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2.5.6.1 ベネフィット

DME を有する患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験として、VISTA-DME 試験及び VIVID-DME 試験、

並びに VIVID-Japan 試験を実施した。VISTA-DME 試験及び VIVID-DME 試験では、VTE 2mg を 4 週 ごとに投与する群(2Q4 群)及び 2mg を 4 週ごとに 5 回投与し、その後は 8 週ごとに投与する 群(2Q8 群)をレーザー治療群と比較した。VIVID-Japan 試験では、2mg を 4 週ごとに 5 回投与 し、その後は 8 週ごとに投与する群(2Q8 群)のみであった。なお、第Ⅲ相臨床試験に含まれる 日本人被験者の割合は、レーザー治療群を含む VIVID-DME 試験では 19.0%(77 例)、VIVID-Japan 試験では 100%(73 例)であった。

VISTA-DME 試験及び VIVID-DME 試験の有効性の主要評価項目並びに副次的評価項目の結果から、

VTE の顕著なベネフィットが示された。個々の試験及び併合解析のデータは、検討された全ての パラメータに対して一貫した結果を示しており、レーザー治療群と比べ、VTE 群(2Q4 群及び 2Q8 群)で優れていることが確認された。また、VTE 群における視力の変化量は、共に同程度で あり、2Q8 群は 2Q4 群と比較し、少ない投与回数で同程度の改善効果が得られた〔併合解析デー タにおける 52 週間の VTE 投与回数(中央値):2Q4 群 13 回、2Q8 群 9 回〕。

VISTA-DME 試験及び VIVID-DME 試験において、BCVA 文字数でベースラインから 15 文字以上の 視力改善がみられた被験者の割合は、VTE 群で 31.1~41.6%と報告された。15 文字以上の改善 は臨床的にも重要な改善であり89)、読書、料理、テレビ鑑賞、車の運転などの機能活動の大きな 改善と相関すると考えられる。また、VTE 群の多くの被験者で、糖尿病網膜症の重症度スコアの 改善が確認された。糖尿病網膜症の重症度スコアが悪化した被験者は、増殖糖尿病網膜症とそれ に伴う視力を脅かす CSME を発現する可能性が高いとされている90)。糖尿病網膜症の進行の遅延 と沈静化は、大幅な視力低下のリスクを軽減させることにつながる。VISTA-DME 試験及び VIVID-DME 試験では、VIVID-DME のみならず臨床的に重要な要素である糖尿病網膜症に対しても有効性が示唆 された。

VISTA-DME 試験及び VIVID-DME 試験の有効性の部分集団解析(年齢、性別、人種、HbA1c、

ベースライン時の BCVA 文字数)は、全集団の結果とおおむね整合していた。

なお、副次的目的として有効性を評価した VIVID-Japan 試験においても、VISTA-DME 試験及び VIVID-DME 試験の結果を支持するものであった。

DME を有する患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(VISTA-DME 試験及び VIVID-DME 試験)の 2Q8 群では、被験者は毎月来院の上、モニタリングが実施されていたが、モニタリングのみの来院の 際に VTE 投与は計画されていなかった。有効性及び安全性において 2Q4 群と 2Q8 群の間で差が認 められず、8 週間隔の VTE 投与において、その間にモニタリングのみの来院を必要としないこと を示唆している。VTE を 8 週間隔で投与する際に毎月のモニタリングを必要としないということ は、患者及び介護者並びに医師だけでなく、医療制度全体における負担を軽減させることができ る。特に DME のような慢性疾患を持つ就労者が 8 週間隔で VTE 治療を受けることができれば、4 週間隔の治療(ラニビズマブの DME の適応症に対する欧米での承認用法と同様)に比べ、1 年間 における休業日数を軽減することができ、これは労働生産性の向上にもつながることから重要な ベネフィットであると考える。また、DME の度重なる再発は、視機能、特に視細胞の不可逆的な

機能喪失をもたらし、患者の視力回復や良好な視力の維持を妨げることから、来院時の診断に基 づく受動的な随時投与ではなく、8 週間隔での計画的、能動的な投与が妥当であると考える。

ベネフィットに関する不確定要素の評価

臨床開発プログラムのもとに実施された全ての臨床試験は、有効性の主要評価項目及び副次的 評価項目並びに部分集団全体において一貫したデータを得るために適切にデザインされ、ICH-GCP 基準を遵守し、また、規制当局の助言に従ったものである。適格性基準では、過去に抗 VEGF 治療を実施した患者も含め、DME を有する患者の一般的な症例を組み入れるようにデザインされ た。一部の部分集団において被験者数は少なかったが、特定の部分集団において本剤のベネフィ ットが少ないという兆候はみられなかった。

VISTA-DME 試験及び VIVID-DME 試験の結果の信頼性は、視力に関する評価項目並びに形態学的 評価項目で確認され、レーザー治療に対する本剤の優位性が実証された。また、第Ⅲ相臨床試験

(VISTA-DME 試験及び VIVID-DME 試験)の感度解析において、主解析の結果と大きく異なるもの ではなく、解析結果の頑健性も示された。

以上のことから、VTE のベネフィットに関する不確定要素は少ないと考えられた。

2.5.6.2 リスク

臨床プログラムの安全性データの評価から、VTE は忍容性が高く、その安全性プロファイルも 容認できるものであると結論した。これらの安全性データからリスク因子として特定された重要 なリスクは、眼内炎及び眼圧上昇であった。眼内炎は早期に診断し適切な治療を行わなければ、

