• 検索結果がありません。

表9:漫才ロボットとニュースを読むロボットの評価結果のt検定

Mean SD t DF p

わかりやすさ(M) 4.27 0.57 2.20 25 0.03 わかりやすさ(N) 3.61 1.14

おもしろさ(M) 3.88 0.58 5.82 27 0.00 おもしろさ(N) 2.27 1.01

親しみやすさ(M) 3.88 0.58 5.39 29 0.00 親しみやすさ(N) 2.5 0.92

         (M:漫才ロボット, N:ニュースを読むロボット)

図20:漫才ロボットとニュースを読むロボットの比較による評価結果

図21: TVMLによるCGキャラクターのイメージ.

は19インチのモニターに漫才の実演映像を流した.CGキャラクターのイメージを図21に示 す.被験者は,先の漫才ロボットとニュースを読むロボットとの比較実験を行った18人であり,

CGキャラクターの漫才を観察後,以下の評価項目に5段階(5:高,1:低)で評価を行う.

(5) CGキャラクターの漫才はわかりやすかったか

(6) CGキャラクターの漫才はおもしろかったか

(7) CGキャラクターの漫才は親しみやすかったか

(8) 漫才ロボットの漫才とCGキャラクターの漫才ではどちらが好きか

評価指標には,漫才ロボットの漫才と同様の評価指標を用い,先の実験の漫才ロボットの漫才 との結果と比較を行う.評価項目(8)では,漫才ロボットの漫才がCGキャラクターの漫才と比 較して総合的にどの程度の有意性があるかを検証する.なお,この質問項目5段階評価ではな く3択(1:漫才ロボットの漫才,2CGキャラクター,3:どちらとも言えない)での評価を 行う.

表10:漫才ロボットとCGキャラクターの評価結果のt検定

Mean SD t DF p

わかりやすさ(M) 4.27 0.57 0.79 33 0.43 わかりやすさ(C) 4.11 0.67

おもしろさ(M) 3.88 0.58 0.97 32 0.33 おもしろさ(C) 3.66 0.76

親しみやすさ(M) 3.88 0.58 2.93 26 0.00 親しみやすさ(C) 3.05 1.05

      (M:漫才ロボット, C:CGキャラクター)

図22:漫才ロボットとCGキャラクターの評価結果 実験結果と考察

評価項目(5)-(7)の結果の値の平均を図23に,評価項目(8)の評価結果の割合を図23にそれぞ

れ示す.また,わかりやすさ,おもしろさ,親しみやすさの評価結果それぞれが漫才ロボットと CGキャラクターとの間で差が見られるのか否かについてt検定による検討を行った結果を表10 に示す.表10より,わかりやすさ:t(33)=0.796,p.05」,おもしろさ:t(32)=0.978,p.05」,

親しみやすさ:「t(26)=2.931,p.05」となった.わかりやすさとおもしろさの評価では,漫才ロ ボットとCGキャラクターそれぞれの平均値がほぼ同等の値であり有意差は得られなかった.一 方で親しみやすさの評価においては,漫才ロボットとCGキャラクターとの間に有意差が認め られ,平均値は漫才ロボットが高い値であった.

実験結果からロボットの方がメディアとしてCGよりも親しみの観点において有用であるこ とが示された.漫才ロボットとCGキャラクターのメディアとしての大きな違いには実体と映 像という差がある.実験結果では,メディアとして実体であるロボットの方をユーザはより身 近な対象と感じていることを示唆している.図23の結果を見ても,漫才ロボットの漫才を指示 した被験者が14人で,CGキャラクターによる漫才を指示した被験者4人に対して3倍以上の 指示を得た.

評価項目(8)において漫才ロボットを指示した被験者の自由回答からは,実体があり親近感が 湧くといった回答が7人,ロボットの方が見た目がかわいいからあるいはCGキャラクターが不 気味だから漫才ロボットを指示したという回答が4人であった.CGキャラクターの漫才では,

漫才ロボットの漫才とコンテンツは同様でメディアのみが異なっている.この条件の中で漫才 ロボットがCGキャラクターより親しみやすさにおいて高い評価を得たのには,ロボット本来の キャラクター性によるところもあるだろうが,ロボットの実体による存在の影響が大きいと考 える.被験者がロボットを実体として存在するものと認識することで,漫才ロボットの存在感 と現実感は映像であるCGキャラクターよりも遥かに高いと考えられる.存在感と現実感が増 すことでロボットが被験者から注目を集めるだけでなく,漫才による2体の間のコミュニケー ションに被験者が引き込まれ易くなったのではないかと考える.また,CGキャラクターでは目

