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II. マイルドプラズマによる室温下でのグラフェ ンエッジ修飾
優れた電気伝導特性と柔軟な構造を合わせ持つ炭 素原子一層から構成されるグラフェンシートは, 様々な分野での応用が期待されている新規炭素ナノ 材料である. 一方で, 電気伝導特性の精密な制御は 未だ実現されておらず, グラフェンを利用した薄膜 トランジスタ応用実現に向けた重要な課題として残 されている. グラフェン面内全体への化学修飾によ る電気伝導特性制御に関しては, これまでいくつか の報告があるが, グラフェン面全体へドーピングを 施すことで, キャリア散乱等の効果によりグラフェ ン本来の電気伝導特性を劣化させる要因となる可能 性が示唆されている. このグラフェン面全体に対す るドーピングに対して, グラフェンの端 (エッジ) 修飾が近年注目を集めている. グラフェンのエッジ は, カーボンナノチューブやフラーレン等の他の炭 素ナノ材料には無い, グラフェン固有の構造的特徴 であり, 反応性に富んでいることから, 様々な原 子・分子を修飾し, グラフェン全体の電子状態を制 御可能であることが理論的研究により予測されてい る. しかしながら, 実験に関しては, 選択的にグラ フェンエッジのみを修飾することは困難であり, グ ラフェンエッジ選択修飾と, これによるグラフェン 全体の電気伝導特性の変化を同時に評価している研 究は極わずかである. さらに, これまで報告されて いるグラフェンエッジの選択修飾は高温下での反応, あるいは化学的ウェットプロセスが主流であり, デ バイス応用に向けての障壁となっていた. 本研究で は, マイルドプラズマ反応を利用することにより, 室温下でグラフェンのエッジを選択的に修飾するド ライプロセス手法を確立した. グラフェンに対して 室温下でアンモニアプラズマを照射したところ, プ ラズマ条件の違いにより, グラフェン面内全体に欠 陥が導入される場合と, グラフェンエッジにのみ選 択的に反応が生じる条件が存在することが明らかと
なった. 詳細なラマンマッピング測定により, エッ ジ修飾後のグラフェンにおける D-バンド強度がエ ッジ付近でのみ照射前に比べ明らかに増大すること が確認された(図2). また, グラフェンナノリボンを 用いて, エッジ修飾がグラフェン全体の電気伝導特 性に与える効果を測定したところ, プラズマ照射時 間を増加するに伴い, 電荷中性点が負方向へ大きく シフトすることが明らかとなった. これは, グラフ ェンエッジに電子ドナー物質が選択的にドーピング されたことを示している.
III. プラズマ機能化pn接合内蔵カーボンナノチュ ーブを用いた赤外光太陽電池
太陽光における近赤外波長領域 (800-1650 nm) の利用を目的に, プラズマ機能化した単層カーボン ナノチューブ (Single-Walled Carbon Nanotube:
SWNT) を用いた太陽電池を作製している.特に,
内部にpn接合を内蔵したSWNTを用いる太陽電池 は, 電子移動度が極めて大きいSWNTの軸方向の電 気特性を利用することによって,発電効率を向上さ せることが可能である.そこで,熱拡散法を用いて カ リ ウ ム (K)を 部 分 的 に 内 包 さ せ た SWNT
(K@SWNT)を合成し, それを利用した電界効果型
トランジスタ(FET)構造を有する太陽電池を作製し た場合と, pristine SWNTのFET作製後にセシウム (Cs)プラズマイオン照射法によって SWNT 内部に pn 接合を形成した場合の二種類について実験を行 った.
K@SWNT-FETにおける, 1550 nm, 1650 nmの
図2. (a) アンモニアプラズマトリートメント前グラフェンの
原子間力顕微鏡像. (b, c) プラズマトリートメント前(b)後(c) のラマンD-バンド強度マッピング.
0 0.1 0.2 0.3
-2 -1 0
IDS (pA)
VD (V) (a)
VG = 0 V
0 0.1 0.2 0.3
-2 -1 0
IDS (pA)
VD (V) (b)
VG = 0 V
図3. 赤外光照射時におけるK@SWNT-FETのI-V特性. (a) λin = 1550 nm, (b) λin = 1650 nm.
