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本章では、インド全土におけるメトロ・都市鉄道について調査し、本邦技術・ノウハウ、円借款そ の他我が国公的資金支援スキームの導入又は活用促進を目的とした官民ミッション派遣又はセミナ ー開催を企画・執行するにあたり候補となるメトロ・都市鉄道事業の選定を行うことを目的とする。

まず、次節ではメトロ・都市鉄道に関する基礎情報について整理すると共に、供用中(若しくは一 部建設中)のメトロ・都市鉄道事業について調査を行う。次に、事業方式に関するインド政府の考え 方について考察を行うことで、今後日本が支援を行う可能性のあるメトロ事業についての示唆を導き 出す。最後に、それまでの調査結果を踏まえ、事業候補の選定を行う。

4-2 インド全土のメトロ・都市鉄道の基礎情報

4-2-1 本節の目的

本節では、インド全土におけるメトロ・都市鉄道の基礎情報について整理し、計画中(若しくは一 部建設中)のメトロ・都市鉄道事業について調査を行うことで、事業候補選定へ向けた判断材料を整 理することを目的とする。

4-2-2 供用中、建設中のメトロ・都市鉄道事業の分類

1984年、インドで初のメトロ・都市鉄道であるコルカタメトロ1号線が供用を開始して以降、DMIC 地域のデリーメトロやCBIC地域のバンガロールメトロをはじめ、新規路線開発が続々と進み、2015 年12月現在、インドで供用中(部分供用を含む)のメトロ・都市鉄道は計14路線となった。DMIC 地域では10路線、CBIC地域では4路線のメトロ・都市鉄道が供用を開始している。

供用中事業の摘要について、表4-1に一覧で整理した。

表 4-1 インドにおける供用中のメトロ・都市鉄道事業

地域 事業名 都市/

実施機関 距離 事業 方式

初回供用 開始年

(最終延 伸)

DMIC 地域

デリーメトロ

(1号線-レッドライン)

デリ

Delhi Metro Rail Corporation (DMRC)

25km

公社 方式

2002 (2008年) デリーメトロ

(2号線-イエローライン)

49km

2004 (2015年) デリーメトロ

(3号線-ブルーライン)

50km

2005 (2010年) デリーメトロ

(4号線-ブルーライン*)

9km

2010 (-) デリーメトロ

(5号線-グリーンライン)

18km

2011 (-) デリーメトロ

(6号線-バイオレットライ ン)

35km

2010 (2015年) デリー空港エクスプレス デリ

Delhi Airport Metro Express Pvt. Ltd.

23km

PPP 方式

2011 (-) グルガオン高速メトロ鉄道

(フェーズ1) HR

Rapid MetroRail Gurgaon Limited (RMGL)

5km

PPP

方式 2013 ムンバイメトロ

(1号線) MH

Mumbai Metro One Private Limited (MMOPL)

11km

PPP 方式

2014 (-) ジャイプルメトロ

(東西線-ピンクライン) RS

Jaipur Metro Rail Corporation Ltd.(JMRC)

10km

公社

方式 2015

(2018年予定)

CBIC 地域

ベンガルールメトロ

(パープルライン) KA

Bangalore Metro Rail Corporation Ltd (BMRCL)

13km

公社 方式

2011 (2015年) ベンガルールメトロ

(グリーンライン) KA

12km 公社 方式

2014 (2015年) チェンナイメトロ

(2号線-グリーンライン) TN Chennai Metro Rail Limited (CMRL)

10km

公社

方式 2015

(2018年予定)

地域 コルカタメトロ(1号線) WB Indian Railway 28km

直営 方式

1984 (2013年)

*Anand Vihar ISBT - Vaishali区間

出所:EYインド作成資料を基に新日本監査法人作成

インドにおける建設中のメトロ・都市鉄道について、以下表4-2に整理した。DMIC地域では、デ リーメトロの延伸プロジェクトであるフェーズ3をはじめ、アーメダバードメトロやムンバイメトロ 3号線が建設中である。他方、CBIC地域では、ベンガルールメトロ・フェーズ2とチェンナイメト ロ1号線及び2号線の残る路線の建設を進めている状況にある。

表 4-2 インドにおける建設中のメトロ・都市鉄道事業

地域 事業名 都市/州 実施機関 距離 事業

方式

供用開始 予定年

DMIC 地域

デリーメトロ

(フェーズ3) デリー Delhi Metro Rail

Corporation (DMRC)

