(
1
)2013
年の回顧2002
年から2012
年までの10
年間、年平均約3.5
%で成長してきたブラジル経済も、2013
年下半 期に入ると減速傾向、ないしは成長が止まってし まっているとの報道が多く見られるようになった。日本でもニュースで取り上げられたようだが、昨 年
2013
年6
月のサッカーコンフェデレーションズ カップ開催期間中に、各地で抗議デモが発生してし まった。デモの発端は各地の地下鉄、バス料金を 値上げすることへの抗議(サンパウロでは3レアルから3.2 レアル=1レアル45円換算で135円から144円)であったが、その後は教育・医療福祉の充実、汚職腐敗の防止、
挙げ句の果てには公共交通の無料化、同性愛者の権 利向上など、この国らしく自由な?ことを叫びな がら全国にデモが拡大していった。
2014
年のFIFA
サッカーワールドカップ開催中止を掲げるデモも多 くあったところを見ると、ブラジル人でもサッカー の嫌いな人もいるようである。ジウマ・ルセフ現大統領は、絶大な人気があった ルーラ前大統領の後継者として人気を引き継ぎ、デ モ以前までは
60
%程度の高い支持率があったのだが、このデモを境にして支持率は
30
%程度まで急 落してしまった。デモの発端となった公共交通料金 の値上げは政府要請もあり、結局中止されることに なったのだがそれでもデモは収束せず、大統領は ちょうどこの時期に予定されていた日本への公式訪 問を、デモ鎮静化のため急遽キャンセルすることに なってしまった。このデモの後の
2013
年7
月〜9
月期の経済成長 率はマイナス成長(−0.5%)となり、ブラジル経済の 成長が国内外から疑問符を付けられるようになって しまった。現在、2001
年以来の国債デフォルトが 懸念されている隣国アルゼンチンに比較すると、そ れほど悲観する経済状態ではないのだが、昨年のブ ラジルは低空飛行を続けることとなった。リオデジャネイロでの抗議デモ
(
2
)2014
年の動向今年は全世界が注目する
FIFA
サッカーワールド カップが6
月から約1
カ月間、国内の12
都市で開催 される。政府は既に代表チームの試合のある日は国 民の休日にすることを定めていて、ブラジルのセレ ソン(代表チーム)の成績次第でもあるが、この1
カ月 間はブラジル人の仕事が手に付かず、経済は少し停首都ブラジリアでの抗議デモ
滞しそうである。もちろんサッカーに興味のない人 間もいるので、旅行会社はそういった人をターゲッ トに海外、国内旅行のパッケージを多く販売し始め ている。
また年末には大統領選挙が予定されており、こち らは現政権のジウマ・ルセフ大統領の
2
期目となる 再選が予想されているが、昨年落とした支持率の回 復が遅れており、おそらくバラ撒き的な政策を打っ てくると予想され、このこと自体は短期的な経済成 長を生み出すことになるであろう。しかし、この国においては長らく言われ続けてい る「ブラジルコスト」というものが存在しているた め、外資の呼び込みや国内の生産活動に支障をきた しており、この解消を図らなければ近い将来、経済 は行き詰まることになるであろう。では、ブラジル コストとはいったいどのようなものであるか、少し 説明させていただきたい。
❶
税金システム❷
労務問題❸
物流❹
金融コスト主な
4
点を挙げてみた。❶
の税金システムについ ては、国税、州税、市税合わせて50
種類以上ある 複雑で頻繁に変更されるもので、企業はそれに対応 するために他国に比較するとより多くの時間を費や す必要がある(世界銀行の計算によるとブラジルにおける税 金関連業務は年間2,600時間となっており、189カ国中159番目 となっている)。また、法人税率も34
%となっており、OECD
諸国平均25
%に比較すると非常に高くなっ ている。❷の労務問題については、労働者保護意識の強い
法律があるために各企業は多くの労働裁判を抱える ことになり、結果多額の和解金や弁護士費用などのコストを負担することになる。
❸の物流だが、鉄道がほとんどないこの国では物
流のほとんどをトラックに頼らざるを得ないにもか かわらず、道路整備状況は非常に貧弱であり、時間 とコストが非常にかかることになる。また治安の問 題もあり警備費なども負担となる。❹の金融コストは高い金利のため、企業は設備投資
資金などを銀行から借りることが難しくなっている。政府もこのような問題は長年の課題として認識し ているものの、なかなか手を付けることができない でいる。海外から有望な市場として注目されている ブラジルではあるが、これらが改善されていかない とこれ以上の外資の呼び込みは難しくなるかもしれ ない。
今年のブラジル経済見通しは前述の通り、ワール ドカップと大統領選という
2
大イベントがあり予測 するのは難しいのだが、2013
年後半を最悪期とし て今年は徐々に上向いてくるという見方が多い。た だし、ワールドカップ時に昨年のようなデモの発生(小規模のデモは確実に起こると言われている)や現大統 領の再選が難しくなった場合には、この国は混乱す る危険性も抱えている。
2.
