2. 3列シート車用プラットフォーム
3. 反力知覚の計測実験
3.3 ブレーキ操作における反力の知覚結果と考察
「止まる」シーンにおいて,ドライバーが自動車を減速 させたい時,ブレーキペダルを操作する。ここでのペダル 操作では,加速時と同様に,ドライバーはペダルから生じ る反力を感じながら操作量を決定している。しかし,ブレ ーキペダルの形状は多くが吊り下げ型であり,オルガン式 のアクセルペダル操作と同様の知覚特性であるかは分から ない。そこで,今回は,吊り下げ型のブレーキペダルを反 力生成装置に取り付け,ペダル反力を自在に変化させなが ら,ペダルから感じた力の大きさを回答させた。
ここで,実際の運転時のペダル操作に近づけるため,ペ ダル反力はストローク量に応じて増加するように設定し,
被験者が能動的にペダルを動かし,あるストローク量にて 感じた反力の大きさを答えてもらうマグニチュード推定法 を実施した。被験者にFig. 12のドラインビングポジショ ンとなるような姿勢で座らせ,ブレーキペダルから生じる 反力20Nを基準である100%と覚えさせた後,実験車が5
~45Nの反力を5N刻みでランダムに変化させ,基準に対 して感じた反力の大きさを%で回答させた。被験者はエキ スパートドライバー2名と一般ドライバー2名の計4名(20 代~50代)の男女各2名で実施した。結果をFig. 13に示す。
横軸が提示した力Ft,縦軸が知覚した力Fpで,実線は最小 二乗法で求めた式(1)である。係数a, b, および決定係数 R2を図中に示している。この図から,実際のペダル反力 と感じた力の関係は,アクセルペダルA,Cと同様に線形
Fig. 12 Experimental Conditions
Fig. 13 Relation between True and Perceived Force in Brake Pedal
な特性となり,ペダルの反力をそのまま感じる線形的な結 果になった。アクセルペダルBとは知覚特性が異なるが,
ブレーキに比べてアクセルは使用する反力が小さく,日常 ではともに線形な領域を使用していると考えられる。知覚 の差が生じる原因は次節にて考察する。
3.4 四肢における反力知覚の考察と設計への適用 人間の四肢における反力知覚特性は,反力の大きさに応 じて異なることが分かった。ここで,上肢と下肢において 感じる力の大きさは,どのように異なるかを分析した。分 析内容は,3.1節~3.3節で得られた実際の反力Ftと人間が 感じた力Fpの関係式をそれぞれ並べ,感じた力Fpを横軸 にしたとき,各操作機器で必要となる反力の大きさを縦軸 にとった主観的等価値(Point of Subjective Equality;
PSE)を求めた。結果をFig. 14に示す。30N以下では,
上肢で操作した反力を感じるステアリングに対し,下肢で 操作した反力を感じるアクセルやブレーキでは,同じよう 1.5
2 2.5 3 3.5
0 5 10 15 20 25 30 35 40
Muscle Integral Force
Standard Reaction Force [N]
左腕(送り手)
右腕(引手)
Maintained by a Pull
Maintained by a Sender
Maintained by a Both Arms Left Arm(Sender) Right Arm(Pull)
900 [mm]
180 [mm]
Hip Point
260 [mm]
R² = 0.79 0
10 20 30 40 50 60
0 10 20 30 40 50 60 Perception ValueFp[N]
True Value Ft[N]
Subject A
a=1.113 b=2.674
R² = 0.92 0
10 20 30 40 50 60
0 10 20 30 40 50 60 Perception ValueFp[N]
True Value Ft[N]
Subject B
a=1.889 b=-0.370
R² = 0.95 0
10 20 30 40 50 60
0 10 20 30 40 50 60 Perception ValueFp[N]
True Value Ft[N]
Subject C
a=1.167 b=-3.148
R² = 0.92 0
10 20 30 40 50 60
0 10 20 30 40 50 60 Perception ValueFp[N]
True Value Ft[N]
Subject D
a=0.876 b=2.859
マ ツ ダ 技 報
No.33(2016)Fig. 14 Change of PSE Depending on the Perception Force
に感じている。このことから,下肢のほうが必要となる反 力が大きいことが分かる。つまり,この結果から,下肢は 上肢に比べて力の感受性が鈍感であると推測される。
一方,アクセルとブレーキにおいて30N以上の大きな反 力では,同じ反力と感じるために必要な反力量が異なって おり,ブレーキの吊り下げペダルはアクセルのオルガンペ ダルに比べて踵位置が固定されないため常に足全体で反力 を感じ取れず,踏み込み量の増加に伴い踵浮きや踵位置の 移動による足首角度の違いから,反力を感じ取る部位が異 なり,力の感じ方に差が生じているものと推測される。
以上より,各操作において同じ反力を感じさせたい場合 は,操作する四肢の部位による知覚特性の違いや,30N以 上の反力知覚特性を踏まえた反力設計を行う必要がある。
また,電子制御技術を用いることで,異なった操作機器で も感じさせたい反力の感覚量から物理量を逆算して生成す ることで,同じような操作感覚を体感させることが可能に なると考えられる。
4. おわりに
「走る・曲がる・止まる」の各シーンにおいて,ドライ バーが操作機器を操作する際の反力知覚特性を明らかにし た。ステアリングでは15N付近で知覚に変曲点があること が分かり,アクセルやブレーキでの知覚特性は小さい反力 では同様な傾向であるものの,生じる反力が大きくなると 機器の方式ごとに知覚特性が変化することが明らかとなっ た。また,ドライバーに感じて欲しい操作機器の反力特性 を検討する際,3章で得られた式(1)(2)の係数を被験者の平 均値とした上で,感じて欲しい力の大きさをFpに入力す れば,必要となる機械特性の物理値Ftが導出でき,作り手 のイメージどおりの操作反力が設計可能となる。
