2.5.6.1 アクリジニウム臭化物のベネフィット
(1) アクリジニウム臭化物は、臨床的に意義のある持続した気管支拡張作用を示す
臨床推奨用量であるアクリジニウム臭化物400 μg 1日2回投与は、プラセボと比較して 臨床的に意義のある有意な呼吸機能(トラフ FEV1 のベースラインからの変化量)の改善を 示し、長期投与試験でアクリジニウム臭化物400 μg 1日2回投与は投与期間(最長64週間) を通して安定したトラフFEV1の推移を示した(2.5.4.3.1及び2.5.4.7)。
(2) アクリジニウム臭化物は、COPD患者のQOL及びCOPD症状の改善に対する有用性を示 す
呼吸困難(TDI focalスコア)、QOL(SGRQ総スコアのベースラインからの変化量)、SABA の使用回数及びCOPD 症状(症状日誌に基づく被験者評価のベースラインからの変化量)の 有意な改善を示した(2.5.4.3.2、2.5.4.3.3、2.5.4.3.6及び2.5.4.3.7)。また、アクリジニウム臭
化物400 μg 1日2回投与は、プラセボと比較して、COPD増悪頻度を有意に低下させ、運
動耐容能を有意に改善した(2.5.4.3.5及び2.5.4.3.8)。
(3) アクリジニウム臭化物は、類剤と同等以上の呼吸機能及びCOPD症状の改善を示す 海外で実施したチオトロピウムとの比較試験で、アクリジニウム臭化物400 μg 1日2回 投与は、チオトロピウムと同等以上の呼吸機能及びCOPD症状の改善を示した(2.7.3.3.2.6.2
及び2.7.3.3.2.6.3)。特に、投与期間6週間で実施した試験の早朝のCOPD症状(痰、息切れ、
喘鳴及び咳)、夜間症状及びCOPD症状による活動制限に関しては、チオトロピウム群がプ ラセボ群と比較して有意な改善を示さなかったのに対し、アクリジニウム臭化物群では有 意な改善を示した(2.5.4.3.7)。これらの結果より、アクリジニウム臭化物の1日2回投与は、
チオロトピウムに比べて、早朝及び夜間を含めて一日を通して、COPD症状をコントロー ルできる可能性を示唆している。有効性の観点からこれらを考慮すると、アクリジニウム 臭化物の1日2回投与を新たなCOPD治療の選択肢の一つとして医療現場へ提供すること の臨床的意義は大きいと考えられる。
(4) アクリジニウム臭化物は、薬物相互作用を示す可能性が低い
各種in vitro試験の結果は、アクリジニウム臭化物投与による薬物相互作用を示す可能性
が低いことを示した(2.5.3.3.1)。また、臨床試験中、交感神経様作用性気管支拡張薬、メチ ルキサンチン並びに経口及び吸入ステロイドなどのCOPD治療薬とアクリジニウム臭化物 の併用において、薬物相互作用を示す臨床的事象は認められていない。COPD患者は合併 症の併存が多く、多くの薬剤を併用している高齢者が多いことから、これらの結果も本剤 の有益性の一つと考えられる。
(5) アクリジニウム臭化物は、特別な患者集団に対して、用量の調節を必要としない
高齢者及び腎機能障害患者を対象とした臨床試験の結果より、本剤は高齢者及び腎機能 障害患者に対して特別な用量調節は不要であると考えられた(2.5.3.2.1、2.5.3.2.3、2.5.5.7.1.1
及び 2.5.5.7.1.3)。また、肝機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していないが、アク
リジニウム臭化物の肝代謝への寄与は少ないため、肝機能障害患者においても特別な用量 調節は不要であると考えられる(2.5.3.2.2)。
(6) アクリジニウム臭化物の安全性は高いと推察される
国内外の臨床試験の結果からは、有害事象発現率とアクリジニウム臭化物の用量との間 に相関性はみられなかった(2.5.5.4.1)。海外第 III 相検証試験併合解析の安全性評価対象集 団の有害事象の発現率(抗コリン作用に関連した有害事象の発現率も含む)は、プラセボ群 とアクリジニウム臭化物群で同程度であり(2.5.5.4.1.2.1)、アクリジニウム臭化物400 μgを 投与された被験者において、抗コリン由来の有害事象で 2%以上の頻度で報告された事象 はなかった(2.5.5.4.2.4.4)。これらの結果はアクリジニウム臭化物400 μg 1日2回投与の安 全性及び忍容性を示唆している。
