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条件検索型マイクロリアクターシステムによる 薗頭反応 薗頭反応

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節 条件検索型マイクロリアクターシステムによる反応条件検索

前章で述べたように、マイクロリアクターを用いることのメリットは数多くあ るが、それを用いた流量や温度などの最適化を主とした反応条件検索は、1条件 ごとに装置を動かし、その結果をHPLCなどで随時確認するという形となること から、多くの時間と労力を要する。また、前項のリアクターは光反応用に制作さ れたものであり、熱的な反応においては、より一般的な化学反応用のマイクロリ アクターが必要となった。

その2点を踏まえ、マイクロリアクターを用いた熱的反応1, 2)の条件検索を、自 動運転によって省力化できないかと考え、大日本スクリーン社から「反応条件検 索型マイクロリアクターシステム」の提供を受け、それを用いて触媒反応の条件 検討を実施した。

条件検索型マイクロリアクターに求められるスペックとして、以下の点が挙げ られる。例として、CPC CYTOS Lab System(Figure 2-1)を参考とした。

①反応条件検索の段階においては、原料の量も限られており、できるだけ少ない サンプルで、温度、流量等の多くの反応条件スクリーニングを行えることが重要 である。また、初期検討に用いることから、閉塞など想定外のトラブルも起こり やすい。反応部分については、実験者が容易に分解、対処可能な設計が望ましい。

②最適反応条件を見出した後に、同じ装置を用いて中~大量合成を実施すること ができれば、スケールアップ検討、装置変更に伴う条件の見直しを行なうことな く、時間や労力を非常に削減することができる。

③運転・監視するためのソフトウェアを、HPLC などの日常よく使用する装置の ソフトウェアと似せる(条件入力画面、運転監視画面など)と使用しやすい。

④マイクロリアクターはフロー系であることから、反応液(の一部)をそのまま 分析装置に流すことも可能である。反応条件検索だけではなく、反応後の分析ま

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でを自動化できれば、さらなる省力化が狙えることから、分析機器を繋ぐことが できるような設計が望ましい。

⑤実験室に設置し、自動(無人)運転を行なうことから、溶媒漏れ感知センサー、

排気ファン、トラブル時の非常停止機能の充実など、安全面への配慮も怠っては ならない。

Figure 2-1 CPC CYTOS Lab System

先述の機能を盛り込んだ試作機として、大日本スクリーン製造㈱から「反応条 件検索型マイクロリアクターシステム」の提供を受けた。本装置は装置本体

(Figure 2-2)と運転条件入力・監視用のPCで構成される。装置本体は、上、中、

下段の三段構成となっており、それぞれ以下のようなユニットを備えている。

上段:原料タンク、反応液回収用フラクションコレクタ 中段:送液ポンプ、デガッサ(それぞれHPLC用)

下段:ミキサー(Figure 2-3)、RTU(Residence Time Unit : Figure 2-4)

使用できる反応として、1~2 液の反応、1回に最大120条件のスクリーニング ができ、1条件あたり最大1 mLのサンプルを採取できる。また、自動運転を意識 し、排気ファン、溶媒漏れ感知センサー、送液圧力異常時の非常停止機能等を有

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しており、大きなトラブルの際には、強制的に装置の電源が切れる仕様となって いる。

Figure 2-2 反応条件検索型マイクロリアクターシステム(装置本体)

Figure 2-3 ミキサー

<流路模式図>

ミキサー(Y字流路:幅1000 m, 深さ 500 m)は、フォトエッチングにより、流 路を彫った金属プレート上にテフロンシートを重ね、そのシートを上部から窒素 や圧空の圧力で押さえつけることで、密閉性を保つ。流路は、光反応用と同様に、

用途に応じて、深さ、幅、形状などを変えることができる。加熱(室温~120℃)

も可能で、任意の温度を設定することができる。

上段

中段

下段

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Figure 2-4 RTU(Residence Time Unit)

ミキサーで混合された液を反応させるユニットであり、内径1 mm程度のSUS チューブをコイル状に巻き、保温カバーを付けた構造となっている。ミキサー同 様、任意の温度(室温~120℃)に加熱される。内容積は8.67 mLであり、滞留時 間は、送液ポンプの流量により決定される。

Figure 2-5 ミキサーとRTUの接続状態

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運転を制御するソフトウェアは大きく分けて、4つの画面で構成される。まず、

運転条件設定画面では、A、B液の流量や、ミキサーおよびRTUの温度、サンプ リング量などをスケジュールとして、一括で入力することができる(Figure 2-6)。

運転状態監視画面では、運転中のポンプ流量圧力、ミキサー・RTU温度、原料液、

廃液容量などを一つの画面上でリアルタイムに確認でき、自動運転に適した仕様 となっている(Figure 2-7)。運転データ確認画面では自動運転中、または運転後 に各パラメータの推移をグラフで確認できる。通常、分析結果は、運転終了より も遅れて出ることが多い。そのデータが異常、もしくは想定外のものであったと きに、その時の運転状態が正常であったかを確認する上で非常に有用である。ま た、運転中のポンプ圧力の推移などを確認しておけば、ラインが閉塞傾向にある などの情報が得られるので、トラブルを未然に防ぐことができる(Figure 2-8)。

