第 2 章 機能概要
2.10 マルチキャスト機能
マルチキャスト機能とは、異なるネットワーク上に複数の受信者がいる場合に、動画や音声データなどを効率よ く配送することができる機能です。
配送される受信者が存在するインタフェースにだけパケットを複製して転送することで、通常のユニキャストに よるパケットの配送に比べて、ネットワークのトラフィックを削減することができます。
以下の図のように、ユニキャストによる配送では、送信元から受信者の数だけパケットが送出されるため、送信 元のトラフィックが受信者数に比例して増大してしまいます。マルチキャストによる配送では、1つのパケット を必要な数だけ中継ルータでコピーして配送するため、ネットワークの負荷を軽減できます。
本装置には、マルチキャスト機能を動作させるマルチキャストルーティングプロトコルとして、以下の2種類の プロトコルがあります。
• PIM-DM
• PIM-SM
また、本装置では、ルーティングプロトコルは使用しないで、スタティックにマルチキャスト経路を設定するこ ともできます。
以下に、それぞれのルーティングプロトコルについて説明します。
全機種
ユニキャストによる配送 マルチキャストによる配送
パケットの流れ
Si-R Si-R
Si-R
Si-R Si-R
Si-R 送信元
中継ルータ
中継ルータ 中継ルータ
否受信者 受信者 受信者 受信者 否受信者 受信者 受信者 受信者
送信元
中継ルータ
中継ルータ 中継ルータ
2.10.1 PIM-DM
PIM-DMは、会社のLANなど、十分な帯域と信頼性のあるネットワーク上で利用するプロトコルです。パケット
の配送は、送信元が配送樹の頂点となります。
2.10.2 PIM-SM
PIM-SMは、インターネットなど、十分な帯域を保証されないネットワーク上で利用するプロトコルです。パ ケットは、送信元からRP(ランデブーポイント)に一度送られ、RPが配送樹の頂点となります。
RPの情報は、BSR(ブートストラップ・ルータ)によって広報されます。PIM-SMを利用する場合、ネットワー
ク上で1つ以上のRPとBSRを動作させる必要があります。
マルチキャスト・パケットは、最初はRPを経由して転送されますが、その後最短経路(SPT:Shortest Path Tree)を経由して転送する経路に切り替わります。
パケットの流れ
Si-R Si-R
Si-R
否受信者 受信者 受信者 受信者 中継ルータ
中継ルータ 中継ルータ
送信元
パケットの流れ
Si-R Si-R
Si-R
否受信者 受信者1 受信者2 受信者3 中継ルータ
中継ルータ 中継ルータ
送信元 RP
パケットの流れ
受信者2、3 への最短経路
受信者1への
最短経路 Si-R Si-R
Si-R
否受信者 受信者1 受信者2 受信者3 中継ルータ
中継ルータ 中継ルータ
送信元 RP
• マルチキャスト機能での配送は信頼性を持たないため、パケットの消失や重複などが起こる可能性があります。これ らの信頼性の確保は、アプリケーション側での責任になります。
• マルチキャストを利用する場合は、隣接するすべてのルータ上でマルチキャスト機能を有効にしておく必要があります。
• 隣接するすべてのルータ上で、同じプロトコルを選択する必要があります(本装置ではPIM-DMとPIM-SMは併用で きません)。
• マルチキャストをスタティック経路で転送する場合は、PIM-DM、PIM-SMを併用することはできません。
• PIM-DM、PIM-SMは、動作する際、ユニキャストのルーティングテーブルを参照するため、ユニキャストの経路を
正しく設定してください。このとき、RIPやOSPFなどのユニキャスト・ルーティングプロトコルと併用することが できます。
• マルチキャスト・プロトコルにPIM-SMを利用する場合、ネットワーク上で1つ以上のRPとBSRを動作させる必要 があります。RPまたはBSRが消失した場合、既存の通信を含め、通信できなくなります。これを防止するために は、RPおよびBSRを複数動作させます。
• マルチキャスト機能は、マルチNAT機能と併用することができません。
• IPアドレスが設定されていないインタフェースではマルチキャスト機能を使用することはできません。また、リモー トインタフェース上でマルチキャスト機能を動作させる場合は、自側IPアドレスと相手側IPアドレスの両方を正し く設定する必要があります。
• 本装置で実装されているPIM-SMのバージョンはPIM-SMv2です。PIM-SMv1の装置との接続は保証されません。
• PIM-SMでは、送信元とRPの間をPIM Registerパケットによって通信します。
PIM Registerパケットのチェックサムの計算範囲は、RFC2362ではヘッダ部だけで計算するように定義されていま すが、一部のルータはパケット全体で計算します。このようなルータがRPを行う場合は、チェックサムの計算範囲 を「パケット全体」に変更する必要があります。本装置はPIM Registerパケットの受信時には、ヘッダ部(RC2362 準拠)とパケット全体の2つの方法で計算するため、本装置がRPを行う場合は、どちらの計算方法のパケットを受 信しても問題はありません。
• 転送経路をSPTに切り替える場合は、一時的に複数のマルチキャスト・ルーティングテーブルを作成します。このた め、マルチキャスト・ルーティングテーブルの上限数の通信ができなくなる可能性があります。
• SPTへの切り替えは、パケットの転送開始直後に行われます。パケット受信者の直前のルータでSPT切り替えを無
効に設定することによって、SPTへの切り替えを無効にすることができます。
• インタフェースごとにパケットのTTL(Time To Live)しきい値を設定することによって、特定のTTLのパケットを 遮断することができます。
• マルチキャスト・パケットは、パケット送信者側のルータとRP間をPIM Registerパケットによってカプセル化され、
ユニキャスト転送されます。このとき、トンネル用の仮想的なインタフェースとして、registerインタフェースを使用
します。registerインタフェースには通常のマルチキャスト・インタフェースの設定は適用されません。このため、PIM
Registerによってカプセル化されたパケットには、インタフェースのTTLしきい値の設定は適用されません。
• パケット送信者側のルータとRP間は、転送開始時にPIM Registerによってカプセル化され、ユニキャスト通信され ますが、転送開始直後にはマルチキャスト・パケットによる通信に切り替わります。
コマンド設定事例集
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