図23:漫才ロボットとCGキャラクターの比較による評価結果

の画像の切り替えによる感情の表現が行えなかった点も評価の差に繋がったと考えられる.し かしながら,CGキャラクターでは目の画像での感情の表現が行えないにも関わらずわかりやす さの評価に関して漫才ロボットは明らかな有意性を示すことができなかった.これは,今回用 いたTVMLの機能としてCGキャラクターの発話の内容が字幕として表示された点が要因とし て考えられる.実際,評価項目(8)においてCGキャラクターを指示した3人の被験者の内2人 からは字幕のおかげで内容が把握しやすかったと自由回答で回答している.漫才ロボット,CG キャラクター共に音声合成を用いている以上は発話内容を完全に認識するのは困難である.こ の問題において,漫才ロボットでも別モニターに発話内容を字幕で表示するといった改善方法 を取ることは可能であるが,被験者が字幕を読むのに注力するあまりロボットへの注目が低下 し同時に親しみ等の評価も低下する問題が危惧される.そのため,ボディランゲージのように ロボットの動作,あるいは目の表情等を利用して発話以外の方法で内容を表現する視覚的アプ ローチも模索する必要があると考えられる.

7 まとめと今後の課題

本論文では,昨今のコミュニケーションロボットの普及化に伴い,人とロボットとの円滑な コミュニケーションの活性化を目指した漫才ロボットを提案し,そのための漫才台本の構成と Webニュース記事から自自動生成する手法を提案した.漫才台本の自動生成はWebニュースの 記事に基づいて台本をつかみ,本ネタ,オチで構成し,さらに各部に多様な漫才の技法を取り 入れて対話文の漫才台本を自動生成する.また,漫才台本としてのおもしろさとわかりやさを 追求した改良手法を提案した.漫才台本の自動生成において,娯楽性の向上を目指しておかし みの構造図に着目し,漫才台本自動生成に合わせた新たなおかしみの構造図を定義した.定義 したおかしみの構造図において,対比の観点からユーザへのわかりやすさも考慮して感情に着 目し,文から感情を抽出及びそれを用いた感情ボケの生成手法やつかみの導入手法などを提案 した.また,わかりやすさの向上としては例え表現を提案し,ユーザの興味と例えるものの価 値の2つを考慮して例え表現の生成手法を提案した.ものの価値については,価値の指標とし

て2つの仮説を立てPageRankアルゴリズムとWikipediaの閲覧回数を用いて単語の価値を推定 した.さらに,Wikipediaのカテゴリ構造を利用してユーザの入力する興味に合わせて例え表現 に用いるための主語,目的語,動詞を抽出する手法を提案した.ユーザ評価実験を通して提案 手法の有用性を確認した.さらに,比較実験を通して漫才ロボットがコンテンツ性とメディア 性において有用であることも確認した.

今後の課題としては,本論文で提案した例え表現を対話として漫才台本に取り入れ,ユーザ の年代や興味等を考慮した台本の生成が重要と考えられるまた,ボケやツッコミ等の対話生成 の種類が少なく単調になっている.同時に,抽出する語や生成する対話がおもしろいのかに関 しての判断指標がなく信頼性に欠る.そこで,意味解析によって語の持つ意味ベクトルを扱う ことで,より漫才の対話に適切な語の判別と抽出を目指す.最終的には笑いを評価関数とする 機械学習を用いて漫才に特化した対話の高度化を行いたい.さらに,ユーザの年代や興味等を 考慮した台本の生成も重要と考えられる.

8 謝辞

本研究の遂行にあたり,約5年間の長きに渡り,研究外の事柄も含め,終始熱心なご指導ご鞭 撻をしていただいた灘本明代先生に厚く御礼申し上げます.研究生活がこれ程充実したものと なったのは灘本先生のおかげと思っています.そして本研究において様々なご指導ご協力を頂き ました北村達也先生,梅谷智弘先生に心より感謝申し上げます.また本研究で用いている漫才 ロボットあいちゃんとゴン太の開発と運用においてご協力とご尽力頂いた中山弘隆先生,アー トラボ様,甲南大学学生ロボット工房の皆様方にこの場を借りて,深く御礼申し上げます.さ らに研究の苦楽を共にし励ましあった灘本研究室の皆様に感謝の意を表します.最後に,進学 にご理解くださり,温かく見守り続けてくれた父・真下清,母・真下直美,姉・真下望都に深 く感謝致します.

9 研究業績

国内会議

真下遼,梅谷智弘, 北村達也, 灘本明代,“つかみ・本ネタ・オチから構成される漫才 ロボット台本自動生成手法の提案”ARG4Webインテリジェンスとインタラクショ ン研究会,pp. 59-64, 2014.

真下遼,梅谷智弘,北村達也,灘本明代,“Webニュースからの漫才台本自動生成を用い たコミュニケーションロボット”,第7Webとデータベースに関するフォーラム(WebDB Forum 2014)CD-ROM, 8pages, 2014.

真下遼,梅谷智弘,北村達也,灘本明代,“文の感情を考慮した漫才ロボット台本自動生 成手法の提案”,第7回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2015) F4-4, 8 pages, 2015.

真下遼,灘本明代,“Webニュース内容理解支援のための例え表現自動生成手法の提案” 電子情報通信学会データ工学研究会(DE),東大寺総合文化センター,2015.

関連したドキュメント