図4. プラズマイオン照射法を用いたpn接合内蔵 SWNT-FETの近赤外光照射時のI-V特性. λin = 1100 nm. る気液界面での現象」杤久保 文嘉, 白井 直
機, 内田 諭(首都大学東京 大学院理工学研 究科)
7. 「プラズマとナノ界面の相互作用の制御」白谷 正治,古閑 一憲,内田 儀一郎,鎌滝 晋礼,
板垣 奈穂(九州大学 システム情報科学研究 院)
8. 「大気圧プラズマによるバイオ表面設計」長崎 幸夫(筑波大学 大学院数理物質科学研究科)
9. 「気液界面非平衡プラズマによる金ナノ粒子 複合物質創製とバイオ・医療・エネルギー応用」
金子 俊郎,畠山 力三(東北大学 大学院工 学研究科)
10. 「カーボンナノチューブをテンプレートとし た分子ナノ構造創製とカーボンナノチューブ 赤外吸収の起源」岡崎 俊也(産業技術総合研 究所 ナノチューブ応用研究センター)
11. 「カーボンナノチューブ薄膜トランジスタお よび集積回路の作製と評価」大野 雄高(名古 屋大学 大学院工学研究科)
12. 「プラズマCVDによるグラフェンの絶縁基板上 への直接合成と構造制御」加藤 俊顕, 畠山 力三(東北大学 大学院工学研究科)
本研究会では学内外を含め延べ55 名以上の参加 者があり,講演は「プラズマ-ナノバイオ融合科学」
を主テーマに,プラズマとその応用, ナノカーボン の合成・制御と応用, バイオ応用プラズマプロセス,
医療応用プラズマプロセス等の立場から,専門分野 を越えて活発な議論がなされた.
[3]成果
(3-1)研究成果
本研究プロジェクトにおいては,気体、液体、気 液界面プラズマ中の新規ナノバイオプロセシング法 を駆使することにより,特定の原子及び分子を内包 した新機能を有する超分子構造(新機能性進化)ナ ノチューブ, グラフェンを創製する等のカーボンナ ノチューブとグラフェンの基礎と応用研究を展開す ることを目的としており,以下に示す研究成果を得 た.
I. 高�質グラフェンのシリコン基板上への直接合 成
高いキャリア移動度と柔軟性を合わせ持つ炭素原 子一層から構成されるグラフェンシートは, 様々な 分野での応用が期待されている新規炭素ナノ材料で ある. グラフェンシートの層数, シート面積, 均一 性, 欠陥密度等の各構造はグラフェンの物理的・化 学的諸特性に大きく影響を与えるため, グラフェン を利用した産業応用実現には, これら各構造の精密
制御が必要不可欠である. グラフェンの合成方法に 関しては, グラファイトからスコッチテープにより 剥離し任意の基板に転写する手法が一般的に広く知 られている. この手法の場合, 結晶性の高いグラフ ェンを基板上に形成することが可能であるが, グラ フェンの大面積化や基板上の合成位置制御の面で産 業応用に向けた大きな課題が残されている. これに
対し近年, CVD法を用いることで大面積グラフェン
合成が可能となり, さらに転写法を組み合わせるこ とで任意の基板上にグラフェンを配置することが可 能であることが報告され, グラフェン合成分野にお いて大きな注目を集めている. しかしながら, 従来 のCVD法では, 触媒となる金属表面でのみグラフ ェンが合成されるため, デバイス応用に向けて重要 な絶縁基板, 主にシリコン酸化膜上へのグラフェン 直接合成法は確立されていない. この様な背景のも とで我々は, 拡散プラズマCVDを用いたシリコン 酸化膜上へのグラフェン直接合成手法の開発を目的 に研究を行った.
原料ガスであるメタン雰囲気のもと, 石英管外部 に設置したコイル状アンテナに高周波 (13.56
MHz) を印加することにより生成した, 誘導結合型
高周波プラズマを用いてグラフェン合成を行った. また, 触媒金属としてシリコン酸化膜上に蒸着した ニッケル薄膜を用いた. その結果, プラズマ CVD を用いた場合に, グラフェンシートがニッケル触媒 とシリコン酸化膜の界面に選択的に合成されること を見出した. これにより, プラズマ CVD後に基板 表面の Ni をエッチングにより取り除くことで, 転 写法を利用せずに, グラフェンシートをシリコン酸 化膜基板上に直接合成することに成功した(図 1).
さらに, 本技術を利用し, あらかじめシリコン酸化 Graphene
SiO2
[mm]
a
c
10 mm
0 4
Intensity ratio
b
25/GRaman shift [cm-1]
Intensity [arb. units]
1200 1600 2000 2400 2800 G
25 5
図1. シリコン基板上に直接合成したグラフェンの (a) 光学顕微鏡写真, (b) ラマン2D/Gピ-ク強度比の空間マ ッピング像, 及び (c)基板上任意の場所から得られた典 型的なラマンスペクトル.
