第 3 章 ブラフマー創造神話とアルダナーリーシュヴァラ創造神話の比較
第 1 節 構成要素
第 1 項 構成要素の有無
まず、第1章と第2章で分類した神話の構成要素を合わせて表にする。縦軸が構成要
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素の羅列、横軸がブラフマー創造神話とアルダナーリーシュヴァラ創造神話である。表 の見方は、構成要素 A を例に取ると、ブラフマー創造神話の縦列の中で〇と表記して ある構成要素A1①、A1②、A2、A3、A4はブラフマー創造神話に見られた記述であり、
空欄となっているA5、A6は見られなかった記述である。アルダナーリーシュヴァラ創 造神話も同様である。以下に表を示す(表19)。
表 19 ブラフマー創造神話とアルダナーリーシュヴァラ創造神話における各構成要素の有 無
ど ちら の神 話か
\構 成要 素
ブラ フマ ー創 造神 話
ア ルダ ナー リー シュ ヴァ ラ創 造神 話
ど ちら の神 話か
\構 成要 素
ブラ フマ ー創 造神 話
ア ルダ ナー リー シュ ヴァ ラ創 造神 話
ど ちら の神 話か
\構 成要 素
ブラ フマ ー創 造神 話
ア ルダ ナー リー シュ ヴァ ラ創 造神 話
ど ちら の神 話か
\構 成要 素
ブラ フマ ー創 造神 話
ア ルダ ナー リー シュ ヴァ ラ創 造神 話
ど ちら の神 話か
\構 成要 素
ブラ フマ ー創 造神 話
ア ルダ ナー リー シュ ヴァ ラ創 造神 話
A1① 〇 〇 B1⑪ 〇 F1② 〇 I1⑦ 〇 L1⑤ 〇
② 〇 〇 B2 〇 ③ 〇 I2 〇 ⑥ 〇
A2 〇 〇 C① 〇 ④ 〇 I3 〇 L2① 〇
A3 〇 〇 ② 〇 F2 〇 〇 I4 〇 ② 〇
A4 〇 D1① 〇 〇 F3 〇 〇 J1① 〇 ③ 〇
A5 〇 ② 〇 G1 〇 〇 J1② 〇 M1 〇
A6 〇 ③ 〇 G2① 〇 ③ 〇 M2 〇
B1① 〇 ④ 〇 ② 〇 J2 〇 N① 〇
② 〇 D2① 〇 G3 〇 〇 J3 〇 ② 〇
③ 〇 ② 〇 H① 〇 K① 〇 ③ 〇
④ 〇 ③ 〇 ② 〇 ② 〇 ④ 〇
⑤ 〇 E1① 〇 〇 I1① 〇 ③ 〇 ⑤ 〇
⑥ 〇 ② 〇 ② 〇 K④ 〇 ⑥ 〇
⑦ 〇 ③ 〇 ③ 〇 L1① 〇 O 〇
⑧ 〇 ④ 〇 ④ 〇 ② 〇 P1 〇
⑨ 〇 E2 〇 ⑤ 〇 ③ 〇 P2 〇
⑩ 〇 F1① 〇 ⑥ 〇 ④ 〇
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この中から、ブラフマー創造神話とアルダナーリーシュヴァラ創造神話に共通する構 成要素が含まれる A、C、D1、E1、F1、F2、F3、G1、G3、I1342、P1343、について、
比較していく。
第 2 項 構成要素 A の比較
構成要素A(発端:ブラフマー神による創造行為)に関しては、ブラフマー創造神話 もアルダナーリーシュヴァラ創造神話も、ブラフマー神による創造の過程であるという 内容が基本である。
構成要素 A1(ブラフマー神が創造を行なったが、創造された者たちが繁栄しない)、
A2(ブラフマー神が創造のために苦行する)、A3(創造を進めている過程)では双方の 内容に似ている部分も多く、ほぼ同一の神話の一部である可能性がうかがえる。A4(ヴ ィシュヌ神やヴィシュヌ神の化身により、創造を促される)は、ブラフマー創造神話の みに見られる構成要素であり、内容的に見るとブラフマー神の創造行為にヴィシュヌ神 が介入する形となっている。その理由としては、varAha-p.がヴィシュヌ系プラーナ聖典 であることが挙げられるだろう。A5(シヴァ神が生類を生み出さず、世界の破壊が起 こるまでスターヌのままでいた)、A6(バガヴァットとバガーがリンガと台座として存 在している)は、アルダナーリーシュヴァラ創造神話のみに見られる構成要素であり、
