 図4.2).
全体的に評価が向上している理由としては,消去や筆記部分の認識率を修正していること が考えられる.このことにより,前回のシ ステムよりも操作に関するストレスが解消されて いると予測する.また,今回新たに実装しているPie-Menuに関しては,前回の実験で挙げ られていた箇条書きに関する問題点を改善していることから,その評価が高くなったことに 繋がっていると考える.
図4.2 実験2:lab testing実験結果
4.8 結果と考察: field study
アン ケート 調査の結果,実験 1 とほぼ 同様の意見が 挙げられ た.実験1でも多く挙げ られている,プレゼンテーションを行う際,スライド 切り替え操作が使い辛いという意見 や,メモ領域で一度筆記したものを再度編集できるようにして欲しいという意見や,筆記し た文字を修正する機能が欲しいというような意見が挙げられた.今回から実装されている
Pie-Menuに関する意見としては,Pie-Menuの実装している箇条書きOn/Off 機能が便利
で使い易いという意見が多く挙げられている.また,罫線感覚変更機能についても,特徴的 な機能ではなく,一般的な機能なのだが資料を作る際の筆記の目安になるので,使いやすい という意見が挙げられている.ペンカラー変更機能,ペンサイズ変更機能に関しても,罫線 間隔変更機能と同様に,資料作成を行う際に,スムーズに作業を行うことができるという意 見が挙げられている.
しかしながら,lab testingの被験者よりもシ ステムを長期間にわたって使用する中で発 見され る問題点も挙げられている.今回実装した Pie-Menuは,図作成機能を改良して実 装したものである.つまり,Pie-Menuが実装された代わりに図作成機能が使えなくなって
いる.被験者によっては ,前回の実験1からスライド 作成において,図作成機能を使用し ている被験者もおり,『Pie-Menuも機能とし て使いやすいが,図作成機能も同様に使用した い』という意見が挙げられた.このことから,Pie-Menuの実装方法を現在のものから変更 し ,図作成機能と併用できるように改良を行う必要があると考える.また,修正を行うこ とにより,被験者が使いやすいという両機能を使用することができるようになることから,
SketchPointのシステム評価が向上すると考える.
4.9 両手法の結果に対する考察
実験2におけるlab testingとfield studyの評価結果と被験者からの意見としては,メモ 領域に関しては,Pie-Menuの実装により,新たな意見を得られたが,プレゼンテーション 領域に関しては,実験1のものとほとんど 変化は見受けられなかった.実験2では,メモ作 成領域のシステム向上を目的として改良したSketchPointを使用している.今回の結果は予 測ど おりの結果となっており,今後3.10節で述べたメモ領域とプレゼンテーション領域ご
とに SketchPointの改良を行っていくという流れに沿って,プレゼンテーション部分に関す
るシステムの改良を行うことによって,メモ領域だけでなく,プレゼンテーション領域に関 する評価も向上すると予測する.