共同プロジェクト研究
膜基板上にニッケル微細構造をパターンニングする ことにより, 任意の微細形状を有する高品質グラフ ェンシートの直接合成を実現した.
II. マイルドプラズマによる室温下でのグラフェ ンエッジ修飾
優れた電気伝導特性と柔軟な構造を合わせ持つ炭 素原子一層から構成されるグラフェンシートは, 様々な分野での応用が期待されている新規炭素ナノ 材料である. 一方で, 電気伝導特性の精密な制御は 未だ実現されておらず, グラフェンを利用した薄膜 トランジスタ応用実現に向けた重要な課題として残 されている. グラフェン面内全体への化学修飾によ る電気伝導特性制御に関しては, これまでいくつか の報告があるが, グラフェン面全体へドーピングを 施すことで, キャリア散乱等の効果によりグラフェ ン本来の電気伝導特性を劣化させる要因となる可能 性が示唆されている. このグラフェン面全体に対す るドーピングに対して, グラフェンの端 (エッジ) 修飾が近年注目を集めている. グラフェンのエッジ は, カーボンナノチューブやフラーレン等の他の炭 素ナノ材料には無い, グラフェン固有の構造的特徴 であり, 反応性に富んでいることから, 様々な原 子・分子を修飾し, グラフェン全体の電子状態を制 御可能であることが理論的研究により予測されてい る. しかしながら, 実験に関しては, 選択的にグラ フェンエッジのみを修飾することは困難であり, グ ラフェンエッジ選択修飾と, これによるグラフェン 全体の電気伝導特性の変化を同時に評価している研 究は極わずかである. さらに, これまで報告されて いるグラフェンエッジの選択修飾は高温下での反応, あるいは化学的ウェットプロセスが主流であり, デ バイス応用に向けての障壁となっていた. 本研究で は, マイルドプラズマ反応を利用することにより, 室温下でグラフェンのエッジを選択的に修飾するド ライプロセス手法を確立した. グラフェンに対して 室温下でアンモニアプラズマを照射したところ, プ ラズマ条件の違いにより, グラフェン面内全体に欠 陥が導入される場合と, グラフェンエッジにのみ選 択的に反応が生じる条件が存在することが明らかと
なった. 詳細なラマンマッピング測定により, エッ ジ修飾後のグラフェンにおける D-バンド強度がエ ッジ付近でのみ照射前に比べ明らかに増大すること が確認された(図2). また, グラフェンナノリボンを 用いて, エッジ修飾がグラフェン全体の電気伝導特 性に与える効果を測定したところ, プラズマ照射時 間を増加するに伴い, 電荷中性点が負方向へ大きく シフトすることが明らかとなった. これは, グラフ ェンエッジに電子ドナー物質が選択的にドーピング されたことを示している.
III. プラズマ機能化pn接合内蔵カーボンナノチュ ーブを用いた赤外光太陽電池
太陽光における近赤外波長領域 (800-1650 nm) の利用を目的に, プラズマ機能化した単層カーボン ナノチューブ (Single-Walled Carbon Nanotube:
SWNT) を用いた太陽電池を作製している.特に,
内部にpn接合を内蔵したSWNTを用いる太陽電池 は, 電子移動度が極めて大きいSWNTの軸方向の電 気特性を利用することによって,発電効率を向上さ せることが可能である.そこで,熱拡散法を用いて カ リ ウ ム (K)を 部 分 的 に 内 包 さ せ た SWNT
(K@SWNT)を合成し, それを利用した電界効果型
トランジスタ(FET)構造を有する太陽電池を作製し た場合と, pristine SWNTのFET作製後にセシウム (Cs)プラズマイオン照射法によって SWNT 内部に pn 接合を形成した場合の二種類について実験を行 った.
K@SWNT-FETにおける, 1550 nm, 1650 nmの
図2. (a) アンモニアプラズマトリートメント前グラフェンの
原子間力顕微鏡像. (b, c) プラズマトリートメント前(b)後(c) のラマンD-バンド強度マッピング.
0 0.1 0.2 0.3
-2 -1 0
IDS (pA)
VD (V) (a)
VG = 0 V
0 0.1 0.2 0.3
-2 -1 0
IDS (pA)
VD (V) (b)
VG = 0 V
図3. 赤外光照射時におけるK@SWNT-FETのI-V特性. (a) λin = 1550 nm, (b) λin = 1650 nm.
図4. プラズマイオン照射法を用いたpn接合内蔵 SWNT-FETの近赤外光照射時のI-V特性. λin = 1100 nm.