永久的な視力喪失に至るリスクがあり、眼圧上昇については、特に緑内障及び高眼圧症の患者に おいて VTE 投与により一過性に眼圧上昇が助長される可能性があることから、重要なリスクとし て特定した。

VTE の IVT 投与では、VTE の全身曝露又は眼の免疫反応が全身性に及ぶことによると考えられ る眼以外の有害事象が発現することが予測される。しかし、VISTA-DME 試験及び VIVID-DME 試験 では、眼以外の重篤な有害事象が VTE 各投与群及びレーザー治療群で同様の発現率であり、致死 的な事象の頻度は低く、用量依存的な頻度の増加は認められなかった。これらの結果から、DME を有する患者における VTE の IVT 投与が重篤な有害事象又は死亡を引き起こす可能性は、極めて 低いものと考えられる。

このほかに、以下の 3 つの重要な潜在的リスクが特定された。

(1)動脈血栓塞栓症(Arterial Thromboembolism: ATE):抗 VEGF 薬の全身投与は、ATE の発 現リスクを高める可能性があることが報告されている。IVT 投与による VTE の循環血中量 は非常にわずかであるが、DME を有する患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験において、ATE は、

2Q4 群 3.1%(9/291 例)、2Q8 群 3.3%(12/359 例)であり、レーザー治療群では 2.8%

(8/287 例)であった。これらの事実より、DME を有する患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験 の VTE 投与群において、VTE の IVT 投与における曝露と ATE の関連性は示されなかった。

(2)胎児毒性:ウサギの胚・胎児毒性試験(3~60mg/kg を器官形成期に静脈内投与)において、

母動物の体重減少、流産、着床後胚死亡及び胎児奇形(外表、内臓及び骨格奇形)の増加 が報告されている。また、別のウサギ胚・胎児毒性試験(0.1~1mg/kg を妊娠 1 日~器官 形成期に皮下投与)において、胎児奇形(外表、内臓及び骨格奇形)の増加が報告されて

いる。さらに、妊娠ウサギにおいて、羊水中に遊離型アフリベルセプトが検出され、VEGF Trap-Eye の胎盤通過性が認められた。なお、VTE の臨床試験において妊婦での使用経験は なく、製造販売後においても妊婦への投与は報告されていない。

(3)外傷性白内障:抗 VEGF 薬の IVT 投与後に、外傷性白内障が発現する可能性が知られている。

本邦の添付文書においては、国際医薬品用語集(Medical Dictionary for Regulatory Activities: MedDRA)による事象名で「白内障」、「皮質白内障」、「核性白内障」、

「嚢下白内障」及び「水晶体混濁」をグループ化し、そのうち治験分担医師により「投与 手技との因果関係は否定できないとされた有害事象(治験薬との因果関係は問わない)」

を外傷性白内障の事象名で集計している。この集計において DME を有する患者を対象とし た第Ⅲ相臨床試験での外傷性白内障の発現率は、0.9%(6/650 例)であった。

これらの重要な特定されたリスク又は重要な潜在的リスクは、医薬品リスク管理計画(案)に おいて安全性検討事項として設定しており、本邦における現行の添付文書において、リスクの軽 減を図るため、次のように注意喚起を行っている。

 妊婦又は妊娠している可能性のある女性については「禁忌」とした(「妊婦、産婦、授乳 婦等への投与」にも併せて記載)。

 「使用上の注意」

- 脳卒中又は一過性脳虚血発作の既往歴等の脳卒中の危険因子のある患者を「慎重投 与」とし、脳卒中を「重大な副作用」として記載した。

- 眼内炎、外傷性白内障及び眼圧上昇を「重大な副作用」の「眼障害」の一部として記 載した。

滲出型 AMD 患者及び CRVO に伴う黄斑浮腫を有する患者での安全性データと比較して、DME を 有する患者に特有なリスクは認められていないため、使用上の注意に新たな注意喚起の追加を行 う必要はないと判断した。

リスクに関する不確定要素の評価

DME の臨床開発プログラム中に設けられた VTE の安全性データベースは、推奨する 2Q8 の用量 を 1 年以上投与している 364 例を含め、本剤を投与した 825 例の安全性データから構成され、本 剤の安全性プロファイル及び忍容性に関して、網羅的で一貫性のある評価データを提供している。

また、175 例は第Ⅱ相臨床試験において VTE 投与を受け、安全性プロファイルは、第Ⅲ相臨床試 験と同様であった。

また、VTE の安全性プロファイルは、滲出型 AMD と CRVO に伴う黄斑浮腫の臨床開発プログラ ムにおいても裏付けられている。これらの開発プログラム中に作成された VTE の安全性データ ベースは、本剤を投与した約 3000 例の安全性データから構成され、本剤の安全性プロファイル 及び忍容性に関して、網羅的で一貫性のある評価データを提供している。

VTE は、2011 年 11 月に世界で最初に米国で承認取得され、最も直近(2013 年 7 月 31 日ま で)の販売情報に基づくと、全世界で販売されたバイアル数は 1,032,776 本と推定されている

(販売されているバイアル数は単回投与数を表すと考えられる)(2.7.4.6.1参照)。現在、こ れらの市販後から得られている安全性プロファイルは、臨床試験のプロファイルと一致している。

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