3.持続可能性と社会
3.1 パンデミックへの対応 3.1.1 権威主義の台頭
と、その集団のどこかで接点を持っている異なる集団に対して感染拡大を 開始し、パンデミックを起こしてしまう。どこかに接点を持ってしまう感 染経路を絶つためには、感染者を隔離して他の集団との接点を持たせない 物理的な方法しか予防策がない。
異なる集団とは、異なる民族である場合が想定されるが、人類としては 同一の原点を持つ種から分岐したと考えられている。民族の DNA は染色 体やミトコンドリアの中に経路依存性を持つ多様性(Diversity)を連綿 として受け継ぐハプロプルーブを示す DNA 連鎖を持っている。アメリカ での爆発的な感染拡大は、移民の多い特性を考えると、社会環境による依 存性が高く、民族的ハプロプルーブによる依存性は低いということなのか もしれない。
一律という平等主義にも見えるトップダウン権限による頭数への所得均 一配分という考え方は社会主義制度にしかあり得ず、自由民主主義の社会 制度にはもともと存在していない。個別最適を満足させる一律給付金制度 が全体最適になっているという答えになっているとは思えないが、答えは 将来になってみなければ分からない。一律休業補償という理屈も同じで、
生産性を生み出さない事業経営には、本来は倒産という自己責任しかない はずで、自由経済のもとでは成り立たない論理である。
新型コロナウイルスを発生させた中国は、情報統制を強化し、武漢市を 始め地域別の自警団を含めたロックダウンにより、より強固な監視社会政 策へと権力を強化させ、封じ込めに成功した。パンデミックをいち早く抜 け出し経済活動を復帰させた権力の増強は、2020 年 7 月 1 日に香港を「一 国二制度」から「一国一制度」に、強制的に替えてしまった。中国本土で は、一般の事業者でも共産党が企業経営の指導をしている建前となってい る。香港でも企業が共産党の指示に従わなければ、企業経営者や従業員は、
理由も明かされずに、中国本土に収監され、裁判を受け、資産が没収され る可能性がある。多国籍の多くの金融機関を始め、香港に中国本土との企 業窓口の拠点を持っている企業は、各国とも何らかの対応を迫られること になった。
パンデミック後、防疫に欠かせないマスクの 80% が中国で生産されて いることがわかった。中国は、マスクの世界への供給先の優先度を政治手 段として活用し、自国がパンデミックから先に抜け出すと、マスクの支援 策をマスク外交として使い始めた。同時に「一帯一路」構想を一段と前に 進め、南シナ海領有権を主張し、南シナ海は自国領土内だとして中距離ミ サイルの着弾実験まで行った。中国は自らを新型コロナウイルスの被害者 であると主張し、発生源と発生時期の特定については隠蔽したままを続け ている。2020年9月ワクチンをいち早く開発し臨床試験を終えたと発表し、
供与を開始すると発表している。ワクチン供与するにあたって、対象国家 への経済関係強化、イデオロギー共有への外交圧力を強めている。
3.1.2 中国式収奪モデル
中国では、都市戸籍と農民戸籍との間で生産性の交換が優位性を生むと いう比較優位の経済性が、国内では自律的に成功していることになってい る。農民戸籍の出稼ぎ労働力である「農民工」からの収奪モデルでGDPを 拡大してきたので、制度としても社会環境の格差分断は歴然としている。
GDP 世界第 2 位になって以降、「農民工」への賃金上昇政策もあり貧困層 は無くなったとされているが、事実は不明である。低賃金の労働力を武器 に世界の製造工場となったが、知的所有権の勝手なコピーや世界の優良企 業が提供を求められてきた技術の無償供与政策には反発が出てきている。
低賃金であるという理由による海外からの投資は急減している。
国営企業を始め、公共投資が多い中国では、公共施設や公共機能は、貧 富の差なく社会的持続可能性を共有できている。共産主義社会制度として は分配の公平化を維持しているように見えているが、一律有料であれば可 処分所得に占める割合が違ってくるので負担の公平感は確保できない社会 制度となっていることになる。不公平感は、パンデミックで職を失った農 民工の収入低下を加速させてしまっている。民主主義の世界の国々は、い ずれ中国は国内的不公平感を是正するために、都市戸籍と農民戸籍の格差 是正をしなければならず、内部から民主主義が起きるだろうと期待してい た。結果は権力者側の富を増やしただけで、既得権益を守る仕組みが容易 になる監視社会に移行してしまった。
パンデミックによって農民戸籍の人々が働く現場が急減しているので、
格差の分断はますます増大する可能性は高い。収入の少ない農民が暴発す ることは、過去の歴史に多く経験している国家であるので、全体主義とし ては暴発を抑え込まなければならないだろう。個人の思想と行動と財産の 監視は、より厳しく強化せざるを得なくなる。李克強首相は、全国人民代 表大会閉幕後の 2020 年 5 月 28 日の記者会見で「中国は人口が多い発展途 上国であり、年間の可処分所得は平均で3万元(45万円)だが、平均月収 が 1,000 元(1 万 5,000 円)前後の中低所得層も 6 億人いる」と発言して物 議をかもした。
北京に住む 1980 年以降に生まれた新世代農民工といわれる人々の平均
月収は5,850元(10万6,635円)と報告されているから、世界的に見ても既 に低賃金ではない。パンデミックの影響を受けにくい農地を耕す自給自足 に近い人々と、収入のない高齢者と労働可能年齢に達していない人口数を 入れた結果が、6億人という人数になっていると思われる。健康被害が顕 在化している公害問題について解決できないこと、高額所得者層ができあ がってしまったこと、新世代農民工は中間所得者層になっていること、に もかかわらずパンデミックを引き起こした当事者であることの矛盾を隠す ため、自らをまだ発展途上国と言い訳しておく必要があったのかもしれな い。都市戸籍の裕福さと農民戸籍の貧困さの格差から目をそらすために6 億人という膨大な人数を持ち出したのであろうが、真意はわからない。
3.2 韓国社会の例