(7) 本剤の吸入器は、吸い易く、簡便かつ容易な操作性を有する
吸入器の吸入し易さ及び簡便な操作性も患者にとって大きな利点となる。Melani AS ら は、DPI製剤(Aerolizer、Turbuhaler及びDiskus)で吸入されたエアロゾルを確実に肺内へ送 達させるために必要な吸入手順を実行できなかった患者(COPD、喘息含む)の割合は17%~
24%であったと報告している4)。中等症及び重症のCOPD患者を対象にAlmirall吸入器の 吸入に関する評価をしたところ、中等症のCOPD患者で99%が、重症のCOPD患者で96%
が吸入成功(表示窓の色が緑から赤へ変わることと定義)及び至適吸入(PIFが45 L/分以上と 定義)を達成した。吸入剤は、患者の年齢や能力、使用感、患者の理解や指導のし易さ等を 考慮して選択すべきであり5)、このAlmirall 吸入器の操作の簡便性と吸入の容易性が示唆 される結果より、本剤の吸入器は患者の治療に対するアドヒアランスの向上につながると 考えられる。また、中等症又は重症のCOPD患者におけるAlmirall吸入器の平均PIFは92 L/分であり、比較対照としたHandiHaler吸入器の平均PIF46 L/分(説明書に従ってゆっくり 深く吸入)及び62 L/分(急速に大量吸入)と比較してそれぞれ、約2倍及び約1.5倍高値を示 した。このことは、Almirall 吸入器の吸入抵抗がより低いことを示し、特に呼吸機能の低 下が顕著な患者に対しても有効である可能性を示唆する(2.7.1.2.2及び2.7.6.2.31)。
吸入剤は有効成分が吸入器で確実に作用部位へ送達されることが重要であると考えられ る。99mTc標識アクリジニウム臭化物200 μgをAlmirall 吸入器により吸入したときの全肺 への沈着率は1回用量(metered dose)の30.1%であり、類剤DPIの肺沈着率(5.5~32%)2)の範 囲内であった(2.5.2.2)。
これらのことから、高齢者の割合が多く呼吸機能の低下が著しい COPD 患者に対して、
吸い易く、簡便かつ容易な操作性を有するAlmirall吸入器を用いた本剤を臨床現場へ提供 することの意義は大きいと考えられる。
2.5.6.2 アクリジニウム臭化物のリスク
国内外で実施したプラセボ対照臨床試験のアクリジニウム臭化物400 μg 1日2回投与で、発現 頻度が高かった有害事象として、慢性閉塞性肺疾患(COPD 増悪)、鼻咽頭炎、頭痛等が認められ たが、発現率はプラセボ投与時と大きく変わらなかった。その他の安全性評価項目(心電図検査、
バイタルサイン及び臨床検査)においても特筆すべき徴候は認められなかった。
国内外で実施した臨床試験のアクリジニウム臭化物400 μg 1日2回投与で、心血管系に関する 有害事象として、狭心症、心房細動、第一度房室ブロック、冠動脈疾患、左脚ブロック、右脚ブ ロック、心電図QT延長、上室性期外収縮等の心臓障害が認められ、呼吸器系に関する有害事象 として、慢性閉塞性肺疾患(COPD 増悪)、上気道の炎症、咳嗽、呼吸困難等が認められた。これ らの有害事象はCOPDの患者特性に基づき発現する可能性を否定できないことから、注意を要す る。
エクリラ400μgジェヌエア 2.5 臨床に関する概括評価 Page 57
抗コリン作用に関する有害事象として、発声障害、便秘、咽頭炎、浮動性めまい、尿路感染、
口腔咽頭痛、口内乾燥等が認められた。なお、吸入されたアクリジニウム臭化物はバイオアベイ ラビリティが低いことから、全身性の抗コリン作用による有害事象を発現する可能性が低い(国内 第II相用量設定試験及び海外第III相検証試験併合解析結果のアクリジニウム臭化物400 μg群で の個々の有害事象の発現率はプラセボ投与群と同程度であった)と考えられる。しかしながら、本 剤が有する薬理作用から尿閉、閉塞隅角緑内障等に代表される抗コリン作用に関する有害事象の 発現の可能性を否定することは困難である。
吸入薬を使用している患者では、吸入により誘発される気管支痙攣が起きることがよく知られ ている。他に、過敏症の発現にも注意を要する。
2.5.6.3 アクリジニウム臭化物のベネフィット-リスクプロファイル
アクリジニウム臭化物400 μg 1日2回投与によるベネフィットはリスクを上回ると考えられ、
本剤はCOPD患者に対する治療として有用かつ新たな治療の選択肢の一つとなり得る。