内容的にはブラフマー神の創造行為にシヴァ神(アルダナーリーシュヴァラ)が介入す る形となっている。すなわちA5、A6では、アルダナーリーシュヴァラが、男女に分裂 し生産を行なう創造以外にも、異なる形態の創造をなしているということである。それ ゆえ、アルダナーリーシュヴァラの創造者という役割が、より明確化されていると考え られる。
以下に構成要素Aの記述を示す344。
ブラフマー創造神話(原文は第1章第1節第2項を参照のこと)
A1. ブラフマー神が創造を行なったが、創造された者たちが繁栄しない ①創造された者たち:生類
【brahma-p. 1.52】プラジャーパティからのたくさんの生類の創造がなされた時 でも、創造された生類は、全く繁栄しなかった。
342 構成要素F1と合わせて、構成要素I1について論じる。
343 構成要素F1、および構成要素I1と合わせて、構成要素P1について論じる。
344 本章では、サンスクリット原文を省略する。サンスクリット原文に関しては、第1章第 1節、および第2章第1節を参照のこと。
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【brahmANDa-p. 1.2.9.8cd-9】そして生類の創造を促進させるためにこの者(ブ ラフマー)が創造している間、それらの創造された生類はいかなる理由によっ ても繁栄しなかった。そこで彼(ブラフマー)は原因に近づくための知性を働 かせた。
【brahmANDa-p. 1.2.9.28-29】〔彼らは〕儀礼を行い生産(生殖)を行なう者たち であり、偉大なリシたちによって讃えられている。この世界で、これらの創造 されたダルマをはじめとする偉大なリシたちによって、生類たちが知者(ブラ フマー)から創造されたが、繁栄しなかった時、彼(ブラフマー)はタマスの 要素に覆われ、そして悲しみに打ちひしがれた。
【liGga-p. 1.70.261】彼に創造されたこれらの素晴らしい生類が繁栄しなかった ので、タマスの要素に覆われたブラフマー神は、悲しみによって落ち込んだ。
【Civa-p. 5.29.24】創造された生類たちが繁栄しなかったので、〔ブラフマーは〕
自身の体を2つにしてまさに男と女になった。
【vAyu-p. 10.1】このように、世界の創造者ブラフマーによって世界〔の生類〕
が創られたが、それらの生類はいかなる原因によっても増えなかった。
②創造された者たち:聖仙
【bhAgavata-p. 3.12.51-52】聖仙たちの偉大な力によってでさえも発展しない創 造を知って、彼(ブラフマー)は、再びそれの増大のために熟考した。カウラ ヴァよ。おお。これは驚くべきことだ。私が常に従事しているにもかかわらず、
生類が全く繁栄しない。この場合、確実に運命が邪魔をしている。
A2. ブラフマー神が創造のために苦行する
【padma-p. 1.40.67】彼ら苦行をするバラモンたちが去ったまさにその時、〔ブ ラフマーは〕さらに非常に厳しい最高の状態の段階の苦行をしていた。
A3. 創造を進めている過程
【agni-p. 17.15-17】ブラフマーの心から生まれた7人と言われるマリーチ、ア トリ、アンギラス、プラスティヤ、プラハ、クラトゥ、ヴァスィシュタを〔創 った〕。最高の者よ。この 7 人は生き物やルドラたちを生み出した。自身を 2 つにして、半身によって男性に、半身によって女性になった。そして、かのブ
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ラフマーは彼女の中に生き物たちを創造した。
【brahma-p. 43.30】それから、そのような存在である全世界の偉大な神ブラフ マーは、五大要素を合わせた〔世界〕を徐々に創っていった。
【kUrma-p. 1.8.5-6】バラモンたちよ。〔その一対は〕アダルマーチャラナと不 吉な性格のヒンサーである。そこで、かのブラフマー神は自分のその輝く体を 捨てた。さらに身体を2つにし、半分が男性に、半分が女性になった。男性神 はヴィラージュを創った。