本手法は,他の操作機器にも適用可能であり,人間の反 力知覚特性をモデル化することで,提供したい感性が実現
できると考えられる。「意のままの運転」を可能にするリ ニアなフィーリングを実現するためには,操作入力のみで はなく車両応答との組み合わせを考慮した知覚特性の解明 が必要となる。加えて,ダイナミック状況下におけるフィ ーリングと生体反応との関連性については今後の課題であ る。
最後に本研究にご協力いただきました広島大学 辻敏夫 教授をはじめ関係者の皆さまに深く感謝いたします。
参考文献
(1) 山本ほか:新型ロードスターの紹介,マツダ技報,
No.32,pp.93-98(2015)
(2) 竹村ほか:人間の主観的な力知覚モデルの提案とステ アリング操作系への応用,日本機械学会論文集,
No.795,pp.64-73(2012)
(3) 福田ほか:増補版 人間工学ガイド,サイエンティス ト社(2009)
(4) 山田ほか:反力知覚特性に基づく自動車操作機器特性 に関する考察,第47回日本人間工学会中国・四国支部 大会講演論文集,pp.96-97(2014)
■著 者■
0 10 20 30 40 50
0 10 20 30 40 50
PSE[N]
Perception Froce Fp[N]
Brake Steering Accel
Organ Type
Hanging Type
竹村 和紘 山田 直樹 新部 忠幸
岸 篤秀 西川 一男 農沢 隆秀
マ ツ ダ 技 報
No.33(2016)論文・解説
20
*1~2 技術研究所 *3~4 東京工業大学
Technical Research Center Tokyo Institute of Technology
車車間通信のLCR・AFDモデルの開発
Development of the LCR・AFD Model of the V2V
要 約
車車間通信:V2V(Vehicle to Vehicle Communication)による安全運転システムの性能を向上するには,
受信信号特性を高精度に把握し,通信品質を高めていくことが必要になる。時々刻々と移動しながら行うV2V の動的な品質指標としては,単位時間当たりに受信信号レベルが閾値を下回る回数として定義されるLCR
(Level Crossing Rate)と,受信信号レベルが閾値を下回る平均持続時間として定義されるAFD(Average Fade Duration)が重要となるが,実走行環境下におけるV2V特有のLCR・AFD推定モデルは確立されてい ない。本稿では,V2VのLCR・AFDをシミュレーションとフィールド実験により検証し,走行環境に依存す る到来波角度プロファイルに着目することで,LCR・AFDを高精度に推定可能なモデルを開発した。これに より,目的とするLCR・AFDを達成するために必要となる信号レベル:SNR(Signal to Noise Ratio)の設 計精度を従来に比べ3dB程度向上し、誤差1dB以内にできることを確認した。
(第13回ITSシンポジウム2015投稿論文を一部編集し掲載,特定非営利活動法人ITS Japan許諾済)
Summary
To realize a safety driving system by V2V, it is essential to understand signal propagation prope rties for the purpose of improving communication performance. As indices of performance, LCR an d AFD are two important factors to be evaluated in V2V. But, LCR・AFD estimate model peculiar to V2V under the run environment is not established. In this article, we theoretically derive LC R・AFD of the V2V to enable the estimation of LCR ・AFD with high accuracy using the angle of arrival profile in the established model. Then, it is able to determine design parameter necessary to realize desired LCR・AFD within an error of 1dB. This is equivalent to 3dB improvement as c ompared with the conventional.
1. はじめに
交通事故低減を目的としてV2Vや路車間通信:V2I
(Vehicle to Infrastructure Communication)などを活 用した協調型安全運転支援システムの市場導入へ向けた動 きが加速している。国内の700MHz帯V2Vシステムでは,
出会い頭交差点など代表的な走行シーンに対して,事故防 止支援を成立させるために必要な支援開始タイミングを元 に,通信品質・通信エリア要件が共通ガイドライン(1)とし て設定されている。しかし,実用システムではあらゆる走 行環境でも要件を満足できる高いロバスト性が必要になる。
一方,V2Vの電波伝搬特性は走行環境により大きく変動
する。そのため,走行環境ごとの受信信号特性を高精度に 把握し,環境変化を考慮した通信品質設計が重要となる。
これまでにも,V2Vにおける平均受信電力特性(2),(3),シャ ドーイング特性(4),(5),フェージング特性(6),(7)などの推定モ デルは提案されているが,これらでは車両の速度・移動方 向など動的挙動が考慮されていないため,実走行条件に適 合した通信品質向上設計は困難である。車両の動的挙動ま で考慮すると,受信信号の時間変動特性を把握する必要が ある。この特性を表す指標としてLCRとAFDがある。こ れらを把握することで,走行環境変化に対する静的な特性 変動に加え,走行環境ごとに,速度変化に伴い変動する通 信品質特性の把握も可能となり,より信頼性の高いシステ
強矢 昌宏
*2山田 秀行
*1タン ザ カン
*3Masahiro Suneya
Hideyuki Yamada Gia Khanh Tran
荒木 純道
*4Kiyomichi Araki