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バネによる初速を有した走行シミュレーション

第 4 章  走行解析モデルによるシミュレーション

4.8 バネによる初速を有した走行シミュレーション

  4.4 節や 4.7 節の結果から支持脚で着地後,跳躍脚で着地した場合よりも速度が増加している.

これは人間でいう定常走行の状態ではなく,走り始めからの加速走行の状態であると考えられる.

つまり着地によって損失するエネルギよりも跳躍によって回復するエネルギの方が大きいという ことである.これにより跳躍脚の着地後より支持脚での着地後のほうが,速度が増加している.

そこで跳躍脚での着地時に更に水平方向の速度がある場合にどのような走行(跳躍)になるか,検討 を行った.

(Side view)   (Birds-eye view) Fig. 4.24  Mathematical model 3

X

Z X Y

Z

Y

Spring

4.8.1条件

  モデルは着地時の挙動がわかりやすいように関節型の足の解析モデル 1を使用し,また 4.4 節 の場合よりも跳躍脚での着地時に速度を持たせるために,図4.24のようなバネ付きのモデルとし た.バネはある長さになると拘束が解除されて,モデルに影響を与えないようにし,バネ定数 K を 大 き く す る こ と に よ り , 着 地 す る ま で の 速 度 が 増 加 す る よ う に し た . バ ネ 定 数 K は 1000~4000[N/m]の範囲で変化させた.なお,バネ定数により着地時までの時間が変化するため,

股関節は自由ではなく固定で,また着地時の水平方向の速度損失をなるべく少なくするために股 関節(J1)の角度φ1=50[deg],膝関節(J2)の角度φ2=-60[deg],足首関節の角度(J3) φ3=40[deg]とした.足 首関節は固定し,着地直前に自由にする.その後,走行(跳躍)時に Mass の初期高さ 0.72[m]をな るべく維持するように足首関節に15[Nm]のトルクを与え,シミュレーションを行った.

4.8.2結果及び考察

(K=1000[N/m])       (K=2000[N/m])       (K=4000[N/m]) Fig. 4.25  Motion of running 3

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

Time[s]

Velocity[m/s]

K=1000 K=1500 K=2000 K=2500 K=3000 K=3500 K=4000

Fig. 4.26  Velocity of X direction

図 4.25 にシミュレーションの挙動の一部を示す.踵から着地し足首を伸ばして跳躍している のがわかる.図4.26 はMassのX(水平)方向速度である.赤丸で囲んだ部分で着地をしている が,速度の減少があまり見られない.これは着地時にα2が90[deg]に近くなるような条件にしたか らである.

バネ定数Kが増加することで着地直前までのエネルギ(以下:初期エネルギとする)が大きく なり,着地直前の速度も増加するが,K=2500[N/m]あたりで跳躍時に初期高さ 0.72[m]を維持しつ つ,着地直前の速度まで到達することが困難になった.これはMassが速く移動することにより,

足首のトルクによってX(水平)方向へ加速が十分に行われず,Z(垂直)方向のみの加速となり,

結果として跳躍時に水平方向の速度が減少したと考えられる.つまり,初期エネルギが着地によ り消散し,流入させたエネルギによって初期エネルギまで回復させようとしたが,トルクが足り ずに回復できなかったということである.またバネ定数が増加することにより足首関節のストロ ークが短くなることや足首を伸ばすタイミングや速度が遅くなり,水平方向への加速が十分に行 えないことが考えられる.

バネ定数Kを変化させない場合で,トルクを与えるタイミングについても検討を行ったが,与 えるタイミングを早くすれば早くするほど垂直方向への速度が増加し,遅ければ遅いほど水平方 向への速度が増加することがわかった.しかし,いくら水平方向への速度が増加するとはいえ,

跳躍後のMass位置が初期高さを下回ることは,モデルが落下しているということを示しており,

跳躍とはいえない.Massの位置や足の接地状態により,足首のトルクによって発生させる地面と の反力が決まるが,この反力が初期高さを保つほどまで,十分にMassに作用しなかったためだと 推測される.簡単にいえば足首にトルクを与えるタイミングが遅く,モデルが滑り,前方へ転倒 したといえる.

よって,流入エネルギにより運動エネルギを回復させることができる状態には範囲があると考 えられ,これによりエネルギの収支による定常走行の速度の推定が可能ではないかと考えられる.

しかし,実際の走行に発展させるためにはまだまだ検討する項目があり今後の課題といえる.

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