161km

公社

方式 2016 グルガオン高速メトロ鉄道

(フェーズ2) HR Rapid MetroRail Gurgaon

Limited (RMGL) 7km PPP

方式 2016 アーメダバードメトロ

(南北線) GJ

Metro Link Express for Gandhinagar and Ahmedabad Co. Ltd

18.5km

公社

方式 2017 アーメダバードメトロ

(東西線) GJ

Metro Link Express for Gandhinagar and Ahmedabad Co. Ltd

14.4km

公社

方式 2019 ジャイプルメトロ

(南北線-オレンジライン) RS Jaipur Metro Rail

Corporation Ltd.(JMRC) 23km PPP

方式 2019 ナビムンバイメトロ

(1号線) MH

City and Industrial Development Corporation (CIDCO)

106km

公社

方式 2016 ムンバイメトロ

(3号線)* MH Mumbai Metro Rail

Company (MMRC) 33.5km 公社

方式 2020

CBIC 地域

ベンガルールメトロ

(フェーズ2) KA

Bangalore Metro Rail Corporation Ltd (BMRCL)

72km 公社

方式 2020-21 チェンナイメトロ

(1号線-ブルーライン) TN Chennai Metro Rail

Limited (CMRL) 24km 公社

方式 2016

地域

ハイデラバードメトロ

(グリーンライン) AP州 L&T Hyderabad Metro 30km PPP

方式 2016 ハイデラバードメトロ

(オレンジライン) AP州 L&T Hyderabad Metro 27km PPP

方式 2017 ハイデラバードメトロ

(ブルーライン) AP州 L&T Hyderabad Metro 15km PPP

方式 未定 コチメトロ KL Kochi Metro Rail Limited 25km 公社

方式 2016 コルカタメトロ

(2号線-東西線) WB Kolkata Metro Rail

Corporation (KMRC) 15km 公社

方式 2016 コルカタメトロ

(3号線) WB Kolkata Metro Rail

Corporation (KMRC) 17km 公社

方式 2016 コルカタメトロ

(4号線) WB Kolkata Metro Rail

Corporation (KMRC) 18.5km 公社

方式 不明

*2016年初頭に建設開始を予定。

出所:EYインド作成資料を基に新日本監査法人作成

インドにおけるメトロ・都市鉄道の事業方式について、年ごとに供用開始した(予定含む)路線数 推移を図 4-1に示した。当初はデリーメトロをはじめとして公社方式による開発が行われているが、

近年は公社方式を採用したメトロ事業の供用開始が増えている。しかしながら、2016 年以降に供用 開始予定のメトロ事業では、PPP方式による開発が比較的多いことが分かる。

図 4-1 インドにおけるメトロの年ごとの供用開始路線数(予定含む)

(単位:路線数)

出所:EYインド資料より新日本監査法人作成

4-2-3 都市ごとにみる供用中・建設中のメトロ・都市鉄道事業

ある都市にメトロを導入する際の一つの指標として、人口規模がある。MoUDは、人口1.5百万人 以上の都市について、メトロ導入に向けたDPRの準備状況について整理している。

表4-3に、人口規模で上位29のインドの都市に関するDPRの準備状況とメトロの供用、建設状況 について整理した。なお、上位30位以下の都市であっても、メトロが既に供用、或いは、建設中の グルガオン、ナビムンバイも参考まで表に追加した。

0 1 2 3 4 5 6

公社方式 PPP方式

実績 予定

2002 デリーメトロ

(レッドライン)

供用開始

【公社方式】

2011 デリー空港 エクスプレス

供用開始

【PPP方式】

2016 ナビムンバイメトロ

他、供用開始予定

【公社方式】

2016 ハイデラバードメト ロ(グリーンライン)

他、供用開始予定

【PPP方式】

表 4-3 インドの大都市16におけるメトロのDPR準備状況及び供用中・建設中の路線数

No 都市

人口

(百万 人)

DPR 準備状況

路線数

(供用中:建設 中)

