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プログラムを使った表現の分析のまとめ

7.3.5 “ 直線の動き ” と “ 絵の変化 ” を組み合わせたプログラム表現

7.5 プログラムを使った表現の分析のまとめ

1年を通じて,園児はViscuitの使い方を学んだ.最後のレッスンでいままで学

んできた“直線の動き”“ランダムの動き”“絵の変化の繰り返し”“回転の動き”のプ

ログラムを,卒園式で演じる自分の劇を他者に伝えるために使った.本章では,園 児がどのようにこれらのテクニックを使うかを確認した.

それぞれのクラスで作られた表現としてのプログラムは152個と166個であっ た.作られたメガネの総数の中で,無効なメガネとしてカウントされなかったも のは,それぞれのクラスで10個と2個であった.また,メガネをテクニックで分 けた際,不完全の一方通行の“絵の変化”に関しては,それぞれのクラスで10個 と4個であった.ここから,園児が全体としてメガネの使い方を習得し,無駄に メガネを作るのではなく,作る意図を持って必要なメガネを出している姿をうか がうことができた.

それぞれのクラスでのメガネの用途は,クラスAでは“回転の動き”が一番多く,

2番目が“直線の動き”であった.それぞれ,有意に多く選ばれていたのがわかっ

た.クラスBでは“直線の動き”が一番多く,2番目が“回転の動き”であり,これ らも有意に多く選ばれていた.これらはメガネ1つ,絵も1つで作成することが でき,一番初歩のテクニックだからだと考えられる.

また,どちらのクラスでも“ランダムの動き”の利用が少ないことがわかった.

これに関しては,L5とL6で,園児が十分にアイデアを表現できていなかったこと

に原因があると思われる.第6章で分析した結果が,このテクニックの採用率に関 連があると考えられる.第1.1.3項で佐伯が指摘した「なじむ」ところまで,この テクニックを味わうことが,レッスンの中でできていなかったのだと考えられる.

“絵の変化の繰り返し”については,クラスAにおいては適用された数に統計的 な有意はなかったが,クラスBでは有意に少なく選ばれていた.“直線の動き”“回 転の動き”に比べて少なく選ばれる理由は,最低でも絵を2つ,メガネも2つ使う からであり,園児にとっては理解があったとしても,実際に自由な状況でプログ ラムをするには,より手軽に作れる“直線の動き”“回転の動き”を選ぶ傾向が見ら れた.

“ランダムの動き”が少なかった一方で,“ランダムの動き”が適用された中には,

レッスン中に教えていない組み合わせを使って,プログラムを作っている園児が 複数確認された.クラスAにおいて,船のゆらゆらに効果的に活用されている例 が見られた.この組み合わせはクラスBにおいても見られた.しかし,クラスB においては,それが表現として効果的に作用している例は見られなかった.また,

クラスAにおいては1名が,教えられていない“衝突”のテクニックを使っている 園児もいた.先行研究において,Louiseは,具体的思考期の子どもは教えなくて も探求していける姿が見られると報告していたが,その報告と一致するものであ る[14].

クラスAでは,それぞれのテクニックについて,絵に対して一番多く適用され たものが,表現として効果的なものであったことを確認した.一方で,クラスB では“ランダムの動き”と“回転の動き”に関しては,一番作られたものが効果的 な表現だとは言えなかった.園児の選ぶテクニックの比率や,適用したテクニッ クの種類の数などは,クラスA,クラスBで同じであった.よって,選ばれた劇 の題材が影響しているのではないかと考えられる.「にゃんきちいっかのだいぼう けん」は明確に移動する物語であるが,「北風と太陽」は移動ではなく,コミュニ ケーションと状態の変化の物語である.Viscuitで表現するものには移動や動きが 伴ったものが適している可能性が考えられた.第6章の“ランダムの動き”のレッ スンでも,自由製作時の課題の設定の仕方は園児のプログラムに影響する可能性 が見られた.このことから,園児に自由にプログラミングをさせる場合は,制作環 境の設定が大きく関わる可能性が見られた.また,ここから,先に“絵の変化の繰 り返し”の適用が少ないことを述べたが,これに関しても,自由課題の設定によっ て,選ばれる比率が変わる可能性があると考えられる.

すべての園児が1つ以上のプログラム表現を作っていた.クラスAにおいては,

85.7%の園児が効果的なプログラムに関わっていた.クラスBにおいては,64.6%

の園児が効果的なプログラムに関わっていた.これらを平均すると,クラスA,ク

ラスBで74.99%の園児が効果的なプログラムを作っていると言える.今回の研究

対象の園児の中で,多くの園児がViscuitを使った表現ができていると言える.ま た一方で,これらに入っていない園児も,それぞれでプログラムを作れているこ とがわかった.保育日誌には,絵本のストーリーの外側の,大人が思いも寄らな

い世界観を作ろうとしている園児もいたことがわかった.より詳細に,園児の表 現活動としてのプログラミングを見るときは,プログラムだけでなく,制作中に

「なにを作ったの?」「なんで?」などのインタビューを並行して行う必要性も感 じた.これは第5章「まとめ」でも明らかになったことである.

保育日誌には,今までで一番一人一人が違う動きを作って個性のあるビスケッ トランドになっていたように思う,と書かれていた.本カリキュラムの目標は,全 ての園児がプログラミングを自分のものとして,自分なりの表現ができるように なることだった.園児のプログラム表現の分析と,保育日誌を確認することで,大 半の園児自分のアイデアでプログラムをし,表現できていたことがわかった.一 方で,プログラム分析だけで園児の意図を汲む限界もわかった.

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本論文の総括