ブラジルの建設市場の動向と見通しワールドカップ、
2016
年のリオデジャネイロオ リンピックに向けて、サンパウロ−リオデジャネイ ロ間のブラジル版新幹線、高速道路や国道の整備、地下鉄路線の拡大などのインフラ整備が大々的に行 われるはずであったのだが、残念ながら現在の国内 インフラ整備についてはこちらで生活している人間 にとってはあまり活発に行われている実感はなく、
人びとは毎日渋滞や地下鉄やバスのラッシュ時の混 雑を我慢しながら通勤している。
もこの方式を導入する予定である。
建設物価については、同じくサンパウロ州建設 業組合の発表によると
2013
年の上昇率は7.36
%と なっており、サンパウロ州内民間建設の1m
2の平 均コストは1,100.08
レアル(約4
万9,500
円)となっ ている。最後に、ワールドカップで使用するスタジアム について。この文章を書いている
2014
年2
月現在、12
会場中5
会場がいまだ建設中となっている。本来 であればすべて2013
年中に完成する予定であった のだが、ラテンの国らしくのんびりとしたものであ る。ただし試合を主催するFIFA
の事務局長は2014
年の1
月に各地を視察に訪れた際、特に工事が遅れ ているパラナ州クリチバのスタジアムについては除 外の可能性も述べるなど、ラストスパートを促して いる状況である。昨年
11
月にはサンパウロ州のイタケロンスタジ アムで屋根の崩落により2
名、アマゾナス州マナウ スでは昨年12
月の転落事故に続き今年2
月にもク レーン部品の落下による死亡事故が起こっており、突貫工事を心配する声も大きい。
サンパウロ市内の渋滞
サンパウロ 地下鉄のラッシュ風景
サンパウロ州建設業組合によると、
2014
年の建 設分野の成長率はGDP
成長率とほぼ同様の2
%程 度と予想している。2006
年以降建設業の成長率はGDP
の成長を上回ってきていたが、2013
年の最終 予測(建設2.0%に対しGDP2.3%)も含め2014
年も厳し い予想となっている。これはインフラ投資プログラ ムの遅れ、商業施設および住宅不動産市場の動きが 緩慢であることが理由に挙げられる。政府はインフ ラ投資を促進させる最後の手段として空港、国道 の管理運営を民間に委託するプログラムを発表し、2011
年以降一定の成果を出し始めている。民間会 社の方が仕事のスピードが早いためであるが、今後政府は老朽化している港湾や新規に敷設する鉄道に 2013年11月のサンパウロイタケロンスタジアムの屋根崩落事故
とにかく安全に、そして
FIFA
が設定した最終工 期までに工事が完成することを願うばかりである。もちろん日本代表チームには、多くのブラジル人 建設関係者が苦労して建設したスタジアムで勝利を 掴んでもらいたい。
ワールドカップ決勝戦が行われるリオデジャネイロマラカナンス タジアム
月
2013年度 2012年度 伸び率(%)
*受注額に 件数 受注額 件数 受注額 よる
4
本邦法人 24 9,676 40 21,502 -55.0%
現地法人 158 65,388 95 32,062 103.9%
計 182 75,064 135 53,564 40.1%
5
本邦法人 33 16,892 38 21,617 -21.9%
現地法人 108 101,175 149 70,691 43.1%
計 141 118,067 187 92,308 27.9%
6
本邦法人 69 60,567 51 32,219 88.0%
現地法人 153 54,764 144 60,951 -10.2%
計 222 115,331 195 93,170 23.8%
7
本邦法人 49 52,672 34 12,293 328.5%
現地法人 139 78,770 118 70,495 11.7%
計 188 131,442 152 82,788 58.8%
8
本邦法人 40 28,605 47 27,265 4.9%
現地法人 134 81,821 106 35,824 128.4%
計 174 110,426 153 63,089 75.0%
9
本邦法人 62 103,173 55 70,195 47.0%
現地法人 122 47,691 132 70,283 -32.1%
計 184 150,864 187 140,478 7.4%