【matsya-p. 3.30-31】〔ブラフマー神は〕世界創造のために、心の中でサーヴィ ットリーを念想し、そして唱える者(ブラフマー)は、汚れのない体を自分か ら分けて、半身を女性の姿にし、半身を男性の姿にした。そして彼女はシャタ ルーパーと呼ばれ、サーヴィットリーとも呼ばれた。
【Civa-p. 2.1.16.3-9】そして私は他の者たちを創造しても満足しなかった。聖者 よ。そこで、アンバーを共なるシヴァを瞑想し、私はサーダカたちを創造した。
聖者よ。マリーチを私の両目から、ブリグを心から、アンギラスを頭から、聖 者の最高者プラハをヴィヤーナから、プラスティヤをウダーナから、ヴァスィ シュタをサマーナから、クラトゥをアパーナから、アトリを耳から、ダクシャ をプラーナから、あなた(ナーラダ)を膝から、カルダマ仙を影から、私は創 った。〔さらに〕私は、全てを成就させる手段であるダルマをサンカルパから 創った。このように私はこれらの最高のサーダカたちを創り、マハーデーヴァ の恩恵によって、満足した。聖者の最高者よ。そして、私の命令によって、サ ンカルパから生まれたダルマは、人間の姿を得て、サーダカたちと共に動き始 めた。愛しき者よ。そして、私は自分の肢体の様々な部分から、神からアスラ までの無数の息子たちを、彼らにそれぞれの体を与えて創った。聖仙よ。
【kAlikA-p. 25.1-43】ブラフマー神が原子レベルの創造をし、その維持のために ヴィシュヌ神になり、更に地球を水から持ち上げて世界像創造をするためにヴ ァラーハになる。
【Civa-p. 7.1.16.4-26】ブラフマー神による創造の過程でアルダナーリーシュヴ ァラが創造を行なう。
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【『マヌ法典』1.1-31[渡瀬 1990 pp. 21-26]】ブラフマンが世界創造と生類創造を する。
A4. ヴィシュヌ神やヴィシュヌ神の化身により、創造を促される。
【varAha-p. 2.13】このようになっている私(ヴァラーハ)の臍の蓮の上に四面
〔のブラフマー〕が現れ出た。女神よ。マハーマティーよ。私は彼(ブラフマ ー)に「生類を創造せよ」と言った。
アルダナーリーシュヴァラ創造神話(原文は第2章第1節第2項を参照のこと)
A1. ブラフマー神が創造を行なったが、創造された者たちが繁栄しない ①創造された者たち:生類
【mArkaNDeya-p. 47.3-4】神々を始めとして動かないものまでが、トリグナから 成るものの対象であると知られる。このように、〔ブラフマー神によって〕動 くものや動かないものという存在が創られた。その賢者(ブラフマー)の〔創 造した〕それら全ての生類が増えなかったので、〔ブラフマーは〕自分に似た、
心から生まれた他の息子たちを創った。
【padma-p. 1.3.166】このように〔ブラフマーによって〕動くものや動かないも のという存在が生み出された。彼の思考〔によるもの〕だったにもかかわらず、
これら全ての生類は繁栄しなかった。
【Civa-p. 3.3.2】創造主(ブラフマー)によって創造された全ての生類が繁栄し なかったので、心配した彼(ブラフマー)は、それゆえ非常に苦しんだ。
【vAyu-p. 9.67】このように〔ブラフマーによって〕動くものや動かないものと いう存在が生み出された。彼の思考〔によるもの〕だったにもかかわらず、こ れらの創造された生類は繁栄しなかった。
【viSNu-p. 1.7.3-4】このように〔ブラフマーによって〕動くものや動かないも のという存在が創られた。この賢者(ブラフマー)の〔創造した〕それら全て の生類が増えなかったので、〔ブラフマーは〕自分に似た心から生まれた他の 息子たちを創った。
②創造された者たち:聖仙
【mArkaNDeya-p. 47.4-10】その賢者(ブラフマー)の〔創造した〕それら全て の生類が増えなかったので、〔ブラフマーは〕自分に似た、心から生まれた他