さらに、装置パラメータ設定画面では装置を運転する上での装置パラメータの各 種設定を行なう(Figure 2-9)。ミキサー、RTU の内容積をここで入力しておけ ば、運転条件設定でA, B各液流量を入力しただけで、滞留時間が自動で計算され る。また、設定温度の許容幅もここで設定でき、おおまかなスクリーニングの際 は広めに設定することで、総運転時間の短縮、すなわち使用するサンプル量の低 減にも繋がる。逆に、精密なデータが欲しい実験を行なう場合には、幅を狭めに 設定しておけばよい。さらに、原料、廃液の残量を自動計算し、警告などを発さ せることもできる。

これらの機能を有する本装置を用いれば、上記の様々な機能を生かして、短時 間で少ない労力で、温度、流量等の反応条件をスクリーニングし、マイクロリア クターでの最適反応条件を見出すことができる。また、見出された条件で連続運 転をすれば、大量合成を行なうことができる。総論でも述べたように、開発初期 段階の反応条件スクリーニングから中量合成を一貫してシームレスに行なうこと が、医薬品の迅速な開発に繋がる。

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Figure 2-6 運転条件設定画面

Figure 2-7 運転状態監視画面

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Figure 2-8 運転データ確認画面

Figure 2-9 装置パラメータ設定画面

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そこで、本研究では、タンパク質分解酵素阻害剤 3)の原薬合成における臭化チ オフェン誘導体とトリルアセチレンとの薗頭反応をモデルとし、できるだけ短時 間で、最適な反応条件の絞り込みから、連続運転による100 gオーダーの中量合 成までを検討した。

薗頭反応は、パラジウム触媒、銅触媒、塩基の作用により末端アルキンとハロ ゲン化アリールとをクロスカップリングさせてアルキニル化アリール(芳香族ア セチレン)を得る反応であり、芳香族アセチレンの合成法として頻繁に用いられ る反応の一つである 4)。そして現在もさまざまな改良が進められ、芳香環とアル キンとを簡便に結合させる一般的な手法として多くの場面で用いられており、マ イクロリアクターを用いた実施例も報告されている 5)。本研究では、トリプタミ ド1とトリルアセチレン2をPd、Cu触媒存在下で反応させ、化合物 3 を得る薗 頭反応(Scheme 2-1)をターゲットとし、まず、予備検討として、マイクロリア クターで本反応が問題なく進行すること、必要滞留時間、流路内での結晶・不溶 物の析出による流路閉塞などのトラブルが起こらないことなどの確認を目的とし、

T-Shapeミキサーと内径1000 mのSUSチューブを用いて反応を実施した(Figure

2-10)。

Scheme 2-1 タンパク質分解酵素阻害剤合成における薗頭反応

Br S SO2

HN

NH CO2H

S SO2

HN

NH H3C

CO2H H3C

CH

+

Base Pd(PPh3)2Cl2

CuBr

1 2

3

Solvent

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Figure 2-10 T-shape ミキサーとSUSチューブを用いた予備検討

滞留時間60minで反応を実施した結果、反応温度50℃で25 peak area%、反応温

度60℃で40 peak area%の化合物 3 が得られた。また、反応中に流路閉塞などの

トラブルは起こらなかったが、原料仕込み時に触媒が溶解しない問題点があり、

本検討では触媒を懸濁させた液で反応を行なった。バッチ反応においては、反応 時間と共に触媒が溶解していくが、マイクロフロー系のような連続プロセスでは 触媒が溶解する前に系外に排出されるため、反応が遅延している可能性もある。

さらに、溶媒として用いた酢酸エチル、塩基のトリエチルアミンの沸点が低く、

スクリーニングできる反応温度の上限は約 80 ℃となる。これらの問題点を踏ま え、条件検索型リアクターで検討する際の反応溶媒は酢酸エチルから DMF に、

塩基をトリエチルアミンからエチルジイソプロピルアミンに変更した。これによ り、反応温度を 120 ℃まで上げることが可能となり、触媒である Pd(PPh3)2Cl2、 CuBrも溶解することを確認した。

条件検索型マイクロリアクターでの条件検討として、反応温度(70~110 ℃)

および滞留時間(20~60 min)の2つのパラメータを組み合わせた各条件で運転 を行い、各条件下での反応液をHPLCで分析し、目的物、原料残存のpeak area%

を比較することとした(Camp. 1)。運転の結果、約7時間の運転で、7条件をス クリーニングを行なうことができた(Table 2-1, Figure 2-11)。

i.d. = 1000 m length = 1 m

50 ~ 60℃

Br S SO2H N

NH CO2H

H3C

CH

(1.1 equiv.)

Pd(PPh3)2Cl2

CuBr (2 mol %)

(1 mol %)

N

residence time : 60 min (2.0 equiv.)

S SO2H N

NH

H3C CO2H

i.d. = 1000 m

DMF solution

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