10
本邦法人 46 46,348 28 23,636 96.1%
現地法人 121 56,450 135 91,633 -38.4%
計 167 102,798 163 115,269 -10.8%
11
本邦法人 52 76,636 49 38,558 98.8%
現地法人 122 33,742 102 57,791 -41.6%
計 174 110,378 151 96,349 14.6%
12
本邦法人 49 21,953 34 9,641 127.7%
現地法人 189 112,134 168 71,942 55.9%
計 238 134,087 202 81,583 64.4%
1
本邦法人 35 60,313 37 20,063 200.6%
現地法人 98 47,801 100 48,840 -2.1%
計 133 108,114 137 68,903 56.9%
2
本邦法人 29 171,812 36 32,350 431.1%
現地法人 86 48,510 100 45,750 6.0%
計 115 220,322 136 78,100 182.1%
累計
本邦法人 488 648,647 449 309,339 109.7%
現地法人 1,430 728,246 1,349 656,262 11.0%
総合計 1,918 1,376,893 1,798 965,601 42.6%
1. 月別の海外工事受注実績 (単位:百万円)
地域別
2013年度 2012年度 伸び率(%)
*受注額に 件数 受注額 構成比 よる
(%) 件数 受注額 構成比
(%)
アジア
本邦法人 296 538,920 39.1% 301 219,162 22.7% 145.9%
現地法人1,162 413,680 30.0% 1,149 449,380 46.5% -7.9%
計 1,458 952,600 69.1% 1,450 668,542 69.2% 42.5%
中東
本邦法人 21 40,131 2.9% 21 45,986 4.8% -12.7%
現地法人 1 32,879 2.4% 0 0 0.0% −
計 22 73,010 5.3% 21 45,986 4.8% 58.8%
アフリカ
本邦法人 20 31,160 2.3% 14 6,913 0.7% 350.7%
現地法人 0 0 0.0% 0 0 0.0% 0.0%
計 20 31,160 2.3% 14 6,913 0.7% 350.7%
北米
本邦法人 9 3,360 0.2% 17 4,333 0.4% -22.5%
現地法人 116 244,791 17.8% 97 173,527 18.0% 41.1%
計 125 248,151 18.0% 114 177,860 18.4% 39.5%
中南米
本邦法人 102 31,437 2.3% 56 25,305 2.6% 24.2%
現地法人 49 9,043 0.7% 46 12,791 1.3% -29.3%
計 151 40,480 3.0% 102 38,096 3.9% 6.3%
欧州
本邦法人 1 13 0.0% 9 312 0.0% -95.8%
現地法人 44 4,236 0.3% 23 7,206 0.7% -41.2%
計 45 4,249 0.3% 32 7,518 0.7% -43.5%
東欧
本邦法人 0 0 0.0% 1 1,009 0.1% -100.0%
現地法人 56 22,737 1.7% 33 13,342 1.5% 70.4%
計 56 22,737 1.7% 34 14,351 1.6% 58.4%
その他大洋州
本邦法人 39 3,626 0.3% 30 6,319 0.7% -42.6%
現地法人 2 880 0.1% 1 16 0.0% 5400.0%
計 41 4,506 0.4% 31 6,335 0.7% -28.9%
累計 本邦法人 488 648,647 47.1% 449 309,339 32.0% 109.7%
現地法人 1,430 728,246 52.9% 1,349 656,262 68.0% 11.0%
総合計 1,918 1,376,893 100.0% 1,798 965,601 100.0% 42.6%
2. 地域別海外工事受注実績 (単位:百万円)
海外受注実績