1 Delhi Delhi 21.75 完成 7(7:0)

2 Maharashtra Greater Mumbai 20.75 完成 2(1:1)

3 West Bengal Kolkata 14.62 完成 4(1:3)

4 Tamil Nadu Chennai 8.92 完成 2(1:1)

5 Karnataka Bangalore 8.73 完成 3(2:1)

6 Andhra Pradesh Hyderabad 7.75 完成 3(0:3)

7 Gujarat Ahmedabad 6.35 完成 0(0:1)

8 Maharashtra Pune 5.05 完成(市/州レベル)

-9 Gujarat Surat 4.59 未着手

-10 Rajasthan Jaipur 3.07 完成 2(1:1)

11 Uttar Pradesh Kanpur 2.92 未着手

-12 Uttar Pradesh Lucknow 2.90 完成(市/州レベル)

-13 Maharashtra Nagpur 2.58 準備中17

-14 Uttar Pradesh Ghaziabad (NCR) 2.36 完成(市/州レベル)

-15 Madhya Pradesh Indore 2.17 作成中

-16 Tamil Nadu Coimbatore 2.15 未着手

-17 Kerala Kochi 2.12 完成 2(0:1)

18 Bihar Patna 2.05 未着手

-19 Kerala Kozhikode 2.03 準備中

-20 Madhya Pradesh Bhopal 1.88 準備中

-21 Kerala Thrissur 1.85 未着手

-22 Gujarat Vadodara 1.82 準備中

-23 UP Agra 1.75 未着手

-24 Andhra Pradesh Vizag 1.73 未着手

-25 Kerala Malappuram 1.70 未着手

-26 Kerala Thiruvanthapuram 1.69 未着手

-27 Punjab Ludhiana 1.61 完成

28 Kerala Kannur 1.64 未着手

-29 Maharashtra Nashik 1.56 準備中

-... Haryana Gulgaon 0.87 完成 2(1:1)

... Maharashtra Navi Mumbai 0.7 完成 1(0:1)

出所:MoUD資料(2014)より新日本監査法人作成

人口規模で上位29の都市のうち、半数以上がDPRの準備を完成、或いは、着手済の状況にあるこ とが分かる。また、人口規模が比較的多い都市において、既に供用中、或いは、建設中の路線数が多 いことが見て取れる。以下では、供用中・建設中のメトロ事業の概要を都市ごと(10 都市)にみて いく18

16 MoUDによる都市人口上位29都市に加え、既にメトロが供用中または建設中に都市を加えたもの。

17 2015年時点で DPRのドラフトが完成している。

18 以下での記述内容は、20162月時点で確認された情報に基づく。

①デリー

インド首都のデリーでは、2002年にデリーメトロ1号線(レッドライン)が供用開始後、2016 年1月現在、計7線19のメトロが開通しており、メトロの整備網はインドで最長である。DMRCを 主体に順調に開発が進められており、直近ではデリーメトロフェーズ3として既存4路線の拡張が 行われており、2016年末にも工事完了を予定している。

■デリーメトロフェーズ 1(公社方式、円借款):供用中

実施機関 事業費 概要

DMRC 2,779億円 総全長:65km(58駅)

路線数:3路線

日本企業の受注:三菱電機(車両用電機品)

他国企業の受注:現代ロテム(車両)、ボンバルデ ィア(信号)

出所:JICA事後評価表20

■デリーメトロフェーズ 2(公社方式、円借款):供用中

実施機関 事業費 概要

DMRC 3,919億円 総全長:101.93km(79駅)

※デリー空港エクスプレスは除いて計算した場合

路線数:6路線(9区間)

日本企業の受注:三菱電機(車両用電機品)

他国企業の受注:現代ロテム、BEML(車両)、ボ ンバルディア(信号)

出所:JICA事後評価表、在インド日本国大使館

■デリー空港エクスプレス(PPP方式から公社方式変更、民間資金):供用中

実施機関 事業費 概要

DMRC 1500 億円

(原案では、

874億円)

総全長:22.7km(6駅)

※20112月開業、空港とニューデリー都市部間 の高速鉄道

路線数:1路線

日本企業の受注:三菱電機(車両用電機品)

他 国 企 業 の 受 注 :Construcciones y Auxiliar de Ferrocarriles(車両)、シーメンス(信号)

備考:当初PPP方式で実施されたが、多くの問題 が発生し、事業会社がPPP契約の無効を主張、後 DMRCに業務が継承された。

出所:日本経済研究センター21

19 デリー空港エクスプレス線を、デリーメトロとは別個の路線として数えた場合。

20 http://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2004_ID-P159_1_s.pdf

21 http://www.jcer.or.jp/international/insideindia20110310.html

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