る気液界面での現象」杤久保 文嘉, 白井 直 機, 内田 諭(首都大学東京 大学院理工学研 究科)
7. 「プラズマとナノ界面の相互作用の制御」白谷 正治,古閑 一憲,内田 儀一郎,鎌滝 晋礼,
板垣 奈穂(九州大学 システム情報科学研究 院)
8. 「大気圧プラズマによるバイオ表面設計」長崎 幸夫(筑波大学 大学院数理物質科学研究科)
9. 「気液界面非平衡プラズマによる金ナノ粒子 複合物質創製とバイオ・医療・エネルギー応用」
金子 俊郎,畠山 力三(東北大学 大学院工 学研究科)
10. 「カーボンナノチューブをテンプレートとし た分子ナノ構造創製とカーボンナノチューブ 赤外吸収の起源」岡崎 俊也(産業技術総合研 究所 ナノチューブ応用研究センター)
11. 「カーボンナノチューブ薄膜トランジスタお よび集積回路の作製と評価」大野 雄高(名古 屋大学 大学院工学研究科)
12. 「プラズマCVDによるグラフェンの絶縁基板上 への直接合成と構造制御」加藤 俊顕, 畠山 力三(東北大学 大学院工学研究科)
本研究会では学内外を含め延べ55名以上の参加 者があり,講演は「プラズマ-ナノバイオ融合科学」
を主テーマに,プラズマとその応用, ナノカーボン の合成・制御と応用, バイオ応用プラズマプロセス,
医療応用プラズマプロセス等の立場から,専門分野 を越えて活発な議論がなされた.
[3]成果
(3-1)研究成果
本研究プロジェクトにおいては,気体、液体、気 液界面プラズマ中の新規ナノバイオプロセシング法 を駆使することにより,特定の原子及び分子を内包 した新機能を有する超分子構造(新機能性進化)ナ ノチューブ, グラフェンを創製する等のカーボンナ ノチューブとグラフェンの基礎と応用研究を展開す ることを目的としており,以下に示す研究成果を得 た.
I. 高�質グラフェンのシリコン基板上への直接合 成
高いキャリア移動度と柔軟性を合わせ持つ炭素原 子一層から構成されるグラフェンシートは, 様々な 分野での応用が期待されている新規炭素ナノ材料で ある. グラフェンシートの層数, シート面積, 均一 性, 欠陥密度等の各構造はグラフェンの物理的・化 学的諸特性に大きく影響を与えるため, グラフェン を利用した産業応用実現には, これら各構造の精密
制御が必要不可欠である. グラフェンの合成方法に 関しては, グラファイトからスコッチテープにより 剥離し任意の基板に転写する手法が一般的に広く知 られている. この手法の場合, 結晶性の高いグラフ ェンを基板上に形成することが可能であるが, グラ フェンの大面積化や基板上の合成位置制御の面で産 業応用に向けた大きな課題が残されている. これに
対し近年, CVD法を用いることで大面積グラフェン
合成が可能となり, さらに転写法を組み合わせるこ とで任意の基板上にグラフェンを配置することが可 能であることが報告され, グラフェン合成分野にお いて大きな注目を集めている. しかしながら, 従来 のCVD法では, 触媒となる金属表面でのみグラフ ェンが合成されるため, デバイス応用に向けて重要 な絶縁基板, 主にシリコン酸化膜上へのグラフェン 直接合成法は確立されていない. この様な背景のも とで我々は, 拡散プラズマCVDを用いたシリコン 酸化膜上へのグラフェン直接合成手法の開発を目的 に研究を行った.
原料ガスであるメタン雰囲気のもと, 石英管外部 に設置したコイル状アンテナに高周波 (13.56
MHz) を印加することにより生成した, 誘導結合型
高周波プラズマを用いてグラフェン合成を行った. また, 触媒金属としてシリコン酸化膜上に蒸着した ニッケル薄膜を用いた. その結果, プラズマ CVD を用いた場合に, グラフェンシートがニッケル触媒 とシリコン酸化膜の界面に選択的に合成されること を見出した. これにより, プラズマ CVD 後に基板 表面の Ni をエッチングにより取り除くことで, 転 写法を利用せずに, グラフェンシートをシリコン酸 化膜基板上に直接合成することに成功した(図 1).
さらに, 本技術を利用し, あらかじめシリコン酸化 Graphene
SiO2
[mm]
a
c
10 mm
0 4
Intensity ratio
b
25/GRaman shift [cm-1]
Intensity [arb. units]
1200 1600 2000 2400 2800 G
25 5
図1. シリコン基板上に直接合成したグラフェンの (a) 光学顕微鏡写真, (b) ラマン2D/Gピ-ク強度比の空間マ ッピング像, 及び (c)基板上任意の場所から得られた典 型的なラマンスペクトル.